イソプロテレノール(ISP)静注による心筋虚血発現時の血行動態・左心機能を心房ペーシング(AP)によるそれらと比較した.対象は,虚血性心疾患31例(陳旧性心筋梗塞21例,労作狭心症10例),健常例9例であり,同一対象にAP負荷(2分ごとに毎分10心拍ずつレートを上昇し,最高150/分まで施行),ISP負荷(ISP 2μg/分にて静注)を施行し,終点は,胸痛もしくは有意のST偏位のいずれかとした.
結果:有意のST偏位はISP負荷において15例(48%),AP負荷において9例(29%)に認めた.ST変化(+)例において,負荷終点における血行動態指標を比較すると,心拍数,収縮期血圧には両負荷の間で差異を認めなかったが,心係数,一回拍出係数,左室仕事量係数はAP負荷において有意に少なかった.左室拡張終期圧(LVEDP)はAP負荷においては有意に低下したが,ISP負荷においては一定の傾向を認めなかった.一方,ISP負荷時ST変化(+)例について,心筋梗塞例と狭心症例とを比較すると,前者では胸痛の発現が少なく,LVEDPの有意の低下を認めたのに対し,後者では全例で胸痛を認め,LVEDPの上昇傾向を認めた.
以上より,(1)ISP負荷による心節虚血発現時の血行動態・左心機能はAP負荷によるそれらに比し良好に維持されることが示唆された.(2)ISP静注によるST変化は,狭心症例の多くは心筋虚血によるが,心筋梗塞例では,一部,壁運動異常など他の因子が関与している可能性が考えられた.
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