心臓
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15 巻, 8 号
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  • 中沢 誠, 金谷 真弓, 今井 康晴, 高梨 吉則, 奥田 浩史, 高尾 篤良
    1983 年 15 巻 8 号 p. 841-850
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    完全大血管転換症の術前術後延べ35例を対象に左右心室容積特性を調べた.右室が系統動脈側心室の場合,術前後ともポンプ機能は正常以下となる.同一症例で術前後を比較すると術後は術前より低下している.分画駆出率でみると前半の駆出が正常より少ない傾向がある.右室の高さ,幅,前後の厚さの収縮による変化をみると,術後に前後の厚さの変化が有意に制限されている結果を得た.これは術後の癒着が原因となっている可能性を示している.左室が系統動脈側心室の場合,ポンプ機能は正常または軽度低下にとどまることが示された.左室が肺動脈側心室となる場合その圧が低いと駆出率は高く,駆出期前半の駆出が多い傾向があった.このことが肺血管床に及ぼす影響に注目する必要がある.
  • 田中 博, 谷島 一嘉, 青木 隆夫, 伊原 正, 平柳 要, 古川 俊之
    1983 年 15 巻 8 号 p. 851-855
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    体表面電位図から心電図逆問題によって心筋障害の部位と大きさを推定する手法の精度を検討するため,体外環流式凍結法による限局性の心筋変性作製法を考案し,実験動物を用いて心外膜,体表面上の電位と凍結処置による変化を観察した.また心筋変性の限局性を組織標本によって確認した.
    本実験法の特徴は,(1)凍結手技により限局性の心筋変性が任意の位置と大きさで作製できる,(2)体外環流法により,閉胸した状態で凍結開始直後から電位計測ができる,(3)心電図波形を観察しながら,冷媒注入量・注入速度を変えて凍結変性の程度を調節できる,の3点にまとめられる.
    心外膜電位は,凍結処置を行った部位を中心とする誘導で著明なST上昇を認めたが,電位図の変化は心外膜上で明瞭な限局性変化を記録したのに対し,体表面上の変化の境界はなだらかで,胸腔内伝播過程による平滑化の影響が明らかにされた.
  • 虚血性心疾患における検討
    二神 康夫, 浜田 正行, 市川 毅彦, 小西 得司, 中野 赳, 竹沢 英郎, 竹田 寛, 前田 寿登, 中川 毅
    1983 年 15 巻 8 号 p. 856-864
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    201Tl心筋シンチグラフィーによる虚血性心疾患の診断精度を向上させるため, 運動負荷201Tl心筋シンチグラフィーを施行し,SPECT法と従来のPlanar法を比較した. 方法は, 東芝製の回転対向型ガンマカメラを装着したSPECT装置を用い,自転車エルゴメーターで多段階負荷を行い, peak skress時201Tl 2.5 mCi静注後stress imageデータ収集,3時間後にredistribution imageデータを収集し(各6分),体軸横断断層像,および矢状,冠状断層像を再構成して(8分),各断層像から虚血性心疾患を診断した.虚血性心疾患の検出率はSPECT法98%, Planar法86%であった. 心筋梗塞群における一過性虚血の検出はSPECT法70%, Planar法34%,ECG40%(ST低下)であり,Segmental analysisにおいては,LAD,LCX,RCAでそれぞれSensitivityは,SPECT法86%,68%,83%,Planar法で61%,60%,57%と,SPECT法は,虚血性心疾患の診断精度を高め,罹患冠動脈の推定をも可能とした.
  • 術前の肺動脈の発育度が術後血行動態に及ぼす影響
    中田 誠介, 高梨 吉則, 手塚 光洋, 松尾 浩三, 黒沢 博身, 今井 康晴, 中沢 誠, 安藤 正彦, 高尾 篤良
    1983 年 15 巻 8 号 p. 865-870
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Fallot四微症心内修復術後22例の急性期血行動態を経時的に追求し,術前の肺動脈の発育が術後の血行動態に及ぼす影響を検討した.第一分枝を出す直前の左右肺動脈の断面積の和をBSAで除した値をPA indexとして肺動脈発育度の指標とした.PA indexは術後の臨床的重症度と密接に関係しPA index低値の症例ほど,重篤な心不全に陥った.術後の心拍出係数はPA indexとy=0.0048x+2.01,y=CI,x=PA index,r=0.69,p<0.01,の相関関係を示した.PA index 190以下の症例では左房圧が13mmHg以上と充分なpre loadにもかかわらず心係数は2.50L/min/m2と低値で,PA index250以上の症例では左房圧が低値でも3.00 L/min/m2以上の心係数を示した.一方,左房圧とCVPの関係をみてみると,PA index低値群ではLAP>CVPであり,PA index高値群ではLAP<CVPの傾向があった,PAindexは左心系の発育の指標としても有用で,PA index低値群では左心機能不全が術後の心不全の主病態であると考えられた.
  • 術後早期の合併症を中心として
    龍野 勝彦, 菊池 利夫, 万納寺 栄一, 三森 重和, 森 克彦, 村上 保夫, 中江 世明
    1983 年 15 巻 8 号 p. 871-878
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    15歳以下の小児18例に対し行った19回の人工弁置換術の経験から小児人工弁置換術の問題点を術後早期の合併症を中心に検討した.
    対象症例は生体弁機能不全が9例,前回手術後に弁膜症が再発あるいは続発したものが5例,今回初めて手術を受けたものが4例であった.手術は左側房室弁を含む僧帽弁置換術が12例,apico-aortic bypassを含む大動脈弁置換術が3例,それに帽僧弁と三尖弁の両弁置換術,三尖弁置換術,Rastelli手術後のconduit内生体弁の再置換術がそれぞれ1例ずつであった.
    術後早期の合併症はLOSが5例,房室ブロック4例,脳障害と創部前縦隔洞炎が各1例であった.LOSの5例は死亡し,房室ブロックの2例にpermanent pacemakerの植え込みを必要とした.これら術後合併症の主な原因は反復手術による癒着剥離の困難術前からの心筋障害,術中心筋保護法の不適切などであった.小児人工弁置換術は適応を厳密にすると同時に,使用人工弁の種類の選択を含めた長期的な治療計画の確立が重要と思われる.
  • Propranolol通常製剤との比較
    池田 正男, 中川 雅博, 梶原 長雄, 築山 久一郎, 河北 成一, 河合 忠一, 伊地知 浜夫, 河村 慧四郎, 村尾 茂雄, 熊原 雄 ...
    1983 年 15 巻 8 号 p. 879-894
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    入院加療中の本態性高血圧症患老を対象にpropranolol徐放製剤(propranolol LA)60~120mg1日1回投与群2 7 例とpropranolol通常製剤(propranolol) 60~120mg1日3回分割投与群16例について,血圧日内変動に及ぼす影響を比較検討した. その結果, 両群とも有意な降圧が認められたが, 血圧変動パターンにおいては,両群とも有意な変化は,認められなかった.また血圧の変動性については,1日の最大・最小値差(Range)およびその標準偏差(S.D)とRange,S.D.を血圧平均値で補正した計4つの要因で検討した結果,propranololLA投与群の収縮期血圧におけるRange,S.D.においてのみ有意な変化が認められたが,血圧下降度および血圧の変動性では両群間に差はみられなかった. 副作用については,両群2例ずつみられたが,特に重篤な副作用はみられなかった.
    以上から,propranolol徐放製剤は1日1回の服用により,propranolol通常製剤1日3回服用とほぼ同等の効果が得られるものと判断された.
  • 奥 秀喬, 砂川 晶生, 中村 好秀, 則武 正三, 西岡 孝純, 城谷 均
    1983 年 15 巻 8 号 p. 895-901
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    VSD,ASD,PSおよびEbstein様奇形によるTRなどを複数で合併したCTGA3例め手術治験例を経験した.VSDは経右室的に,ASDは経右房的に閉鎖し,PSに対しては経肺動脈的に弁切開を,TRには経左房的に弁置換術を行った.術後,全例で洞調律であるが,遠隔期に,三尖弁置換例で左室高血圧を,肺動脈弁切開例の1例でPSの増強を招来した.前者の原因は,用いた人工弁によるTSのため,左房圧の上昇,肺高血圧をきたしたことが示唆され,後者では,弁下狭窄の増強に起因するものと考えられた.心機能に関しては,LVEDVおよびLVEFは全例で,正常あるいは正常化傾向が認められたが,RVEDVは拡大を,RVEFは低下を示し,TGA術後遠隔期の所見と同様であった.手術手技および遠隔成績上の問題について検討し報告した.
  • 4 例の断層心エコー図
    山田 修, 柳谷 晶仁, 仲倉 裕之, 菊地 誠哉, 田中 利明, 井上 紀雄, 渡辺 祝安, 横山 秀雄, 星野 豊, 佐々木 孝, 数井 ...
    1983 年 15 巻 8 号 p. 902-907
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞後の心室中隔穿孔,4例の診断および外科治療上,断層心エコー法が非常に有用だったので報告する.症例1は前壁中隔梗塞後の穿孔例で,apical 4 chamberviewにて筋性中隔前中部を斜めに貫く中隔穿孔が認められた.症例2は下壁梗塞後の穿孔例で,apical 4chamberviewにて筋性中隔後下部の漏斗状の中隔穿孔が検出された.症例3,4は急性期例で,いずれも下壁梗塞後の穿孔例であり,緊急に断層心エコー法を行った.症例3はsubcostal 4 chamber viewで左室上方中隔より右室心尖部に向かう漏斗状の中隔穿孔が検出され,症例4もsubcostal 4 chamber viewにより,筋性中隔後下部の中隔穿孔が検出された.本症の診断上,断層心エコー法は併存する房室弁病変や心室壁,中隔の異常運動も観察可能であるほかに,左室造影でも不明確な穿孔部位や穿孔口の形態を診断することができ,外科治療上からも有用であった.
  • 井内 和幸, 池田 孝之, 麻野井 英次, 稲坂 暢, 服部 信
    1983 年 15 巻 8 号 p. 908-914
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    進行性筋ジストロフィー症の40歳男性(症例1)に心病変を認め,両親と同胞,その子供の計13人を検索した.CPK高値は症例1(280 U),弟(935 U,36歳症例2),姉(210 U)とその息子(695 U,20歳,症例3),別の姉の息子(1,050 U,14歳,症例4),さらに別の姉の息子(2,013 U,15歳)に認めた.症例1~4以外は臨床所見は認めなかった.症例1と2に四肢,臀部,肩甲部に高度の筋萎縮があり,筋生検で筋原性変化,症例3では仮性肥大があり,症例4では筋萎縮はみられなかった.症例1,3,4で心電図RV1の増高,ベクトル心電図でQRS環の走行異常と初期ベクトルの異常な前方偏位があり,心エコー図では症例3,4は正常,1,2で左室腔の拡大,後壁の動きの低下とエコー輝度の増大があり,同部の病変の存在が示唆された.症例1の左室造影では,駆出分画40%,後心基部にakinesiaが認められた.以上より本症例は心病変の合併のまれなBecker型筋ジストロフィー症の1家系と考えられる.
  • 吉岡 信彦, 清水 明徳, 中津 高明, 湊 武, 河野 宏, 高須 伸治, 桑原 正知, 畑 隆登
    1983 年 15 巻 8 号 p. 915-920
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    45歳男性,自衛隊員.生来健康で検診で異常を指摘されたことはなかった.昭和56年12月5日ハンドボールをしていて転倒, 前胸部を強打し胸部圧迫感, 呼吸困難生ずるため昭和57年1月20日当科に入院した.心尖部中心にLevine4/6度の全収縮期雑音があり,心エコー図で左室容量負荷, 後尖の細動と逸脱, 収縮期に左房内異常エコーを認めた. 肺動脈圧は42/14(平均26) mmHgで肺高血圧を認め,左室造影でSellers3度の僧帽弁逆流を認めた.Digitalis剤,利尿剤を投与するも症状増強するため4月8日開心術を施行した.後乳頭筋の先端部に1カ所断裂を認め, Ionescu-Shiley弁29mmで僧帽弁置換術を施行した.術後の経過は良好である.組織では断裂した乳頭筋全体が壊死状であったが,その他は異常を認めなかった.本症例は原因となる心疾患が特になく,外傷後急速に発症していることより外傷によるものであると考えられた.診断には心エコー図が有用であった.
  • 斎藤 浩, 小野 俊孝, 栗林 良正
    1983 年 15 巻 8 号 p. 921-927
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は67歳女性,34歳ごろに意識喪失発作が1回あった.48歳ごろから易疲労感,動悸,めまい発作を繰り返していた.胸部X線にてCTR72%,心陰影中央に9×10cmの辺縁の石灰化した類円形陰影がみられた.心エコー図で左房内をほぼ充満するほとんど可動性のない巨大な腫蕩が左房壁に広く癒着している像が認められた.左室造影にて僧帽弁逆流を認めた.手術所見では,腫瘍は心房中隔左房側に広く癒着し可動性はほとんどなく,僧帽弁輪拡大を認めた.摘出した腫瘍は直径9cm,重量270gの粘液腫であった.
    本例は,粘液腫が比較的早期から中隔壁へ癒着し可動性がないために周辺組織を機械的に損傷することなく巨大に発育し,弁輪を拡大し僧帽弁閉鎖不全をきたしたと思われる.腫瘍の可動性がないため僧帽弁口の機械的狭窄度も弱く,僧幅弁逆流が主体となりそのため重篤な症状を伴うことなく巨大に発育し得たものと推定された.
  • 三羽 邦久, 神原 啓文, 河合 忠一
    1983 年 15 巻 8 号 p. 928-932
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男,夜間安静時または早朝ランニング時の胸痛発作を主訴とする.入院後,胸痛発作は起こらなくなっていたが,冠動脈造影時のエルゴノビン試験で,右冠動脈近位部の冠攣縮が証明され,発作時,II,III,aVFに加え,I誘導でもSTが上昇し,Mobitz II型の房室ブロックとなった.V2,aVR,aVLではST低下を認めた.このとき,左室圧は55/end25と低下し,ノルエピネフリンの少量動注により回復した.前日のエルゴノビン誘発発作時には,II,III,aVFでSTが上昇したが,IではST低下を認め,血圧の低下も少なかった.右冠動脈攣縮異型狭心症でI誘導でもST上昇の見られる例は報告されておらず,まれな症例である.右冠動脈攣縮による血流途絶に加え,左回旋枝末梢部の冠攣縮あるいは血圧の低下などにより,心尖部に近い下側壁部にも貫壁性虚血が拡大し,I誘導にST上昇をきたした可能性が考えられる.
  • 鎌田 栄一郎, 岩 喬, 三崎 拓郎, 川尻 文雄, 石田 一樹, 松原 藤継, 安井 昭二
    1983 年 15 巻 8 号 p. 933-938
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    13歳の男子で,薬剤難治性の心室性頻拍を有し,左心室後下壁起源と考えられたが,超音波検査,胸部X線,冠動脈造影,心筋スキャンでは異常所見はなく,左心室造影で心尖部のhypokinesisのみが認められた.術前の電気生理学的検査では,ブログラム刺激で頻拍の誘発と停止が可能であり,頻拍時の左心室心内膜マッピングにより,左心室後下壁中隔寄りに最早期興奮部位を有するリエントリー型心室性頻拍症と診断した.術中,想定された最早期興奮部位に心筋線維腫が発見され,心表面マッピング上も腫瘍と最早期興奮部位は一致していた.この腫瘍摘除により,頻拍発作の根治に成功した.
    心臓腫瘍に起因する心室性頻拍の根治例はこれまでも数例報告されているが,術前および術中の電気生理学的検査により,腫瘍がリエントリー型心室性頻拍の原因であることが証明され,この腫瘍摘除により頻拍が根治されたのは本例が世界で初めてと思われる.
  • 佐野 のぞみ, 柳沢 正義, 原田 三紀夫, 木村 壮介, 長谷川 嗣夫, 二ノ村 信正, 斉藤 建
    1983 年 15 巻 8 号 p. 939-944
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は咳蹴,喘鳴,呼吸困難を主訴とする1歳1カ月の男児で,新生児期より口唇チアノーゼを認め,肺炎の既往もあった.入院時,理学所見,胸部X線所見より異物も疑われたが,肺血流シンチグラム,心臓カテーテル,心血管造影検査の結果,中等度の肺高血圧を伴う孤立性右肺動脈欠損と診断された.患側肺は肺炎を合併しやすく,健側肺に波及して重症化することより,外科治療の適応と判断された.右肺への血行再建を考慮したが,右肺の病理組織所見より,充分な肺機能の回復は期待できないと判断され,血行再建術を断念し,右肺摘除術が施行された.術後,縦隔偏位による気道閉塞のため,重篤な呼吸障害をきたし,人工気胸術を反復することにより次第に改善をみた.術後1年を経た現在は良好な経過をとっている.摘除肺の病理組織学的検索においても興味ある所見を認めた.本疾患に対し,乳幼児期に肺摘除術を施行した症例の報告はほかにみられない.
  • 石原 正, 黒部 肇, 島田 徹, 浜田 偉文, 貴島 範彦, 近藤 邦彦, 宮城 建雄, 関 一郎, 茂在 敏司, 田代 博, 寺内 陽
    1983 年 15 巻 8 号 p. 945-949
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    幼少時川崎病と思われる既往を有し,最近発症した労作性狭心症の20歳男子大学生に,冠動脈造影上左右冠動脈に拡張および狭窄性病変を有する1例を経験した.症例は, 2 歳時川崎病と思われる40 ℃の高熱, 手掌発赤,皮膚はく離の症状が続き入院加療.中学高校時代は,柔道,陸上部で活躍するも症状なし.大学入学後労作性狭心痛を初めて自覚心電図上V1~3にpoorr-wavepro-gressionを認めたため本科入院. 入院時血液学的に異常なく,胸部X線にても心拡大なし.Master Double Twostep Testでも陰性であった.しかし左室造影上antero-basalにhypokinesisを認め, 冠動脈造影上AHA分類Seg.2,6,7,11に冠動脈病変を認めたため,昭和56年12月,本学胸部外科にてA-C bypass術を施行され,術後順調に経過している.
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