神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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35 巻, 2 号
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特集
  • 石川 均
    2018 年 35 巻 2 号 p. 151
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/07/11
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  • 田ヶ谷 浩邦
    2018 年 35 巻 2 号 p. 152-158
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/07/11
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    光にはいくつかの中枢神経作用がある.このうち,対光反射と概日リズム位相変位作用には,メラノプシン含有網膜神経節細胞(内因性光感受性網膜神経節細胞)がかかわっている.体内時計は約24時間の概日リズムを作り出しており,これが毎日の睡眠・覚醒パターンの基礎となっている.体内時計には自律性,光を時刻の手がかりとして利用する同調機能,日長時間の変化を検知して季節を予測して身体機能を調整する機能がある.望ましい社会生活スケジュールと概日リズムが乖離して起こるのが概日リズム睡眠・覚醒障害であり,うつ状態を誘発することがある.季節性感情障害冬型は体内時計の季節適応の障害と考えられており,高照度光療法が有効である.季節性感情障害冬型だけでなく,双極性障害のうつ病相,大うつ病にも高照度光療法が有効であることが判明しており,光認知と体内時計,うつ状態との関連が示唆されている.
  • 澤村 裕正
    2018 年 35 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/07/11
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    網膜から入力した視覚情報はボトムアップ方式に情報が送られ段階的・階層的情報処理を受けると同時に,高次視覚領域からの注意や記憶といったトップダウン式の修飾も受ける.このような視覚認知のNetworkの解明には解剖学的および機能的な神経構造基盤の知見の双方を積み上げていく必要がある.
    本稿では,①解剖学的神経構造基盤の例として,マカクザルを実験動物として,狂犬病ウイルスをトレーサーとして用い,視覚情報処理のボトムアップ式およびトップダウン式の多シナプス性ニューロンNetworkについて ②fMRIを用いた機能的視覚認知のNetworkについて ③視覚認知のNetworkから視機能と疾患との関連を考える例として,斜視患者における三次元形態認知に関して概説する.
    我々が無意識で行っている“視覚認知”も,非常に精密かつ繊細なNetworkから構成されており,このNetworkのどこかに破綻をきたしても視覚に影響を与えうる.視覚認知そのものが奥深いものであり,今後さらなる発展を期待したい.
  • 濵﨑 一郎
    2018 年 35 巻 2 号 p. 167-175
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/07/11
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    眼球の外眼筋固有知覚は,長年議論が続いている興味深い分野である.視覚についての多くの研究では,空間知覚は網膜像だけを認知しているだけではなく外眼筋固有知覚や遠心性コピー,立体視,輻湊といった様々な情報を得て構築されていると考えられている.中枢神経機構では中枢からの遠心性のコピー(Outflow)と固有受容器からの求心性のフィードバック(Inflow)の情報を用いて視覚眼球運動評価されていると考えられる.外眼筋固有知覚の存在や神経路,その必要性や役割については,いまだ明確なコンセンサスを得られていない.Outflowには遠心性のコピーという外眼筋固有知覚よりも明確な情報があるからである.外眼筋固有知覚に関係した神経活動,固有受容器(筋紡錘,柵状神経終末)の存在を証明する報告があるものの,役割について不明確である.近年,長期的に眼球運動や眼位に影響を与える,輻湊・開散に関与している可能性を示した報告も散見され,未だ病因の分かっていない斜視の発症機序の解明や治療の進展につながる可能性があり注目すべき分野といえる.
原著
  • 佐藤 奈美, 大庭 紀雄
    2018 年 35 巻 2 号 p. 176-186
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/07/11
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    【目的】1950年から2016年までの神経眼科論文におけるeponym(エポニム)の使用実態を検証する.
    【方法】神経眼科の主要専門書を参照してエポニムを選定,文献データベースPubMed収録論文(1950-2016)を対象として,タイトルにエポニムを含む論文を検索した.Web of Science,日本眼科学会雑誌(日眼会誌)を補完的に用いた(2017年11月).
    【結果】エポニムを主題とした論文数は,46,896件(Alzheimer disease),41,918件(Parkinson disease)を最上位,論文数0件を最下位としてエポニムごとに大きく変動した.ランキング100位(論文数36件)までを神経眼科エポニムクラシックス(NOEC)と定義すると,その発祥は1760年(Charles Bonnet syndrome)を最初に1979年(Susac syndrome)を最後として1900年前後にピークをもつ集中分布を示す.1980年以後に誕生したエポニムはない.NOES発祥国はドイツ(n=22)を筆頭に米国,英国,フランスの順である.1950年から2016年までの年次別論文数は持続的に増加するのが大多数だが,Schilder disease,Wegener granulomatosisのように1970年代から1980年代のピークを境に長期低落傾向を示す事例も少なくない.また,Devic disease,mongolismのように,病因解明を機にdescriptive nomenclaureの使用に切り替わってエポニム使用が減少した事例がある.エポニムの表記には,大部分の論文で所有格と非所有格が併用されているが,その割合は各エポニムで偏りがある.注目に値するのは,1990年頃から非所有格表記が優勢に転じた事例が少なくないことである.日眼会誌(1897年創刊から2916年までの120年間)においては,900論文のタイトルにエポニムが使われた.神経眼科領域ではレーベル遺伝性視神経症,ベル現象,テノン嚢が目立つ.和文論文にユニークな敬称「氏」の付記は,明治から昭和戦前までごく一般的であったが,戦後は敬称を省く習慣になった.
    【結語】エポニム使用は功罪相半ばするが,古くから定着した事例は依然として汎用される傾向がある.
症例報告
  • 許勢 文誠, 奥 英弘, 西川 優子, 小林 崇俊, 今川 幸宏, 池田 恒彦
    2018 年 35 巻 2 号 p. 187-191
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/07/11
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    Idiopathic sclerosing orbital inflammation(ISOI)は,特発性眼窩炎症とは異なるまれな眼窩内炎症性疾患である.免疫反応に基づく細胞浸潤と線維化による腫瘤形成を特徴とする.今回,右眼の充血,眼痛,複視を主訴としたISOIの女性例を報告する.右眼の眼瞼は腫脹し眼瞼下垂を認め,眼球突出と眼球運動制限が認められた.さらに強膜炎,虹彩炎,滲出性網膜剥離が認められた.ステロイド点眼の効果はみられなかった.MRIで眼窩腫瘤を認め,同部位にpositron emission tomography(PET)で異常集積を認めた.眼窩腫瘤生検の結果,組織へのリンパ球浸潤と線維化が認められた.悪性リンパ腫,IgG4関連眼疾患,他の全身疾患は除外され,ISOIと診断した.プレドニン® 80 mg/dayから全身投与を開始し,1年をかけてゆっくりと漸減した.ステロイド治療により症状は改善し,腫瘤の縮小がみられた.しかしステロイド治療中止の2か月後に再発をきたした.再度ステロイド全身投与を行ったが,再発後は治療に抵抗した.したがってISOIは難治性で免疫抑制や放射線治療の追加が必要となる症例が存在することを認識する必要があると考えられた.
  • 大野 新一郎, 高木 由貴, 坂井 摩耶, 江内田 寛, 江橋 諒, 中原 由紀子, 阿部 竜也
    2018 年 35 巻 2 号 p. 192-196
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/07/11
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    眼窩静脈瘤が経過観察中に突然,破裂出血し,早急に摘出手術を行い,予後良好であった症例を報告する.症例は62歳,男性.複視および左眼の眼球突出精査目的に紹介受診した.初診時所見は,視力は右眼0.3(1.5),左眼0.7(1.5),眼圧は両眼16 mmHgであった.眼球突出度は右眼11 mm,左眼16 mmで,左眼の上転,下転障害が認められた.MRIにて左眼眼窩内に眼窩静脈瘤が認められた.1週間後の再診では,眼所見は改善しており経過観察とした.ところが,約4か月後,突然,頭痛,眼痛,吐気を伴って,著明な視力低下,眼球突出,眼圧上昇,眼球運動障害をきたした.MRI,CTにて眼窩静脈瘤の破裂出血が疑われ,脳神経外科にて摘出術を施行した.術後症状,所見は改善した.眼窩静脈瘤では経過中に突然破裂した場合,失明することもある.そのため,予防的にコイル塞栓術や硬化術が試みられているが,術後合併症の報告もある.さらに眼窩静脈瘤が破裂出血する時期やリスクファクターに関する報告はみられない.眼窩静脈瘤を保存的に経過観察する場合には,破裂の危険性について十分に説明することも重要である.
  • 小笠原 聡, 大高 幸二, 鳴海 新平, 木澤 純也, 菅原 剛, 赤坂 真奈美, 黒坂 大次郎
    2018 年 35 巻 2 号 p. 197-201
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/07/11
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    頻回再発性の抗ミエリンオリゴデンドロサイトグリコプロテイン(MOG)抗体陽性視神経炎の小児患者に対しrituximabを投与し,再発抑制効果を認めた1例を報告する.症例は9歳,男児.既往歴に4歳時に急性散在性脳脊髄炎(ADEM)がある.右眼の見えづらさを訴え受診した.視力は右(0.04),左(1.0)で,右相対的瞳孔求心路障害(RAPD)陽性,視野検査では右中心暗点を認めた.限界フリッカ値(CFF)は右測定不能,左43.4 Hzであった.MRIでは右視神経の腫大を認め,右視神経炎と診断された.血液検査で抗アクアポリン(AQP)4抗体は陰性だが,抗MOG抗体が陽性であった.ステロイドパルス療法や血漿交換療法を施行するも,頻回に視神経炎が再発した.再発抑制のためrituximabを投与したところ,再発期間が約6か月まで延長した.本症例から,難治性の抗MOG抗体陽性視神経炎の再発抑制に,rituximabが有効な可能性が考えられた.
  • 村尾 史子, 木下 導代, 武田 美佐, 垂髪 祐樹, 尾崎 修治
    2018 年 35 巻 2 号 p. 202-207
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/07/11
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    進行性多巣性白質脳症(PML)は,中枢神経系の日和見感染症で,多彩な進行性の神経症状を呈する致死的な疾患である.今回我々は,眼科受診を機にHIV関連PMLと診断された1例を経験したので報告する.症例は43歳男性.2か月前からの視力低下,視野狭窄を主訴に眼科を受診した.初診時視力は右眼(0.4),左眼(0.15).視野検査にて両眼左下4分の1盲,上半盲を認めた.頭部MRIにて白質に脳浮腫を伴わない多発性,融合性の病変を認め,血液検査,髄液検査の結果HIV関連PMLと診断された.初診から17日後に視力は両眼(0.01)と急激に低下し,highly active antiretroviral therapyを開始するも視力の回復を得られず10か月経過した現在の視力は光覚弁である.原因不明の視力,視野障害を認めた場合,PMLの可能性も考慮する必要がある.
話題
原典で読む神経眼科シリーズ
印象記
神経眼科知識評価プログラム(NOKAP)テスト
Asian Section
  • Masanori Nakazawa, Hitoshi Ishikawa, Toshiaki Goseki, Eiichi Nishimura ...
    2018 年 35 巻 2 号 p. 239-243
    発行日: 2018/06/25
    公開日: 2018/07/11
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    We report a case involving a 38-year-old woman who developed Leber's hereditary optic neuropathy (LHON) during treatment with orally administered ethambutol. Nine months after treatment initiation with oral ethambutol (52 kg body weight, 750 mg/day, 225 g in total), the patient exhibited decreased visual acuity, and 3 months later, she underwent her first detailed examination at Kitasato University Hospital. Although ethambutol-induced optic neuropathy was primarily suspected on the basis of her medical history and examination, optic disc swelling was significant, and the onset of the disease was rapid, which was atypical of ethambutol-induced optic neuropathy. Neuro-ophthalmological evaluations were performed, and mitochondrial DNA assessment confirmed the mitochondrial DNA11778 point mutation, leading to a diagnosis of LHON. Our findings suggest that ethambutol is a likely triggering factor for LHON, and it is important to consider LHON in cases of decreased visual acuity during the oral administration of ethambutol. Patients should be asked about their family history before the initiation of ethambutol treatment, and mitochondrial DNA assessments should be performed, particularly when the course of optic neuropathy is atypical.
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