神経眼科
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37 巻, 2 号
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特集
  • 橋本 雅人
    2020 年 37 巻 2 号 p. 119
    発行日: 2020/06/25
    公開日: 2020/07/08
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  • 大里 俊明, 中村 博彦
    2020 年 37 巻 2 号 p. 120-128
    発行日: 2020/06/25
    公開日: 2020/07/08
    ジャーナル 認証あり

     脳血管障害は脳梗塞・脳出血・くも膜下出血に分類され,死因の上位を占めることから死亡率が高く,一旦罹患するとその予後は不良であることも多い.1960年代は脳出血が80%を占めていたが,近年動脈硬化や高齢者の心房細動からの塞栓症など脳梗塞が70%を占めるようになった.

     今回本稿から脳血管障害の内科治療・外科治療,ならびに脳卒中治療の社会医療情勢を解説する.特に近年,血管内治療による超急性期血栓回収療法の治療成績が向上しており,手技を含めて紹介する.

  • 城倉 健
    2020 年 37 巻 2 号 p. 129-139
    発行日: 2020/06/25
    公開日: 2020/07/08
    ジャーナル 認証あり

     眼球運動障害を基に,橋病変の詳細な機能的障害範囲を知ることは,神経眼科学の醍醐味のひとつである.さらに,いまだ不明な点が残されている橋病変による眼球運動障害の研究は,今日の神経眼科学の重要な研究テーマでもある.例えば,橋病変により内側縦束(MLF)が障害されると,患側眼の内転障害(INO)と共にしばしば健側眼の外斜視を来す(橋性外斜視).近年この健側眼の外斜視が,併存する患側傍正中橋網様体(PPRF)障害により出現することが判明した.もしPPRF障害が全くなければ,INOの外斜視は患側眼に出現する(WEMINO).一方橋病変でも,MLF障害を伴わず,PPRFが単独で障害された場合には,患側眼の外転制限による内斜視を呈することもある.この内斜視の機序は,患側への注視麻痺が外転眼(患側眼)でより顕著に出現するためと考えられている.また,橋病変により内側毛帯が障害されると(健側半身の感覚障害),近接するdorsolateral pontine nucleus(DLPN)にも影響が及ぶために患側向き追従性眼球運動が選択的に障害される.しかしながら,同じ橋病変であってもPPRF近傍の障害の場合には(患側への注視麻痺),DLPNから対側小脳への連絡線維が交差後に障害されるため,追従性眼球運動は逆に健側向きが選択的に障害される.

  • 花井 香織
    2020 年 37 巻 2 号 p. 140-146
    発行日: 2020/06/25
    公開日: 2020/07/08
    ジャーナル 認証あり

     Terson症候群(Terson’s syndrome:TS)は,くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)に代表される非外傷性の頭蓋内出血に伴って眼内出血を生じる病態である.1900年にTersonがSAH後に生じた硝子体出血(vitreous hemorrhage:VH)の症例を報告し,以後広く知られるようになった.これまでにTSの臨床像については多数の報告があるが,その大部分は後ろ向き研究であり,結果のばらつきが非常に大きい.これは救急搬送されるSAH患者をすべて把握し,眼科的検査を行うことの困難さが要因に挙げられる.当院は脳神経外科専門病院であり,その特性を生かしたSAH患者における調査結果から,TSの疫学,TSの手術成績,術中所見から見たTSのVHの特徴について述べ,最後にTSの発症機序についても解説していく.

原著
  • 丹沢 慶一, 岡 真由美, 雨島 歩美, 島田 果歩, 西川 真由, 横山 夕華
    2020 年 37 巻 2 号 p. 147-153
    発行日: 2020/06/25
    公開日: 2020/07/08
    ジャーナル 認証あり

    目的:不調和現象を評価指標に加えた瞳孔視野測定の開発の基礎的研究として,健常成人を対象に瞳孔視野測定における調和現象を検討した.

    方法:対象は平均年齢20.6±0.5歳の健常成人21名21眼(いずれも右眼)とした.光刺激の出力および瞳孔径の経時的計測には川崎医療福祉大学で試作した瞳孔視野計を用いた.光刺激は強度(刺激面積×刺激輝度)を5段階として,同強度で面積(直径2°から16°)と輝度(1cd/m2から320 cd/m2)の異なる1対を用いた.刺激呈示位置は視野中心偏心度0°および45°,135°,225°,315°経線方向の偏心度15°とした.対光反射の大きさの指標には縮瞳率を用いた.

    結果:各刺激呈示位置において,縮瞳率は強度の対数と直線回帰を示し(R2>0.9),また強度が同じであれば,偏心度0°で偏心度15°よりも高かった.加えて,各光刺激呈示部位において,同強度の各対間の縮瞳率に有意差はなかった(p>0.05).

    結論:偏心度15°以内の中心視野では,同強度の刺激によって瞳孔視野測定における調和現象が認められた.

  • 戸塚 和子, 後関 利明, 石川 均, 半田 知也, 緒方 智恵子, 庄司 信行
    2020 年 37 巻 2 号 p. 154-159
    発行日: 2020/06/25
    公開日: 2020/07/08
    ジャーナル 認証あり

    目的:健常成人と上斜筋麻痺患者を対象にORTeと大型弱視鏡で回旋融像域を測定し群別,機器別に比較検討した.

    対象と方法:コントロール群17名(28.9±6.3歳),上斜筋麻痺群17名(46.1±23.9歳),ORTe及び大型弱視鏡にて正面,上方15°,下方15°の回旋融像域を測定した.

    結果:コントロール群ではORTe 9.6°〜10.2°,大型弱視鏡13.6°〜14.4°,上斜筋麻痺群ではORTe 12.0°〜13.5°,大型弱視鏡16.5°〜18.4°であった.コントロール群ではORTeの方が全方向で有意に小さく,上斜筋麻痺群ではORTeの方が正面と上方で有意に小さかった.機器別にコントロール群と上斜筋麻痺群を比較した結果では,両機器ともに両群間に有意差はなかった.

    結論:ORTeは大型弱視鏡と同様に回旋融像域が評価可能であった.回旋融像域が小さい原因としては,ORTeと大型弱視鏡の両眼分離方法の違いがあるためと推測した.

症例報告
  • 原田 優子, 後関 利明, 金田 和豊, 石川 均, 中崎 秀二
    2020 年 37 巻 2 号 p. 160-164
    発行日: 2020/06/25
    公開日: 2020/07/08
    ジャーナル 認証あり

     眼球・眼窩面積比を測定することで眼球容積と眼窩容積の不一致を確認することができた強度近視を伴わない固定内斜視に対し,片眼の上外直筋結合術が有用であった一例を経験したので報告する.

     症例は58歳,女性.20歳代に内斜視を発症し年々悪化を認めた.視力は右(1.2 ×-3.75D),左(0.6 ×-3.75D=C-1.00D Ax170°).眼位は遠見90 prism diopters(PD)内斜視20PD左下斜視,近見100PD内斜視25PD左下斜視であった.眼球運動は右眼正常,左眼内転・内下転以外は全方向で眼球運動制限を認めた.眼窩MRIにて左眼の外直筋の下方偏位,上直筋の鼻側偏位,外直筋-上直筋バンドの菲薄・破綻,筋円錐から脱臼する眼球を認めた.正常眼軸長であったが眼窩長は平均より短く,眼球・眼窩面積比も両眼とも平均より小さかった.左眼の上外直筋結合術と内直筋後転術を施行し,術後眼位は遠見10PD内斜視,近見6PD内斜位と改善した.

     本症例は強度近視を伴わず正常眼軸長だが,眼球容積と眼窩容積の不一致により固定内斜視を発症した可能性が示唆された.眼球・眼窩面積比の確認は強度近視を伴わない固定内斜視の診断の1つの指針として有用であり,治療法としても上外直筋結合術は有用であった.

  • 春石 和子, 三木 淳司, 荒木 俊介, 後藤 克聡, 赤池 洋人, 松田 純子, 尾内 一信, 桐生 純一
    2020 年 37 巻 2 号 p. 165-170
    発行日: 2020/06/25
    公開日: 2020/07/08
    ジャーナル 認証あり

     視覚障害を契機に副腎白質ジストロフィー(adrenoleukodystrophy:ALD)と診断された症例を経験したので報告する.症例は発達障害と進行性の知的障害のある10歳,男児.3週間前からの視力低下,歩行障害を主訴に近医より当科紹介受診となった.視力は右眼0.08,左眼0.04,眼位は両眼とも外転位であった.頭部MRI検査のT2強調およびFLAIR画像において深部白質に左右対称性の高信号域,血中極長鎖脂肪酸の増加,ABCD1遺伝子に変異がみられたことから,小児大脳型ALDと診断した.診断から4か月後に臍帯血移植を行い移植は成功したが,13歳で死亡した.発達障害の既往により初期の臨床症状が見過ごされたため,診断・治療まで時間を要した症例であった.視力障害に歩行障害,進行性の知的障害を合併した男児を診察した際はALDを念頭に置き,早期にMRIを行い早期診断・治療に繋げることが重要である.

  • 田辺 美乃梨, 大久保 真司, 宇田川 さち子, 竹本 大輔, 杉山 和久
    2020 年 37 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 2020/06/25
    公開日: 2020/07/08
    ジャーナル 認証あり

     36歳,女性.瞳孔がしずく様の形になると近医を受診し,瞳孔不同を指摘され,当科初診となった.初診時の瞳孔径は明所で瞳孔不同(R>L)がみられた.神経内科で右Adie症候群と診断され,0.125%ピロカルピン試験で右眼,その後経過中に左眼の過敏性獲得を確認し,両眼のAdie症候群と診断した.初診時には確認できなかったが,患者自身が撮影した写真から右眼と左眼発症初期にtadpole-shaped瞳孔を確認した.患者自身がスマートフォンで撮影した瞳孔の写真が症状確認の手法として有用であった.本症例の両眼の経過から,tadpole-shaped瞳孔は,Adie症候群において発症初期に瞳孔括約筋が完全に麻痺するまでの過程で生じた可能性が示唆された.

臨床と研究の接点
  • 大黒 浩, 日景 史人
    2020 年 37 巻 2 号 p. 176-180
    発行日: 2020/06/25
    公開日: 2020/07/08
    ジャーナル 認証あり

     癌関連網膜症は癌患者の一部に網膜特異抗体を獲得し,網膜色素変性に類似の網膜症を引き起こすものである.我々の研究グループは本症の分子病態を詳細に検討してきた結果特異カルシウム結合タンパク質リカバリンに対する自己抗体が中心的な役割をすることを見出した.

  • 山本 元久, 田中 廣壽
    2020 年 37 巻 2 号 p. 181-187
    発行日: 2020/06/25
    公開日: 2020/07/08
    ジャーナル 認証あり

     IgG4関連疾患は,多くの臓器に不可逆的な機能障害をもたらし得る慢性炎症性疾患である.眼領域では,涙腺,外眼筋,視神経(眼窩)などが罹患する.診断は,IgG4関連包括診断基準,IgG4関連ミクリッツ病診断基準,IgG4関連眼疾患診断基準のいずれを使用しても良い.しかし頭頸部領域の病変の場合には,悪性リンパ腫を除外することが重要であり,免疫グロブリン重鎖遺伝子再構成がないことを確認する必要がある.また同時に他臓器病変と悪性腫瘍の検索も行うべきである.IgG4関連疾患の病態に関しては,まだ不明な点が多い.しかしTh2型炎症が鍵となり,Tfh細胞と作用して胚中心の過形成,IgG4陽性形質細胞への分化が促される.また同時にTh2細胞から産生されるIL-13を介したペリオスチン,制御性T細胞やCD4陽性細胞傷害性リンパ球(CD4+CTL)などから産生されるTGFβ により,線維化が誘導されることが示唆されている.将来的にはオミックス解析により,現在のステロイド治療から,疾患制御と再燃防止を目指した,分子標的治療にシフトしていくことが期待される.

入門シリーズ116
特別寄稿
原典で読む神経眼科シリーズ
印象記
神経眼科知識評価プログラム(NOKAP)テスト
Asian Section
  • Kazuko Uchida, Motohiro Kiyosawa, Masato Wakakura
    2020 年 37 巻 2 号 p. 237-243
    発行日: 2020/06/25
    公開日: 2020/07/08
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    Purpose: To provide a novel non-invasive treatment for blepharospasm, we developed an ultra-thin adhesive plaster that can improve narrowing of lid fissure that causes blepharoptosis by acting as a type of geste antagoniste/sensory trick known as a forcible trick. The tape was also developed to cover skin irregularities, but here we only report its outcome for quality of life in blepharospasm patients.

    Patients and methods: Subjects consisted of 131 patients being treated for blepharospasm. Tape was attached to the forehead, upper parts of the brows, and other facial areas. Patient satisfaction with appearance was surveyed before, immediately after, and 3 weeks after the treatment using a visual analog scale as well as before and 3 weeks after the treatment using the WHO QOL-26.

    Results: Survey results 3 weeks post-treatment were obtained from 69 out of 131 subjects. The mean visual analog scale score decreased from 78.6 at baseline to 22.3 immediately after treatment and to 48.8 3 weeks post-treatment. There was a significant increase in the mean WHO QOL-26 scores of the overall and physical domains. In addition, photophobia and patient satisfaction with their physical appearance improved.

    Conclusion: The ultra-thin adhesive tape prolongs the forcible trick effect to serve as a non-invasive treatment option for blepharospasm. The tape can be applied directly by the patient. It can also be combined with invasive treatments such as botulinum toxin type A injections and oral medications. We proposed the tape as a new symptomatic treatment for blepharospasm.

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