症例は45歳男性で,昭47年軽度心不全症状にて受診し,特発性心筋症と診断された.昭52年12月呼吸困難にて来院.入院時血圧106/70mmHg,脈拍80/分,不整,黄疸(+),チアノーゼ(+),静脈圧230mmH
2O,心拡大(+)肺野湿性ラ音(+),肝三横指触知,下肢浮腫(+)で両室不心全症状と肝機能不全状態を呈していた.検査成績は心電図で心房細動心室性期外収縮および胸部誘導にてQS型T,Bil 2.4mg/d
l,GOT8575単位,GTP 1985単位,LDH19100単位,A1-P 17単位,BUN 16mg/d
l,Cr 1.7mg/d
l.入院後,心不全に対する治療で静脈圧の正常化,下肢の浮腫の消失,呼吸困難の軽快をみたが,T.Bilが徐々に37mgまで上昇し,腹水の出現,高度の精神障害などの急性肝不全を呈し,約40日の経過で死亡剖検にて,特発性心筋症(線維症型)と肝の中心壊死を伴った循環不全の所見があった.急性肝不全の原因としてショックを伴わない心不全の症例は過去外国における2例の報告しかみあたらない.
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