症例は31歳で2児の母.昭和57年10月より,頭痛,動悸,後には悪心,嘔吐を伴う発作を主訴として多くの医療機関を受診し低血圧症,うつ病と診断され治療を受けていた.昭和59年7月6日,本院外来初診時に不整脈を指摘され精査入院.入院中の発作時血圧は240/140mmHgと種々の不整脈(wanderingpacemker,marked bradycardia with A-Vjunctional escaped beats,A-V junctional or sinustachycardia,Wenckebach A-V block)を認めた.
24時間尿中カテコールアミン検査では,メタネフリンは3.6ng/日と正常の28倍ノルメタネフリンは0.55ng/日と正常の1.5倍であり,明らかなエピネフリン優位の褐色細胞腫と診断した.腹部エコー,腹部CTスキャン,腹部大動脈造影で,径3.0cmの円形腫瘍を認め,昭和59年8月3日,右副腎腫瘍摘出術が行われた.組織学的に良性であった.術後,不整脈,高血圧は消失し,投薬なく元気に退院した.
褐色細胞腫の大多数は,ノルエピネフリンが主たるカテコールアミンであり,持続型か発作型の高血圧症が特徴的な所見である.一方,本症例のごとく,エピネフリンを主に分泌する症例は少ないが,その症状は,低血圧,高度の不整脈,肺うっ血など多彩である.本症例は,1症例で,自然発作時に,多種類の不整脈を合併したことが特徴的で,文献的にも珍しく報告をした.
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