小児の心室中隔欠損症(VSD)におけるベクトル心電図(VCG)P環と血行動態諸量とを対比し,非観血的検査法であるP環解析による血行動態推定の臨床的有用性について検討した.
対象は合併奇形のないVSDの患児43名で,VCGのP環諸量11項目とP環の形態を前面図,側面図で垂直位,水平面図のmax.P-V<0.1mVのものをA型,側面図,水平面図でmax.P-Vの方向が後方にあるものをB型,側面図,水平面図で前後に幅広くmax.P-Vの方向が決めにくいものをC型,側面図,水平面図でほとんどが前方に位置し,前面図で左軸のものをD型の4型に分類して,右心カテーテル成績と比較した.
P環諸量11項目のうち水平面最大Pベクトルの大きさが,最も血行動態諸量と強い相関を示し,肺動脈平均圧とr=0.602,右室収縮期圧とr=0.556,左右短絡率とr=0.414,Qp/Qsとr=0.306,Rp/Rsとr=0.319といずれも有意な相関を認めた.また形態的分析では,A型の血行動態諸量は他の3型に比し有意に小さく,B型は肺動脈収縮期圧,左右短絡率,Qp/QsがA型に比し有意に大きく,C型は肺動脈平均圧,肺動脈収縮期圧,Rp/RsがA型に比し有意に大きく,D型はRp/Rsを除くすベての血行動態諸量がA型に比し有意に大きかった.以上より,P環の定量的,形態的分析は,小児VSDの病態把握に有用であると考えられる.
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