心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
20 巻, 10 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 吉村 宏
    1988 年 20 巻 10 号 p. 1153-1162
    発行日: 1988/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    側副血行路が安静時および負荷時の左室収縮能に与える有効性を検討するため,保存的に治療した急性貫壁性心筋梗塞80症例に発症後平均44.2日で左室造影,冠動脈造影および201Tl心筋シンチグラフィーを施行し,側副血行路の有無別に左室収縮能への温存効果を比較検討した.側副血行路は90%以上の狭窄を示す1枝病変62例中31例(50%)に認められ,その出現頻度および発育程度は冠動脈狭窄が高度である程,高率かつ良好であった.14例の右冠動脈病変例では,側副血行路の有効性は明らかではなかったが,左前下行枝病変66例では,安静時の梗塞領域,特に心尖部の灌流低下をある程度代償し,心筋収縮能温存に有益と考えられた.しかしながら,運動負荷時には但幅"血行路の有効性は明らかではなく,増大した酸素需要に対応するだけの血液供給予備能はないと考えられた.
  • 坂田 信裕, 石田 英之, 青崎 登, 大鈴 文孝, 中村 治雄
    1988 年 20 巻 10 号 p. 1163-1167
    発行日: 1988/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心臓においてカテコールアミンはβレセプターを介し,cAMP量を増加させ,拍動数,収縮力を増すことが知られている.しかし,灌流心や筋線維標本を用いた実験では組織内拡散,内因性カテコールアミンの影響および血管系が関与する問題がある.このため,自動拍動性を有し,血管系や神経系の影響を受けない培養心筋細胞を用いた検討が行われているが,収縮力への検討は心筋細胞が微小なため,あまり行われていない.我々はビデオモーションアナライザーを作製し,培養心筋細胞の辺縁の動きから偏位速度を測定,間接的な収縮力の指標とした.この偏位速度と拍動数,cAMP量を測定し,イソプロテレノールの影響を観察した.マウス胎児培養単一心筋細胞は平均拍動数68拍/秒,収縮偏位速度は0.5μm/秒であった.拍動数とcAMP量はイソプロテレノール添加(0.4~400nM)により濃度依存的に増加したが,偏位速度は4nMで最大の増加率を示し,それ以上の濃度では増加率が低下した.培養単一心筋細胞では低濃度のイソプロテレノールにより拍動性および収縮性がともに増大するが,高濃度では拍動性のみ増加し,収縮性の増加は抑制された.
  • 血中濃度との関連
    中村 節, 鼠尾 祥三, 長谷川 浩一, 忠岡 信一郎, 中尾 正俊, 井上 省三, 河原 洋介, 沢山 俊民, 三谷 一裕
    1988 年 20 巻 10 号 p. 1168-1174
    発行日: 1988/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】Flecainide(F)の心室性期外収縮(PVC)に対する有用性を検討した.
    【対象】24時間心電図で5,000拍/日以上のPVCを認めた22例(平均年齢55歳).
    【方法】他の抗不整脈薬をすべて中止し,F100mg/日を14日間経口投与し,その前後で24時間心電図(PVC総数の75%以上減少を有効と判定)・12誘導心電図・血圧値・血中濃度を測定し,さらに,14例については200mg/日に増量し同様の検討を行った.
    【結果】1)24時間心電図:平均PVC総数は,F100mg/日投与にて,15,288拍/日から2,202拍/日へと減少し,22例中19例に有効で,平均PVC減少率は86.5%であった.F200mg/日へ増量後には,1,031拍/日へとさらに減少し,14例中13例に有効,平均PVC減少率は95.6%で,さらに有効性が増した.2)心電図変化:F100mg/日投与により(1)R-R間隔(821→879msec.),(2)pQ間隔(155→191msec.),(3)QRS幅(76→94msec.)はそれぞれ有意に延長した.(4)QTc間隔(427→434msec.)は有意な変動を示さなかった.F200mg/日増量後には,PQ間隔・QRS幅はさらに有意に延長した.3)血中濃度との関連:F100mg/日投与時の平均血中濃度は256ng/mlで,F200mg/日投与時のそれは726ng/mlであった.血圧値は変動を示さず,副作用は,QT延長を1例に認めた.また,発熱・下痢を1例ずつに認めたが一過性であった.
  • 内科の立場から
    立木 楷, 太田 郁郎, 山口 清司, 小林 公, 安井 昭二
    1988 年 20 巻 10 号 p. 1175-1180
    発行日: 1988/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    近年注目されている高齢者の診療に関する諸問題のなかで,高齢者心弁膜症の実態についての我々の経験を報告した.特に心弁膜症のために心臓カテーテル検査を施行した高齢者(65~72歳)24例(I群)について通常の基準での手術適応の有無,主な疾患弁,手術が実際に勧められたか,勧められなかったとすればその理由,実際に手術が施行されたか,その経過,などをretrospectiveに調査し,対照として選んだ比較的高齢者(55~64歳)46例(II群)の結果と対比することによって通常用いられる手術適応の血行動態的基準は高齢者においても妥当であるかを検討した.高齢者弁膜症は昭和58年全弁膜症の10%から現在は20%と年々増加している.手術適応のある頻度はI群(79%)がII群(67%)より高かった.I群では男,II群では女が多かった.疾患弁ではI群では大動脈弁,II群で僧帽弁が多かった.手術はI群の適応例のうちの74%に勧められた.これはII群の84%より少なかった.手術適応はあるが手術が勧められなかった理由では両群間に大差はなかった.手術拒否はI群で3例(21%)と,II群(8%)より多かった.術中・直後の死亡は両群に3例ずつ認めた.しかし死亡例を年齢別・術式別にみると,60歳以上の大動脈弁置換術(AVR)に死亡が多かった(U例中5例).死因は両群で大差がないことより年齢が手術のリスクに関連したことを否定できない.手術拒否例の経過はI群二の方がII群より明らかに悪いという傾向ではなかった.冠動脈の有意狭窄はI群2例,II群3例に認め,両群の1例はいずれも術中死したが,冠病変が死因と関連したとは考えられなかった.以上より,高齢者でも(72歳を上限とし)手術を考慮してよいが,その適応決定基準は,特にAVRでは通常より厳しくてよいことが示唆される.
  • 数間 紀夫, 村上 保夫, 森 克彦, 三森 重和, 浅野 優, 冨田 祥夫, 中島 裕司, 坂尾 武彦, 島袋 謙
    1988 年 20 巻 10 号 p. 1181-1187
    発行日: 1988/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症(HCM)の心室中隔を描出する方法がこれまで種々工夫されてきた.なかでも両心室に各々カテーテルを挿入し同時に造影剤を注入する方法が行われていた.我々は,この方法を改良し,右室内の1本のカテーテルのみで時間差2度注入を行い心室中隔を描出する方法を考案した.
    本法は,Angled Viewを用い,患者の体位が肝鎖骨位となるようにする.右室心尖部にカテーテルを挿入し1回目の造影を行い,肺静脈から還流する造影剤が,左房・左室を造影する頃に2回目の右室造影をするというものである.本法により造影を行った9歳から63歳までの5例について検討した結果を報告する.本法は,HCMの心室中隔を明瞭に描出できその評価に適していた.また,右室内にカテーテルを1本置くだけで同様の所見が得られ操作も簡便であった.さらに,造影剤の1秒量を調節することにより従来の両室同時造影で起こりうる造影中の期外収縮の発生が少ないという点からも正常の血行動態下で計測,評価することができ優れていると考えられた.
  • HCMの新しい亜型
    斉藤 茂治, 茅野 真男, 吉野 秀朗, 酒井 隆, 相馬 康宏, 西川 邦
    1988 年 20 巻 10 号 p. 1188-1194
    発行日: 1988/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    左室拡大を伴う心室中隔の肥厚と運動低下,心電図所見として心房細動,洞不全,QRS時間の延長といった伝導障害所見を認め,これら所見が常染色体優性遺伝する家族性心筋症の1家系を報告する.この家系は従兄弟結婚で生まれ不詳の心臓病にて突然死した男性の子孫である.心電図を検査し得た調査例は20例である.QRS時間の延長所見から心室内伝導障害を思わせる例は4例あった.この所見は親子間で発症し兄弟6例中3例に見られた.これら4例とも心房細動があり,その内1例は心拡大に先行して認めた.うち3例で徐脈に対しペースメーカーを植え込んだ.心エコー施行17例のうち,非対称性中隔肥厚所見を6例に認めた.これは兄弟間で多発し2世代にわたり発症していた.うち3例では中隔の壁運動は低下し左室は拡大していた.6例中2例は心室内伝導障害を伴い,他はWPW伝導,右脚ブロック各1例を伴っていた.すなわち上記心電図異常,もしくは心エコー図異常はそれぞれ兄弟間で多発し2世代にわたり発症しており,遺伝形式は両者とも常染色体優性と考えられた.本家系は,近年注目されている“拡張型心筋症様所見に移行していく肥大型心筋症”という肥大型心筋症の亜型に類似しているが,多彩な伝導障害を呈する点では世界でまれな報告であり,新しい肥大型心筋症の亜型として報告した.
  • 馬場 裕司, 横田 祥夫, 藤原 慶一, 岡本 文雄, 清田 芳春, 菅原 英次, 家村 順三, 池田 義, 愼野 征一郎, 吉川 栄治, ...
    1988 年 20 巻 10 号 p. 1195-1200
    発行日: 1988/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,surpero-inferiorventricles{S,L,L},肺動脈閉鎖症および右側大動脈弓の6歳男児である.生後6カ月に,右Blalock-Taussig手術をうけた.今回,FOIltan型手術に際し,無名静脈が上行大動脈の背側を走行していることを発見し,この無名静脈を右房一肺動脈吻合に利用して大きな右房一肺動脈吻合を形成し,良好な結果を得たので報告する.
    本症例にみられた無名静脈の走行異常は,1888年Kerschnerの報告以来散見されるが,臨床的に問題にされたことは少ない.しかしFontan型手術の行われる今日,術前の確定診断は重要と思われるので,文献上の集計を行い,発生学的,臨床的意義について考察を試みた.
  • 本邦報告7例とともに
    北川 成子, 小野 進, 谷口 亭一, 原 慶文, 龍田 憲和
    1988 年 20 巻 10 号 p. 1201-1207
    発行日: 1988/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は18歳,男性,高血圧の精査のため入院.胸部X線所見より,大動脈縮窄症と上行大動脈瘤が,また患者の骨格異常,尿中ハイドロオキシプロリン高値等より不全型Marfan症候群が疑われた.血管造影検査により,上記診断が確定され狭窄部をTeHon patchにて拡張する手術を行った.しかし,術後約14カ月目に胸痛と上行大動脈瘤の拡大を認め,上行大動脈瘤切除術を必要とした.大動脈瘤を伴う大動脈縮窄症においては,大動脈瘤破裂の危険が高く,両者に対する早期の手術が必要であると思われた.
    本邦では,過去21年間にMarfan症候群と大動脈縮窄症の合併例は2例報告されているのみである.また上行大動脈瘤を伴う大動脈縮窄症は7例あった.この7例に自験例1例を加え検討したので報告する.
  • 坂井 健志, 道下 一朗, 若杉 隆伸, 北 義一, 杉原 範彦, 中山 章, 元田 憲, 馬淵 宏, 竹田 亮祐, 川筋 道雄, 細 正博 ...
    1988 年 20 巻 10 号 p. 1208-1215
    発行日: 1988/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    大動脈弁上部狭窄と両側冠動脈入口部狭窄を伴ったホモ接合体性家族性高コレステロール血症(FH)に血漿交換療法を施行したが,経過中左心不全に陥り死亡した1症例を報告した.症例は18歳の男性.4歳頃より黄色腫が出現9歳で心雑音と高コレステロール(CHOL)血症を指摘された.13歳時,血管造影にて大動脈弁上部狭窄を認め,以後抗脂血剤を服用していた.昭和59年,労作性呼吸困難,動悸が出現し冠動脈造影を含む心機能精査と,高CHOL血症に対する血漿交換療法導入のため当科へ入院.入院時,腱黄色腫,収縮期心雑音を認め,血清CHOL値は492mg/dl(プロブコール1,500mg/day服用)であった.心電図では前壁中隔の陳旧性心筋梗塞と広範な心筋虚血が示唆された.大動脈造影では弁上部に壁不整を伴った狭窄があり,冠動脈造影では左右冠動脈入口部に,それぞれ75%,90%以上の狭窄が認められた.入院後,二重濾過法にて2週間ごとに3,500mlの血漿交換を行い,第3回目終了後には血清CHOL値は141mg/dlまで低下した.第3回目終了後,前胸部圧迫感が出現し肺水腫状態となった.薬物療法および大動脈バルーンパンピング施行したが,左心不全状態は改善せず4日目に死亡した.剖検では大動脈弁上部,冠動脈入口部はアテローマにより著明に狭窄していた.心筋は著しく肥大し,内膜側は全周性に線維癩痕化していたが,肉眼的に大きな新鮮梗塞巣はなかった.ホモFHでは重篤な冠動脈病変を持つため,血漿交換療法の実施には慎重でなければならないが,高コレステロール血症の治療には有用と思われた.
  • 高尾 祐治, 松本 直行, 本田 俊弘, 庄野 弘幸, 早崎 和也, 中島 昌道
    1988 年 20 巻 10 号 p. 1216-1221
    発行日: 1988/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1型解離性大動脈瘤に前壁心筋梗塞と大動脈弁閉鎖不全症を合併,さらに心不全症状を何度か繰り返しながらも急性期を乗り越えて日常生活ができるまでに回復した,まれな症例を経験したので報告する.症例は71歳女性で以前高血圧の既往があった.昭和61年2月27日午後10時45分入浴中突然背部に激痛出現.救急車にて近医入院したが,翌朝さらに増悪し心電図上急性心筋梗塞が疑われたため当科CCU緊急入院となった.上肢血圧に左右差(右<左)を認め,また聴診上大動脈弁逆流性雑音を聴取した.DSA,CT,心エコー,大動脈造影にて大動脈起始部から腎動脈分岐直下までに及ぶ解離を確認したが腎動脈内には進展していないようであった.またSellers II~III度の大動脈弁閉鎖不全も認めた.心電図上V1~V1のST上昇とQ波形成があり,peak CPKは3,145,DSA所見も含め前壁心筋梗塞の合併も診断された.
    急性期積極的降圧療法を含む血行動態の厳重な管理と安静臥床等の内科的治療により病巣の拡大防止を図り,また心不全症状に対して強心剤・利尿剤投与を加えながら,徐々にリハビリテーションを開始して,約2年を経た現在日常生活可能な状態に回復した.
    本例は年齢・重症度等から手術適応なしと判断したが,幸い二連銃型を形成し,重篤な他臓器障害もなく,心不全の増悪もみなかったため一応の安定をみたものと思われる.
  • 江口 政則, 今村 俊之, 松崎 忠樹, 村谷 智子, 池田 洋, 古賀 秀隆, 原 耕平
    1988 年 20 巻 10 号 p. 1222-1226
    発行日: 1988/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠動脈造影により特発性冠動脈解離と診断した4例について報告する.症例1は45歳の男性で,前壁中隔梗塞の診断で冠動脈造影を施行し,右冠動脈に解離を認め,左冠動脈はsegment 7に有意な狭窄を認めた.症例2は47歳男性の下壁梗塞例で,右冠動脈に解離を認めた.症例3は57歳男性の前壁中隔梗塞例で,segment 7に解離を認めた.症例4は55歳の男性で,安静時狭心症を疑って冠動脈造影施行し,右冠動脈ではsegment 2,左冠動脈ではsegment 7に解離を認めた.冠動脈造影より特発性冠動脈解離と診断された自験4例を含む25例の生存例について文献的考察を行った.剖検例での報告と比較し,生存例では男女差がないこと,妊娠・分娩後の発症例が少ないこと,右冠動脈に解離が多いことなどが判明した.
  • 臨床経過についての考察
    中川 雅生, 高 永煥, 浜岡 建城, 糸井 利幸, 白石 公, 吉原 隆夫, 岡野 創造, 辻井 久, 沢田 淳
    1988 年 20 巻 10 号 p. 1227-1233
    発行日: 1988/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    著明な心筋障害に基づく心不全で発病し,心筋生検で急性心筋炎と診断した13歳男子例を経験した.この症例は経過中に一過性の心筋肥厚と末梢から中枢側へ波及する伝導障害を呈し,臨床経過と合わせると興味深いと思われたので報告した.
    心筋肥厚は第5病日に最も著明で心室中隔厚13mm,左室後壁厚13mmであった.この心筋肥厚は第10病日に正常化し,これに伴いポンプ失調も改善した.一方,第4病日には完全右脚ブロックと左脚前枝ブロック,第5病日には左脚後枝ブロックがみられ,第7病日には不完全房室解離となり,第8病日には心電図上2つの異なった波形を示すaccelerated idioventricular rhythmが記録された.さらに第15病日にはWenckebach型2度房室ブロックおよび2:1ブロックが記録されたが第23病日には正常化した.
    病初期の一般心筋の障害と障害部位が末梢より中枢側へ移っていった伝導系の障害の経過との間に時間的“ずれ”があると思われた.
    なお,本例でみられたmultifocal accelerated idioventricular rhythmは小児期での報告はみられず第1例目と思われた.
  • 三浦 彰, 竹村 元三, 西岡 昭規, 会田 正康, 和田 泰三, 琴浦 肇, 渡部 良次
    1988 年 20 巻 10 号 p. 1234-1238
    発行日: 1988/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    約10年前より,我が国で,主に若年者に発症するビタミンB1欠乏による脚気心が報告されているが,我々は今回,ビタミンB1酸化障害により発症した脚気心を経験し,Swan-Ganzカテーテル挿入下に,フルスルチアミン100mgを静注し,静注開始後わずか!5分後に,心拍出量が13.7l/分から7.9l/分へ減少し,末梢血管抵抗が460dynes・sec/cm5から890dynes・sec/cm5へ増加するのをみた.ビタミンB1燐酸化障害はビタミンB、20mg負荷試験により診断した.ビタミンB1燐酸化障害による脚気心の治療には,ビタミンB1大量投与が有効といわれており,本例でも,通常投与量では血行動態は完全には正常化せず,大量の投与により正常化した.食生活上,ビタミンB1欠乏のない者にも脚気心が発症しうることは,臨床上,注意を要すると思われる.
  • 川端 美緒, 西山 玄洋, 佐藤 毅, 日鼻 靖, 綱川 宏, 春見 建一, 滝沢 芳夫, 森 啓, 新倉 春男, 道端 哲郎, 森本 和大
    1988 年 20 巻 10 号 p. 1239-1244
    発行日: 1988/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症に合併した溶血性貧血は極めてまれで外国において6例,本邦においては感染性心内膜炎を合併した1例をみるにすぎない.今回我々は心症状の悪化に伴って,溶血の進行を認めたHOCMの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は57歳女性で,昭和61年1月,労作時呼吸困難を主訴として来院,心エコー図上HOCMと診断され,3月下旬,急性左心不全にて入院.入院時よりI型優位のLDH高値,尿中ヘモジデリン陽性,血性ハプトグロビン10mg/dl以下と溶血性貧血の所見を呈していたが,直接,間接クームステスト陰性,赤血球膜酵素異常(-)赤血球膜抵抗異常(-)骨髄にも特記すべき所見はみられなかった.
    貧血は血行動態悪化時,平行して増悪し,βブロッカーによる治療後,左室流出路圧較差の減少とともに軽快し,圧較差の増大が,赤血球の機械的損傷に基づく溶血性貧血の原因となる可能性が示唆された.
  • 大平 篤志, 簡 慶輝, 藤森 正記, 田代 敦, 瀬川 郁夫, 茂木 格, 肥田 敏比古, 加藤 政孝, 高橋 真, 佐藤 俊一, 岩崎 ...
    1988 年 20 巻 10 号 p. 1245-1250
    発行日: 1988/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心電図上巨大陰性T波を呈した原発性ヘモクロマトシースの1症例を報告した.症例は51歳の女性.鉄剤投与や輸血の既往なく,その他の既往歴,家族歴に特記すべきことはない.皮膚色素沈着,肝障害,境界型糖尿病を認め,ヘモクロマトシース疑いで入院中,昭和61年9月20日に初めて胸部圧迫感が出現し,翌日の心電図でII,III,aVF,V4~6の軽度の陰性T波を認め,1カ月後にはV3~6の巨大陰性T波を呈した.血清酵素の変動はなかった.左室造影では心尖部に無収縮を認めたが,冠動脈造影では閉塞や有意な狭窄はなかった.右室側心内膜心筋生検で心筋細胞の錯走配列,空胞変性を,ベルリンブルー染色で心筋細胞内に鉄の沈着を認めた.以上より原発性ヘモクロマトシースによる心筋障害と診断し,その後鉄キレート剤(メシル酸デフェロキサミン)投与により心電図の陰性T波が徐々に正常範囲に戻った.心電図改善後に再度施行した左室造影では心尖部の無収縮は軽度の低収縮を認めるのみにまで改善し,心筋生検では心筋細胞の配列異常,空胞変性の改善および心筋細胞内への鉄沈着の減少を認めた.経過から心電図上の巨大陰性T波は心筋細胞内への鉄の沈着が大きな要因であると考えられた.
  • 舟山 直樹, 上田 満, 堀本 和志, 五十嵐 丈記, 宮川 明
    1988 年 20 巻 10 号 p. 1251-1258
    発行日: 1988/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    今回,我々は興味ある慢性肺血栓・塞栓症の2例を経験した.症例1は48歳の男性で,労作時呼吸困難を主訴として入院.検査所見から症状増悪時に一致して,フィブリノーゲン値の上昇がみられた.その都度,血栓溶解療法に加えて,脱線維素療法を施行することで,フィブリノーゲン値を低下させ症状の安定化をみた.症例2は61歳の男性で,労作時の息切れを主訴として入院種々の治療にもかかわらず入院第23病日に死亡した.剖検所見で原発巣は不明であったが,腫瘍が肺動脈の基幹部から左右肺血管に充満しており,病理組繊学的所見からchondrosarcomaと診断した.前者はその治療上,後者は剖検上,極めて興味ある所見が得られたので報告する.
feedback
Top