心臓
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18 巻, 3 号
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  • 松下 重人, 杉岡 五郎, 森下 大樹, 重田 亨, 田中 敏行, 多田 明, 立野 育郎
    1986 年 18 巻 3 号 p. 263-270
    発行日: 1986/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    発症4週以上経過した陳旧性心筋梗塞症33例において,Technetium-99m Pyrophosphate(99mTc-PYP)心筋スキャンを行い,陽性率と臨床的意義を検討した.99mTc-PYP画像はParkeyの基準によりgrade 0からIVの5段階に評価し,その集積パターンによりfocal とdiffuse に分類した.
    Grade 0,Iの陰性例は11例(33.3%)であり,grade IIの集積は13例(39.4%)に,grade IIIの集積は9例(27.3%)にみられた.明らかな異常集積と考えられるgrade II focal と grade IIIは11例(33.3%)に認めた.平衡時法心プールスキャンでの左室駆出分画(LVEF)は異常集積であるgrade II focal と grade IIIの11例では38±2.7%(平均土標準誤差)であり,grade II diffuse以下の19例の51±2.9%より有意に(p<0.01)低下していた.冠動脈造影による多枝疾患率は, grade 0,I の陰性例では,grade II,III例より有意に(p<0.01)低く,異常集積であるgrade II focal, grade III 例では全例2枝以上の多枝疾患であった.grade II focal以上の11例中1例は突然死し,2例は再梗塞を発症した.
    再梗塞のない陳旧性心筋梗塞症において,99mTc-PYP心筋スキャンの陽性例は,陰性例に比べて左心機能は有意に低下しており,冠動脈病変もより重症であった.陳旧性心筋梗塞症での99mTc-PYP心筋スキャンの陽性画像は,心筋梗塞後の持続する心筋障害を示すものと考えられ,臨床的意義を有する.
  • 森川 政嗣, 渡辺 賢一, 木戸 成生, 村田 実, 渋谷 敏幸, 相沢 義房, 荒井 裕, 小沢 武文, 柴田 昭, 宮村 治男, 江口 ...
    1986 年 18 巻 3 号 p. 271-277
    発行日: 1986/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Fallot四徴症根治手術例の術後遠隔期において40名を対象に,特に心室性期外収縮(PVC)についてホルター心電図とトレッドミル運動負荷試験を施行し,他の非観血的検査と心臓カテーテル検査,および手術との関連につき検討した.PVCはホルター検査では30例に出現し,Lown分類の3度9例,4a度5例,4b度5例あり,またトレッドミル検査では13例に出現し,ホルター検査にてLown3度以上の例に好発した.ホルターまたはトレッドミル検査でLown2度以上のPVCが出現した20例は,いずれの検査でもPVCがLown1度以下の20例に比し,手術時年齢,術後経過年数,右房圧,右室収縮期圧,右室/左室収縮期圧比が有意に大であった.また完全右脚ブロックと左軸偏位合併例も重篤なPVCが好発した.したがって手術は早期に右室の容量および圧負荷の軽減と2枝ブロックに留意して行うべきであり,また手術時年齢が10歳以上の例と術後年数が1年以上の例は重篤なPVCが好発することが示唆されるため,不整脈のfollow upが重要であると考えられた.
  • 右室心内膜生検を中心として
    松村 順, 古田 陽一郎, 田辺 章弘, 大林 純, 椿 孝二, 調 しげる, 田中 裕幸, 山下 良直, 足達 教, 古賀 義則, 池田 ...
    1986 年 18 巻 3 号 p. 278-287
    発行日: 1986/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    基礎疾患が明らかでない心室性期外収縮や心室頻拍などの心室性不整脈患者16例の臨床所見,右室心内膜生検所見,各種抗不整脈剤治療効果および臨床経過などにより,その臨床像について検討した.自覚症状として失神発作が3例(19%)に認められたが,無症状ないしあっても軽度の動悸などにとどまる例が12例(75%)と多く,運動負荷にて不整脈が不変または改善するものが13例(81%)と多かった.右心径および左心径の拡大もなく,その心内圧や冠動脈造影所見も正常であったが,左室造影にて局所的または全体的壁運動低下が6例(38%)にみられ,さらに右室生検像にて線維化11例(69%),心内膜肥厚7例(44%),脂肪変性6例(38%),錯綜配列3例(19%)が認められ,arrythmogenicright ventricular dysplasia や心筋症などに類似した組織像であった.また局所的線維化,細胞融解や間葉系細胞などの存在より心筋炎後変化と推察される2例(13%)も認められた.抗不整脈剤治療にてverapamil,propranolol の有効例が多くみられたが,不整脈発生機序に関しては症例により単一でないと推察された.経過観察中に突然死,失神発作が各々1例ずつみられた.以上より,原因不明の特発性心室性不整脈例においても潜在性心疾患の存在が示唆され,必ずしも予後良好な機能性不整脈とは言い難いと思われた.また不整脈発生機序に関しても症例によりまちまちと考えられ,慎重な抗不整脈剤の選択および経年的な観察が必要と思われた.
  • 西田 博, 井手 博文, 菊地 利夫, 龍野 勝彦, 村上 保夫, 森 克彦, 三森 重和
    1986 年 18 巻 3 号 p. 288-293
    発行日: 1986/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肺動脈閉鎖症における主要大動脈肺動脈側副血管major aortopulmonary collateral arteryは,通常その大動脈よりの起始部あるいは肺動脈への流入部に狭窄を有することが多く,肺血流増加によるうっ血性心不全,呼吸不全をひきおこすことはまれとされている.今回,われわれは,強心利尿剤をはじめとする強力な保存的治療にても約1カ月の人工呼吸管理を2回余儀なくされたFallot四徴症兼肺動脈閉鎖症の1歳4カ月女児に対し径約5mmの2本のMAPCAの結紮と,5mmのEPTFEグラフトを用いた大動脈弓-左肺動脈間シャント術を行い良好な結果を得た.手術4カ月前に測定した肺動脈楔入圧は46/24(37)mmHgであり,術中測定した肺動脈圧は30mmHgであった.PaO2は術前48mmHg,術後55mmHgで,呼吸状態は著明に改善した.本症では早期の正確な診断にもとづき症状に応じた適確な段階的手術が重要である.
  • 野口 享秀, 栗山 逸子, 安井 正治, 伊藤 あさこ, 小沢 尚俊, 森 矩尉, 早瀬 正二, 飯田 光雄, 加地 秀樹
    1986 年 18 巻 3 号 p. 294-300
    発行日: 1986/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は25歳,女性,昭和47年学校検診にて心雑音指摘され肺動脈弁狭窄兼閉鎖不全症と言われていた.昭和55年8月初産.昭和57年1月妊娠第6月に前置胎盤にて死産.この2回の妊娠期間中随時血圧は正常であった.今回昭和58年1月妊娠第4月に高血圧(170/112mmHg)と軽度タンパク尿を指摘され,3月31日妊娠中毒症の疑いにて本院産婦人科入院.5月30日心不全と肺炎にて内科へ転科.6月10日左心不全にて死亡.死後判明した尿中アドレナリンは200μg/日,尿中ノルアドレナリンは2,000μg以上/日であった.剖検にて左副腎に60g,右副腎にも褐色細胞腫を認めた.肺動脈弁は右尖と左尖が癒合し,2尖弁様となり狭窄後部拡張がみられた.心筋細胞に太さ,配列の異常のほか,各種変性像を示す筋線維も見られた.妊娠に合併した褐色細胞腫はわが国においてこれが20症例目となり,しばしば晩期妊娠中毒症と誤診される場合が多いので本症を中心とした鑑別診断について考察を行った.
  • 葉玉 哲生, 調 亟治, 内田 雄三, 一万田 充俊, 田中 康一, 高崎 英己, 森 義顕, 岡 敬二, 伊東 祐信, 野口 隆之, 小村 ...
    1986 年 18 巻 3 号 p. 301-308
    発行日: 1986/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠動脈外科手術近接期の冠動脈スパズムの発生は手術直接予後を左右する重大な合併症で注目されている.
    一方,リウマチ性弁膜症手術中の冠動脈スパズム発生の報告は見当らない.
    著者らは2例の僧帽弁交連切開術において術中に冠動脈スパズムを経験した.第1例は術前に冠動脈造影中,カテーテル刺激による右冠動脈のスパズムを認めた.本例では術中,体外循環前に心室細動へ移行した.体外循環を開始して交連切開術を施行し得たが術後はVPCの頻発,重篤なLOSを発生したが救命できた.
    第2例は,術前の冠動脈造影時,エルゴノビン負荷にて広範なスパズムがみられた.手術開始後,ニトログリセリン持続静注にかかわらずST上昇とともに血圧低下を来した.体外循環開始後は何ら問題なく僧帽弁交連切開術を施行されたが,体外循環離脱時にスパズムを来し,以後は,あらゆる薬剤,IABP施行にかかわらず救命できなかった.
    スパズムを伴うACバイパスと同様に,術中,diltiazem, nitroglycerineの投与によるスパズム発生の防止,治療に努めるべきである.
  • 症例報告および本邦報告例の集計
    足達 教, 住江 道正, 松山 公明, 田中 裕幸, 山下 良直, 緒方 雅彦, 古賀 義則, 戸嶋 裕徳, 森 松稔, 神代 正道
    1986 年 18 巻 3 号 p. 309-314
    発行日: 1986/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    原発性の心臓悪性腫瘍はきわめてまれな疾患であり,本邦ではこれまで約100例の報告例があり,その中で,横紋筋肉腫は本例を含め28症例がみられた.本報告では自験例とともにこれまでの本邦報告例の臨床像を検討した.
    症例は27歳女性,第2子出産後,全身倦怠感出現し,約4カ月で心症状増悪し入院す.心エコー図,CTスキャン,心血管造影法にて左房内腫瘍と診断した.手術所見にて悪性腫瘍が疑われ,組織所見は横紋筋肉腫であった.その後肺炎,膵転移をきたし,術後3カ月半で死亡した.本例では,急激な心症状の出現,増悪,心エコー上腫瘍発生部位後方の不規則なエコー量の増大は,腫瘍の浸潤による所見を示しているものと考えられた.
    報告28例の検討では,男性に多く,好発部位は左房で,右室がこれに次いでいた.大きさは種々で血行性およびリンパ行性転移が高頻度にみられた.
  • 古川 哲史, 白井 隆則, 梅沢 滋男, 家坂 義人, 藤原 秀臣, 谷口 興一, 武内 重五郎
    1986 年 18 巻 3 号 p. 315-320
    発行日: 1986/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.50歳頃より狭心症により薬物治療をうけており,59歳時には約30分間持続する前胸部痛を認めた.昭和58年12月1日12時頃,突然前胸部痛を自覚,13時15分当科CCUに救急入院した.心電図所見より前壁急性心筋梗塞,下壁陳旧性心筋梗塞と診断し,直ちにPTCR(percutaneoustransluminal coronary recanalization)を施行した.右冠動脈造影にて薬物投与前に99%狭窄を認め,肺動脈との間に拡張・蛇行した異常交通枝を認めた.狭窄はnitroglycerin 0.1mg,urokinase 72 万単位の右冠動脈内注入にて軽度改善した.以後患者は順調に経過し,入院43日目に心臓カテーテル検査を施行した.急性期99%狭窄を認めた箇所は軽度の壁不整を認めるのみであり,右冠動脈から1本,左冠動脈から2本,合計3本肺動脈との間に異常交通枝を有し,また右冠動脈から左前下行枝へ豊富な側副血行路の発達を認めた.
    以上より,本症例は冠動脈-肺動脈間に3本の異常血管を有する冠動脈-肺動脈異常交通症の1例であり,急性期および慢性期に施行した冠動脈造影所見を比較検討することにより,冠動脈-肺動脈間の3本の異常交通枝および左右冠動脈間の豊富な側副血行形成が特異な冠循環を作り上げ,2回にわたる心筋梗塞の病態に特異な修飾を加えた可能性が推測され,興味ある症例と考えられたので報告する.
  • 山村 真由美, 宮保 進, 山村 至, 多々見 良三, 石瀬 昌三, 大槻 典男, 小田 恵夫
    1986 年 18 巻 3 号 p. 321-327
    発行日: 1986/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Pseudoxanthoma elasticum(PXE)は皮膚,眼,心血管系の弾力線維の変性を特徴とする遺伝的疾患と考えられている.今回著者らは,皮膚,皮膚組織所見,眼底に典型的なPXEの変化を有し,sicksinus syndrome (SSS) を伴った1例の心血管病変について文献的検討を加えて考察した.症例は59歳,女性.眼前暗黒感で入院,7年前に高血圧を指摘されたことがあるが入院時は正常血圧であった.臍周囲,頸部,腋窩,肘窩,鼠径部に対称性の黄色皮疹を認め,組織学的に変性弾力線維の増殖,カルシウムの沈着を認め,眼底に色素線条がみられた.心電図24時間連続記録にて,房室解離を伴うHR30以下の洞性徐脈,接合部補充調律を,電気生理学的検査により洞結節回復時間の著明な延長を認め,SSSを合併したPXEと診断したが眼前暗黒感が頻発するために恒久的ペースメーカーの植え込みを行った.冠動脈造影にて右冠動脈に狭窄を,心臓カテーテル検査で右心系,左室拡張末期圧の上昇を,左室造影にて左室壁の肥厚を認めた.左室肥大および左室拡張末期圧の上昇は過去に合併した高血圧症によるものと解釈された.本例におけるSSS,冠動脈狭窄および高血圧の既往の合併は一元的にPXEによるlarge,medium およびsmall arteryの壁の変化の可能性が示唆され,本症例を通じて,PXEの心血管病変は冠動脈,心ポンプ機能の検討の他,刺激伝導系も含めた詳細な検索と,十分な経過観察が必要であると思われた.
  • 菅 啓祐, 北村 誠, 仁木 俊平, 渡辺 都美, 落合 正和
    1986 年 18 巻 3 号 p. 328-333
    発行日: 1986/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は既往歴に高血圧と陳旧性心筋梗塞を有する73歳女性,昭和57年5月,左片麻痺を伴う脳梗塞の診断を受けた.9月下旬に,Adams-Stokes 発作を伴う徐脈頻脈症候群を来し経静脈性右室ペーシング治療を開始した.約3カ月後から心房細動を繰返し,次第に Sensing failure からペーシング不全となった.その後急速に右下肢壊死および腎不全を来し死亡した.病理所見にて,ペーシング部位の新鮮心筋梗塞および脳,肺,腎,などの多発性血栓・塞栓,腹部大動脈から右腸骨動脈にかけての巨大血栓を確認した.
    本症例は,基礎疾患として全身性の動脈硬化を有していたが,ペーシング治療が多発性梗塞症を来す誘因となったと推定された.高度の動脈硬化を伴う症例にペーシング治療を施行する際には,凝固系への配慮の必要性を強く示唆するものであった.
    ペースメーカー治療の合併症の1つとして動脈塞栓症が問題となり得るが,その発生因子としては,心房細動などの頻拍状態,ペーシングの伝導様式,心不全などの報告が散見される.その場合の塞栓部位は脳,腎臓に多く,塞栓による心筋梗塞症の発症はまれである.
    今回,われわれはSick Sinus Syndrome 例にペースメーカー治療を施したところ,広範な多発性の動脈塞栓症を生じ,さらに冠状動脈塞栓が原因と考えられる心筋梗塞症をも併発し,結果的にペーシング不全を生じたと解釈される特異な1症例を経験した.その剖検所見と併せて多彩な臨床像に文献的考察を加えて報告する.
  • 田中 伸明, 松崎 益徳, 阿武 義人, 小川 宏, 松田 泰雄, 久萬田 俊明, 伊達 敏明, 部坂 浩二, 楠川 禮造, 高橋 睦夫, ...
    1986 年 18 巻 3 号 p. 334-341
    発行日: 1986/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心アミロイドーシスの死因として,心不全死および不整脈が原因と考えられる突然死がある.今回われわれは多発性骨髄腫に合併する心アミロイドーシスの1例で,約1年間のスカラー心電図を経時的に記録し,異常左軸偏位の出現,P-Q間隔の延長を認め,ヒス束心電図上H-V間隔の異常延長をみたため,早期にVDDモードの恒久ペースメーカー植込みを行った症例を経験したので報告する.
    症例は63歳男性.62歳頃よりしばしば呼吸困難発作を繰返し,心電図上V1-3にQSパターンを認め,初診医で陳旧性心筋梗塞および左心不全の診断を受けていたが,心不全症状を反復するため,精査目的で当科へ入院した.
    心臓カテーテル検査にて冠動脈に異常なく,同時に施行した心内膜下心筋生検にて心アミロイドーシスと確定診断された.房室伝導および心室内伝導障害を伴っていたため,ヒス束心電図検査を行い,HV間隔85msecと1度H-Vブロックを認めた.さらにprocainamide,disopyramideの薬物負荷により,H-V間隔の著明な延長をみたため,原疾患の予後をも考慮し,恒久ペースメーカーの植込みを行った.
  • 大枝 由充子, 永田 雅良, 加藤 真三, 楠原 正俊, 藤島 清太郎, 渡辺 憲明, 川村 顕
    1986 年 18 巻 3 号 p. 342-348
    発行日: 1986/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    高度の僧帽弁狭窄症の62歳の女性患者で,内服薬服用の中断を契機に一過性の循環不全に陥り,脳症をも伴う著明な肝障害をきたした1例を経験した.
    入院時には血圧低下,肺うっ血所見および低酸素血症を認めたが,内科的治療により,短時間で全身の循環動態は改善した.しかし第3病日に羽ばたき振戦を伴う意識障害が出現し,脳波上でも代謝障害にもとづく脳症と考えられた.著しいプロトロンビン時間の延長,血清酵素の異常高値などを認め,肝性脳症と診断した.その後,血液所見の急激な改善とともに脳症は消失した.第43病日の症状改善後の肝生検標本では,軽度ながら中心静脈周囲にうっ血,変性の所見を認めた.心疾患例において,脳症をも伴う著明な肝障害の合併例の報告は少ない.
  • 遠藤 康弘, 茂木 紹良, 加藤 修一, 斎藤 浩
    1986 年 18 巻 3 号 p. 349-354
    発行日: 1986/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は83歳女,入院前2回の失神発作と入院後も3回失神・低血圧発作を起こした.いずれも口唇チアノーゼを伴い5分以内に回復するものであった.当初診断に苦慮したが,心エコー図により右室負荷所見が得られSwan-Ganz カテーテルにより,高度の肺高血圧と右房圧上昇および心拍出量低下を認めた.続いてSwan-Ganzカテーテルを用いて肺動脈造影を行ったところ,右下肺野の肺動脈の途絶・閉塞所見より肺塞栓症と診断した.血栓溶解療法により失神発作は消失し,血行動態所見も改善した.
    肺塞栓症は臨床像が非特異的であるため診断が困難な場合がある.本症例のように短期間に反復する失神・低血圧発作を起こす肺塞栓症はまれと思われ,文献的考察を加え報告した.
  • 村尾 覚, 高安 正夫, 上田 英雄, 三枝 正裕, 曲直部 壽夫
    1986 年 18 巻 3 号 p. 355-370
    発行日: 1986/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
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