心臓
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15 巻, 7 号
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  • 大杉 順一, 上床 正, 渡部 真司, 恒川 純, 平山 治雄, 鷹津 文麿, 石川 宏靖, 長屋 昭夫
    1983 年 15 巻 7 号 p. 733-739
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患にみられる左室収縮異常の診断に通常用いられるRAO,LAO左室造影には,造影像の輪郭として認識できない死角が存在する.この死角を造影下に把握するため左室短軸造影法を施行した.
    症例ごとに適切なLAO-caudal Projectionを設定することにより,左室短軸造影像を得た.RAO,LAO左室造影において収縮異常の存在する症例を対象とし,その収縮異常の存在するSegmentと短軸造影像との収縮異常部位を対比し,短軸造影像との壁区分を決定した.ほぼ正円形を呈する短軸造影像円周を,前乳頭筋を基準として4等分すると,そこから時計方向に,後壁・下壁・心室中隔・前壁に各々対応すると考えられた.
  • ウサギ摘出心における実験的研究
    戸田 仁, 渡部 良夫
    1983 年 15 巻 7 号 p. 740-750
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ウサギ摘出灌流心において高頻度または単発早期の電気刺激により心室細動を誘発し,その際の心室興奮様式を心内膜面および心外膜面に置いた双極または結合電極で記録した.その結果,(1)興奮伝播過程の乱れが広範囲に起こり,伝導遅延が著しいほど細動を生じやすいこと,(2)興奮伝播過程の乱れは必ずしも刺激部位近辺で発生するとは限らないこと,(3)刺激部位間の比較では左室心内膜刺激が細動を起こしやすい傾向があること,(4)フォルマリンにより心内膜面の傷害を行うと心室細動誘発が困難となるが,作業心筋のみでも細動を生じ得ることが示唆されること,(5)反復興奮の持続に心内膜側の興奮が重要な場合があること,(6)細動中に灌流液を冷却すると,ほぼ規則正しい調律に戻るが,再加温により典型的細動に復帰する例があること等が示された.これらは非虚血心における心室細動の発生機転に関し,新しい知見を加えたものと考える.
  • 新しい左冠動脈主幹部灌流法について
    丸山 幸夫, 芦川 紘一, 礒山 正玄, 佐藤 昇一, 石出 信正, 滝島 任
    1983 年 15 巻 7 号 p. 751-758
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    著者らが開発してきた前負荷,後負荷,心拍数,冠循環を独立可変とする摘出犬心標本は,冠灌流圧条件を大動脈圧との関連で自動的に変えることは困難であったが,今回冠循環系を改良,発展させ新しい冠灌流摘出心標本を作製した.その方法は,後負荷モデル入口部より冠灌流のためのカニューレを挿入し左冠動脈口に固定,これより供血犬の動脈血を流入させた.この灌流系では,流量(F)に依存したわずかな圧降下(ΔP)はみられたが(ΔP=0.05F-1.31,r=0.99),使用範囲内では冠灌流圧を精度よく測定可能であった.また,カニューレ通過による後負荷インピーダンス絶対値および位相の周波数特性は,ほとんど影響されず,得られる大動脈圧・流量,ならびに左室圧波形は生犬のそれと近似していた.冠灌流条件はサーボシステムを組み入れ,平均大動脈圧との関連で種々の灌流圧条件が得られており,それぞれにおける心血行動態の把握が可能で有用なモデルと思われる.
  • 清水 賢巳, 元田 憲, 多賀 邦章, 神川 繁, 炭谷 哲二, 布田 伸一, 酒井 泰征, 竹田 亮祐
    1983 年 15 巻 7 号 p. 759-766
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    重症筋無力症の心電図所見を検討した.対象は8~65歳の男女16例で,男女比は5:3,罹病期間は1ヵ月~17年,平均5.6年であった.病型はOsserman分類にて型3例,IIA型8例,IIB型3例,III型1例,IV型1I例であった.胸腺腫は4例(良性2例,悪性2例)に認めた.抗コリンエステラーゼ剤投与歴は0~7年,2例に60Co照射歴があった.心電図所見では,(1)正常例は16例中4例(25%)であり,異常所見として伝導障害1例(6%),ST・T変化8例(50%),不整脈6例(38%)を認め,高電位差,QRS群のterminal notchingは5例(31%)と高率に認められた.(2)心電図異常は臨床所見のうち,年齢,罹病期間,抗コリンエステラーゼ剤服用歴とは関係がなく,重症例,呼吸機能低下例で多彩であった.(3)経過中に巨大陰性T波の出現を認めた1例を経験した.本例の陰性T波の成因として自律神経系の関与が推定された.
  • Radionuclide Angiographyによる非侵襲的定量解析
    今井 進, 高橋 雅治, 河合 恭広, 金澤 紀雄, 神田 洋, 石澤 慶春, 鈴木 忠, 村田 和彦, 井上 登美夫, 石原 十三夫
    1983 年 15 巻 7 号 p. 767-772
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    貫壁性心筋梗塞における梗塞の部位ならびに広さの左心機能に及ぼす影響を検討するため,前壁梗塞16例・下壁梗塞11例および対照10例に201Tl心筋Scintigraphyならびに99mTc-HSA Radionuclide Angiography(平衡法)を施行した.前壁梗塞群は下壁梗塞群に比し左室駆出率(LVEF)の低下が著明であったが,梗塞量については両群間に差はなく,梗塞量が同程度の場合,前壁梗塞群でLVEFの低下が著明であった.また前壁梗塞群ではLVEFは梗塞量と負の相関を示したが,下壁梗塞群では相関を示さなかった.以上より,心筋梗塞での左心機能の障害には梗塞巣の広さのほか,梗塞部位が密接に関与することが示唆される.
  • 進行性筋ジストロフィー症における検討
    矢澤 良光, 大滝 英二, 岡部 正明, 永井 恒雄, 林 千治, 細川 修, 渡辺 賢一, 荒井 裕, 柴田 昭, 宮谷 信行, 高澤 直 ...
    1983 年 15 巻 7 号 p. 773-779
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    進行性筋ジストロフィー症の58名を対象にして,胸椎と胸郭の変形が心臓に与える直接的な影響について,胸部X線像および心エコー図を用いて検討した.胸椎の前方へわ変形により心エコー図で計測された左房の前後径は有意に圧迫されて短縮し(p<0.001),左室の前後径はやや圧迫されるも有意差を示さなかった.胸椎の側彎の程度と左房,左室の前後径は相関を認めなかった.胸郭の前後方向への偏平度と左房径および左室径との関係について検討したが両者とも有意な相関を示した(各々r=0.62,p<0.001,r=0.37,p<0.001).
    以上の結果から胸椎の前彎化とそれに伴う胸郭の偏平化により左房・左室が後方から圧迫を受けていることが明らかであり,そのために二次的に血行動態的な変化を生じ,またその心の形態的な変化が僧帽弁の逸脱症の成因の1つとして関与しているものと推測された.
  • 重信 雅春, 妹尾 嘉昌, 尾崎 謙一, 米花 正晴, 永瀬 久嗣, 紀 幸一, 寺本 滋
    1983 年 15 巻 7 号 p. 780-788
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    63例の純型僧帽弁狭窄症の患者を,直視下交連切開術(OMC)を施行した症例と,Bjork-Shiley弁による弁置換術(MVR)を施行した症例に大別し,臨床症状ならびに心機能の推移について分析した.さらに,両者を比較検討することにより,心機能面からみた術式の選択に関して考察を加えた.
    MVR群の方が術前に重症例が多いにもかかわらず,術後には,各指標についてOMC群との間に差が少なくなっていた.従って,対症療法と考えられるOMCを,弁下部の狭窄が比較的高度に及んでいる症例にまで施行するよりも,患者の状態さえ許せば,時期を失することなく積極的にMVRを施行する方が,心機能面からみても得策と考えられる症例が存在した.一方,OMCは弁病変の早期に施行すれば,心機能の回復は顕薯であり,再狭窄による再手術の頻度を少なくすることが可能になると推測された.
  • 市橋 匠, 岩 喬, 三崎 拓郎, 橋爪 泰夫, 石田 一樹, 岡田 了三, 濱本 紘, 飯田 恵子
    1983 年 15 巻 7 号 p. 789-795
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    19歳の男で,種々の薬剤に抵抗する左房調律性頻拍120~180回/分が,2年間にわたり,常時存在した.心腔内電位検査により,最早期興奮部位を冠静脈洞に挿入したカテーテル電極の最先端に見出した.手術時,心表面興奮伝播図の測定,作成により,刺激発生部位が左心耳先端にあることを確認した.左心耳を基部より切除することにより,頻拍は消失し,正常の洞整脈となった.7カ月後の現在,薬剤不使用下に洞整脈を維持し,左房調律性頻拍症は根治した.今後かかる手術的療法は薬剤療法の不適当な症例に施行されてよいと考える.
  • 森本 紳一郎, 西川 俊郎, 梶田 昭, 関口 守衛, 根本 晶子, 浅井 利夫
    1983 年 15 巻 7 号 p. 796-801
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ジギタリスと利尿剤の投与にもかかわらず,8年間の経過観察中に次第に心不金が増強し,その病態について示唆に寓む肥大型心筋症の1剖検例を経験した.症例は17歳の女性で,生前には著しい右心不全症状を認めた.心胸比は,初診時0.62より死亡前0.82へと著しく増大した.剖検では心重量600g,心のう水200mlで,中等度から高度の右房室の拡張,軽度の左室の拡張および非対称性中隔肥厚を観察し,組織学的には両心室自由壁,室中隔全般に著しい錯綜配列を伴う奇妙な心筋肥大像を認めた.その他うっ血性肝硬変症と肺のうっ血および水腫を観察したものの,肺内動脈枝の中膜の肥大,肺胞壁のび漫性の線維化および心不全細胞を認めず,肺静脈の拡張は軽度であり,高度の難治性の右心不全に比較的歴史の浅い左心不全が加わったことが推察された.以上より,肥大型心筋症の慢性うっ血性心不全例では,左心不全に比し右心不全の顕著な例が存在することが判明した.
  • 宮 哲正, 山城 元敏, 森本 和大, 三枝 正裕, 道端 哲郎
    1983 年 15 巻 7 号 p. 802-807
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    56歳の女性で2回の脳塞栓の既往があり,巨大左房,心不全を反復する僧帽弁狭窄の患者に僧帽弁置換術を行ったが,体外循環の停止とともに左室後壁穿孔による大出血を起こした.体外循環を再開し,プレジェット付きマットレス縫合で止血を試みたが効なく,オートクレー・プレクロッティングを施したウーブンダクロンパブッチを用いて,血腫および心筋損傷部を広くおおうように,テフロンフェルトプレジェット付きマットレス縫合で縫着して止血することができた.術後LOSに対し10日間のIABPによる循環補助,腎不全に対し20回の血液透折を施行して辛うじて救命しえた.術後3カ月目に心カテーテル・心血管造影検査を行ったところ,左室の後下壁に収縮不全部位を残したが,冠動脈の損傷はみられなかった.術後約8カ月を経た現在,患者はNYHA II度にまで回復している.
  • 小池 一行, 永沼 万寿喜, 高野 良裕, 常本 実, 太田 喜義, 島田 宗洋, 清水 興一, 森川 征彦, 岡田 了三
    1983 年 15 巻 7 号 p. 808-812
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Fallot四徴症に,Ebstein奇形,重複三尖弁自を合併した非常にまれな症例を報告する.
    症例は,6歳の女児.Fallot四徴症として,合併心奇形は診断されないまま,心膜パッチによる右室流出路拡大再建術が施行されたが,術直後死亡した.
    剖検にて,Crista Supraventricularisの前方偏位と,膜性部から漏斗部にかかる心室中隔欠損を持つ典型的なFallbt四徴症が認められた.また,三尖弁の中隔尖,後尖は著しい下方偏位を示し,同時にTrabelula Septomarginalis上に多数の腱素で連結して,重複三尖弁口を形成していた.
    Fallot四微症に合併することの非常にまれなEbstein奇形の発生要因として,左右房室弁分離の過程で,心内膜床中央が,三尖弁稜(後のTrabecula Spetomarginalis)に錯位結合したことが示唆ざれた.
  • 遠藤 将光, 辻口 大, 斉藤 裕, 大村 健二, 岩 喬, 谷内江 昭宏
    1983 年 15 巻 7 号 p. 813-818
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    大動脈縮窄症と先天性僧帽弁閉鎖不全症の合併例はまれで,欧米の報告も含めて50例ほどしか散見されない.
    われわれは3歳9カ月男児の本症に対し,縮窄解除術および僧帽弁置換術の二期的手術を行い良好な結果を得た.
    大動脈縮窄は左鎖骨下動脈遠位部に約1cm認め,動脈管開存も合併していた.動脈管を切離・縫合閉鎖し,3×1.5cmのDacron Patchにて縮窄解除した.
    僧帽弁は前尖の腱索が過長で,弁尖は肥厚・短縮し特に後尖に著明であった.腱索短縮術を試みるも逆流は改善せず,Hancock弁(23mm)にて弁置換術を行った.
    小児期の生体弁置換には早期石灰化など問題が多いが,われわれは生体弁の血行動態的特性,抗凝固療法不要および機械弁のように弁不全が急激に悪化しないなどの点から,生体弁を選択している.
  • 兪 孝一, 土居 寿孝, 渋谷 尚郎, 広木 忠行, 荒川 規矩男, 浅尾 学, 金谷 久司
    1983 年 15 巻 7 号 p. 819-826
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心房中隔欠損症直接縫合閉鎖術後に発症した収縮性心膜炎の1症例を報告し,文献的に,その成因について考察を加えた.
    心臓手術後の一般的な合併症として,心膜切開後症候群がよく知られていて,その成因について,抗心筋抗体の関与が考えられている.そのうちのあるものでは,持続的に抗体が関与し収縮性心膜炎まで進展させるのかもしれない.
    また,文献的考察により,手術々式別における本症発症までの期間を比較すると,弁置換術や心房中隔欠損閉鎖術よりも,冠動脈バイパス手術後に,より早期に発症する傾向がみられた.
  • 本邦集計による考察
    上田 昭, 相良 淳史, 田上 幹樹, 飯島 京子, 久保田 昌良, 伊藤 良雄, 田中 道雄, 畠山 茂
    1983 年 15 巻 7 号 p. 827-835
    発行日: 1983/07/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心膜原発中皮腫の1例を経験し本邦集計による考察を行った.症例は51歳男性,著明な心陰影拡大,心電図は全胸部誘導でrS型,2-D心エコー図で大量の心膜腔液中に右室前壁に密着した奇異な腫瘍エコーを認めた.治療に抗して心タンポナーデは増悪し,心膜開窓術を施行したが術後3日目で死亡した.剖検で心外膜側に小児頭大の腫瘍,それと連続して右室流出路にも胡桃大の腫瘍があり,組織型は中皮腫であった.
    本邦例はわれわれの調べでは1981年までに35例あり,平均年齢47.4歳,男女比は4:1,全経過は平均12.3カ月であった.呼吸器症状,浮腫,前胸部不快感が主要症候で,心陰影拡大,ST-T変化を呈することが多かった.
    心膜腔液中LDHや細胞診,血管造影,2-D心エコー図および心臓CT検査で,いわゆる心臓腫瘍の診断は可能と思われるが,治療は現状では悲観的で今後の課題である.
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