神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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36 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
特集
  • 中村 誠
    2019 年 36 巻 2 号 p. 147-148
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/07/06
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  • 植木 智志
    2019 年 36 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル 認証あり

     抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎は視神経脊髄炎スペクトラムに包括される疾患概念である.抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎は視力視野障害が重篤で視機能予後が不良,再発回数が多いなどの臨床的特徴を有するとされている.現在コンセンサスを得ている視神経脊髄炎スペクトラムの急性期の視力視野障害改善のための治療方法,慢性期の再発予防のための治療方法について解説する.また,視神経脊髄炎スペクトラムの病態の解明が多くの神経免疫学的研究によって進んでいるが,それらの研究結果に基づく将来期待される視神経脊髄炎スペクトラムの治療方法について解説する.

  • 毛塚 剛司
    2019 年 36 巻 2 号 p. 153-161
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル 認証あり

     抗myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)抗体陽性視神経炎は,新しい視神経炎症性疾患として知られてきている.抗MOG抗体陽性視神経炎は,一般的に細胞を用いたcell-based assayで測定される.抗MOG抗体陽性視神経炎例ではステロイド治療によく反応し,視力予後は良いが視野障害を残し,再発率が高い.これらの臨床的特徴から,抗MOG抗体陽性例では,視神経炎において良好な視力予後,視野障害,易再発性といった特徴的な所見を有しており,抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎とは別の疾患カテゴリーに分類される傾向にある.

  • 上田 香織
    2019 年 36 巻 2 号 p. 162-168
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル 認証あり

     Leber遺伝性視神経症(Leber hereditary optic neuropathy: LHON)は母系遺伝する視神経症とし て知られているが,本疾患の詳細な病態については未だ不明な点が多い.患者からはミトコンドリア遺伝子の点変異が検出されるが,遺伝子変異を有するだけでは視機能に異常は認めないため,何らかの外的要因が加わることで発症すると考えられている.この外的要因について,臨床研究では喫煙やアルコールの過剰摂取などが発症と関連すると報告されているが,このような因子に暴露された際のミトコンドリアの反応については十分には説明されていない.発症のメカニズムを明らかにするために現在,患者iPS細胞を樹立して三次元網膜組織を分化誘導し,実験をすすめている.詳細な病態を明らかにすることによって,有効な治療法もしくは発症予防法を開発することができると考えている.

  • 松下 賢治
    2019 年 36 巻 2 号 p. 169-177
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル 認証あり

     自閉症スペクトラム障害(Autism spectrum disorder: ASD)は社会的コミュニケーションの持続的障害によって社会不適応を起こす神経発達障害疾患で,近年増加している.これまで中枢神経の機能的障害が主な原因されてきたが,ASD患者の中には感覚刺激に対する特異性によって慢性ストレスを生じ,精神症状をも起こしうることがあり,DSM-5では「感覚刺激過敏性・鈍感性および,環境への感覚的異常な興味」の項目が診断基準に追加された.このことから,近年ASDの「視覚特性」が注目されてきている.実際にASD患者の一部には潜在的で特異な視覚症状が存在し,社会適応困難の原因となっている可能性があるが,これまでの一般眼科検査では正常とされてきた.今後,ASDと関連する視覚特性を明確に理解し対応するには,眼科医の参画は重要である.本稿では本疾患における眼科医の果たすべき役割の重要性について概説する.

症例報告
  • 福田 美穂, 三村 治, 山本 裕香, 村田 敏規
    2019 年 36 巻 2 号 p. 178-183
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/07/06
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     外傷性の外眼筋完全断裂を伴う麻痺性斜視では,通常損傷筋の整復のみでは治療効果が期待できず,拮抗筋の後転や眼筋移動術が必要である.今回,熊による外傷により内直筋の完全断裂を来したが,筋縫合術で最終的に内直筋の機能回復を認め,理論上は損傷筋の縫合のみで良好な眼位を得ることができた症例を報告する.症例は58歳女性.熊に襲われ左顔面を受傷し,信州大学眼科を受診.内直筋断裂が疑われて兵庫医科大学病院眼科へ紹介受診となった.左眼矯正視力は1.2と良好,前眼部は左眼に球結膜裂創と瞼裂から脱出した筋様組織を認めたが,眼底に異常所見はなかった.左眼の外斜視と内転制限を認め,頭部MRIにて内直筋腱とテノン嚢が混然となって描出され,内直筋完全断裂と診断した.受傷5日後に内直筋縫合術,外直筋後転術を施行し,眼位はほぼ正位となったが,術後3か月の経過で徐々に内斜視化し,最終的には外直筋を元の付着部へ戻し複視消失に至った.結果的には損傷筋の縫合のみで良好な眼位を得る事ができたと考えられ,初回筋縫合術後4か月程度は損傷筋の機能回復を待ち,眼位が安定したうえで追加手術を行うことが望ましいと考えた.

  • 山上 明子, 若倉 雅登, 井上 賢治, 石川 裕人
    2019 年 36 巻 2 号 p. 184-190
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/07/06
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     Mesalazineによる薬剤性視神経症の一例を報告する.症例は56歳女性.主訴は両眼の視力低下.視神経乳頭は両眼とも軽度の発赤あり,視神経乳頭周囲の血管の拡張と上下耳側の視神経乳頭線維層の浮腫状混濁あり,蛍光眼底造影検査では視神経乳頭からの蛍光漏出はなく,微細血管の拡張がみられた.造影MRIで視神経炎の所見はなく,臨床所見はLeber病と一致していたが,ミトコンドリア遺伝子異常は検出されなかった.治療として副腎ステロイド大量点滴施行するも視力および視野は悪化した.視力低下をきたした1か月前から活動性の潰瘍性大腸炎に対してMesalazineを内服していたため,薬剤性視神経症を疑い視力低下発症8か月後より同薬の投与中止したところ徐々に視機能の回復がみられた.本症例はMesalazineによる薬剤性視神経症と考えられ,その経過はミトコンドリア代謝不全をきたすLeber病と臨床所見が類似しており,後天性のmitochondrial optic neuropathyと解釈できるかもしれない.

  • 後藤 克聡, 三木 淳司, 荒木 俊介, 後藤 良美, 水川 憲一, 桐生 純一, 宇野 昌明
    2019 年 36 巻 2 号 p. 191-198
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル 認証あり

     頭蓋咽頭腫術後の視野予測に光干渉断層計(OCT)が有用であった小児の1例を経験したので報告する.症例は3歳の男児で,発育や発達異常の既往歴はなかった.現病歴は2日前から視線が合わず,活動性が低下したことを主訴に近医脳外科を受診した.頭部画像検査で腫瘍性病変がみられたため,精査・加療目的で当院紹介受診となった.当科初診時所見は,視力は右眼:光覚弁(+),左眼:光覚弁(±),眼前の視標に対する追視はなかった.前眼部・中間透光体に明らかな異常はなかったが,閉瞼が強く眼底評価はできなかった.頭部MRIでトルコ鞍内から鞍上部にかけての嚢胞性病変による視交叉の圧排がみられ,頭蓋咽頭腫と診断された.両側前頭開頭術および開頭腫瘍摘出術が施行され,視交叉圧排は解除された.定期的に視野検査を試みるも注意や多動,集中力の問題から正確な検査が困難で,その後,高次脳機能障害と診断された.術後2年におけるOCTの網膜内層解析では両耳側半盲を示唆する両鼻側領域の菲薄化がみられたが,視野検査で正確な両耳側半盲を検出できたのは術後5年であった.視野検査の実施が困難な高次脳機能障害を伴う小児において,OCTによる網膜内層解析は視交叉部障害に伴う両耳側半盲の予測に有用と考えられる.

特別寄稿
  • 中田 和人
    2019 年 36 巻 2 号 p. 199-206
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/07/06
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     ミトコンドリアゲノム(mtDNA)に生じた特定の突然変異の病原性は,その変異型mtDNA分子種が組織や細胞に優位に蓄積した時にのみ,ミトコンドリア呼吸機能異常として誘導されることが知られている.近年,mtDNAに生じた病原性の欠失突然変異や点突然変異がミトコンドリア病,糖尿病,神経変性疾患,不妊症,がんなどの多様な病態群の原因だけでなく,老化にも寄与する可能性が示唆され,広く注目を集めている.このような多様なmtDNA関連疾患の病態発症機構を理解し,効果的な治療法を探索するためには,変異型mtDNA分子種を導入したモデル動物の作出と活用が最も有効な研究戦略となる.しかし,mtDNAは外膜と内膜に閉ざされたミトコンドリア内(マトリクス)に複数コピー存在するため,mtDNAにコードされた遺伝子の機能喪失や減弱は技術的に極めて困難である.このような状況の中,著者らは変異型mtDNA分子種を細胞質移植法によってマウス初期胚やマウスES細胞に導入することで,変異型mtDNA分子種を含有するモデルマウス群(ミトマウス)の作製に成功している.本稿では,変異型mtDNA分子種の病原性発揮機構と作出したミトマウスの表現型について解説したい.

原典で読む神経眼科シリーズ
印象記
編集者への手紙
Original Articles
  • Toshiki Watanabe, Kazuteru Kigasawa, Yoshimasa Ando, Hiroshi Keino, Ta ...
    2019 年 36 巻 2 号 p. 243-250
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/07/06
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     Patients with tumefactive multiple sclerosis(TMS)manifest various neurological symptoms. However, visual disturbance is uncommon in comparison to multiple sclerosis(MS). We report a case of TMS with visual loss associated with unilateral optic neuritis and a homonymous visual field defect associated with a tumefactive demyelinating lesion(TDL)in the temporal lobe, without other neurological signs. A-65-year-old man presented visual loss in the left eye 4 weeks after gastric cancer surgery. Visual field testing showed right inferior homonymous quadrantanopia with severe visual field loss in the left eye. MRI revealed left optic neuritis and a 35-mm solitary lesion with open-ring enhancement in the left temporal lobe. Perfusion-weighted imaging(PWI)revealed decreased vascularity in the TDL. Magnetic resonance spectroscopy(MRS)showed demyelinating disease. TMS was suspected rather than a neoplasm based on the MRI, PWI, MRS findings; the left optic neuritis was considered to be associated with the same disease. After corticosteroid therapy, the TDL significantly decreased in size and his visual function showed a partial improvement. Optical coherence tomography showed ganglion cell-inner plexiform layer thinning corresponding to both the left optic neuritis and TDL, which was considered to represent trans-synaptic retrograde degeneration. TMS patients can initially present simultaneous visual loss associated with optic neuritis and homonymous visual field defects associated with a TDL, without any other neurological signs. Conventional MRI and advanced MRI such as PWI and MRS may helpful for the diagnosis. Clinicians should consider the possibility of TMS when optic neuritis occurs with a homonymous visual field defect.

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