心臓
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21 巻, 3 号
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  • 喫煙,コーヒー同時負荷時の心拍・血圧反応の検討
    世戸 弘美, 松井 忍, 村上 暎二, 江本 二郎, 円山 寛人, 大森 政幸, 三島 一紀, 寺畑 喜朔
    1989 年 21 巻 3 号 p. 259-266
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    嗜好品・特にタバコとコーヒー同時摂取が心拍,血圧に及ぼす影響を検討した.
    対象は健常若年男性5名で,嗜好品としてタバコとコーヒー同時摂取とそれぞれ単独を用いた.タバコ単独では,血圧(収縮期/拡張期)8.8/4.8mmHg,心拍数18.5beats/minの増加を示した.コーヒー単独では血圧8/13.6mmHgの上昇を認めたが,心拍数には有意な変化を認めなかった.タバコとコーヒー同時摂取では血圧11.6/7.6mmHg,心拍数20、6beats/minの増加を示し,ratepressurepro・ductはコーヒー単独に比し有意に,また,タバコ単独に比しても増加傾向を認めた.血中カフェイン濃度は,タバコとコーヒー同時摂取でコーヒー単独に比し有意な上昇を認めた.血中エピネフリン濃度と血中カフェイン濃度との間には有意な正相関を認めた.以上より心拍・血圧反応はタバコとコーヒー同時摂取でそれぞれ単独に比しより大きくかつ遷延する傾向がみられた.これには両者併用によるより一層の血中カフェイン濃度上昇とそれに伴うエピネフリンの遊出が関与しているものと考えられた.
  • 門間 和夫, 高尾 篤良, 今井 康晴, 黒沢 博身
    1989 年 21 巻 3 号 p. 267-274
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 竹内 靖夫, 須磨 幸蔵, 城間 賢二, 鳥井 晋造, 伴 哲雄
    1989 年 21 巻 3 号 p. 275-280
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    川崎病に対するA-Cバイパス症例を20例経験した.うち5例は左冠状動脈主幹部(LMT)に高度狭窄を有する症例であった.術前LMTのtotalobstructionを示し,右冠状動脈からの側副血行を有していた3例は狭心痛などの臨床症状を呈していたが,subtotalobstructionの2例は,術前に狭心痛などの症状を訴えなかった.また5例とも,安静時心電図ではST,Tの変化は存在しなかったが,Treadmill検査等の負荷心電図では陽性所見を示した.最近の3例のT1-201心筋シンチでは,total例もsubtotal例もLMT領域に明瞭なtransientis.chemiaとredistributionが証明された.手術死亡はなく,術後1カ月でのグラフト開存率は91%であった.LMTのsubtotal群にバイパスを作成すると,LMTは完全閉塞となるので,バイバスグラフトの長期開存が必須であると考えられた.
  • 中井 義廣, 片岡 善彦, 坂東 正章, 滝 浩樹, 日浅 芳一, 和田 達也, 森本 眞二, 浜井 一人, 原田 道則, 相原 令
    1989 年 21 巻 3 号 p. 281-287
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    A-Cバイパス術後早期のグラフト開存に関して,どのような因子が関与しているかを多変量解析を用いて検討した.開存したグラフト(開存群)と閉塞したグラフト(閉塞群)の比較では,開存群の方が閉塞群に比べ,術後の発熱の割合が少く,積極的なリハビリテーションが行えていた.冠動脈血管抵抗は開存群0.71±0.43mmHg/ml/分,閉塞群1,12±0.49mmHg/ml/分と開存群が低値であった(p<0.001).各因子相互の関係では,冠動脈血管径と冠動脈血管抵抗の問に負の相関関係が認められた(p<0.Ol).冠動脈血管抵抗とグラフト流量の間にも相関関係があった(p<0.01).グラフト開存に対しては,冠動脈血管径と術後の積極的なリハビリテーシ製ンがそれぞれ有意な正の相関関係を示した(P<O.05,P<0.01).冠動脈血管抵抗とは負の相関関係を示した(p<0.01).変数増減法によるグラフトの開存に影響する複合因子の検討では,冠動脈血管抵抗,術後のリハビリテーション,術後の発熱の3項目が重要であった.これらの3複合因子の重相関係数は,0、496(p<O.01)で,寄与率は24.6%であった.以上より,術中測定した冠動脈血管抵抗がグラフトの開存性を予知する因子となった.術後には発熱をきたさないようにし,積極的なリハビリテーションを行うことが,グラフトの開存率を向上させるうえで重要である.
  • 土肥 嗣明, 山本 裕子, 鎌田 政博, 森 一博
    1989 年 21 巻 3 号 p. 288-292
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群を呈した結節性硬化症2例を報告した.1972年から1987年までに岡山大学小児科を受診した結節性硬化症44例における頻度は5%であった.いずれも痙攣を契機に結節性硬化症と診断され,心症状として心雑音が1例でみられた.断層心エコー図検査が施行された1例で心臓腫瘍と考えられる腫瘤が検出された.腫瘤の検出部位は心電図および体表面電位図で副伝導路の存在が予測された領域とよく対応していた.他の1例においてもM-mode心エコー図により心臓腫瘍の合併が推測された.臨床経過では1例が点頭てんかんに対するACTH治療中に突然死した.WPW症候群を呈する結節性硬化症では心臓腫瘍を合併している可能性が高く,心エコー図を含む詳細な検索が必要である.
  • 小児手術例と乳児剖検例の報告
    鎌田 政博, 西 猛, 神野 和彦, 西 佳子, 籠崎 祐次, 岡崎 富男, 青景 和英, 大庭 治, 塩手 章弘, 平本 忠憲
    1989 年 21 巻 3 号 p. 293-296
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    先天性異型大動脈縮窄症の2症例を経験した.
    症例1は14歳女児,特別な既往歴なし.上肢高血圧にて発見され,血管造影でTh7-Th10に相当する胸部大動脈に狭窄病変を認めた.組織学的検討は行っていないが,狭窄部では周囲への癒着はなく,内腔のみならず外径自体が非常に細いことより先天性異型大動脈縮窄症と考えられた.治療は狭窄部へのバイパス形成術として,直径12mmの人工血管を端側吻合した.術後は上肢収縮期血圧140-150mmHgの軽度の高血圧が残存している.
    症例2は生後3カ月男児.呼吸停止,心停止の状態で来院し,蘇生を試みたが反応しなかった.剖検所見では腸重積の他,腎動脈分枝部より宋棺の腹部大動脈に狭窄病変を認め,心肥大も伴っていた.腹部大動脈縮窄部は外径自体も細く,周囲への癒着はなかった.組織学的には,内膜,中膜,外膜ともに殆ど肥厚はなく,炎症像,線維化なども認めず形成不全を思わす所見であった.
    先天性異型大動脈縮窄症はまれな疾患であり,特に症例2は剖検で偶然に発見され,組織学的に検討しえた貴重な乳児例である.
  • 矢部 洋, 桑島 巌, 鈴木 康子, 久保木 謙二, 藤森 尚子, 前田 茂, 藤沢 明子, 大川 真一郎, 上田 慶二
    1989 年 21 巻 3 号 p. 297-301
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心内膜床欠損症(ECD)の予後は一般に不良であり,老年期まで生存する例は極めてまれである.今回我々は,73歳女性のECD症例を経験したので報告する.
    症例:73歳女性,主婦.主訴:労作時息切れ.現病歴:昭和50年,胸部X線上心拡大を指摘された.昭和59年春頃より労作時の息切れが増強し,昭和61年10月に当院に入院した.現症=血圧100/50mmHg,脈拍55/min,不整.CTR65%.ECG上2度のAVブロック,左軸偏位(-90度)を認めた.心エコー図上心房申隔下部に直径約20mmの欠損孔を認め,右房,右室とも著しく拡大していた.心臓カテーテル検査にて右室圧は69/3mmHgと上昇し,肺体血流比は2.44であった.左室造影では1度の僧帽弁閉鎖不全とgoosenecksignを認めた,入院後経過:高度房室ブロックの出現をきたしたため永久ペースメーカーの植え込みを行うと共に,著しい低酸素血症に対し酸素療法を行っている.
  • VSDとAIVRの発生起源についての心電図学的考察
    中川 雅生, 神谷 康隆, 浜岡 建城, 福持 裕, 松村 淳子, 沢田 淳, 出口 英一
    1989 年 21 巻 3 号 p. 302-306
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    先天性心疾患(膜様部心室中隔欠損症および二次口型心房中隔欠損症)を有する新生児でaccelerat-edidioventricularrhythm(AIVR)を伴った症例を経験したので報告した.AIVRの発生起源を12誘導心電図の所見から検討したところ心室中隔膜様部近傍と思われた.さらに,本症例の心室中隔欠損は生後80日頃に超音波心断層エコーにて自然閉鎖が確認されほぼ同時期にAIVRも消失した.これらの所見から心室中隔欠損部近傍がAIVRの発生起源となっていた可能性が考えられた.
  • 巽 英介, 砂田 祥司, 正井 崇史, 笹子 佳門, 奥田 彰洋, 志賀 清悟, 南 頼彰, 吉川 明男
    1989 年 21 巻 3 号 p. 307-312
    発行日: 1989年
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    近年膜型人工肺を用いた呼吸補助, ECMOの臨床例は増加しつつあるが, その成績はいまだ良好とは言いがたく, そのために適応が制限されているのが現状である.
    症例は手術時月齢2.5カ月の女児で, 高肺血流型VSDの診断のもとにVSDパッチ閉鎖術を施行した. 術後bronchospasmsおよびtracheomalacia に起因する重篤な急性呼吸不全から心停止をきたした. 人工呼吸は全く無効であり, 強力な呼阪補助を行わない限り救命し得ないと判断し, 緊急にECMO を開始した. ECMO開始直後から血液ガスデータおよび血行動態は著明に改善し, 蘇生に成功した.16時間後ECMOからの離脱に成功し, 呼吸状態はその後も安定した状態を示した. しかし心停止時から発症した急性腎不全に対し血液透析を施行したところ, これに合併した急性代謝性アシドーシスにより失った.
    このような緊急ECMOの施行は, 現行のECMO 適応基準に含まれておらず, 今後新たな適応基準の1つとして考慮されるべきであると思われる.
  • 鈴木 浩, 秋場 伴晴, 芳川 正流, 大滝 晋介, 中里 満, 横山 新吉, 佐藤 哲雄, 林 正, 垣本 葉子, 矢崎 棗, 勝島 矩子
    1989 年 21 巻 3 号 p. 313-319
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は11歳の男児で胸痛,嘔吐を主訴に入院した.軽度の好酸球増多と心筋逸脱酵素の上昇がみられ,心電図で洞性頻脈,低電位差,陰性T波,胸部X線で心拡大,心エコー図で心膜液貯留を認め,心筋心外膜炎と診断した.心筋心外膜炎はしだいに軽快したが,好酸球数が徐々に増加し回復期には著明な好酸球増多がみられた,心筋心外膜炎の経過は良好で,好酸球数も自然に減少し2カ月後には正常化した.臨床経過から,L6Mer'sendocarditisあるいはhypereosinophilicsyndromeの軽症例の可能性がある.自験例における好酸球増多および心筋心外膜炎の原因は不明だが,著明な好酸球増多が一過性に回復期にみられたことから,好酸球の心毒性による心筋心外膜炎よりも何らかのウイルス感染などによる心筋心外膜炎に反応性に好酸球増多が出現した可能性が示唆された.
  • 渡辺 博史, 日名 一誠, 萩原 秀紀, 岩野 瑛二, 庵谷 和夫, 丸谷 盛雄, 大林 直嗣, 湊 武, 河野 宏, 種本 和雄, 津島 ...
    1989 年 21 巻 3 号 p. 320-325
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠動脈瘤は,左冠動脈が右冠動脈より少なく,さらに左冠動脈の主幹部に出現することは極めてまれである.我々は,希有な左冠動脈主幹部動脈瘤の1例を経験したので報告する.症例は51歳の男性で狭心症で来院した.負荷心電図は,陽性の所見を示した.冠動脈造影では,左冠動脈主幹部に類紡錘形の動脈瘤を認めた.Segment7(AHA分類)に99%の狭窄とその周辺の壁不整を認めた.右冠動脈は蛇行を認めるのみで有意な狭窄は認めなかった.動脈瘤の原因としてはアテローム硬化が最も強く示唆された.
  • 山本 一博, 田内 潤, 鍵谷 俊文, 岩井 邦充, 藤井 謙司, 尾崎 仁, 松山 泰三, 三嶋 正芳, 堀 正二, 北 畠顕, 鎌田 武 ...
    1989 年 21 巻 3 号 p. 326-330
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心症状のみを呈した高齢のFabry病の1症例を経験したので報告する.症例は62歳男性.昭和58年,軽度の労作時前胸部重圧感出現.昭和61年4月より労作時息切れが出現し,当科受診.胸部X線上CTR57%,心電図上T波の逆転を伴う著明な左室肥大,心エコー上び漫性左室壁肥厚とSAMを認め,肥大型心筋症が疑われたが,左室心筋エコー性状が細穎粒状を呈しており,蓄積疾患も考えられた.心臓カテーテル検査,左室造影,冠動脈造影では,血行動態および冠動脈に異常を認めず左室壁のび漫性肥厚が見られたのみであった.左室心内膜下生検にて,Fabry病に特徴的所見が認められ,さらにα-galactosidase-A活性の低下を示したことから確定診断した.Fabry病は男性患者の場合,従来の報告では思春期までに発症するとされており,本例のように高齢になっても心症状以外全く症状を示さない症例はこれまでに報告がない.高齢の男性でもび漫性心肥大を呈する症例では,遺伝性代謝疾患を考慮する必要があり,その診断には心内膜下生検が有用であると考えられた.
  • 後藤 秀夫, 下尾 和敏, 北村 浩一, 高田 治, 田中 基夫, 東 秋弘, 井上 直人, 大森 斎, 井上 大介, 古川 啓三, 朝山 ...
    1989 年 21 巻 3 号 p. 331-336
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心臓原発の悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histiocy toma 以下 MFHと略す)は極めてまれな疾患であり,これまで本例を含め約18例の報告がある.左房および左室に認めた自験例と共にこれまでの報告例の臨床像の検討を加え,報告する.
    症例は49歳,女性.昭和61年3月頃より労作時呼吸困難で発症,徐々に増悪した.心エコー図では左房粘液腫が疑われ,心臓CT検査では左房および左室内に陰影欠損を認めた.開心術施行し左房および左室内に腫瘍を認めるも部分切除にとどまった.その後,腫瘤エコーは再度増大し,心不全症状も増悪した.化学療法施行するも効なく術後2カ月半で死亡した.剖検所見では左房内に表面平滑な径3cmの球状腫瘍を認め,腫瘍の基部は左心耳内に充満し,左房後壁を貫き心外に浸潤していた.僧帽弁および左室前乳頭筋は一部表面不整な腫瘍に覆われていた.組織学的所見では多型性を示す細胞を腫瘍内に認め,MFH,myxoid typeと考えられた.
    20報告18症例の検討では,女性に多く,30歳前後と60歳台にピークがみられた.好発部位は左房で,特に後壁に多い.治療では,外科的切除,化学療法,放射線療法が施行されているが,無効に終わることが多く,極めて予後不良の疾患といえる.
  • ベクトル心電図および空間速度心電図による検討
    吉賀 攝, 松山 公明, 元永 一郎, 古賀 義則, 戸嶋 裕徳
    1989 年 21 巻 3 号 p. 337-344
    発行日: 1989年
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:心尖部AE大型心筋症(AH)の巨大陰性T波(GNT)の成因を,ベクトル心電図(VCG)と空間速度心電図(SVECG)を用いて検討した.対象:陰性T波-10mm以上かつ,スペード型左室変形を認めた36例〔HCM・GNT(+)群〕.陰性T波-10mm未満,非対称性中隔肥厚が見られた非閉塞性肥大型心筋症43例〔HCM・GNT(-)群〕.対称性の左室肥厚を認めた高血圧性心臓病68例〔HHD群〕.また対照群として健常者12例を用いた.方法:VCGはフランク誘導で記録し,SVECGでは,QRS,T環の,遠心脚,求心脚の描記速度ρ12,a,cの波高およびQ波から各々のピークまでの時間を計測した.結果および考察:QRS環ではHHD,HCM群でρ12の増大が見られ,またQ-ρ2時間の延長が見られた.GNT(+)群ではQ-ρ1時1間も延長しており,特に本群では興奮伝播過程の異常が推測された.T環のa波高は,GNT(+)群が最も大きく,その結果c/a比が減少しGNTが対称化すると考えられた.またQ-a,Q-cの間隔の延長もGNT(+)群で最も大きく,本群で最も著明な再分極過程の遅延がみられた.またQ-ρ2間隔に比しQa,Q-c間隔の延長がより強く,活動電位パターンの変化を伴っている事が推測された.以上の結果よりAHでは,肥大した心尖部心筋への興奮伝播過程の遅延および活動電位の変化が推測され,このために心尖部心外膜側の再分極過程が遅れ,しかもそれが心尖部に限局するため再分極ベクトルがcancellationを受けずに深いGNTが形成されるものと考えられた.
  • 綱川 宏, 西山 玄洋, 日鼻 靖, 春見 建一, 武者 利光, 魏 大名, 山田 剛一郎
    1989 年 21 巻 3 号 p. 345-351
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心尖部肥大型心筋症は左室心尖部の限局性肥厚と心電図上の高電位差を伴う巨大陰性T波を特徴とする.しかしその成因はいまだ明らかでなく,今回本症の心電図についてコンピュータ.シミュレーシ欝ンを試みた.青木らの作製した正常QRST波を導出しうる心室興奮伝播・回復過程の三次元心室モデルの上に,(1)心尖部心内膜側に左室内腔がスペード型となるように心筋ユニットを加え,壁厚を正常時の1.5倍とし,(2)心尖部全体に肥大心筋が分布し,それらの肥大心筋に均一に長い活動電位持続時間(285msec)を与えた.以上の条件設定により,体表面QRST波を算出した結果,心電図上前胸部誘導でのR波は正常時のV4R波高を2.OmVとすると18%増高し,T波は陰転化し,V4で-1.45mVのいわゆる巨大陰性T波が得られた.(3)さらに本モデルにおいて起電力を決定する因子の1つである導電率を肥大心筋のみ正常の1.5倍としたところ,R波高は正常時より80%増大し,臨床上見られる心電図波形と極めて類似した結果が得られた.以上より心尖部肥大型心筋症における心電図上の特徴である高電位差を伴う巨大陰性T波を,肥大心筋の分布,活動電位持続時間,本モデルの上での導電率を考慮することによりシミュレートでき,本症の特徴的心電図波形の成立にこれらの因子が深く関与することが示唆された.
  • 川久 保清, 中島 敏明, 杉本 恒明
    1989 年 21 巻 3 号 p. 352-357
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症(HCM)の再分極異常の成因を解明するために.運動負荷前後のQRST isointegralmapにて検討した.対象は,正常コントロール10例とHCM35例(閉塞型(HOCM)10例,非閉塞型(HNCM)15例,心尖部型10例)であった.安静時QRST isointegral mapは,正常コントロール例では左前胸部に極大を,右胸部上方に極小をもつ分布を示したが,HCMでは22/35例(63%)にて左前胸部に極小をもつ異常分布を示した.特に巨大陰性T波を有する14例は,すべて異常分布であった.安静時QRST isointegral map異常例に対して,運動負荷後の分布の変化を検討すると,APH9例中8例では負荷後正常分布になる傾向があった.しかし,HNCM9例中8例,HOCM4例中4例では負荷後も,安静時と同様の異常分布を示した.以上より,HCMにおける再分極異常は主として一次性変化によると考えられたが,運動負荷による反応がHCMの病型により異なったことから,HCMの病型により,肥厚形態の差のみならず,カテコールアミン等に対する反応の差があるものと思われた.
  • 限局性肥大の磁気共鳴映像法による検出
    鈴木 順一, 杉本 恒明, 坂本 二哉, 西川 潤一
    1989 年 21 巻 3 号 p. 358-362
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    巨大陰性T波(GNT)と心尖部肥大型心筋症(AH)との関係,さらにこれにspade型変形を加えた3者の相互関係は現在のところ明確にされているとはいえない.それはAHの心尖部レベルの形態が十分に解明されていないためと考えられる.磁気共鳴映像法(MRI)は心尖部レベルの左室短軸像を正確に描出しうる.そこで本研究では本断面像を用いてこれら3者の関係を明らかにし,さらにGNTないし陰性T波の程度およびその記録誘導部位とAHの心尖肥大の程度およびその分布様式との関連を解明しようとした.
    GNTを有するかあるいはAHの診断を有する27例を対象とし,心尖部ンベルと心基部レベルのMRI左室短軸拡張末期像を得た.27例中24例がAHであった.AH例の内spade型を呈するのは10例であり,14例はspade型を呈さない限局肥大型であった.AH24例中GNTを有するのは14例であった.AHの心尖部レベルの肥大の分布とGNTないし陰性T波の肢誘導および胸部誘導における記録部位とには統計学的関連性はなかった.AHの心尖部肥大の程度にはGNTの有無で差はなかった.GNT,AH,spade型の相互関係の解明に心尖部レベルMRI左室短軸像は有用であった.GNT例の多くは心尖部レベルのいずれかに肥大を有しており,すべてのAHはspade型変形にて診断されるとは限らないため,左室短軸像にて心尖部レベルの全周性評価を行うことが診断上必須と考えられた.
  • 杉下 靖郎, 飯田 啓治, 行定 公彦, 小川 剛, 山口 巖, 宮内 卓
    1989 年 21 巻 3 号 p. 363-370
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    巨大陰性T波(GNT)について,その変動性を中心に検討した.GNTを有する肥大型心筋症(HCM)を中心に,画像診断,ホルター心電図,各種負荷試験を行い,特にT波の変動と機械的指標の変動の関連を検討した.
    GNTは当院受診成人患者の0.24%にみられ,HCM,高血圧,大動脈弁膜症(AVD)にみられた.核磁気共鳴法により,心尖部の肥大の存在,およびそれと心電図電極とのgeometryの,GNTに対する関与が推測された.
    ホルター心電図上,GNTは昼間にて夜間より浅くなった.運動負荷,イソプロテレノール(ISP)負荷にてGNTは浅くなったが,ISPにて運動負荷より有意に低い心拍数でT波は同じ程度に浅くなった.プロプラノールでGNTは深くなり,アトロピン,食道ペーシングでは不変であった.頭蓋内疾患のGNTはホルター心電図上明確な変動を示さなかった.心エコー図の左室短縮率の増加(AFS)とGNTの浅くなり分(AT)の関係をみると,運動負荷時にHCM,AVDを通じて有意の相関(r=0.80)があり,ISP投与時のHCMについても有意の相関があった(r=O.72).ニトロプルシッドNa投与による降圧時もISP投与時と同じ直線上に位置した(T波の変動はR波の変動より大であった).
    これらの現象の機序としてContractionexcita-tionfeedbackの概念をとり上げた.それによりHCMのGNTの変動性の特殊性の説明が可能であろうが,なお検討すべきである.
  • 第2テーマ:巨大陰性T波について
    杉本 恒明
    1989 年 21 巻 3 号 p. 371-385
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
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