心臓
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17 巻, 12 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 竹田 治土, 立木 利一, 松波 己, 安田 慶秀, 酒井 圭輔, 田辺 達三
    1985 年 17 巻 12 号 p. 1219-1224
    発行日: 1985/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Fallot四徴症(TOF)13例の術前,術後の血漿板機能,カテコールアミン,血管作動性プロスタノイドの変動を検索し,従来から報告されているチアノーゼ性心疾患に伴う凝固線溶系異常の解明の一助とすべく検討した.2μMADPによる血小板凝集能は術前値が,対照群としたVSD10症例より有意に亢進していた.血漿アドレナリン値(A),血清TXB2値も対照群に比し高値を示した.術後,血小板凝集能,A,TXB2は術前値に比し有意に低下し,またこれら3者の間には有意の正の相関が認められた.チアノーゼ性心疾患に伴う凝固線溶系異常には,cyclicAMP,phosphatidil inositol responceなどを介するカテコールアミン,血管作動性プロスタノイドと言われるTXB2,PGI2などの影響が深く関与している可能性が示唆された.
  • 横地 一興, 三ケ島 尊利, 一ノ瀬 英世, 坂本 博文, 豊田 温, 加藤 裕久, 鈴木 和重
    1985 年 17 巻 12 号 p. 1225-1231
    発行日: 1985/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    先天性肺動脈弁狭窄10例に経皮的balloon valvuloplastyを試み9例に成功した.バルーンカテーテルは右大腿静脈よりガイドワイヤーを通し,主肺動脈まで挿入し,バルーンの中央に肺動脈弁輪による“くびれ”ができるのを確かめ,用手的に3~5気圧,8~10秒間膨らませた,重篤な副作用はなかった.9例全例術後右室圧は有意に低下し,肺動脈右室圧較差も減少した.さらに心雑音の減弱,心電図所見の改善も見られた.備後,肺動脈弁逆流が2例に残存した.balloon valvuloplastyは,手技上,美容上,経費上利点は多いが,まだ,効果が確立されるまでには至っておらず,今後に残された問題点も多いが,適応を選べば試みる価値は十分にある方法と思われる.
  • 201Tl心筋シンチグラフィーからの検討
    若杉 茂俊, 柴田 宣彦, 長谷川 義尚, 中野 俊一
    1985 年 17 巻 12 号 p. 1233-1242
    発行日: 1985/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋内濃度分布が局所冠血流分布を反映するとされている201Tlを用いて,26例の狭心症患者に運動負荷心筋シンチグラフィーを施行し,ニトログリセリン軟膏(NGO)の抗狭心症作用とくに局所冠血流増加作用について臨床的検討を行った.その結果,NGOに対する反応は,(1)虚血部の201Tlのuptakeが増加してシンチグラム上の欠損が改善するもの,(2)虚血部のuptakeは増加しないが,シンチグラム上の欠損は改善するもの,(3)シンチグラム上,欠損の改善が認められないもの,の3つのtypeに分けられた.虚血部のuptakeが増加して欠損が改善するtypeでは,NGOにより冠動脈の拡張による局所冠血流量の増加が生じたものと考えられた.虚血部のuptakeが増加せず欠損が改善したtypeでは,後負荷の低下による心仕事量の減少が心筋血流分布の相対的な改善を生じたものと考えられた.シンチグラム上,欠損が改善しなかったtypeでは,コントロールの薬剤非投与時に対し,NGO投与後の計測値に有意の変動がみられなかった.しかし,このtypeでSTレベルが改善したもののみについて検討すると,前負荷の指標の代用としたpulmonaryuptakeがコントロールに比べ有意に減少を示した.これらのことは,狭心症発症の重要な因子となる冠動脈の反応性(スパズムないしは冠動脈tonusの亢進)の有無により,NGOの作用は冠動脈拡張による局所冠血量の増加が主体になる場合と,前負荷,後負荷軽減作用が主体になる場合があることを示すものであると考えられる.
  • 川筋 道雄, 青山 剛和, 関 雅博, 飯田 茂穂, 大平 政人, 岩 喬
    1985 年 17 巻 12 号 p. 1243-1248
    発行日: 1985/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    異型狭心症とWPW症候群の合併は,(1)頻拍発作と狭心症発作の合併はさらに重篤な状態になること,(2)手術近接期に冠動脈スパズムを発生する危険があることが重要である.われわれは異型狭心症を合併するWPW症候群4例(右心型2例,左心型2例)の外科治療を行った.冠動脈造影では全例で右冠動脈スパズムが証明された.2例では異型狭心症発作の緩解後,頻拍発作が出現した.他の1例では頻拍発作中に異型狭心症発作が併発した.全例で副刺激伝導路切断術を行い,WPW症候群は治癒した.冠動脈高度器質狭窄の1例にA-Cバイパス術を同時施行した.この症例で,術直後冠動脈スパズムが発生した.他の3例では手術近接期にnitroglycerin+nifedipine併用療法を行い,冠動脈スパズムを防止した.nitroglycerin+nifedipine併用療法は冠動脈スパズムを防止し,かつ刺激伝導系を抑制しないために異型狭心症とWPW症候群の合併例の外科治療に有用である.
  • 小林 稔, 入沢 敬夫, 折田 博之, 石原 良, 島貫 隆夫, 青山 克彦, 河野 道夫, 深沢 学, 阿部 寛政, 阿部 和夫, 鷲尾 ...
    1985 年 17 巻 12 号 p. 1249-1254
    発行日: 1985/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    最近,病悩期間が長く著明なるい痩,長期にわたる利尿剤使用のため全身浮腫は目立たぬが,肝腫大を認める,いわゆる“cadiac cachexia”状態の僧帽弁膜症に対し積極的に手術治療が行われている.著者らはcardiac cachexia群13例とnon-cardiac cachexia群32例の僧帽弁疾患手術例について脂質代謝とエネルギー源を検討した.
    血漿超低比重リポ蛋白(VLDL),低比重リポ蛋白(LDL),トリグラセイド(TG),総コレステロール(T-cho)はいずれも有意差をもってcardiac cachexia群が劣っていた.エネルギー源であるグリコーゲンについて僧帽弁乳頭筋と胸壁筋肉内で電顕ならびに生化学的に分析した結果cardiac cachexia群が減少していた.
  • 中野 赳, 藤岡 博文, 井阪 直樹, 小西 得司, 竹沢 英郎
    1985 年 17 巻 12 号 p. 1255-1262
    発行日: 1985/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性肺塞栓症の予後を臨床像より推定するため,肺シンチグラム・肺動脈造影・剖検により確定診断がなされた急性肺塞栓症80例について,死亡群,生存群間で臨床像を対比した.死亡例は17例(21.3%)で,内10例が肺塞栓症そのものによる死亡(1次的死亡),残り7例が肺塞栓症が既に存在する原病を悪化させることによる原病での死亡(2次的死亡)であった.1次的死亡例は全例ショックを有し,8例中6例に急性右心負荷の心電図所見の1つである時計方向回転がみられ,また10例中8例は広範型であったことより,広範型肺塞栓症による急性右心不全,さらにそれによるショックが死亡に関連した重要な因子と考えられた.また2次的死亡例ではNYHA III度以上のうっ血性心不全・悪性疾患・脳血管障害による悪液質などの重篤な基礎疾患が重要な因子と考えられた.一方,これらの重篤な基礎疾患を有さない亜広範型肺塞栓症の予後は良好であった.
  • 小国 弘量, 大沢 真木子, 宍蔵 啓子, 鈴木 暘子, 平山 義人, 福山 幸夫, 門間 和夫, 里見 元義, 廣江 道昭, 近藤 千里, ...
    1985 年 17 巻 12 号 p. 1263-1270
    発行日: 1985/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    進行性筋ジストロフィー症の心病変を検討するため,Duchenne型(DMD)10例とBecker型(BMD)2例にTl-201心筋イメージングとTc-99m心プールイメージングを施行した.DMD6例とBMD1例に左室後側壁と心尖部を中心とした心筋灌流欠損が認められ,さらにその内5例に左室局所壁運動異常,4例に左室駆出率の低下(50%以下)が認められた.これらの所見は,剖検例で認められる左室後側壁の線維化と一致していた.DMDでは,年齢的に11歳から18歳で上田の和式生活用の障害段階で6度以上の,BMDでは18歳の歩行可能な症例で認められた.DMDの心病変では,その発生時期として,11歳ですでに広範な左室後側壁の心筋障害を呈することから,10歳以前より進行してくる可能があるが,18歳でもほとんど認められない症例もあり,症例により障害の程度は異なった.また従来心合併症は少ないとされていたBMDにも,DMDと同様の心筋障害が認められ,今後注意が必要と考えられた.
  • 本邦報告例の文献的検討を含めて
    福田 恵一, 半田 俊之介, 谷 正人, 大西 祥平, 細川 美千代, 小島 昌治, 藤井 効, 中村 芳郎, 内藤 千秋, 相馬 康弘, ...
    1985 年 17 巻 12 号 p. 1271-1277
    発行日: 1985/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肺動脈主幹に開口する先天性冠動脈瘻の3症例を経験した.第1例は54歳女性,心雑音は清明.心電図は正常範囲,運動負荷後V2-5 でST-Tの異常を認めた.冠動脈造影では左冠動脈回旋枝からの短絡を認め,肺体血流比は1.1であった.第2例は54歳女性,連続性雑音を聴取する.左右冠動脈より短絡を認め肺体血流比は1.5であった.第1,第2例とも胸痛発作を主訴とした.第3例は心雑音を主訴とした55歳の女性で左右冠動脈より短絡を認め肺体血流比は1.3であった.
    我が国で報告された症例を文献から集計すると50症例となる.我々の症例と合わせ計53例について,その臨床的特徴を分析した.本症は1:2.3で女性に多く,特異的心雑音を聴取したのは77%であった.自覚症状の中では胸痛が最も多い.無症状は40%であった.短絡は左冠動脈特に左前下行枝より起始するものが多かった.シャント率は低く,肺体血流比1.1以上は19例,2.0以上の症例は2例のみであった.心雑音を聴取しない5例では全例シャント量が少なかった.肺動脈圧上昇を5例に認めたが,僧帽弁狭窄症合併例を除くと2例のみとなった.シャントに伴う容量負荷が悪影響をおよぼすことは稀と考えられた.手術施行の報告は53例中31例になる.しかし,細菌性心内膜炎などの合併例も少なく自然歴は悪くないので手術適応となる症例は限られると判断した.
  • 戸田 源二, 松下 哲, 大川 真一郎, 上田 慶二, 蔵本 築, 村上 元孝, 相馬 正義, 小沢 友紀雄
    1985 年 17 巻 12 号 p. 1278-1283
    発行日: 1985/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    エプスタイン奇形としては本邦における最高齢であると思われる症例を報告する.
    73歳女性.60歳頃より呼吸困難を自覚しはじめ,67歳の時,本疾患と診断され治療が開始された.昭和58年3月,呼吸困難,浮腫のため入院した.チアノーゼはなく,心聴診上,I音,II音は分裂し,右心系のIII音と思われる過剰心音および収縮期雑音を聴取した.心胸郭比は76%,心電図では心房細動,右脚ブロックを呈し,胸部誘導V2~4では特徴的な多相性QRS波を認めた.心エコー検査では,三尖弁の右室内への偏位や心房中隔欠損が証明され,Mc-Tc時間は0.09秒と著明な延長がみられた.右心カテーテル検査では,心房化右室および心内短絡(左→右短絡率58.5%)が証明され,心内圧は治療前よりも改善していた.
    本症例の高齢生存の理由は,心不全の出現が壮年期以降であり,治療によく反応していること,チアノーゼ,逆短絡,致死的不整脈が出現していないことなどが挙げられる.
  • 宮村 治男, 江口 昭治, 須田 武保, 吉沢 浩志, 安藤 正彦
    1985 年 17 巻 12 号 p. 1284-1288
    発行日: 1985/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心室逆位(ventricular inversion)は多くの場合心室大血管不一致(ventriculo-arterial discordance)を伴って修正大血管転位症の形態をとるのが通常であり,孤立性心室逆位(isolated ventricular inversion)はまれである.症例は品胎の第3児として出生した男児で,出生後よりチアノーゼが続き,生後3日目に低酸素血症と心不全により死亡した.剖検にてVSD・PDA・大動脈縮窄を合併したisolatedventricular inversionと判明した.内臓心房位は正位で,心房心室関係は不一致,そして心室大血管関係一致であった.大動脈は肺動脈の右側後方にあり,両大血管相互の空間的関係は正常であった.両心房両心室とも十分な心腔を有し,心室中隔にはEisenmenger型のperimembranous VSDが存在した.僧帽弁と大動脈弁には線維性連結があり,肺動脈弁下には漏斗部が存在した.本邦ではいまだ文献上1例の記載しかないと考えられるisolated ventricularinversionの1剖検例を報告した.
  • 石倉 紀男, 森 正博, 松本 常男, 西村 誠, 遠山 豪, 日置 図南, 伊藤 佳之, 加藤 俊夫, 平野 忠則
    1985 年 17 巻 12 号 p. 1289-1294
    発行日: 1985/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は31歳で2児の母.昭和57年10月より,頭痛,動悸,後には悪心,嘔吐を伴う発作を主訴として多くの医療機関を受診し低血圧症,うつ病と診断され治療を受けていた.昭和59年7月6日,本院外来初診時に不整脈を指摘され精査入院.入院中の発作時血圧は240/140mmHgと種々の不整脈(wanderingpacemker,marked bradycardia with A-Vjunctional escaped beats,A-V junctional or sinustachycardia,Wenckebach A-V block)を認めた.
    24時間尿中カテコールアミン検査では,メタネフリンは3.6ng/日と正常の28倍ノルメタネフリンは0.55ng/日と正常の1.5倍であり,明らかなエピネフリン優位の褐色細胞腫と診断した.腹部エコー,腹部CTスキャン,腹部大動脈造影で,径3.0cmの円形腫瘍を認め,昭和59年8月3日,右副腎腫瘍摘出術が行われた.組織学的に良性であった.術後,不整脈,高血圧は消失し,投薬なく元気に退院した.
    褐色細胞腫の大多数は,ノルエピネフリンが主たるカテコールアミンであり,持続型か発作型の高血圧症が特徴的な所見である.一方,本症例のごとく,エピネフリンを主に分泌する症例は少ないが,その症状は,低血圧,高度の不整脈,肺うっ血など多彩である.本症例は,1症例で,自然発作時に,多種類の不整脈を合併したことが特徴的で,文献的にも珍しく報告をした.
  • 石橋 豊, 生馬 勲, 中沢 芳夫, 吉金 秀樹, 戸田 博敏, 松野 好男, 島田 俊夫, 二瓶 東洋, 盛岡 茂文, 森山 勝利, 岡本 ...
    1985 年 17 巻 12 号 p. 1295-1301
    発行日: 1985/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:17歳,男,4歳時健診で胸部異常陰影を指摘されていたが,特に自覚症状なし.今回精査のため入院.胸部X線写真にて左第3弓の著明な突出を認めた.胸部CTscan,RIアンギオグラム,心臓カテーテル検査にて心外膜欠損を伴う左房のherniationまたは左房瘤と診断し,ヘルニアの可能性を考え開胸した.心外膜は正常であったが,左室流出路を圧迫している鶏卵大の左房瘤を確認した.その瘤は左心耳と区別され左房壁より成っており,左冠動脈前下枝と一部癒着していた.放置すれば今後全身性の血栓塞栓症や冠動脈疾患などの合併症に連がる可能性が危倶され完全除去した.本症例は,Willams(1963)の分類によると,intrapericardial typeで,しかもwall typeであり,このtypeは自験例を含め国内外で14例報告されているに過ぎず,比較的まれな症例であると考えられたので従来の報告と対比し報告する.
  • 矢坂 正弘, 嶋田 三輝男, 矢野 智彦, 福島 英生, 前田 英雄, 藤枝 敏行, 丸山 英樹, 鵜沢 春生
    1985 年 17 巻 12 号 p. 1302-1306
    発行日: 1985/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,55歳女性,家族歴にアミロイドーシスなし.44歳より慢性関節リウマチ.11年後の昭和57年11月,顔面・足背の浮腫,心雑音,心陰影拡大で入院.入院時心エコー上著明なエコーフリースペースと甲状腺腫大あり.甲状腺,心筋,直腸生検で,コンゴーレッド陽性物質の沈着を認め,直腸生検標本は過マンガン酸カリウム反応陽性を示した.また,血清高密度リポ蛋白のアポ蛋白の等電点電気泳動で,Serum amyloid A(SAA)蛋白のバンドを認め,続発性アミロイドーシスと診断.心膜液は糖99mg/dl,蛋白4.2g/dl,総コレステロール65mg/dl,γグロブリン6.9%,SAA蛋白220ng/0.1ml(血清とほぼ同濃度)であった.以上より慢性関節リウマチに伴う心膜液ではなく,続発性アミロイドーシスに伴う心膜液と考えられた.昭和58年2月より100%Dimetyl sulfoxide(DMSO)を投与,9カ月後心エコー上心膜液の著明な減少が認められている.
  • 広正 修一, 池田 孝之, 久保田 幸次, 高田 重男, 服部 信, 秋山 眞, 吉田 繁樹, 谷 昌尚, 篠山 重威
    1985 年 17 巻 12 号 p. 1307-1313
    発行日: 1985/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    筋強直性ジストロフィー症の1例で1年7カ月の期間をおいて2度のHis束心電図法による電気生理学的検討を行った.本疾患でのHis束心電図法による経時的検討はまれであり,非常に貴重な経験と考えられたので報告する.
    症例S.K.は昭和57年8月当科受診時,身体所見では筋強直性顔貌,母指球筋でのgrip myotonia,舌筋でのpercussion myotonia,または白内障,前頭部脱毛,睾丸萎縮もみられ筋強直性ジストロフィー症に典型的な所見が認められた.第1回目の検査時の心電図では,1度房室ブロック,-50度の左軸偏位,心室内伝導障害の所見を認めたが,第2回目の検査時には,左軸偏位,心室内伝導障害の程度は増強していた.His束心電図法による経時的検討ではA-H時間は140msecから,145msecへ,H-V時間は75msecから,80msecへといずれも延長し,洞結節自動機能ならびに房室伝導機能の低下もその程度は増強していた.不応期については,心房筋でやや短縮していたが,房室結節および心室筋の不応期はともに著明に延長していた.以上より,本症例では特殊刺激伝導系全体での障害の進行が考えられ,永久ペースメーカー植え込みを行った.
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