マウスのcoxsackie B3 virus性心筋炎の心筋,ならびにウイルス性または特発性心筋炎患者の生検心筋において光顕,電顕,免療組織学的にリンパ球,マクロファージを同定し心筋局所免疫機構の検索を行った.マウスのウイルス性心筋炎急性期の心筋壊死病巣には多数のasialoGM
1+細胞,T細胞の浸潤を認めた.T細胞サブセットでは,Lyt1
+helper/inducerT細胞がLyt2
+cytotoxic/suppressorT細胞より多数を占め,T
4/T
8比は高値を示した.B細胞の浸潤は少数であった.第3,12カ月でも,病巣中に少数のasialo GM
1+,T細胞の浸潤が残存した.電顕では,asialo GM
1+,Lyt1
+細胞,マクロファージが心筋細胞と接する所見が認められ,これらの心筋細胞では様々な変性所見や心筋細胞の壊死像が観察された.
ウイルス性または特発性心筋炎患者の生検心筋では,Leu2a
+cytotoxic/suppressor,Leu3
+ helper/inducerT細胞,Leu7
+細胞の浸潤を認めた.T
4/T
8比は1.2±1.Oを示すが,症例間に一定の傾向は見られなかった.電顕では,Leu2a+ 細胞が心筋細胞と接触する所見が観察された.中にはリンパ球が心筋細胞の側面から胞体内に嵌入する像や,介在板の間に侵入する所見(emperipolesis)も認められた.また,Leu3細胞とマクロファージとの接触像も観察された.
ヒトおよびマウスのウイルス性心筋炎の心筋病変においては,細胞性免疫の関与が極めて重要である.電顕で観察されたリンパ球やマクロファージと心筋細胞との接触像は心筋細胞障害との関連で興味ある所見と考えられた.また,helperT細胞とマクロファージとの接触像は前者の活性化を示唆する像であり,細胞性免疫においていわばimmune-regulationを示す所見と推測された.
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