心臓
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19 巻, 6 号
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  • 死亡前10年間の検討および剖検心との対比
    石嶋 光明, 森 秀樹, 宇都宮 俊徳, 奥 保彦, 橋場 邦武, 渋谷 統寿, 所澤 剛, 藤井 秀治, 岸川 正大
    1987 年 19 巻 6 号 p. 671-680
    発行日: 1987/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Duchenne型進行性筋ジストロフィー症(DMD)の心電図変化について同一症例を死亡するまで経年的に追跡観察した報告はほとんどみられない.我々はDMD12例における死亡前10年間の経年的心電図変化,脈拍数の経年変化および死亡時心電図と剖検心との対比について検討した.
    心電図変化では,死亡年時にはST-T変化75%,肺性P波75%,異常Q波50%,V1誘導での右脚ブロック型変化(rsr')58%などが認められ,心電図異常はこれまで報告されている頻度より高率にみられた.平均電気軸は右軸偏位傾向がみられ観察開始時と死亡年との間に有意差(p<0.01)を認めた.V5誘導でのR波高は経年的に減高し死亡7年前と死亡年との間に有意差(p<0.05)を認めた.V、誘導でのR波高,R/S比は変動が大きく一定の傾向は認められなかった.
    脈拍数は死亡3年前より増加傾向を示した.また死亡3カ月前には脈拍数は急激に増加して,死亡3年前との間に有意差(p<0.01)を認めた.脈拍数の変化はDMDの心肺機能不全を判定する簡単で有用な指標と考えられ,平均100拍/分の頻拍が持続すれば予後は約3カ月といえる.
    4症例における剖検心では,いずれの症例も心筋の線維化,変性が主要病変をなしていたが,心電図所見と心筋線維化病巣の程度,範囲とは必ずしも一致しなかった.
  • 河本 修身, 芹澤 剛, 大谷 哲夫, 馬 業新, 飯塚 昌彦, 杉本 恒明
    1987 年 19 巻 6 号 p. 681-685
    発行日: 1987/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ラット摘出灌流心等容収縮標本を用いて,cyclicAMPの誘導体dibutyrylcyclicAMP(DBcAMP)の心筋収縮,弛緩能,左室拡張能および冠血管抵抗に対する作用を検討した.DBcAMP濃度3×10-5~10-3Mの範囲において心筋収縮速度の指標である左室dp/dtは用量依存的に増加,心筋弛緩速度の指標である左室等容弛緩期の圧下降曲線の時定数(T)は段階的に減少した.また冠血管抵抗も心筋収縮速度に変化が見られる濃度以下ですでに低下し,用量依存的に減少した.しかしながら左室収縮期圧(LVPSP),左室拡張終期圧(LVEDP)には有意の変化は認められなかった.
    DBcAMPの血管平滑筋に対する作用が,心筋に作用する濃度より低い段階で出現し,しかも比較的高濃度でも心筋収縮力増加作用が見られない事実は,本薬剤の心不全治療上の効果の多くは,末棺血管平滑筋拡張による後負荷軽減作用によるものと考えられる.
  • 堤 健, 関谷 宗一郎, 清水 和彦, 岡崎 修, 春見 建一
    1987 年 19 巻 6 号 p. 686-692
    発行日: 1987/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Glucose欠如のタイロード液(modified Tyrode solution)の低酸素灌流下における心筋活動電位,activation time(ACT)変化に対するCoQ10の効果を検討した.modified Tyrode液灌流後,心筋活動電位持続時間は著明に短縮,活動電位の大きさも減高した.静止膜電位,O相の最大立ち上り速度も,15分後に脱分極方向へのシフトおよび減弱が観察された,ACTは,灌流後10分までは短縮し,その後延長した.CoQ10(120μg/ml)は,低酸素,glucose欠如による心筋活動電位の抑制に拮抗し,ACTの時間依存性変化を軽減する作用を示した.これらの結果より,CoQ10は,代謝抑制下の心筋活動電位と興奮伝播を正常化する作用を有することが示唆される.
  • 奥田 浩史, 中沢 誠, 高尾 篤良, 黒沢 博身, 高梨 吉則, 今井 康晴
    1987 年 19 巻 6 号 p. 693-698
    発行日: 1987/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    完全大血管転換症に対するJatene手術前後で心室容積特性を測定した。そして,完全大血管転換症1型で左室圧低下後に肺動脈絞掘術を行い左室壁厚の増大をはかった症例(A群)と,左室圧低下を経験しなかった症例(B群)でJatene手術後の左室機能に差があるかどうかを検討した.A群で左室収縮期圧は肺動脈絞掘術前の39±8mmHgから肺動脈絞拒術後は98±22mmHgに上昇した.左室駆出率はA群がJatene手術前0.66±0.13,術後0.64±0.10と術前後とも正常であった.B群ではJatene手術前0.70±0.05とsuper normalであったが,術後には0.63±0.07と正常化した.A群とB群でJatene手術後の左室駆出率に有意差は見られなかった.
    右室駆出率はA群がJatene手術前0.52±0.04,術後は0.56±0.09,B群がJatene手術前0.55±0.09,術後は0.58±0.13であり,Jatene手術後に正常化した.
  • 山崎 英文, 北村 慎一, 長尾 正一, 平田 哲也, 本田 幸治, 片山 知之
    1987 年 19 巻 6 号 p. 699-704
    発行日: 1987/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    血清亜鉛(Zn)の急性心筋梗塞(AMI)における意義を知る目的で,特に重症度・合併症・予後などとの関係を検討した.
    方法: 発症24時間以内のAMI 31例で,Zn・酵素の採血を経時的に行った.Znは原子吸光分析法で測定した(正常値61~121μg/dl).
    結果:Znは肺炎・腎不全を合併した2例を除く29例中25例で発症後低下し,第2病日(45.4±14.7)~第3病日(43.8±12.8)に最低となり,6病日に正常化した.24時間以内死亡の4例を除いた25例で以下の検討を行った.梗塞部位,年齢でZn最低値(Zn値)に有意差はなかった.Zn値はCPK最高値(r=-0.481, P<0.05),LDH最高値(r=-0.521,p<0.01)と負の相関を認めた.重症度との関係では,Killip I・II群(45.6±12.0)に比し,III・IV群(32.9±4.1)でZn値は有意に(p<0.01)低かった.Lown不整脈分類 0~3群(44.7±12.7)に比し4・5群(37.2±9.1)でZn値は低い傾向を示した.心エコー法による左室壁運動の初回発作例19例の検討では,Zn値はakinesia・dyskinesia君羊(34.3±7.3)がhypokinesia・正常群(46.8±11.8)より有意に(p<0.05)低かった.AMI以外でも肺癌,肝硬変などでZnが低下する例があった.開腹手術では術後1・2日に低値を示し,3日目に正常化しAMIとはやや異なった推移を示した.結論:AMI経過中のZnの推移は,その診断上有用であるのみならず,重症度・合併症・予後などの判定に参考になると考えられた.
  • 石井 潔, 古賀 保範, 鬼塚 敏男, 中村 都英, 吉原 博幸, 前田 正幸, 永田 昌彦, 篠原 立大, 臼間 康博, 柴田 紘一郎
    1987 年 19 巻 6 号 p. 705-711
    発行日: 1987/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1歳6カ月の先天性僧帽弁閉鎖不全症の女児に,SJM弁を用いて人工弁置換術を施行した.術後ICUにて心拍数増加状態(120/分以上)で再現性のある溶血尿を観察した.乳幼児の人工弁置換には,術後急性期の血行動態の安定性に優れており,脈拍数の増加に追随できうること,また抗凝血薬療法の困難なこと等から,生体弁が多く用いられてきた.しかし,生体弁の耐久性の問題から最近ではbile・aflet弁であるSJM弁がしばしば用いられている.乳幼児では,頻拍の問題は避けがたいが,今回,通常みられる程度の心拍数で溶血をきたした乳児の人工弁置換例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 篠原 文雄, 井上 紳, 斎藤 司, 大塚 敏彦, 塩川 章, 風間 和男, 田代 浩二, 矢端 幸夫
    1987 年 19 巻 6 号 p. 712-718
    発行日: 1987/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:73歳,女性,家族歴は特になし.臨床経過:昭和46年糖尿病と高血圧を拙摘され,47年には白内障を合併.昭和55年,56年,57年と毎年心不全で入院.3回目の入院申完全房室ブロックを合併し,ペースメーカー植え込みを勧めるも拒否された.58年5月心不全増強し,第4回目の入院となったが,種々の治療にもかかわらず,心不全改善せず,心室細動をおこして死亡.入院時現症,全身浮腫著明で,血圧140/80mmHg,脈拍48/鰹,第4肋間鵬左縁で最強点を有するLevine III度の収縮期逆流性雑音聴取,検査上中等度の貧血を認め,膠質反応,Al-P,血糖は高値を示すも,CaとPは正常であった.
    外来通院中の胸部X線では両側肺門リンパ節の所見は不明,心電図変化:次第にf波のはっきりしない徐脈性心房紐動からQRS幅正常の完全房室ブロックになり,やがて右脚ブロック型完全房室ブロックへと移行した.病理診断は心サルコイドーシス(サ症)であった.心重量は410gで,サ症は特異的に右房に浸潤し,一方で洞結節,房室結節,ヒス束を侵し,他方で大動脈弁を侵して,完全房室ブロックと狭窄症の原因を成した.心電図変化はサ症の進展を示唆していた.
  • 林 鐘声, 高田 洋, 高 永煥, 神谷 康隆, 清沢 伸幸, 加藤 孝和
    1987 年 19 巻 6 号 p. 719-725
    発行日: 1987/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症に三枝ブロックを合併した1例を経験した.症例は学校検診で肥大型心筋症(非閉塞性)と診断された小学1年の女児.労作時胸痛を1度訴えたほかは自覚症状はなく,β遮断剤の投与にて順調に経過していた.心電図所見は左室肥大と著明な右房負荷を呈し,5カ月後に完全右脚ブロック,右軸偏位を,さらに7カ月後には完全右脚ブロック,左軸偏位,1度房室ブロックを合併し,ついに高度房室プロツクへと進展した.ペースメーカーの植え込みの同意を得られぬまま,その5日後にAdams-Stokes発作を起こし死亡した.心電図経過から三枝ブロックによる高度房室ブロックと診断した.
    肥大型心筋症に高度あるいは完全房室ブロックを合併することはまれで,特に本邦では小児例の報告は見当らないため報告した.
  • 中村 隆志, 北村 浩一, 古川 啓三, 寺島 知史, 山本 克巳, 平田 正弘, 盛川 洋一, 海老沢 哲也, 辻 光, 朝山 純, 勝目 ...
    1987 年 19 巻 6 号 p. 726-732
    発行日: 1987/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    HOCMのまれな1亜型である心室中部閉塞性肥大型心筋症(以下MVO)の1例を経験し超音波ドプラ法により興味ある知見を得たので報告する.
    症例は31歳の男性で,主訴は労作時呼吸困難.心尖部にてLevine3/6度の収縮期駆出性雑音,2/6度の拡張中期ランブルを聴取.断層心エコー図では心室中隔部,後乳頭筋の肥大が著明で,収縮末期に同部が閉塞し,左室腔は2分された.超音波ドプラ法にて左室内血流速度を計測し,心室中部にて収縮,拡張の両相で著明な左室内血流速度の増大を認めた.収縮期最大流速は連続波ドプラ法により4.0m/secと計測され,簡易ベルヌイ式により心室中部での圧較差は64mmHgと計算され,流入血についてはパルスドプラ法により,僧帽弁部で最大0.4m/secであったが,心室中部で最大1.2m/sec,亜硝酸アミル負荷時にはさらに2.1m/secと加速され,雑音の成因として心室中部肥大心筋によるinnow obstructionが示唆された.
    以上,収縮,拡張の両相で肥大心筋による閉塞が認められ,超音波ドプラ法により収縮期圧較差の計測のみならず,拡張期にも閉塞部での異常血流シグナルを検出しえた,極めてまれなMVOの1例を報告する.
  • 山田 光俊, 土居 義典, 浜重 直久, 米沢 嘉啓, 小田原 弘明, 川村 満尾, 西永 正典, 小澤 利男
    1987 年 19 巻 6 号 p. 733-738
    発行日: 1987/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は40歳女性.昭和58年11月,仕事中に耳鳴,動悸,項部痛を覚え,2~3分の意識消失をきたした.以後同様の発作が持続するため,近医受診,心電図の異常を指摘され,昭和60年1月7日当科に入院した.血圧132/64mmHg,脈拍68/分整,心尖部にIV音,II/VI度の収縮期雑音を聴取する.心胸比は42%で,心電図ではII,III,aVFに異常Q波,V1-3にR波の減高を認めた.心エコーでは左室側壁にのみ限局した心肥大を示した.冠動脈造影では有意な器質的病変は認められなかったが左前下行枝中枢側に,収縮期にのみ完全な血流遮断を示すmyocardial bridgeを認めた.非対称性中隔肥大を伴わず,左室側壁に限局した心肥大を示す肥大型心筋症は比較的少ない.さらに本例では著明なmyocardial bridgeを合併しており,失神発作の原因として,myocardial bridgeによる心筋虚血や肥大型心筋症に伴う重症心室性不整脈を推定し,現在さらに検索中である.
  • 和田 達也, 日浅 芳一, 原田 道則, 森本 真二, 相原 令, 吉田 修, 坂東 正章, 中井 義廣, 片岡 善彦, 仁木 由子, 綾 ...
    1987 年 19 巻 6 号 p. 739-745
    発行日: 1987/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠動脈造影にて診断した希有な原発性冠動脈解離の2例を報告する.症例1は安静時狭心症を主訴とした44歳の女性である.冠動脈造影にて,右冠動脈に索条陰影欠損を認め,原発性冠動脈解離と診断した.同時に施行したエルゴノビン負荷試験では,解離部直前に冠攣縮が誘発された.原発性冠動脈解離は,従来より左前下行枝に多いとされていたが,生存例では右冠動脈に多い.また,その成因として本例では冠攣縮により解離が誘発された可能性が示唆された.症例2は,陳旧性後壁梗塞および梗塞後狭心症の48歳,男性例で,解離部は左回旋枝であった.このような部位の解離は,生存例では文献上最初の報告と思われる.
  • 原田 頼続, 加藤 智弘, 沢山 俊民, 鼠尾 祥三, 寒川 昌信, 長谷川 浩一, 中尾 正俊, 忠岡 信一郎, 藤原 武, 正木 久男, ...
    1987 年 19 巻 6 号 p. 746-751
    発行日: 1987/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の女性.昭和60年10月20日頃より心窩部に不快感を訴え,同時に元気がなくなり寝込む事が多く食欲も低下してきた.11月4日,心窩部の不快感が増強するため近医受診し急性心筋梗塞の診断で同6日紹介入院した.この間発熱の既往は1度もない.入院時,胸部写真上,両側下肺野に肺炎様陰影と胸水貯留,心拡大を示し,心電図上,全誘導でST上昇を示し,心臓超音波検査上,著明な心嚢液貯留を認めた.また,強い炎症所見を示し,肺炎からの直接浸潤による化膿性心膜炎を疑い抗生物質の投与を開始した.入院5日目に心タンボナーデを呈したため心嚢穿刺術およびその後部分的心膜切除術が行われた.撲液は膿性で,嫌気性グラム陰性桿菌(Bacteroides fragilis)が検出された.その後,病勢は消退し完治したと判定されたので,患者は昭和61年1月27日退院した.現在も無治療で外来にて経過観察中である.
    化膿性心膜炎は今日では非常にまれで,しかも,Bacteroides fragilisが起炎菌として同定された症例は本邦では報告をみない.
  • 加藤 克治, 小川 潔, 簡 瑞祥, 浜田 朗生, 的場 雅子, 野中 善治
    1987 年 19 巻 6 号 p. 752-757
    発行日: 1987/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    先天性肺動静脈痩は比較的まれな疾患であり中でも,びまん性毛細血管拡張型の肺動静脈痩は心血管造影検査にても確定診断が難しく報告例は極めて少ない.
    本症の診断は,コントラスト心エコー検査,99mTcMAAを用いた肺血流・肺シンチグラムが有用である.
    一過性ガラクトース血症を伴ったびまん性毛細血管拡張型の肺動静脈痩の1男児例を経験したので報告する.
  • 平岡 昌和, 川野 誠子, 平野 裕司, 桜田 春水
    1987 年 19 巻 6 号 p. 760-769
    発行日: 1987/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 渡部 良夫, 羽渕 義純
    1987 年 19 巻 6 号 p. 770-776
    発行日: 1987/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 伊東 盛夫, 妻夫木 茂, 前田 泰宏, 有田 眞, 犀川 哲典, 伊東 祐信, 藤野 武彦, 福本 晃雄, 山田 賢典, 菊地 裕, 佐伯 ...
    1987 年 19 巻 6 号 p. 777-786
    発行日: 1987/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
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