心臓
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18 巻, 4 号
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  • 正常心における収縮動態の部位的差異
    古川 啓三, 海老沢 哲也, 盛川 洋一, 稲垣 末次, 辻 光, 北村 浩一, 樋上 雅一, 幸田 正明, Hiroaki Nakagaw ...
    1986 年 18 巻 4 号 p. 379-386
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    16名の健常人の多段階臥位亜最大負荷時に得られた左室短軸断層図の左室ならびに局所壁動態を定量的に評価した結果,
    (1)運動負荷により拡張末期左室断面積は軽度増加,収縮末期断面積は段階的に縮小し,fractionalarea changeは段階的に増加した.その負荷による左室動態の増強は心基部側に比較し心尖部側に著明であった.
    (2)安静時の左室局所壁動態は心室中隔側に比し左室自由壁側で大であったが,部位的差異は運動負荷時にさらに増強した.
    (3)心内腔断面積重心は収縮期に中隔側より前壁側方向へ移動するが,この移動は負荷時には増大した.
    以上,正常心の左室ならびにその局所壁動態には部位的差異を認め,運動負荷時にはこの差異が増強した.よって,疾患心の評価においてこれらを考慮した解釈が必要である.
  • 大北 泰夫, 戸次 久敏, 緒方 康博, 冷牟田 浩司, 岡部 浩司, 石崎 孝嗣, 戸嶋 裕徳, 宇津 典彦, 的場 恒孝
    1986 年 18 巻 4 号 p. 387-395
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    安静時の胸痛発作時に,血圧上昇を伴うST下降型狭心症の発症機序を明らかにする目的で,胸痛発作時の心電図・動脈圧の連続記録と,多段階運動負荷試験を7例に施行した.
    (1)安静時の胸痛発作では,心電図ST下降は,胸痛出現より2.6±2.6分(mean±SD)先行した.心電図ST下降出現より3.9±2.0分前で,心拍数(HR)および血圧の安定した時点でのHR,収縮期動脈圧(SAP),拡張期動脈圧(DAP),rate pressureproduct(RPP)の値は,各々57±7/分,128±22mmHg,64±10mmHg,7,242±1,400であった.胸痛出現時には,それらの値は,68±12/分,153±29mmHg,76±15mmHg,10,453±3,018と増加した.SAPが最高値を示したのは,胸痛出現後7.1±3.5分で,この時の諸値は,74±9/分,185±39mmHg,88±15mmHg,13,538±2,695であり,動脈圧とRPPは胸痛出現時よりさらに増加した.すなわち,血圧の上昇は,胸痛出現より前のみならず出現後にも有意にみられた.
    (2)同一例で,安静での胸痛出現時と運動負荷での胸痛出現時(1例のみ運動では胸痛出現せず負荷中止時)を比較すると,HRは,68±12/分vs114±15/分,SAPは153±29mmHg vs 183±39mmHg,RPPは10,453±3,018 vs 21,186±6,411であり,いずれの値も前者より後者の方で統計的に高値を示した.
    以上より安静時の胸痛発作時にみられる血圧の上昇は,心筋虚血の原因というより結果であり,同一症例であっても運動負荷時の胸痛出現機序とは異なると考えられた.
  • その再現性,検査方法,波形による差について
    鼠尾 祥三, 覚前 哲, 長谷川 浩一, 寒川 昌信, 原田 頼続, 米田 元穂, 忠岡 信一郎, 中尾 正俊, 沢山 俊民
    1986 年 18 巻 4 号 p. 396-402
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    基礎心疾患を認めない健康学童65例の心室性期外収縮に関して,再現性,検査方法や波形による差について検討した.
    再現性は66%にみられたにすぎず,約1/3の例は再現性に乏しかった.運動負荷方法(Master法とTreadmill法)による比較では,Master法で心室性期外収縮の消失した例はTreadmill法でも消失した.Master法で不変例はTreadmill法では負荷中消失する例が多かった.Master法で増加した例はTreadmill法では負荷中,負荷後に増加する例が多かったが,負荷中消失し負荷後も増加しない例が25%にみられた.またTreadmill法で負荷中消失する時は心拍数が毎分160に達するまでに全例消失した.
    Treadmill法とHolter法の比較では,両検査結果の重症度には相関はみられず,Treadmill法で軽症と判定されてもHolter法で重症と判定される例が約30%みられた.
    また心室性期外収縮の波形(右脚ブロック型,左脚ブロック型)から,Treadmill法やHolter法の重症度の予測は不可能と考えられた.
  • 森 善樹, 岡 隆治, 土田 晃
    1986 年 18 巻 4 号 p. 403-410
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症は左室心筋の異常な肥大に伴う左室拡張期コンプライアンスの低下を基本病態とする最近注目されている疾患である.
    今までその報告は成人領域で多くなされてきたが,小児期,特に乳幼児期での報告は少なく,その臨床経過,血行動態の推移などの検討が要求されてきている.また肥大型心筋症は閉塞性,非閉塞性に分類され,その血行動態の違いにより別々に扱われることが多かったが,この両疾患が同一であるとの意見もあり,異同問題に関しても不明のままである.
    われわれは11カ月時心房中隔欠損症,右室流出路狭窄の血行動態を示し,2歳5カ月時には心房中隔欠損症は証明されず肥大型心筋症と診断した1例を経験した.心房中隔欠損症の血行動態を示した肥大型心筋症の報告は少ない.また血行動態の推移として,11カ月時右室-肺動脈間で54mmHg,左室と血圧に80mmHgあった圧較差が,2歳5カ月時には右室-肺動脈間で16mmHgに減少,左室-大動脈間では有意な圧較差はみられなかった.このことは肥大型心筋症として,閉塞性から非閉塞性へと移行したと解され,乳幼児期の肥大型心筋症の経過,また閉塞性,非閉塞性の異同問題を考える意味で貴重な症例と思われた.
  • 松浦 隆, 栗本 透, 唐川 正洋, 馬殿 正人, 東 伸郎, 西原 祥浩, 吉長 正博, 津田 信幸, 土手 健司, 森 晃基, 高野 邦 ...
    1986 年 18 巻 4 号 p. 411-417
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞に合併する心室瘤には真性心室瘤と仮性心室瘤がある.後者には二次破裂の危険があり,早期の外科的治療が必要であるため両者の鑑別はきわめて重要である.
    今回われわれは,超音波検査,RIアンギオグラム,左室造影の所見より下壁梗塞に伴った仮性心室瘤を疑い,心室瘤切除術を行ったところ,手術所見ならびに病理所見から真性心室瘤であったという1症例を経験した.術前の超音波検査ならびに左室造影と手術所見を合わせて考えると,前乳頭筋の左室自由壁付着部よりやや心尖部側から肉柱が心室瘤の交通口付近を横断しており,これにより超音波検査では心室腔と心室瘤の交通口が狭くなっているかのように観察され,左室造影でもこれがあたかも心室腔と心室瘤の隔壁のように見え,さらに造影剤がその後方から心室瘤に流入することによって仮性心室瘤様の所見を呈したものと考えられた.
    近年,超音波検査,RIアンギオグラム,左室造影などにより,仮性心室瘤の診断は比較的容易になったといわれているが,これらの所見の解釈にあたっては,種々の可能性を考慮し,多面的に検討する必要がある.
  • 立川 弘孝, 田辺 進一, 幸田 正明, 古川 啓三, 勝目 紘, 伊地知 濱夫, 北浦 一弘, 中村 昭光
    1986 年 18 巻 4 号 p. 418-422
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    原発性心臓腫瘍の中では粘液腫(myxoma)の頻度が高い.一方,左房粘液腫は組織学的には良性腫瘍でありながら,全身臓器に播種されることが多く,悪性腫瘍的一面を有する.塞栓症は45~60%の例で認められ,頭蓋内動脈,下肢動脈などで高率に発生するのに対して,冠動脈塞栓の報告は少ない.さらに,播種され塞栓となった腫瘍断片がその塞栓部位で種々の血管変化をおこすことがある.中でも頭蓋内動脈の播種部位で多発性動脈瘤を形成することは特異的であり,多くの報告がある.
    今回私どもは,42歳の閉経前の女性で,急性心筋梗塞の発症を契機に発見された左房粘液腫例を経験したが,既往に脳皮質下出血と腎梗塞があり,入院後のRI検査で脾梗塞を疑わせる所見が得られ,頭蓋内動脈造影で多発性の動脈瘤が発見された.
    さらに,冠動脈造影で冠動脈の有意な狭窄と動脈瘤様拡張を認めた.Coronary risk factorの少ない例であり,特異的な冠動脈造影所見から,腫瘍断片による冠動脈塞栓に基づいた急性心筋梗塞と考えられた.粘液腫に起因する冠動脈塞栓症の報告例は少なく,まれな症例と考えられる.
  • 中津 忠則, 川人 里美, 秋田 裕司, 三木 陽子, 宮内 吉男, 松岡 優, 宮尾 益英
    1986 年 18 巻 4 号 p. 423-428
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    先天性心疾患を伴うSmith-Lemli-Opitz症候群の3例を経験した.症例1は11カ月の女児で動脈管開存症を,症例2は7カ月の男児で心室中隔欠損症,肺動脈弁狭窄症および僧帽弁閉鎖不全症を,症例3は1歳7カ月の男児で心室中隔欠損症および動脈管開存症をそれぞれ合併していた.
    本論文では自験例を含む本邦報告の10例をまとめ,文献的に検索できた80例について先天性心疾患合併例を中心に検討した.本症候群における先天性心疾患の合併は80例中30例(37.5%)に認められ,従来述べられているより高頻度であると考えられた.心奇形の種類は動脈管開存症,Fallot四徴症,心房中隔欠損症などが多く認められた.また心房中隔欠損症-動脈管開存症複合が2例にみられ,特記すべき点であると考えられた.
  • 広正 修一, 池田 孝之, 久保田 幸次, 高田 重男, 服部 信, 西村 昌雄, 渡部 良夫
    1986 年 18 巻 4 号 p. 429-436
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    筋強直性ジストロフィー症の1家系において心電図異常を呈した2兄弟と1妹のHis束心電図学的検討を行った.これら3例の筋強直性ジストロフィー症の罹患期間は9から24年にわたり,全例His-Purkinje系伝導時間の70から80msecへの延長を伴ったが,房室伝導障害の重症度は罹患期間に必ずしも一致しなかった.すなわち,罹患期間の最も短い妹は第2度房室結節内ブロックと左脚後枝ブロックを,弟は左脚前枝ブロックを,罹患期間の最も長い兄は第1度房室ブロックを有するも,分枝ブロックを呈するには至らなかった.このような伝導異常とは逆に,調律異常は罹患期間の最も長い兄で最も重症化を示し,兄は右脚本幹にreentry回路を有する発作性心室頻拍を発現したが,弟と妹は洞性徐脈を呈するのみであった.
  • 岡田 雅彦, 井上 博, 大国 雅子, 松尾 史朗, 斉間 恵樹, 山沖 和秀, 中村 雄二, 岸本 道太, 田中 尊臣, 野田 栄次郎, ...
    1986 年 18 巻 4 号 p. 437-442
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    下壁側壁梗塞に合併し,手術により救命し得た仮性心室瘤の1例を,本邦17例の文献的考察を加えて報告する.症例:52歳,男.咳嗽,動悸,息切れを主訴として入院.入院時,心拍数112/分の頻拍,および両肺に湿性ラ音を聴取.胸部X線写真上心胸郭比70%の心拡大を,また,心電図II,III,aVF,V6に異常q 波, I, II, III, aVL , aVF, V4, V5, V6に陰性T波を認め,下壁側壁梗塞に伴う,うっ血性心不全あるいは心筋梗塞後症候群に伴う,心嚢液貯留が疑われたが,断層心エコー図にて左室後側壁下方に収縮期に拡大する巨大な円形のエコーフリースペースがあり,心筋梗塞に合併した仮性心室瘤が強く疑われた.左室造影にて,左室腔と交通した左室腔とは別の腔が証明され,また冠状動脈造影上,左回旋枝本幹に完全閉塞を認め,下壁側壁梗塞に合併した仮性心室瘤と診断し,入院後早期に,瘤切除,破裂口閉鎖術を施行した.切除された瘤壁は,心筋組織および心外膜成分を含まず,組織学的に仮性心室瘤と診断された. 術後経過は順調で, 現在, 社会復帰している.なお,本邦における仮性心室瘤18例のうち,非手術例は殆ど死亡しているのに対し,手術例の予後は良く,特に近年は,心エコー法,心臓核医学検査等の非観血的検査により生前診断がなされ,手術により救命される例が増加している.
  • 岡 隆治, 土田 晃, 森 善樹, 吉岡 一, 村上 忠司, 久保田 宏, 青木 秀俊, 神田 誠
    1986 年 18 巻 4 号 p. 443-447
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肺動脈弁に発生した嚢腫により肺動脈狭窄を生じた4歳の男児例を経験した.
    小児の原発性心臓腫瘍はきわめてまれな疾患であり,なかでも弁に発生した腫瘍の報告は少ない.
    われわれは,左第2肋間の収縮期雑音,心電図上の右室肥大,胸部X線写真での左第2弓の突出より,肺動脈弁狭窄症を疑っていた4歳男児で,断層心エコー図にて右肺動脈弁上部にcystic massを認め,心臓カテーテル・血管造影検査で,肺動脈狭窄と同部位の陰影欠損を確認し腫瘍性病変と考えて手術を施行した.
    手術の結果,弁組織と一致する壁構造を示す,左右の肺動脈弁の交連部にできた嚢腫を摘出した.
    肺動脈弁に発生した嚢腫の報告は本邦では初めてと思われ,文献的考察を含めて報告した.
  • 比留川 勝, 石光 敏行, 平田 恭信, 森田 健, 小出 直
    1986 年 18 巻 4 号 p. 448-452
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Peptostreptococcusによる心内膜炎は比較的まれで,治療法は確立されていない.本菌は心内膜炎起炎菌として1961年以後検出され始めた嫌気性菌であるが,報告例はほとんどない.われわれは最近本症の1治験例を経験したので報告する.患者は54歳の女,15歳時にVSDを指摘された.昭和59年3月より発熱持続し6月当科入院.入院時39℃ に及ぶ弛張熱,胸骨左縁に全収縮期雑音,脾腫,白血球増多,CRP陽性,血沈亢進,両側眼底出血を認めた.UCGで右室流出路に疣贅を確認,血液培養でpeptostreptococcusを検出し,VSDに合併した感染性心内膜炎と診断した.PC-G非感受性菌であったため, CMZ 8 g/ 日を6週間投与した結果, 疣贅は縮少,眼底出血消失し,血沈など諸検査値も正常化し治癒せしめえた.
    本例のごとくPC-G非感受性のpeptostreptococcusによるIEに対しては,CMZが有効な二次選択薬の1つであると考えられた.
  • 秋元 久衛, 三国谷 淳, 高 明休, 山中 朋子, 加藤 正史, 堰合 恭弘, 助川 和夫, 小野寺 庚午
    1986 年 18 巻 4 号 p. 453-469
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の男性.昭和51年頃に高血圧ならびに不整脈を指摘され,昭和57年からは春になると全身倦怠感や咳嗽が出現するようになった.昭和59年9月,易疲労感を主訴に当科入院.心電図では心房細動の所見がみられた.胸部X線写真では心胸郭比59%と心陰影は拡大し,両側下肺野には軽度の網状陰影が認められた.肺換気能検査ならびに肺血流シンチ像には異常所見はみられなかった.心エコー法では肺動脈主幹部が45mmと同部位の拡大は明らかにされたが,その他に異常所見はみられなかった.心臓カテーテル検査では右室圧31/2mmHg,肺動脈圧32/12(20)mmHg,肺動脈楔入平均圧12mmHgと心内圧はほぼ正常と判明され,短絡所見もみられなかった.以上の検査成績から,明らかな原因の認められない肺動脈拡張症と考えられた.本症例の肺動脈主幹部内の9点にsample volumeをおいて,超音波パルスドプラー法によりその血流動態を検討したところ,収縮中期以後に肺動脈主幹部内左側から中央部および右側に旋回する血流パターンが得られた.この成因には肺動脈主幹部の拡張による右肺動脈分岐屈曲度の増加,ならびに肺動脈壁弾性低下等が関係するものと考えられ,興味深い所見と思われた.
  • 石川 自然, 稲葉 美徳, Gerd Steding
    1986 年 18 巻 4 号 p. 460-463
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    鶏胎初期の生理学的発育を調べる方法として,心電図の記録が試みられてきた.
    心電図の生理学的発育過程を観察することによって,心形態形成の複雑なメカニズムを間接的に,把握することが,可能である.
    今回,当教室で,鶏胎初期(Hamburger-Hamiltonstage17~28)における正常心電図の記録と分析がなされ,発育過程における変動として,QRSの幅,PR,QT間隔,R/Sの比など検討したので報告する.
  • 北村 和夫, 入沢 宏, 春見 建一, 山田 和, 河合 忠一, 阿久津 哲造
    1986 年 18 巻 4 号 p. 465-478
    発行日: 1986/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
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