神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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35 巻, 1 号
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巻頭言
特集
  • 秋山 久尚
    2018 年 35 巻 1 号 p. 2-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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  • 山﨑 亮, 吉良 潤一
    2018 年 35 巻 1 号 p. 4-10
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル 認証あり
    多発性硬化症は代表的な脱髄性疾患で,再発寛解を繰り返す.再発を繰り返すと神経障害が蓄積され,数年から十数年で二次進行型に移行する.この慢性進行期は,末梢の免疫反応にかかわらず中枢神経系で徐々に神経障害が悪化していく.そのメカニズムに深く関わるのが,中枢のグリア細胞という非神経細胞の活性化(=グリア炎症)である.グリア炎症は様々な要因に左右されるが,その重要な一つがギャップ結合蛋白コネキシンの機能異常である.多発性硬化症の急性期にはアストログリアのコネキシンが低下し,慢性期では逆に発現上昇する一方,オリゴデンドログリアのコネキシンは低下し続ける.この現象が神経保護的に働くのか障害性に働くのか,現時点では不明である.このメカニズム解明が,現在まで治療法のない慢性進行期の多発性硬化症治療薬開発につながる.
  • 中島 一郎
    2018 年 35 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル 認証あり
    中枢神経脱髄疾患の代表的疾患は多発性硬化症であるが,近年自己抗体が関与する中枢神経脱髄疾患が確立され,診断基準も頻繁に更新されている.抗アクアポリン4抗体や抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白抗体は診断マーカーとしても重要であり,これらの自己抗体の測定が診断に必須となっている.これらの自己抗体の結果を含めて中枢神経脱髄疾患の診断の現状について概説する.
  • 中原 仁
    2018 年 35 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル 認証あり
    多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)は世界で約250万人が患う中枢神経系の炎症性脱髄疾患である.その正確な原因や病態は未だ解明されていないが,免疫学的異常が関与していると推定されている.根治薬は未開発であるが,主に免疫系を標的とする病態修飾薬(disease-modifying drugs: DMD)がこれまでに十種類以上開発されており,本邦でも内6種類が使用可能である.これらDMDには正確な作用機序が解明されていないものも含まれており,個々人の病理病態に応じたDMDの選択は容易ではない.このため,臨床試験や市販後調査のデータより推定される効果とリスクのバランスより適切なDMDを選択し,その効果が不十分である場合には他のDMDへ変更することが求められる.これらプロセスを体系化することは容易ではなく,もはやMS治療は専門家に委ねるべきとの考え方も浮上している.
  • 小野里 規子, 原 直人
    2018 年 35 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル 認証あり
    網膜厚を定量化できる光干渉断層計(optical coherence tomography: OCT)を用いた研究が多発性硬化症でも数多くなされている.脱髄により軸索が障害されることから視神経乳頭周囲の網膜神経線維層の測定や,脳萎縮を抑制するフィンゴリモドの使用開始に伴い網膜神経節細胞層と脳萎縮や視機能との関連について多数の報告がみられるようになってきた.近年では,網膜の血流を観察できるOCT angiographyを用いた網膜血管密度と多発性硬化症の総合障害度スケールとの関連,視神経炎により網膜の炎症・萎縮が生じて低眼圧になることや脈絡膜の菲薄化も報告されている.いずれもOCTは非侵襲性で患者への負担が少ないことや簡便に中枢神経の変化を捉えることができ,病期の進行や視機能の予後を推測できる.視神経炎を発症していない時期及び視神経炎を発症していなくても,OCTによる網膜の観察は重要である.
  • 毛塚 剛司
    2018 年 35 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/31
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    視神経炎は,通常,視神経乳頭浮腫を伴う視神経乳頭炎と伴わない球後視神経炎に大別される.視神経乳頭炎には,鑑別としてうっ血乳頭,虚血性視神経症などがあり,より稀な疾患として,Leber遺伝性視神経症や感染性視神経症,ぶどう膜炎関連疾患,薬剤性視神経症などが挙げられる.視神経炎の治療は,通常ステロイドパルス療法が選択されるが,治療前に感染症の除外診断を行う.血清中抗アクアポリン4抗体が陽性であるステロイド抵抗性の視神経炎も少数例存在し,血液浄化療法も治療選択肢に入る.ステロイドや血液浄化療法後の後療法には,少量のステロイド内服および免疫抑制療法が用いられる.視神経炎治療後も多発性硬化症に移行する例がみられるため,適切な患者説明がなされる必要がある.
原著
  • 丹沢 慶一, 岡 真由美, 西田 茉有李
    2018 年 35 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/31
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    健常成人の異なる刺激輝度で誘発される対光反射について,平面型ディスプレイを用いた瞳孔視野計により,各視野象限で検討した.
    対象は平均年齢20.6±0.5歳の健常成人21名21眼(いずれも右眼)とした.対光反射の測定には川崎医療福祉大学で試作した瞳孔視野計を用いた.刺激の大きさは直径2°,輝度を20,40,82,157,320 cd/m2とした.刺激呈示部位は視野の45°(上耳側視野),135°(上鼻側視野),225°(下鼻側視野)および315°(下耳側視野)方向に偏心度0°,5°,10°,15°および20°の合計17点とした.対光反射の反応量の指標は縮瞳率とした.同輝度,同偏心度の刺激呈示部位で得られた縮瞳率は,4象限間で比較した.加えて,上側視野と下側視野,耳側と鼻側の2象限間で比較した.
    その結果,4象限の比較において,縮瞳率に有意差はないもの,刺激輝度と偏心度の高い刺激の条件下において,上耳側および上鼻側視野の縮瞳率の平均値は,下耳側および下鼻側視野の縮瞳率の平均値よりも大きかった.また,刺激輝度が高い条件下で,上側視野の縮瞳率は下側視野の縮瞳率よりも有意に高かった(p<0.05).
    今後,本研究のデータを基に各象限別の対光反射の健常成人データベースを作成し,眼疾患の検出に応用することが課題である.
  • 一色 佳彦, 石川 裕人, 三村 治, 村上 晶
    2018 年 35 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル 認証あり
    【目的】優性遺伝性視神経萎縮(ADOA)症例の網膜神経節細胞の変化の特徴を知るために,光干渉断層計(OCT)を用いて,視神経乳頭周囲網膜神経線維層(cpRNFL)厚,黄斑部網膜神経節細胞層複合体(GCC)厚の変化を検討する.
    【対象と方法】対象は,OPA1遺伝子変異ADOAと確定した5例10眼.視力(logMAR),眼底検査,静的視野検査,OCTによるcpRNFL厚,GCC厚を検討した.年齢対象外症例OCTの比較解析の対照として,眼疾患の無い年齢,屈折を一致させた7例14眼の結果を用いた.
    【結果】年齢は7~48歳(25.2±17.3歳),logMAR視力は,右眼0.38±0.23,左眼0.34±0.23,限界フリッカ値は28~37 Hz(32.6±3.5 Hz)であった.眼底検査は,全例視神経乳頭耳側蒼白を認め,cpRNFL厚は,耳下側10眼(100%),耳側9眼(90.0%),耳上側6眼(60.0%)など耳側で菲薄化を認めた.黄斑部網膜全層厚ならびにGCC厚は,全測定領域で同年齢の正常データベースと比較し,正常人口の1%未満の厚さであった.
    【結論】ADOAでは,耳側,特に耳側から耳下側のcpRNFL厚の菲薄化が認められた.黄斑部網膜全層の菲薄化も認めたが,特に網膜内層で著明であった.この傾向はすでに幼少時より認める可能性もあり,ADOAの早期の診断にOCTは有用であると考えられた.
  • 岩佐 真弓, 塩川 美菜子, 山上 明子, 井上 賢治, 若倉 雅登
    2018 年 35 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル 認証あり
    Leber遺伝性視神経症(LHON)は10~20代の若年男性に好発するとされるが,比較的高齢発症する症例の臨床的特徴を検討した.2002年から2015年に受診したLHON92例のうち,発症年齢が50歳以上であった14例に対し,その年齢・性別・ミトコンドリアDNA変異の種別,臨床経過をレトロスペクティブに検討した.50歳以上で発症した14例(男性11例,女性3例)のDNA変異はm.11778G>Aを有し,そのうち8例で家族内発症が明らかであった.最低視力の平均は0.01,最終視力の平均は0.02であり,視野はゴールドマン視野計で5~30度の中心暗点を呈した.また,アルコール依存症,網膜静脈閉塞症,胃全摘などの既往歴がみられた.当院で経験したLHONのうち,50歳以上の症例は10%を超えており,稀ではなかった.いくつかの既往歴は,誘因としての役割という観点から今後注意していくべきものと考えられる.
症例報告
  • 秋山 瑠美, 村上 祐介, 仙石 昭仁, 園田 康平
    2018 年 35 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル 認証あり
    視神経乳頭腫脹による視力低下からムコ多糖症(mucopolysaccharidosis: MPS)Ⅱ型と診断された1例を報告する.症例は12歳男児,両眼の視力低下と視野異常,視神経乳頭腫脹を認めて当院入院精査となった.視神経の炎症を示唆する所見は乏しく,著明な強膜肥厚と遠視を認めた.低身長,骨・関節の異常,心臓弁膜疾患,アデノイド肥大,臍・鼠径ヘルニア,水腎症など様々な全身疾患を伴っており,尿中のムコ多糖の排泄増加と白血球の酵素活性異常を認めたためMPSⅡ型と診断された.視神経乳頭腫脹は約1か月の自然経過で改善したが,両眼とも視神経はやや萎縮した色調となった.酵素補充療法を開始され,その後は視神経や強膜肥厚は著変なく経過している.また,全身的には身体の発達や水腎症の改善を認めた.眼所見からMPSの診断と治療につながることがあり,原因不明の小児の視神経乳頭腫脹はMPSも鑑別に挙げる必要がある.
  • 杉原 瑶子, 三田 覚, 岩佐 真弓, 山上 明子, 若倉 雅登, 井上 賢治
    2018 年 35 巻 1 号 p. 64-70
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル 認証あり
    網膜硝子体手術後の合併症の一つに斜視がある.その原因として局所麻酔薬による筋毒性,外眼筋の損傷,機械的因子などが挙げられる.今回硝子体手術後に斜視を呈した3症例を経験した.3例とも術眼の下斜視と上転制限を呈していた.手術時の麻酔はbupivacaineによる球後麻酔であった.2例ではMRIで下直筋の球後での肥大を認めた.硝子体手術後の斜視はbupivacaine筋毒性による下直筋障害が原因と考えられた.2例は斜視手術により良好な眼位を得られた.
臨床と研究の接点
  • 羽根 邦夫
    2018 年 35 巻 1 号 p. 71-78
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/31
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    各種疾患や障害による眼球運動の異常を定量的に解析する方法を報告した.強膜反射法による光学的な測定方法を使用し,解析結果が再現性を持つように視標の制御とデータ保存のクロックを高精度化した.
    被験者に眼球運動の基準となる一定周期で回転する円運動指標を提示し,滑動性追従眼球運動波形を測定した.眼球運動の波形をフーリエ変換して得た周波数成分から,眼球運動の異常を評価する係数を提案し,その効果を検討した.
    健常者は,視標速度が20~30度/秒の時に眼球の追従性が良く,視線は視標に従って動いた.これより速い時は衝動性眼球運動が増え,低い時は固視微動が増えた.視標運動には,一定周期の円運動指標が眼球運動系の特徴抽出に適していた.
入門シリーズ111
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  • Saori Yoshida, Hidetoshi Hoshikawa, Hitoshi Ishikawa
    2018 年 35 巻 1 号 p. 105-114
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/31
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    In this study, we aimed to analyze pupillary dynamics at the points near the ventilatory threshold (VT) during exercise from the pupil diameter/pupillary responses to light stimulation. The exercise intensities were set to 80, 100, and 120% of the VT. Cycling with a bicycle ergometer was performed for 4 minutes at each intensity and we performed measurements of pupil light reflexes using an infrared pupilography at the end of each stage. The measurement parameters included initial pupil diameter (D1), minimum pupil diameter after light stimulation (D2), constriction rate (CR), maximum velocity of constriction (VC), and maximum velocity of dilation (VD). The results showed increases in the D1 and D2 at an exercise intensity of 100% of VT and the minimum CR at the intensity of 120% of VT. In addition, the VC increased at 80% of VT and then re-increased post exercise. The VD increased at 100% and 120% of VT. The results demonstrated that in addition to an increase in the pupil diameter as the exercise intensity increased, the change occurred at the ventilatory threshold and above; thus, the use of dynamic parameters such as VC and VD enables understanding responses during and post exercise, which cannot be achieved by static measurements alone. These results suggest that observation of pupils may allow for immediate recognition of whether exercise intensities are below the VT intensity.
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