心臓
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16 巻, 8 号
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  • 篠原 文雄, 飛田 明, 井上 紳, 桑原 健太郎, 長谷川 貢, 小林 正樹, 新谷 博一
    1984 年 16 巻 8 号 p. 773-778
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞(梗塞)の死因を心破裂(破裂)と非破裂とに分けて早期血行動態ならびに剖検心から算出した梗塞量について比較検討した.対象は破裂7例,非破裂は初発作・貫壁性・右室梗塞のない5例で,死因はポンプ失調4例,不整脈1例である.梗塞量は心尖部から1cmごとに輪切し,最高膜様部下1.5cmまで行い,各横断面における左室に占める梗塞部の面積比をmanual optical pictureanalysing system を用いて算出し,平均を各症例ごとの梗塞量とした.結果:破裂群の梗塞量は15.1-56.6%で非破裂群に比し,少なかった.血行動態上収容時の最高,最低,平均血圧,1回心仕事係数は破裂群の方に高く,しかし8時間後では差がなかった.心係数と心拍数には収容時や8時間後でも差がなかった.肺動脈楔入圧は収容時では差がなく,8時間後で破裂群の方に高くなっていた.破裂群と非破裂群との間には早期血行動態および梗塞量との間に差がある可能性が示唆された.
  • 松下 重人, 池田 孝之, 村上 哲夫, 松沼 恭一, 高田 重男, 服部 信, 中嶋 憲一, 多田 明, 分校 久志
    1984 年 16 巻 8 号 p. 779-785
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    disopyramide (DP) 1mg/kg静注の安静時と自転車エルゴメーター運動負荷時の左心機能を陳旧性心筋梗塞(OMI)14例と健常者(C)5例で平衡時法 RI angiography を用いて検討した.安静時,OMI群ではDPにより左室駆出分画(EF)は45±4から37±3.5%(平均値±標準誤差)と有意に低下(p<0.001),心係数(CI),1回拍出係数(SI)は両群とも有意に低下した(p<0.02,p<0.001).運動負荷時,OMI群ではDPによりCIは5.4±0.4 から 4.9±0.4l/min・m2,SI は 50±3から44±3ml/beat・m2と有意に減少(p<0.02,p<0.01),EFは44±4から41±5%と低下した.C群ではDPによりEF,CI,SIは不変であった.以上より,健常者では,運動負荷時DPの陰性変力作用を呈することはないが,心機能の低下した陳旧性心筋梗塞では,安静時,運動負荷時とも陰性変力作用を示すことが示された.
  • 近江 三喜男, 古川 昭一, 森 文樹, 壼井 英敏, 毛利 平
    1984 年 16 巻 8 号 p. 786-790
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    教室における過去3年間の僧帽弁狭窄症(MS)およびMSを主病変とする連合弁膜症,計30例に合併した左房内血栓は13例(43%),塞栓症は8例(27%)と高率であった.手術時に左房内血栓のみられた血栓群と,みられなかった非血栓群とに分け両群間で臨床所見,心エコーおよび心カテーテル所見から諸因子をとりあげ比較検討を行った.また,左房内血栓と心房細動,塞栓症の関係についても検討した.血栓群ではCI 2.37±0.41l/min・m2と非血栓群の2.84±0.63l/min・m2に対し有意の低値を示した(p<0.05).しかし,他の諸因子には差を認めなかった.心房細動は左房内血栓例,塞栓症例の全例に合併していた.MSにおいて予測される血栓塞栓症,肺高血圧症,三尖弁逆流の予防と,さらに,左室機能の温存を目的に,心房細動が一般的に薬剤に対して抵抗性となる前に,すなわち心房細動の固定する以前の早期に直視下交連切開術を考慮すべきであろう.
  • 劉 元恕, 木村 幹史, 松井 玲子, 大川 真一郎, 松下 哲, 上田 慶二, 杉浦 昌也, 嶋田 裕之
    1984 年 16 巻 8 号 p. 791-798
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    60歳以上の老年者の連続剖検3,000例中にみられた先天性冠状動脈異常は計27例(0.9%)であった.そのうち起始異常は10例(0.3%),形成異常は17例(0.6%)で,前者の内わけは右冠状動脈の左冠洞起始4例,左冠状動脈の無冠洞起始2例,同右冠洞起始1例,左回旋枝の右冠洞起始1例,同右冠状動脈起始2例である.また後者の内わけは左冠状動脈主幹部欠如2例,左回旋枝欠如4例,同低形成5例,右冠状動脈低形成6例である.これら症例の合併症には心筋梗塞4例が含まれるが,検討の結果それぞれ本奇形が直接原因ではなかった.すなわちいわゆるminor anomaly に属するものであり,従来の文献と対比検討した.
  • 堀江 稔, 泰江 弘文, 表 信吾, 滝沢 明憲, 永尾 正男, 西田 進一郎, 久保田 次郎
    1984 年 16 巻 8 号 p. 799-805
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞,急性期に冠動脈造影法を施行した50名を,その造影所見より責任病枝の自然開通群,人為的再開通群および閉塞群の3群に分けCPK値の変動を検討し,以下の結果を得た.(1)CPK最高値(peak CPK)は,血中CPK総遊出量(CPKr)と良好な正相関を示し,各群個別の検討でも両者の相関は,良好に保たれていた.(2)CPKは,閉塞群におけるより,自然開通群ないし,人為的再開通群において,有意に早く最高値に達した.(3)前下行枝近位部病変に限ると,peak CPK,CPKrは,人為的再開通群において,より高い傾向を示した.以上より,早期のCPK peakは,梗塞急性期の責任病枝の再開通を示唆し,血中CPKによる心筋梗塞量の定量化は,急性期の冠循環動態を考慮せずには,大きな誤差を生む可能性のあることが結論された.
  • 土井尻 健一, 肥田 敏比古, 松下 一夫, 大関 哲郎, 吉永 司郎, 水越 和夫, 鈴木 智之, 加藤 政孝
    1984 年 16 巻 8 号 p. 806-810
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患(IHD)患者について血漿膠質浸透圧(COP)の測定を試み,以下のごとき興味ある知見を得た.COPは,実測値とGovaertsの式による計算値との間に高い相関(r=0.85)があったのでこの計算値を用いた.COPは,加齢とともに低下する傾向にあり,IHDでは正常者よりもその傾向が強いことが予想され,また,IHDのうち労作性狭心症よりも不定性狭心症や急性心筋梗塞が低値を示した.急性心筋梗塞では,発症後の時期によってCOP値が異なり,1週間に最低値を,ついで4週間目に回復した.この経過中におけるCOPの最低値とCPKのピーク値との間には有意の負の相関(r=-0.64)を,後日施行した左室造影像から求めた駆出率との間には有意の正の相関(r=0.67)を認めた.以上より,心不全との係わり合いにおいて,COPは非常に有用な1指標であると考えられた.
  • 鬼塚 敏男, 古賀 保範, 石井 潔, 前田 隆美, 関屋 亮, 松崎 泰憲, 井上 正邦, 峰 一彦, 柴田 紘一郎, 松岡 裕二, 早川 ...
    1984 年 16 巻 8 号 p. 811-815
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心房二次中隔欠損症で乳児期にうっ血性心不全などの重篤な症状をきたすものは極めてまれとされる.最近開心根治術を施行した本症を2例経験したので文献的考察を加えて報告する.症例1は11カ月,症例2は9カ月でダウン症候群合併のいずれも男児で,発育不全とうっ血性心不全でジギタリス剤の投与をうけていた.術前の心臓カテーテル検査では症例1は肺動脈収縮期圧93mmHg(平均55mmHg),Pp/Ps0.80, QP/Qs2.91, Rp/Rs0.23で,症例2は肺動脈収縮期圧 70mmHg(平均48mmHg), Pp/Ps0.84, QP/Qs1.92, Rp/Rs0.42であった.肺動脈造影では2例共著明な肺動脈の拡張,蛇行を認めた.手術所見では症例1は下縁欠損型であり,術中採取した肺組織像はHeath Edwards分類II度およびいわゆるseptitisの所見がえられた.術後2カ月の心臓カテーテル検査で症例1は肺動脈圧の著明な低下が認められたが症例2のダウン症候群合併例は肺動脈圧の著明な低下は認められなかった.
  • 林 鐘声, 清沢 伸幸, 楠 智一, 尾内 善四郎
    1984 年 16 巻 8 号 p. 816-821
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は5歳9カ月の時に,絹糸で直接縫合による心室中隔欠損症の根治術をうけた.1年後,細菌性心内膜炎に罹患し,心室中隔欠損部が再開通し,その経過中に肺梗塞を合併した.細菌性心内膜炎は強力な治療によって治癒したが,肺梗塞部は中葉症候群の病像を呈するようになった.その後,病状は落ち着いていたが,開心術後7年目に,大量の喀血が頻回にみられるようになったため,中葉切除術を行った.切除標本で以前の肺梗塞部に一致する部位から,一部石灰化した絹糸が証明された.
  • 小林 亨, 吉野 孝司, 小田 忠文, 筆本 由幸, 藤本 淳, 若杉 茂俊, 福本 泰明
    1984 年 16 巻 8 号 p. 822-827
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    PTCAにより,左前下行枝の狭窄病変を拡大したが,intimal flapが生じた1例について報告した.PTCA直後,平均狭窄径は80%より31%に改善したが,そのすぐ遠位部にintimal flapが認められた.しかし,intimal flap 発生部の冠状動脈真腔は十分な大きさを有していた.胸痛,不整脈や心電図上のST・T変化はPTCA施行中全く認めなかった.術後早期および遠隔期において,狭心痛は消失し,負荷心電図は陰性化し,心筋シンチグラムも改善した.6ヵ月後の冠状動脈造影ではintimal flapは認められなかった.intimal flapの発生はPTCAの作用機序と密接に関連しており,その冠循環に及ぼす影響は真腔が術前の狭窄腔に比し改善しているか否かに依存していると考えられた.また,遠隔期における治癒機転としてはintimal flap の退縮と内膜の再形成が推定された.
  • 久保 進, 今村 俊之, 黒部 勝則, 荒川 雅夫, 田川 秀樹, 福井 純, 松本 保和, 坂井 明紀, 古賀 秀隆, 原 耕平
    1984 年 16 巻 8 号 p. 828-835
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    SLEでは種々の心血管障害を伴うが,心筋梗塞の合併は従来極めてまれとされてきた.本邦の報告例はいまだ数例にすぎないが今後のSLE早期発見および治療法の進歩に伴い長期生存例が増加するにつれて重要な問題と思われる.そこでSLEに伴った急性心筋梗塞の1例を報告するとともに,その成因などにつき文献的考察を加えた.症例は48歳女性.昭和50年よりSLEの診断にてステロイド療法をうけていた.昭和56年6月より労作性狭心症が出現し亜硝酸剤で改善していた.昭和56年9月急性下壁梗塞,10月前壁中隔再梗塞出現,12月当科に精査のため入院となった.冠動脈造影では,左前下行枝Seg.6 100%,左回旋枝Seg.12 90%,右冠動脈Seg.2 100%と三枝とも著明な変化をみとめたが,冠動脈瘤などは認めなかった.検査所見から,SLEは,現在非活動性と考えられ,冠動脈硬化症によるものと考えた.
  • 森田 展生, 藤井 昌麻呂, 井阪 直樹, 小西 得司, 中野 赳, 竹沢 英郎, 吉田 利通, 伊豆津 公作
    1984 年 16 巻 8 号 p. 836-846
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    CCM様病像を呈して入院した症例の家系にHCMの症例が存在し,両者の関連に興味が持たれた.CCM様症例の剖検にて心室中隔,左室前壁の著明な肥厚と同部位における心筋の錯綜配列,および左室後壁の菲薄化と心筋変性脱落所見が確認され,本例はHCM(家族性)に何らかの誘因が作用し,主として後壁が侵され,CCM類似の状態に陥ったものと解釈した.その因子として,ウイルス性心筋炎あるいは血管障害による虚血を考えたが,心筋組織所見からその可能性は低く,むしろ元来肥大がび慢性に存在し異常心筋が広範に存在するwidepread disease であるHCMの末期像である可能性が強く示唆された.本症例は,HCMからCCM類似の病態への移行例あるいは,同一家系内におけるHCM,CCMの混在例の示す意義およびその可能性に対し何らかの示唆を与える重要な症例であると思われ報告した.
  • 芳川 正流, 石原 融, 秋場 伴晴, 吾妻 加奈子, 小林 代喜夫, 佐藤 哲雄
    1984 年 16 巻 8 号 p. 847-853
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は6歳の男児で,自覚症状なく,肺動脈領域第2音の亢進がみられた.心電図で右室肥大を呈し,胸部X線で心胸郭比53%,肺野に肺静脈うっ血の所見を認めた.心臓カテーテル法では,心内短絡はなく,著明な肺高血圧と,肺動脈楔入圧および左室拡張末期圧の上昇を認めた.一方,左室拡張末期容積は正常で,収縮能の低下は認められなかったが,左室の充満曲線で,拡張早期に左室の充満が終了する所見を認めた.以上より,左室の拡張障害により肺静脈うっ血をきたし,その結果肺高血圧を呈したと考えられた.生検組織像で,心内膜心筋層に軽度の線維化が認められ,拘束型心筋症と診断した.拘束型心筋症は,きわめてまれな疾患であり,その血行動態上の特徴,治療,予後に関して若干の考察を加えた.
  • 刺激伝導系の病理組織学的検討を含めて
    本田 幸治, 片山 知之, 阿部 仁, 松尾 健治, 大川 真一郎
    1984 年 16 巻 8 号 p. 854-861
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    41歳,男性の心サルコイドーシスの1剖検例を報告する.本例は以下に述べるいくつかの特徴的な臨床所見を有していた.(1)高度の心室内伝導障害を反映した特異な心電図所見,(2)3種類の拡張期過剰心音,(3)右室圧の心房化を示す心内圧波形,(4)心エコー図にみられた肺動脈弁拡張終期開放.これらはいずれも今までのサルコイドーシス例ではほとんど記載のみられない所見であり,心筋の広範かつ高度な侵襲(特に右室筋は後壁の一部を残してほぼ完全に消失していた)に起因するものであった.刺激伝導系の検討では心室中隔部の古いサルコイド病変にまきこまれて右脚第II,第III部の高度な障害を認め,His束下部は肉芽腫を含む比較的新しいサルコイド病変で途絶されていた.このため高度房室ブロックを来たし死亡したと思われた.本例ではさらに正常の洞結節細胞がほぼ完全に消失していた.このように洞結節へ浸潤したサルコイドーシスの報告例は本邦ではまだみられない.
  • 渋谷 敏幸, 森川 政嗣, 村田 実, 相沢 義房, 荒井 裕, 小沢 武文, 柴田 昭, 小田 栄司, 渡部 透
    1984 年 16 巻 8 号 p. 862-869
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例はverapamilが奏効したII型のPSVTを有する43歳の男性.その電気生理学的機序を検討した.運動負荷にてPSVTが発生した.その開始時2:1房室blockがみられた.またPSVT中QRS波の直前に逆行性心房波がみられた.右室pacingでV-A伝導はなかった.以上よりこの頻拍のcircuitにHis束以下の刺激伝導系の関与が否定された.心房pacingおよびextrastimulus法によりPSVTが誘発・停止された.房室伝導曲線はA1A2の短縮に伴いH1H2は漸次延長したが,reentryzoneでのH1H2にjumpはなかった.心房pacingでの誘発rateは170/分で房室結節のWenckebach period (150/分)よりhigh rateであった.誘発した頻拍中A波,H波,V波は1:1対応であり,HAe>AeHでその比は1:0.47であった.verapamil 10mg静注後PSVTは誘発されなかったが,1発の回帰収縮がみられた.そのcoupling intervalは延長し,主として逆行性伝導の延長によった.その後のblockはretrograde limbによることが示唆された.
  • 岡野 秀治, 高橋 岳夫, 川浪 千尋, 勝井 義和, 中野 赳, 竹沢 英郎
    1984 年 16 巻 8 号 p. 870-874
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    嚥下時のvagovagal reflexにより起こる嚥下性失神を経験した.症例は67歳,男性.胸部下行大動脈瘤の手術後より対麻痺,膀胱障害を来しリハビリテーション中であった.手術3カ月後に嚥下時に胸骨裏面に圧迫感を自覚後,十数秒間の失神発作が出現した.心電図上洞停止を認めた.精査のため入院.日に3-5回,嚥下物に関係なく失神が出現した.血圧140/86mmHg,左右差なく,脈拍82/分整.一時的体外ペースメーカー装着後,各種の検査を施行した.Czermak, Aschner試験, Valsalva法で失神は出現せず,テンシロン投与後の嚥下にて洞停止,失神が出現した.アトロピンの前投与で失神発作は消失した.アトロピン負荷試験,overdrive suppression法で洞機能は正常, His束心電図に異常なく,食道造影で軽度のトーヌスの亢進を認めた.頭部CT,心エコー検査に異常はなかった.治療として体内式心室デマンド型人工ペースメーカーを植込み,嚥下性失神は出現しなくなった.
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