心臓
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17 巻, 7 号
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  • 高野 照夫, 草間 芳樹, 田中 啓治, 洪 基哲, 島井 新一郎, 清野 精彦, 堀越 晴男, 早川 弘一, 村上 昌
    1985 年 17 巻 7 号 p. 697-703
    発行日: 1985/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞に伴う心不全(肺毛細管圧>20mmHg)7例にわが国で開発されたα遮断剤である塩酸ブナゾシン1~2mgを経口投与し,心血行動態および末梢循環動態に対する効果を検討した.塩酸ブナゾシン投与後,末梢循環動態では下腿血流量と下腿静脈容量が増大の傾向を,下腿血管抵抗が低下の傾向を示した.これに伴い,心血行動態では肺毛細管圧,中心静脈圧,平均血圧,全末梢血管抵抗が有意の低下を示し,心係数,一回心拍出量係数,一回心仕事係数は有意に増大した.血行動態に対する効果は投与後1時間より始まり,6時間まで持続した.また一回心拍出量係数と下腿血流量とは有意の正の相関を,平均血圧および末梢血管抵抗と下腿静脈容量とは有意の負の相関を示した.以上より,塩酸ブナゾシンは心血行動態および末梢循環動態の検索から,前負荷と後負荷の両者を軽減させる薬剤であり,急性心筋梗塞に伴う心不全に対しては,balanced vasodilatorとして有効であると判定された.
  • 断層心エコー図による評価
    宮森 亮子, 半田 俊之介, 小川 聡, 藤井 功, 赤石 誠, 大西 祥平, 山崎 元, 中村 芳郎
    1985 年 17 巻 7 号 p. 704-710
    発行日: 1985/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    慢性右室負荷が左室の形態および収縮運動におよぼす影響を検討した.対象は健常者8例(右室収縮期圧平均23mmHg),心房中隔欠損症8例(同38mmHg),僧帽弁狭窄症10例(同53mmHg),原発性肺高血圧症(同85mmHg)とした.全例について断層心エコー図の左室短軸面乳頭筋レベルにおける指標と血行動態とを対比した.形態の指標として前壁-後壁間内径と中隔-側壁間内径の比(DAP/DSL),および中隔の長さと自由壁の長さの比(CIVS/CFW)を求めた.収縮様式の指標としてDAP,DSLの内径短縮率,CIVS,CFWの収縮率を求めた.右室圧負荷例では拡張末期,収縮末期におけるDAP/DSLは健常者より大きい.右室収縮期圧と,DAP/DSLは良好な正の相関関係を示した.また内径短縮率はDAPがDSLにくらべ低下していた.CIVSは右室圧負荷,容量負荷のいずれでも増大し,CIVS/CFWは増加していた.右室圧負荷例ではCIVSの収縮率は健常者にくらべ低下していた.
    慢性の右室圧負荷疾患では左室のひしゃげ現象と収縮運動の異常を認めた.すなわち左室は右室に類似したフイゴ様の収縮様式を呈し,左室の右室化ともいうべき特徴を認めた.慢性右室負荷疾患では,圧負荷,容量負荷にかかわらず,右室自由壁のみならず中隔長も増大し,圧負荷の程度の大きいものではその収縮率も低下していた.
  • 岸本 英文, 広瀬 一, 中埜 粛, 松田 暉, 島崎 靖久, 小林 順二郎, 小川 實, 森本 静夫, 有沢 淳, 川島 康生
    1985 年 17 巻 7 号 p. 711-715
    発行日: 1985/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1カ月~67歳(平均13歳)の,機能性雑音を有する18例,軽症肺動脈弁狭窄症11例,その他8例を対象として,正側2方向心室造影より,左右心室容積(LVEDV,RVEDV),左右心室拍出量(LVSO,RVSO),房室弁輪径(TVD,MVD),半月弁輪径(PVD,AVD)の計測を行い,正常値曲線を作成した.右室容積は,area-length(A-L)法およびSimpson(S)法により,左室容積はA-L法により求めた.房室弁輪径は,心室造影拡張期のnegativevalve shadowの最大径,半月弁輪径は,収縮早期の弁尖開放時の弁尖付着部の最大径とし,以下の回帰式を得た.
    RVEDV(A-L)(ml)=94.8×BSA1.42(r=0.98),RVEDV(S)(ml)=96.8×BSA1.35(r=0.99),RVSO(A-L)(l/min)=0.39+4.87×BSA(r=0.92),RVSO(S)(l/min)=0.39+4.73×BSA(r=0.92),LVEDV(A-L)(ml)=79.8×BSA1.42(r=0.98),LVSO(A-L)(l/min)=-0.11+5.21×BSA(r=0.94),TVD(mm)=31.1×BSA0.56(r=0.96),MVD(mm)=24.3×BSA0.44(r=0.95),PVD(mm)=16.5×BSA0.45(r=0.90),AVD(mm)=16.6×BSA0.60(r=0.96).
  • 青木 隆夫, 平柳 要, 伊原 正, 田中 博, 吉川 俊之
    1985 年 17 巻 7 号 p. 717-726
    発行日: 1985/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    交叉循環冠灌流法による摘出心標本を生体と等導電率,等浸透圧の電解質溶液で満たした円筒トルソ容器内に懸吊し,心外膜とトルソ表面電位を同時観測する実験法を考案した.この実験法に基づいて(1)心外膜電位動態とトルソ表面電位との関係,(2)近接効果とその時空間特性,(3)肺導電率不均質性の効果に関して次の結果を得た.(1)伝達特性:両心室壁上のBreakthroughはトルソ表面に出現しないが,興奮領域長径が2cm以上になるとトルソ上の電位として観測される.心外膜上の幅1.5cm程度の興奮波面上に並んだ複数個の正,負極値電位は,伝達過程中で平滑化され,トルソ上では1対の正,負極値電位となった.(2)近接効果:本実験条件でRMS電位は心臓・トルソ間距離と線形な相互関係にあり,1cmの接近ごとに,表面電位値は約22%増加する.(3)肺導電率不均質効果:Channeling効果による心電流の左右肺間隙への集中化により,胸部正側面の電位勾配が心室興奮中期以降に高まる.
  • 重信 雅春, 妹尾 嘉昌, 宮地 康夫, 長尾 俊彦, 柳 英清, 寺本 滋
    1985 年 17 巻 7 号 p. 727-732
    発行日: 1985/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    僧帽弁膜症を伴う二次口心房中隔欠損症に関して,左室容積や左心機能からみた手術の適応ならびに術式の選択にまで言及した発表は少ない.
    著者らが経験した6例(MS合併4例,MR合併2例)について検討した結果,ASD+MS群では,成人例の場合,LVEDVIが35~55l/m2の低値を示しても手術は可能であり,その際にMSには交連切開術を第1選択とし,弁置換術式をとらざるを得ない場合には,人工弁の選択とペーシングによる心拍出量の維持とを考慮しておくことが肝要と考えられた.また,ASD+MR群については,僧帽弁尖の菲薄化が高度で中心性の逆流をみる場合には,弁置換術式が第1選択となるが,ASD+MS群よりは左室容積が正常値に近い症例が多いため,代用弁の選択が適切であれば,弁置換術を施行しても良好な予後が期待できる.
  • 門間 和夫, 高尾 篤良, 今井 康晴, 高梨 吉則, 黒沢 博身
    1985 年 17 巻 7 号 p. 733-740
    発行日: 1985/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    各種の肺動脈閉鎖の短絡手術後には,肺動脈分枝狭窄が動脈管接続部と短絡血管接続部に生じた.動脈管接続部の肺動脈分枝狭窄は,高い頻度で生じ,かつ進行性であった.動脈管接続部の閉鎖部位は短絡手術により修飾され,左BT短絡手術後には動脈管接続部の左で閉鎖した.右BT手術後とWaterston手術後には自然歴と同様に動脈管接続部の右で閉鎖した.
    短絡手術後の短絡接続部での肺動脈狭窄は,BT短絡で短絡が開存している例では軽度であったが,短絡が閉鎖した場合にはその肺動脈にも上葉枝または全体の閉塞が生じた.Waterston短絡手術後にはその左側に閉塞が高率に生じた.Brock手術後には中心肺動脈の狭窄は概して軽度であった.
  • 村上 英徳, 村上 暎二, 竹越 襄, 松井 忍
    1985 年 17 巻 7 号 p. 741-747
    発行日: 1985/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性解離性大動脈瘤発症直後は白血球増加血沈亢進,GOT,LDH,フィブリノーゲン,γ-グロブリン値の上昇,CRPの陽性化,発熱などが認められる.これらは解離腔の炎症組織や血栓組織の吸収,器質化過程に示される反応と考えられている.このような大動脈解離後症候群とよばれるべき病態については従来臨床的な注意が払われていない嫌いがある.症例によってはCRPや血沈の動きの小さい症例もあり,本研究ではこれらの臨床的意義について検討した.急性解離性大動脈瘤患者11名を早期に血栓化し閉鎖している群6例と閉鎖しない群5例に分類してその臨床経過検査値に差がないかを比較した.前者では全例高度血沈亢進,CRP強陽性,LDH高値,γ-グロブリン高値,症状安定後に抗生物質無効の発熱を3例に認めた.これに対し後者ではいずれも比較的低値を示し高値を示したものは少数であった.GOT,フィブリノーゲンでは差がみられなかった.発熱した症例に対しステロイドを投与したところ,解熱,自覚症状改善,CRP,血沈の正常化を認めた.
  • 藤関 義樹, 西藤 誠子, 相模 龍太郎, 前田 昌彦, 島田 司巳
    1985 年 17 巻 7 号 p. 748-752
    発行日: 1985/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠状静脈洞型心房中隔欠損症は本来の冠状静脈洞開口部つまり卵円窩後下縁,心室中隔の弁上部,下大静脈開口部に囲まれた部位に位置する心房中隔欠損で,最もまれな型であり,その超音波断層法による診断の報告はない.
    今回われわれは心エコー図で右室腔の拡大と心室中隔の奇異性運動を認めるものの,超音波断層法のsubcostal viewで通常の部位に心房中隔欠損を発見できず,parasternal approachの左室短軸断面でややfour-chamber viewに近い断層面でcruxcordis付近を観察すると,長軸像の冠静脈洞に一致した部分が拡大し,左房および右房と交通している所見を得,冠状静脈洞型欠損を疑診した症例を経験した.心血管造影法と開心術で同部の欠損が確認され,超音波断層法が心房中隔欠損の部位診断に非常に有用であったので報告した.
  • 三国谷 淳, 助川 和夫, 高 明休, 秋元 久衛, 丹野 恒明, 百瀬 篤, 小野寺 庚午, 宮川 隆美, 西沢 一治, 中道 篤郎, 百 ...
    1985 年 17 巻 7 号 p. 753-759
    発行日: 1985/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    左室憩室と冠動脈-肺動脈異常交通症を有する連合弁膜症の1例を経験した.症例は52歳,男性.昭和58年11月,労作時の心不全症状のため当科を受診し,精査を目的に入院.現病歴,理学所見,胸部X線所見,心電図所見,心エコー図所見などから,僧帽弁狭窄兼閉鎖不全,大動脈弁閉鎖不全,右室拡大とそれに基づく三尖弁閉鎖不全が疑われ,心カテーテル検査では肺動脈楔入圧上昇(平均圧20mmHg),巨大左房,僧帽狭窄兼閉鎖不全(Sellers2/4°)大動脈弁閉鎖不全(Sellers1/4°),三尖弁閉鎖不全(Sellers2/4°) が確認された. 冠動脈造影では,左冠動脈前下行枝および左回旋枝の肺動脈との異常交通がみられ,左室造影では左室下壁後部に嚢状に突出した異常陰影がみられた.この陰影は心周期に応じてnormal contractionを示し,左室憩室と考えられた.
    左室憩室はしばしば心外膜,横隔膜,腹壁の欠損を伴うまれな心奇形である.本症例では冠動脈-肺動脈異常交通症もみられたがその他の奇形はなく,左室憩室の成因に興味がもたれた.
  • 前田 利裕, 日浅 芳一, 石田 孝敏, 原田 道則, 相原 令, 滝 浩樹, 坂東 正章, 中井 義廣, 片岡 善彦, 伊井 邦雄, 森 ...
    1985 年 17 巻 7 号 p. 760-767
    発行日: 1985/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    狭心症を主症状とし,古典的なTangier病とは異なったアポA-IおよびアポC-III欠損症が示唆されたきわめてまれな症例を報告する.症例は55歳女性,労作時の胸痛を主訴として来院した.安静時および運動負荷時心電図は虚血性変化を示し,冠動脈造影上3枝病変を認めた.本例のHDLコレステロールは3mg/dlときわめて低値を示した.アポAIは免疫学測定法で測定感度以下であり,アポA-IIも3.5mg/dlと正常の10%程度であった.皮膚に対称性の広範なびまん性黄色腫があり,組織所見で泡沫細胞を認めた.これらの所見はTangier病に類似した.しかし本例は扁桃の外見上の肥大,肝脾腫,神経症状およびリンパ節腫大を認めなかった.さらにアポC-IIIは0.2mg/dlとほぼ欠損状態を示した.血清総コレステロール値が正常で,血清LDL分画が正常範囲内ではあるがやや高値を示したことなどは,Tangier病と異なった臨床像を呈した.本例は低HDL血症と冠動脈硬化を考える上で興味深い症例である.
  • 三上 雅人, 野崎 英二, 奥山 芳見, 山崎 恭平, 豊田 文俊, 高橋 正喜, 野宮 順一
    1985 年 17 巻 7 号 p. 768-776
    発行日: 1985/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    われわれは,異所性自動能亢進によると思われる心室性頻拍を伴うright ventricular dysplasiaの症例を経験した.
    症例は,72歳女性で,3年前より年に1,2回の動悸発作があった.当院受診時,毎分130の右軸偏位,左脚ブロック型の心室性頻拍を示した.心臓超音波検査および右心室造影などにて,右心室流出路を中心とした右心室の拡張と壁運動低下をみた.電気生理学的検査にて,洞性調律時に,右心室心尖部での単発,2連発早期刺激法,頻回刺激法を行ったが,心室性頻拍は誘発されなかった.また心室性頻拍時の心内膜マッピングにより,右心室流出路に最早期興奮部をみ,早期刺激法にて,心室性頻拍は停止せず,広い範囲でリセットを認めた.心室頻回刺激法でも,心室性頻拍は停止できず,刺激中止後,warming up現象をみた.以上より,この症例の心室性頻拍の機序として,異所性自動能亢進が示唆されるものと思われた.
  • 山中 修, 冨原 均, 尾崎 治夫, 村山 憲, 高橋 文行, 松本 道夫, 清水 満, 岡田 了三, 北村 和夫
    1985 年 17 巻 7 号 p. 777-783
    発行日: 1985/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    H.T.,67歳,女性.34歳より体格顔貌の変化があり,60歳で末端肥大症と心不全を指摘され,67歳にて呼吸困難,食欲不振が出現した.心電図は右脚ブロック,左脚ブロックから高度房室ブロックと経過し,うっ血性心不全状態にて入院.早朝空腹時成長ホルモン値は370ng/mlで頭部CTでは下垂体腺腫を認め,血中カテコールアミン値の軽度上昇を認めた.ヒス束電位図では3:2伝導のHVブロックと洞不全を呈し,VVIペースメーカー植込み後約1年で突然死した.剖検で心重量920g,著明な両心室の拡張性肥大があり,心筋細胞の肥大と萎縮,小血管周囲および間質への炎症性細胞浸潤と線維症を認めた.刺激伝導系にも同様の変化がめだった.acromegaly heart diseaseの成因として成長ホルモンの直接作用が考えられているが,本例ではそれに加えて,カテコールアミンやいわゆる心筋炎後心肥大など多因子の関与が強く示唆された.
  • 中野 赳, 藤岡 博文, 田中 裕, 高橋 好夫, 保田 憲基, 井阪 直樹, 小西 得司, 竹沢 英郎
    1985 年 17 巻 7 号 p. 784-790
    発行日: 1985/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    25歳,心室中隔欠損症を有する女性.突然の右側胸痛,胸部X線写真での多発性肺浸潤陰影,菌血症(streptococcus viridans)にて当科へ入院.肺シンチグラムでのperfusion defectおよび心エコー断層図において肺動脈弁に10×20mmのvegetationを確認したことより,右心側心内膜炎,感染性肺塞栓と診断し,cephalothin,dibekacinで加療した.炎症反応の減弱にもかかわらず心エコー図の経時的観察でvegetationの縮小はみられなかった.入院18病日,突然の左側胸痛,呼吸困難,多呼吸が出現し肺シンチグラムで左S8,9のperfusion defectと胸部X線写真における同部の陰影付加があり,心エコー図では肺動脈弁のvegetationの著明な縮小を確認されたことより,vegetation遊離による新たな肺塞栓と考えた.その後肺動脈弁置換術が施行され経過良好である.肺動脈弁に限局した右心側心内膜炎は少なく,とりわけ本例のようにvegetationの経時的変化を心エコー図で検討しえた報告はまれである.
  • 山村 真由美, 文字 直, 多々見 良三, 石瀬 昌三, 大槻 典男, 杉木 繁隆
    1985 年 17 巻 7 号 p. 791-797
    発行日: 1985/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は47歳女性.昭和51年頃より,手指のこわばり,多発性関節痛,Raynaud現象,皮膚発赤,筋肉痛出現.52年2月当院整形外科に入院し,53年の皮膚生検,54年の筋生検の結果,慢性関節リウマチ+皮膚筋炎の診断のもとにステロイド治療を受けていた.58年1月初旬より発熱,咳が出現,呼吸困難も強くなり,1月27日急性心不全状態にて当内科に入院した.入院時検査所見では,血清免疫学的異常が強く,LE test, speckled patternの抗核抗体,抗DNA抗体,抗ENA抗体,抗RNP抗体陽性を認め,皮膚筋炎+全身性エリテマトーデスの重複した臨床症状とあわせmixed connective tissue disease(MCTD)と診断した.胸部X線ではCTR57%,肺野では全肺に境界不鮮明な斑状陰影がみられ,心電図では低電位,II,III,aVF,V1~V5でQS波を示した.エコー所見では心のう水の貯留はみられなかったが,中隔と左室後壁の収縮低下を認めた.ステロイド増量,ジギタリス,利尿投与により,自覚症状,胸部X線は著明に改善した.第42病日におこなった心カテーテル検査,冠動脈造影では異常はなかった.左室造影では僧帽弁逆流1度,Seg.2,4,5,6,7に収縮低下を認めた.右室心筋生検ではfocalなfibrosisと心筋の軽度肥大が認められたが,心筋配列の異常や炎症性細胞浸潤はみられなかった.本症例においては梗塞発作のエピソードもなくMCTDによる二次性の心筋肥大と間質の線維化が心電図上,心筋梗塞様所見を呈したものと考えられた.
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