神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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35 巻, 4 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
特集
  • 毛塚 剛司
    2018 年 35 巻 4 号 p. 377-378
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/24
    ジャーナル 認証あり
  • 松田 隆作
    2018 年 35 巻 4 号 p. 379-388
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/24
    ジャーナル 認証あり
     多発性硬化症もしくはその類縁疾患に伴う視神経炎では,治療に抵抗し重篤な視機能障害をきたすことがある.視神経炎の治療としてステロイド大量療法および血漿交換療法が行われることがあるが,患者の身体的負担が問題となる.我々はこれまで実験的自己免疫性脳脊髄炎(experimental autoimmune encephalomyelitis: EAE)マウスに視神経炎(experimental autoimmune optic neuritis:EAON)を高率に生じるモデルを開発し,一貫して視神経炎の病態解明および新規治療法の開発を行なってきた.EAONは免疫後21日目に症状がピークとなるが,視覚誘導電位(visual evoked potential:VEP)の潜時は21日目に有意に延長した.軸索変性は14日より早く観察され,ミクログリアの浸潤は,T細胞が浸潤する前の免疫14日目に観察され,21日目には脱髄が観察された.さらに,神経ペプチドの一種であるcalcitonin gene-related peptide(CGRP)遺伝子導入樹状細胞はEAON/EAEの発症を抑制し,その抑制機序にIL-10が関与していることを明らかにした.また,我々はIL-10遺伝子導入樹状細胞がEAON/EAEを抑制することも明らかにし,その奏功機序は,投与された遺伝子導入樹状細胞は制御性T細胞の発現を促すこと,さらに脾臓・リンパ節・視神経に遊走し,遅延型過敏反応,炎症性サイトカインおよび細胞表面に発現しているCD80/86,MHC class Ⅱが有意に低下させていることなどから,これらによって遺伝子導入樹状細胞が免疫系を制御し,EAONを抑制すると考えられた.さらに,我々は,抗MOG抗体に関連した視神経障害全般に関して,cell-based assayにより抗MOG抗体を検索し,抗MOG抗体陽性症例における病型と再発の有無,視機能の予後について検討した.その臨床像は,いずれも視力予後は比較的良好であったが,何らかの視野障害を有意に残存する結果となった.また,視神経障害の再発回数は,抗MOG抗体陽性例の方が陰性例に比べて有意に多かった.抗MOG抗体は多彩な視神経障害をきたす可能性があり,視力予後は良好であるが,視野障害が残存する傾向があり,再発を繰り返す可能性がある.
  • 後関 利明
    2018 年 35 巻 4 号 p. 389-397
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/24
    ジャーナル 認証あり
     近年,抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白質抗体(MOG-Ab)の中枢神経炎症性脱髄疾患への関与が知られている.また,眼科領域でも抗MOG抗体陽性視神経炎の存在が明らかとなっている.一方,抗MOG抗体陽性視神経炎の病態はあまり知られていない.そこで,我々は抗MOG抗体陽性視神経炎の病態解明のため,全国調査に着手した.抗MOG抗体陽性例は全視神経炎の10.2%であった.抗MOG抗体陽性視神経炎の特徴は下記の通りである.平均発症年齢は45歳,男性:女性=1:1,視神経乳頭腫脹,眼球運動時痛,MRIにて視神経腫脹,ステロイドパルスに反応は良好.以上の特徴をもった視神経炎患者には,治療前に抗MOG抗体の有無を調べることを推奨する.
  • 田中 惠子
    2018 年 35 巻 4 号 p. 398-403
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/24
    ジャーナル 認証あり
     従来,多発性硬化症(MS)の病態に関わる自己抗体として注目されていた抗MOG抗体が,MOGの立体的な構造を抗原として検出するcell-based assay法で抗体検出がなされるようになってから,MSとの直接的な関わりはなく,抗MOG抗体陽性疾患として独立したカテゴリーで考えられるようになった.抗MOG抗体陽性例では,急性視神経炎を呈する場合が最も多く,急性脊髄炎の病型がこれに次ぎ,さらに,大脳皮質・白質・脳幹などに広汎な病変を生じる脳炎型,小脳炎,これらの組み合わせで多彩な病変を呈する例など,その臨床的スペクトラムは広がっている.本症は,再発性の経過を呈することが多く,再発予防に向けての治療法の確立が望まれている.また,抗MOG抗体の病態への関わりに関する研究にも目が向けられるようになっている.
  • 宮内 彰彦, 門田 行史
    2018 年 35 巻 4 号 p. 404-411
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/24
    ジャーナル 認証あり
     抗myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)抗体は,近年,中枢神経系脱髄疾患における新たな標的抗原として注目を集めている.抗MOG抗体は,構造的なエピトープを抗体が認識できるように通常cell-based assay(CBA)法で検出される.小児科領域では主に急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis:ADEM)や抗AQP4抗体陰性の視神経脊髄炎関連疾患(neuromyelitis optica spectrum disorder:NMOSD),特発性視神経炎(idiopathic optic neuritis:ION)などで関連が報告されている.治療に関しては,急性発作時はステロイド治療や血漿交感療法に良く反応するが,再発性の経過を辿ることも多いため長期的なフォローや予防目的の免疫抑制療法が推奨される.
     以上から,抗MOG抗体の有無は,小児脱髄疾患の病態分類,および治療選択に関与する重要な指標として注目されている.そこで,本項では,抗MOG抗体の検出方法の推移や関連する小児脱髄疾患,および抗MOG抗体陽性の脱髄疾患の治療や予後について紹介する.
症例報告
  • 糸谷 真保, 大木 玲子, 山田 喜三郎, 中野 聡子, 久保田 敏昭
    2018 年 35 巻 4 号 p. 412-417
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/24
    ジャーナル 認証あり
     症例は6歳男児.両眼の視力不良があり,視神経疾患の疑いで当科を紹介受診した.初診時視力は両眼とも矯正(0.1).限界フリッカ値は右眼19 Hz,左眼21 Hzであった.視神経乳頭の軽度発赤と乳頭耳側の網膜神経線維層(RNFL)の菲薄化,上方と下方象限のRNFLの肥厚を認めた.また黄斑部の網膜神経節細胞複合体の減少があり,ミトコンドリアDNA検査で11778変異が判明し,レーベル遺伝性視神経症(LHON)と診断した.3か月後より視力回復がみられ,発症後4年の最終視力は右眼(0.3),左眼(0.7)と良好である.本症例は緩徐進行型で,中心暗点は10°以内,RNFL菲薄化が耳側のみという,視力予後良好例の特徴を満たしていた.
  • 渡辺 研人, 松本 直, 柴 友明, 富田 匡彦, 森山 紗帆, 石川 均, 堀 裕一
    2018 年 35 巻 4 号 p. 418-423
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/24
    ジャーナル 認証あり
     Vogt-小柳-原田病に合併した両眼性のAdie瞳孔の1例を経験した.症例は34歳の女性,両眼の変視および視力障害を主訴として当院へ紹介受診となった.原田病と診断し,ステロイド療法によって約1か月で視力改善を認めた.退院後の診察時も羞明を訴え,両眼の中等度散瞳,対光反射の消失を認めた.近見反応の遷延と0.125%ピロカルピンに対する脱神経過敏を認め,Adie瞳孔と診断した.Adie瞳孔は80%以上が片眼性であるが,原田病とAdie瞳孔の合併に関する過去の報告においても8/9症例が両眼性に発症しており,原田病のような両眼性疾患ではAdie瞳孔の所見も両眼に現れやすいことが推察された.過去の報告では,その発症は,視力や炎症の程度とは比例しなかった.本症例においてレーザースペックルフローグラフィー(LSFG)にて脈絡膜血流を測定したところ,発症時より低下しており(右眼脈絡膜MBR:1.5,左眼脈絡膜MBR:1.7),原田病の治療により脈絡膜血流が治療前と比較して右眼1,050%,左眼720%と大幅に改善した.原田病におけるAdie瞳孔の合併には,脈絡膜の虚血も強く関わっている可能性が示唆された.
  • 蒲生 真里, 後関 利明, 市邉 義章, 君島 真純, 向野 和雄
    2018 年 35 巻 4 号 p. 424-429
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/24
    ジャーナル 認証あり
     眼窩プリーの異常を伴った後天内斜視に対し,実測斜視角に対して2倍である矯正斜視角の両眼内直筋後転術が奏功した一例を経験したので報告する.症例は73歳女性,数年前からの複視を主訴に来院.眼位は交代プリズム遮閉試験(APCT)で近見4 prism diopter(PD)の内斜位,遠見25 PDの内斜視で,眼球運動は軽度上転制限を認めた.眼軸長は右眼24.49 mm,左眼23.99 mmであった.小柄な女性で,瞼裂幅は細く上眼瞼溝の陥凹が深く,軽度眼瞼下垂という特徴があった.眼窩MRI画像にて外直筋の下方偏位・上部耳側傾斜,眼窩プリーの外直筋-上直筋バンド(LR-SRバンド)の伸展・断裂,上直筋の鼻側偏位が認められ,sagging eye syndrome(SES)と,強度近視性斜視の両方の特徴を持つと考えられた.
     成人発症の後天斜視の中には眼窩プリーの異常によるものを考慮する必要がある.このような内斜視の症例には実測斜視角の2倍矯正斜視角の内直筋後転術が有効である.外眼筋の位置や眼窩プリーの状態や眼窩のサイズを確認することが重要であるため,術前の眼窩MRIは必須である.
  • 柴田 直弥, 石川 誠, 松井 孝子, 吉冨 健志
    2018 年 35 巻 4 号 p. 430-435
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2019/01/24
    ジャーナル 認証あり
     片眼に乳頭浮腫を認めたサルコイドーシスの1例を報告する.症例は54歳の女性.左視力低下を自覚し,近医眼科で左うっ血乳頭を疑われ当院紹介受診となった.頭部CTとMRIでは異常所見を指摘されなかった.
    所見:受診時の矯正視力は,右(1.0),左(0.5)であった.右眼底には明らかな異常は認めなかったが,左眼底に発赤を伴う乳頭浮腫を認めた.フルオレセイン蛍光眼底造影検査にて,左視神経乳頭からの蛍光漏出を認めた.全身検索の結果,両側肺門リンパ節腫脹,血清ACE活性高値,血清sIL-2R高値を認めたことから,サルコイドーシスに伴う左乳頭浮腫が考えられた.プレドニゾロン40 mg/日内服を開始したところ,左乳頭浮腫は改善した.
    結論:乳頭浮腫を認めた症例ではサルコイドーシスも鑑別に入れて精査することが重要である.
入門シリーズ113
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