心臓
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19 巻, 2 号
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  • 側枝閉塞の危険性とkissing balloon techniqueの有用性について
    紀田 貢, 木村 剛, 安本 均, 野坂 秀行, 日比野 均, 三岡 相啓, 黒澤 好文, 大塚 真一, 横井 博厚, 細川 博昭, 荒川 ...
    1987 年 19 巻 2 号 p. 137-143
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Kissing balloon technique(KBT)の有用性と適応について検討するために,前下行枝一対角枝分岐部狭窄の症例138例について検討した.狭窄部より複数の対角枝が出ている症例が12例存在するため151本の対角枝が対象となった.38例にKBTを試み31例(82%)で成功した.KBT成功例では全例で前下行枝の狭窄の改善を認めただけでなく,対角枝の狭窄も87.1%(27/31)で改善,12.9%(4/31)で不変であった.KBT不成功の7例には前下行枝のみの拡張を行い,最初から前下行枝のみの拡張を行った100例と合わせた107例の有する対角枝120本についてPTCA後の閉塞率は15.8%(19/120)となった.前下行枝狭窄部の石灰化の有無は対角枝閉塞率に影響を与えなかった.Intimal flapやdissectionを有する群ではそうでない群より対角枝閉塞率がやや高率であったが有意差はなかった.対角枝のostium(入口部)の狭窄度が50%を越える群,対角枝付着部の前下行枝の狭窄度が50%を越える群での対角枝閉塞率はそれぞれ30%以上であり,そうでない群よりも有意に閉塞率が高かった.以上のような閉塞の危険の高い対角枝に対してKBTは非常に有効な冠拡張法であった
  • 森 一博, 里見 元義, 遠山 歓, 小西 貴幸, 中村 誠, 中村 憲司, 高尾 篤良
    1987 年 19 巻 2 号 p. 144-152
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    連続波ドプラおよびMモード心エコー図を用いて,正常大血管群9例,大血管転換群11例,計20例の肺動脈絞掘術施行症例の非侵襲的効果判定を行った.連続波ドプラ法により肺動脈内の絞拒術施行部位での最高流速を測定し簡易Bernoulli式より圧較差を推定し,カテーテル検査での値と対比した.その結果,r=0.93の相関を認めたが,大血管転換の有無による有意差はなかった.次に,肺動脈弁MモードエコーによるPEP/ETを測定し,カテーテル検査での絞拒遠位部肺動脈圧と対比した.その結果,収縮期圧でr=0.89・拡張期圧でr=0.88の相関を示したが,大血管転換の有無による有意差はなかった.以上より,連続波ドプラによる肺動脈内の絞掘部位での最高流速の測定およびMモードによるPEP/ETの測定を組み合わせて判断すれば,大血管転換の有無にかかわらず,肺動脈絞拒術の非侵襲的効果判定が可能であると考えられた.
  • 単回投与における血中濃度と冠疾患重症度との関連について
    原田 頼続, 鼠尾 祥三, 長谷川 浩一, 寒川 昌信, 中尾 正俊, 忠岡 信一郎, 和田 佳文, 覚前 哲, 米田 元穂, 中村 節, ...
    1987 年 19 巻 2 号 p. 153-160
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Diltiazemの運動耐容能に及ぼす影響を血中濃度ならびに冠動脈病変数との関連において安定型労作狭心症15例を対象に検討した.
    Diltiazemを1回30mg,60mg,90mg投与し,それぞれ4時間後にトレッドミル運動負荷試験を行った.本剤投与後の血中濃度はそれぞれ59ng/ml,127ng/ml,247ng/ml,最大運動時間は投与前のそれに比し0.58分,1.73分,2.3分,同じく0.1mVST低下出現時間は0.75分,2.13分,3.17分と用量依存的に増加延長した(p<0.05).また,pressure rate product(PRP)は投与前に比し投与後安静時より9.4%,18.1%,25%低下したが(p<0.05),最大負荷時には著変を認めなかった.
    Diltiazem血中濃度と0.1mVST低下出現時間延長効果との関連を冠動脈病変数別に検討すると,1枝2枝病変例では良い相関を示したが(r=+0.732,r=+0.742),3枝病変例では低値であった.また,1.5分以上の運動時間延長を有効とした場合,1枝病変例では比較的低濃度でも有効であったが,多枝病変例では100ng/ml以上の血中濃度が必要であった.また,Diltiazemの運動耐容能改善の機序としては,安静時ならびに運動負荷時における心筋酸素需要の抑制が主であり一部供給の増大も考えられた.
  • 宮原 隆志, 横田 充弘, 岩瀬 三紀, 堀沢 俊雅, 上原 晋, 吉田 純司, 野田 省二, 小出 正文, 恒川 純, Masato Ts ...
    1987 年 19 巻 2 号 p. 161-167
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠動脈疾患患者55例および健常人8例に臥位自転車ergomter運動試験を施行し,平均肺動脈襖入圧(PCWP)およびMモード心エコー図による最大左房径(LAD)を経時的に測定し,臥位自転車ergometer運動試験時のLAD計測の臨床的意義を検討した.
    1)冠動脈疾患患者においてpeak運動時と安静時PCWPの差(ΔPCWP)とLADの差(ΔLAD)およびΔPCWPとLAD3より求めた左房容量(LAV)の差(ΔLAV)の間には有意な正相関が存在した(それぞれ,r=0.62およびr=0.66).後者の相関がより大であったことは,PCWPの変化が左房容量の変化として反映されることを示唆した.
    2)冠動脈疾患群と健常群の間には,臥位自転車ergometer運動試験時のPCWP応答に相違がみられた.
    3)以上より,Mモード心エコー図による最大左房径計測は,臥位自転車ergometer運動試験において経時的PCWP変化を推定するに有用な非観血的手段であり,前負荷指標の経時的計測により,臥位自転車ergometer運動による心予備能評価の精度の向上を計ることが可能である.
  • 広正 修一, 池田 孝之, 久保田 幸次, 高田 重男, 山本 正和, 中村 由起夫, 中村 暁, 森下 大樹, 八木 伸治, 広瀬 龍吉, ...
    1987 年 19 巻 2 号 p. 168-174
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    筋強直性ジストロフィー症の8例でHis束心電図法による心臓電気生理学的検討を行った.心電図所見上,1度房室プロツクとQRS時間の延長はそれぞれ6例に認められた.電気軸の異常は5例に見られ,うち4例では左脚前枝ブロックが,他の1例では左脚後枝ブロックが示唆された.また1例では間歌性Wenckebach型2度房室ブロックが見られ,完全左脚ブロックも1例に認められた.以上の伝導異常の他に,調律異常では5例で洞性徐脈が,1例で致死性不整脈である発作性心室頻拍の自然発生が認められた.His束心電図検査では,8例中7例にH-V時間の60ないし80msecへの著明な延長がみられ,非常に高頻度でHis-Purkinle系に伝導障害が存在することが示唆された.さらに症例1では右室プログラム刺激により心室頻拍の誘発が可能であり,筋強直性ジストロフィー症の突然死の原因として高度房室ブロックの他に心室頻拍もその可能性があることが考えられた.
  • 大久保 俊平, 内藤 雅裕, 吉岡 公夫, 中西 宣文, 大林 良和, 国枝 武義, 中島 伸之
    1987 年 19 巻 2 号 p. 175-184
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    反復性肺血栓塞栓症の15例を報告した.本症は肺動脈の血栓性閉塞による高度の肺高血圧およびそれによる慢性肺性心を主病態とする疾患である.我が国ではまだ報告例は少ないが実際には多数例が存在すると思われ,本症を念頭におきつつ,病歴,理学的所見,心電図,胸部X線像,動脈血ガス所見などに注目し,肺換気血流シンチグラムおよび肺動脈造影を行えばその診断は必ずしも困難ではない.本症は内科的治療には抵抗性で予後不良であるため,急性肺血栓塞栓症の早期診断治療および再発防止により本症の発生を防止することが重要である.なお一部の例では肺動脈血栓別除術により病態の著明な改善が得られる場合があるため,積極的に手術適応を考慮すべきと考えられるが,今後手術適応規準のより詳細な検討が必要である.
  • 的場 宗敏, 村上 暎二, 竹越 嚢, 松井 忍, 湯浅 幸吉, 清水 健
    1987 年 19 巻 2 号 p. 185-188
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は48歳男性.左側頸部の腫瘤を主訴に来院した.腫瘤は左胸鎖乳突筋前縁下1/3に位置し,楕円形の鳩卵大であり波動を呈し,発赤・腫脹・圧痛はなかった.CTスキャンにてlow densityの33×22mrnのCT値18の腫瘤ならびに左内頸静脈の欠損を疑う所見を得た.DSAにても静脈相で左内頸静脈の描出はなかった.左側頸嚢胞を摘出したところ,branchial cleft cystと診断され,さらにその深部に総頸動脈,迷走神経,椎骨動脈を確認したが,内頸静脈は痕跡すらなかった.以上より先天性内頸静脈欠損症と診断した.本症例では,顔面浮腫・チアノーゼ・頭痛などの脳循環障害による症状はなく,また,発生学的に内頸静脈欠損とbranchial cleft cyctに関連はないと考えられた.
  • 斎藤 学, 松本 博雄, 村山 博和, 大貫 洋子, 遠藤 毅, 高原 善治, 瀬崎 登志彰, 中村 常太郎, 丹羽 公一郎
    1987 年 19 巻 2 号 p. 189-192
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肺動脈閉鎖,三尖弁形成不全を伴った右室心筋低形成(Uhl病)の乳児例を経験した.
    患者は1カ月男児で,チアノーゼ,多呼吸が著明であり肝腫大を認め右心不全の状態であった.術前プロスタグランディン且の使用と,balloon atrioseptostomy施行で全身状態の改善をはかり,Blalock Taussig手術を行い救命した.
    我々が入手した文献では本症例が11例目である.本疾患の予後は極めて悪く11例中6例は1カ月以内に死亡し,7カ月以上生存している例は本例を含め2例のみである
  • 詫間 通央, 本田 壮一, 佐藤 幸一, 栗永 篤信, 渋谷 和彦, 岡本 美穂子, 三好 美千代, 福田 福平, 熊谷 久治郎
    1987 年 19 巻 2 号 p. 193-199
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は25歳女性.昭和54年5月妊娠5カ月で心雑音,心電図異常の精査のため当科に紹介される.心エコー図にて心室中隔20mm,左室後壁20mmと肥大を認め左室径は30mmと狭小化傾向で肥大型心筋症と診断.同年11月男児出産後はあまり来院せず,昭和59年2月全身浮腫,咳漱きたし再入院.心エコー図で心室中隔151nm,左室後壁16mmと肥大の程度は軽くなり,左室径は58mmと拡大,パルスドプラ法で僧帽弁閉鎖不全を認めた.その後心不全が徐々に増悪し同年11月死亡した.剖検心は660gで両心室の拡大認め,組織では心室中隔を中心に広範な線維化と残存心筋の肥大およびdisarrayを認めた.本例は肥大型心筋症より拡張型心筋症様所見に移行した興味ある症例と思われ若干の考察を加えて報告した.
  • 加藤 秀徳, 根沢 義房, 船崎 俊一, 村田 実, 松岡 東明, 高野 論, 柴田 昭, 岩 喬
    1987 年 19 巻 2 号 p. 200-205
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    再発性持続性心室頻拍(VT)は致死的不整脈として重要である.今回我々は左室瘤に伴った薬剤抵抗性VTを経験し,電気生理学的検査を行い最早期興奮部位を同定し,外科治療を行った.症例は60歳女性.2年前より持続性VTが出現し,直流通電にて治療され,6.Og/日のprocainamideに対してもVTが頻発し,その都度ショックおよび神経症状を伴うようになったため手術適応と判断した.術前の心臓カテーテル検査では,非虚血性左室瘤が認められ,電気生理学的検査ではVTの誘発・停止が可能で,VTは左室瘤より発生していると考えられた.術中,isoprotereno1点滴下にVTを誘発し心表面のマッピングにより術前に考えられた左室後下壁の心室瘤に一致する最早期興奮部位を同定した後,心室瘤切除および周囲への凍結手術を施行した.切除標本は慢性心筋炎の像を示していた.術後12カ月現在,抗不整脈剤は中止しているがVTの再発は認められない.本症例は心筋炎による左室瘤に合併したVTで,手術によって完治せしめたと考えられた.
  • 1治験例を中心に
    相沢 義房, 佐藤 政仁, 柴田 昭, 江口 昭治, 熊倉 真
    1987 年 19 巻 2 号 p. 206-212
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    再発性持続性心室頻拍の1例に,術中心室頻拍(VT)を誘発し,心内膜マッピングによるフォーカス同定とcryosurgeryを行い治癒せしめた.症例は54歳男性で入院2年前よりVTが出現し,失神を伴い直流通電によりVTは停止した.その後通常量のプロカインアミド,ベラバミルおよびジソピラミド投与を行うもVTはくり返し出現した.イソプロテレノール点滴下にVTが誘発可能で,術前の電気生理検査で最早期興奮部位は右室心尖近くに同定できた.術中もVTは誘発可能で,体外循環下に右室心内膜マッピングを行い,体表面QRS波に20msec先行する最早期興奮部位が同定でき,術前の結果と一致するものと考えられた.Cryosurgeryにより術後VTは消失し,電気生理検査でも誘発不可能となった.本例は切除標本により異形成と診断され,一方左室心尖部にも限局した心室瘤を有していたが,後者はVTのフォーカスではなかった.
  • 久賀 圭祐, 山口 巖, 竹村 博之, 来栖 武雄, 富沢 巧冶, 野口 祐一, 杉下 靖郎, 伊藤 巌
    1987 年 19 巻 2 号 p. 213-221
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は38歳女性.主訴は動悸発作.表面心電図は洞調律および心室固有調律を示した.
    洞調律における心房早期刺激の連結期の漸減により右脚ブロックが,ついでHVブロックが生じたが,さらに短い連結期でHV時間は突然不連続的な延長を示し,右脚ブロック型のQRSで房室伝導が再開した(II型gap現象).連結期をさらに短縮させると,AH時間は著明で不連続的な延長を示すと同時に右脚ブロックは消失して,正常QRS波形で房室伝導が行われた(右脚の1型gap現象).
    心房ペーシング調律における心房早期刺激により房室伝導曲線の2カ所においてAHブロックが生じ,それぞれにAH時間の不連続的な延長が認められた(IV型gap現象).
    以上の結果より,洞調律において,His-Purkinje系のdual pathwaysが関与するII型gap現象および房室結節のtriple pathwaysのfast pathwayおよびintermediate pathwayの2経路のみが関与する右脚の1型gap現象が,心房ペーシングによるslow pathwayの顕在化によって,房室結節のtriple pathwaysの3経路の全てが関与するIV型gap現象に変換した,と考えられた.
    本例は房室結節のtriple pathwaysの関与するIV型gap現象と,His-Purknke系のdual pathwaysの関与するII型gap現象を示したまれな症例と思われる.
  • 三者併用療法を施行した血管肉腫
    西山 安浩, 山下 政紀, 古田 陽一郎, 岡部 浩司, 大島 文雄, 大北 泰夫, 古賀 義則, 戸嶋 裕徳, 川良 武美, 原 洋, 古 ...
    1987 年 19 巻 2 号 p. 222-229
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は37歳女性,息切れ,腹部膨満感を主訴として来院心エコーにて右心房内に無茎性に突出した異常腫瘤および著明な心嚢液貯留を認めた.心臓カテーテル検査では,この腫瘤は右冠動脈洞結節枝および左冠動脈回旋枝より出た心房枝により豊富な栄養血管で栄養されていた.手術適応の有無を判断する目的で心内膜生検を施行し,壷管肉腫の診断を得た.この時点で手術適応なしと判断し対症療法にて経過観察していたが,次第に症状増悪,心エコーにて右心房内腫瘍の増大を認めるようになり,このまま放置すれば早晩三尖弁口が腫瘍により閉塞される危険1生が出てきたため,この右心房内に突出した腫瘍の部分的摘出術を施行した.術中,腫瘍は心外膜面に心外性発育を来しており,一部心嚢との浸潤性癒着を認めた.この部の切除は不能と判断,右心房内腫瘍のみを心内膜面より切除した.術後に放射線療法,化学療法を併用した.術後,胸部X線にてびまん性に粒状~結節性の転移性陰影を認めるも短期間のうちに改善し,化学療法の効果と考えられた.しかし,多発性脳転移を併発し腫瘍性脳出血にて術後58日目に死亡した.剖検では,心外膜面にみられた腫瘍は著明に縮小しており,心房内腫瘍再発もなく,放射線療法が十分効果を発揮していたものと考えられた.転移は脳,肺,卵巣に認められ,化学療法は肺にはある程度の効果があったと考えられたが,脳にはその効果は認め得なかった.
  • 小塚 隆弘
    1987 年 19 巻 2 号 p. 232
    発行日: 1987年
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 広田 一仁, 安田 光隆, 奥 久雄, 生野 善康, 竹内 一秀, 武田 忠直, 越智 宏暢
    1987 年 19 巻 2 号 p. 233-239
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    運動負荷時の心電図同期心プールシンチグラフィに新しい画像解析処理法であるFactoranalysisを応用し,虚血性心疾患における負荷時の各factorの動向について検討した、対象は労作性狭心症および心筋梗塞14例で,12例が有意の冠動脈所見を持つ.負荷は仰臥位エルゴメータを用い,左前斜位心プール像の3 factor imageを描出して,その左室部分のみを評価の対象とした.負荷前に左室内に異常factorをみたのは14例中4例で,負荷時には13例で異常がみられ,負荷後10分では4例に異常factorがみられた.負荷前にはなかった異常factorが負荷時に出現する例は14例中7例で,このうち5例は負荷後に異常を認めなくなった.負荷前から存在した異常factorが負荷時に増強した例は3例であり,運動負荷による異常factorの出現または増強が71%にみられた.しかし,一貫して異常factorが描出されない例や,負荷によって逆に異常factorの消失する例なども認められた.殆どの例で運動負荷時に異常factorの出現/増強をみた事により,本法によって心予備能を左室局所壁運動の面から評価できる可能性が示唆された.
  • 石田 良雄, 金 奉賀, 常岡 豊, 松原 昇, 武田 裕, 井上 通敏, 鎌田 武信, 木村 和文, 小塚 隆弘, Edward L. Y ...
    1987 年 19 巻 2 号 p. 240-250
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    RI心プールスキャン法による拡張早期左室最大充満速度(PFR)の非侵襲的計測によって,左室弛緩速度を間接的に評価し,心機能異常の早期徴候である弛緩障害を診断しようとする試みが盛んである.本研究は,PFRの計測における精度の問題,規準化の問題とともに,臨床応用に際しての「PFRは左室弛緩速度を反映する」という前提が妥当かについて,検討した.計測精度については,左室容積曲線の時間分解能を向上させる点でfrarning rateを高める心要が認められ,20msec/Fが妥当と考えられた.R波同期法では,加算心拍のR-R間隔の変動が大きい時拡張早期曲線の精度が低下するため,これを補う方法としてII音同期法が有用であることが知られた.PFRは,従来拡張末期容積による規準化(EDV/sec)によって用いられてきたが,その生理学的意義は明らかでない.count-based methodによる左室容積算出にて,PFRを実際の速度(ml/sec)で求め比較検討した結果,EDVによる規準化ではEDVの個体差に影響されるので,その変化は実際のPFRの変化を必ずしも正しく反映しないことが知られた.また,僧帽弁圧・流量関係の実験的解析から,PFRは拡張早期の最大左房左室圧較差によって規定されるので,PFRは左室弛緩速度以外の因子,特に左房圧の影響を考慮する必要があると考えられた.以上より,左室弛緩速度の間接的評価を目的としたPFRの計測には,技術的問題とともに,その前提にも解決されるべき問題性を含んでいることが指摘される.
  • 五十嵐 豊, 元田 憲, 水野 清雄, 清水 賢巳, 新田 裕, 竹田 亮祐, 分校 久志, 久田 欣一
    1987 年 19 巻 2 号 p. 251-260
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症の不均一性肥厚の成因を明らかにするため,左室・両室造影像に基づき中隔肥厚型・中隔-心尖前壁肥厚型・心尖前壁肥厚型・非特異的肥厚型の4群に分類し,運動負荷T1-201心筋シンチグラフィーを行い,circumferential profiles解析にて初期取り込み率(UT),washout rate(WR)を求めて検討した.対象は冠動脈造影上異常のない肥大型心筋症28例,対照10例である.
    結果:平均UTは,対照群に比し特異的肥厚を反映する心尖から前壁中隔の底部を中心に有意に低下し,立体的に最も厚く心筋が投影される前壁中隔心基部で有意に増大した.,均WRは,4群共に全ての分画で有意に低下し,特異的麗厚を反映する分画では著しく低下した.このWRの低下は,UTが増大している部位でも認められた.UT・WRの双方または一方が対照群の平均値-2SD以下を示した分画を有する症例は28例中17例(61%)認められ,うち12例はWRのみ低下していた.異常低値の25分画中21分画(84%)はWRのみ低下し,うち16分画は特異的肥厚部位であった.最も薄い後側壁分画で,UTの正常な20例のWRは有意に低下していた.
    以上から,不均一性肥厚部位を中心とするWRの低下が,肥大型心筋症の特徴を示している.UTとWRの低下は冠微小循環障害により,WRの単独低下は冠微小循環障害と共に心筋細胞代謝障害によるものと推定され,この両障害は不均一性肥厚の成因に密接に関係している.
  • 塩谷 英之, 須田 研一郎, 森 孝夫, 大西 正孝, 山辺 裕, 横田 慶之, 福崎 恒, 前田 和美
    1987 年 19 巻 2 号 p. 261-268
    発行日: 1987/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋症の冠予備能の低下の機序およびその臨床的意義を明らかにするため,dipyridamole負荷時および3時間後にT1-201心筋ECTを施行し臨床所見,心エコー所見,病理所見と対比検討した.対象は非閉塞性肥大型心筋症(HNCM)20例および拡張型心筋症(DCM)20例の計40例である.HNCMにおいては不均等肥厚部位である前壁または中隔に9例ではdipyridamole負荷時defectは認められなかったが,11例(55%)ではdefectが認められ3時間後には全例再分布(Rd)が認められた.一方DCMではdipyridamole負荷時全例にdefectが認められ9例(45%)に3時間後Rdが認められた.HNCMにおける肥厚部でdefectを認めなかった群(Group I)と一過性灌流欠損を認めた群(Group II)を比較すると,心エコー上両群で心室中隔厚,左室後壁厚には差はなかったものの% fractional shortening(%FS)はGroupIIで有意に低値を示した.また心筋生検標本の%fibrosisの比較ではGroup IIがGroup Iより有意に高値を示した.一方DCMにおいてはRd(+)群とRd(-)を比較すると%FSはRd(+)群がRd(-)群に比し有意に高値を示し,Rd(+)区域はRd(-)区域に比し,より壁運動異常が軽度であった.また中隔にRdを認めるdefect群とRdを認めないdefect群の心筋生検標本上の%fibrosisを比較すると後者が高値を示した.以上より心筋症の一部に冠予備能が低下している例が存在することが示され,この冠予備能の低下が線維化と関連した機序に起因し,病態の進展と関連を有すると考えられた.
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