心臓
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21 巻, 4 号
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  • 城谷 学, 野坂 秀行, 日比野 均, 三岡 相啓, 木村 剛, 黒沢 好文, 大塚 真一, 横井 博厚, 細川 博昭, 荒川 雅夫, 安本 ...
    1989 年 21 巻 4 号 p. 395-403
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    狭心発作におけるST変化を12誘導長時間記録心電図(DATAMEDIX)と従来のホルター心電図(Avionics)について比較検討した.対象は入院中の狭心症患者40例で,異型狭心症(A群)21例,その他(B群)19例であった.DATAMEDIXとAvionicsは同時に装着して記録した.AvionicsではCM5とNASA誘導を用いた.A群ではDATAMEDIXで10例計44回のST変化(いずれも上昇)をとらえたのに対し,Avionicsでは8例計21回のST上昇をとらえたにとどまった.B群ではDATAMEDIXでとらえた6例計13回のST変化(いずれも低下)のうちAvionicsで陽性であったのは3例計4回にすぎなかった.両群とも無症候性のST変化が多数を占めた.12誘導中狭い範囲でしかST変化が生じないと,Avionicsでは陽性にならない例があった.狭心発作時のST変化をとらえるには,DATAMEDIXの方がAvionicsに比べ感受性が高く,心筋虚血範囲の評価の上でもより有効であると考えられた.
  • 心筋虚血ならびに再灌流時の心室細動閾値の変化
    戸田 爲久, 野崎 彰, 川久保 清, 村川 裕二, 井上 博, 吉本 信雄, 杉本 恒明
    1989 年 21 巻 4 号 p. 404-410
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    イヌ生体位心において180分間の左冠動脈前下行枝結紮時および再灌流後の不整脈の発生,心室細動閾値・心室筋不応期の変動に対するthromboxaneA2合成阻害薬(DP-1904)の効果を検討した.
    冠動脈結紮後に自然発生する心室細動や心室頻拍はcontrol群の56%DP-1904群の29%にみられた.Trainpulse法による心室細動閾値はcontro1群で冠動脈結紮後低下し30分後には28±5maが15±11ma(p<0.05)となったが,DP-1904を冠動脈結紮前に100m2静脈内投与した群では28±4maが27±4maとなったのみで,両群には有意の差があった(p<0.01).両群ともその後冠動脈結紮時間の経過とともに心室細動閾値はしだいに前値に戻った.再灌流後は心室細動閾値は急速に回復した,Contro1群では心室筋不応期は冠動脈結紮時に虚血領域で短縮し,非虚血領域の不応期との差dispersionは7±9msから30分後32±18ms(p<0.05)へと拡大した.しかし,DP-1904群では2±4msから10±9msとなった(n.s.).
    以上,thromboxaneA2合成阻害薬は心筋虚血時の自然発生不整脈,心室細動閾値の低下,心室筋不応期のdispersionの拡大のいずれも抑制し,心筋急性虚血発生時の不整脈の予防に有効であると考えられた.
  • 門間 和夫, 高尾 篤良, 柴田 利満
    1989 年 21 巻 4 号 p. 411-418
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    無脾症候群50例について,経年的に標準15誘導心電図(一人平均7年10記録)を調べた.前額面平均電気軸が60度以上異なる複数のP波は全体の74%に認められ,4回以上の心電図記録のある症例では100%に認められた.複数のP波のある症例では,+30度-+90度のP波と+90度-+150度のP波が89%を占め,それぞれ心房の右上と左上に歩調取りがあると推定された.Dome and dart P waveと垂直に近い前額面電気軸P波が,右胸心の右上心房調律,または左心症の左上心房調律で認められた.1度房室ブロックが10%,洞結節機能低下が4%にあり,いずれも多脾症候群より低率であった.その他の調律異常には,副伝導路症候群10%,および非発作性接合部調律6%が認められた.
  • 経静脈性digital subtraction angiographyによる検討
    鰺坂 隆一, 富沢 巧治, 野口 祐一, 飯田 要, 杉下 靖郎, 伊藤 巌, 武田 徹, 外山 比南子, 石川 演美, 秋貞 雅祥
    1989 年 21 巻 4 号 p. 419-428
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    寒冷負荷試験の冠動脈疾患の診断における臨床的意義を明らかにする目的で,胸痛を主訴とする34例を対象として,経静脈性digitalsubtractionangio・graphy(DSA)による左室造影を施行し,寒冷負荷による左室駆出分画(EF)および左室局所壁運動の変化を定量的に検討した.また,34例中32例ではエルゴメータによる運動負荷試験をも施行し,心プールシンチグラフィーにより運動負荷による左心機能の変化についても検討した.上記検査後,冠動脈造影を施行し,対象を冠動脈造影上の有意狭窄の有無により,冠動脈疾患(CAD)17例と有意狭窄を認めない正常冠動脈群(NC)17例とに分類した.
    結果:寒冷負荷により左室EFは,CAD群では有意に低下し,NC群では不変であった.運動負荷においては,両群とも有意の変化を認めなかった.個々の症例での変化をみると,いずれの負荷でも両群間の重なりが大であった.寒冷負荷による局所壁運動異常は,CAD群では17例中15例(88%)で出現したがNC群でも17例中8例(47%)で出現した.一方,運動負荷による局所壁運動異常を,CAD群では16例中14例(88%)に認め,NC群では16例中3例(19%)にのみ認めた.
    結論:寒冷負荷DSA法による冠動脈疾患の診断における感度は良好であった.一方,その特異性は必ずしも高くなかったが,これは対象に胸痛症候群を含んでいるためと考えられ,寒冷負荷はこの点で運動負荷とは異なる意義を有することが示唆された.
  • 藤岡 達雄, 秋池 功, 岳 マチ子, 山口 いづみ, 堀江 俊伸, 窪倉 武雄, 渋谷 実
    1989 年 21 巻 4 号 p. 429-435
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ドック会員において,その経過中に変化した心電図所見の中で最も頻度の多い所見は陰性T波の出現であった.この陰性T波は様々な原因で生じるが,その発生機序は十分解明されていない.またその臨床的意義についても不明な点が多い.そこで我々は陰1生T波出現症例についてその出現誘導部位ならびにその深さと心臓超音波検査所見における肥大の程度ならびに左心機能との関係について検討した.
    結果,ドック会員3,687例において,平均5.1年の経過観察期間内に陰性T波の出現を71例(1.93%)に認めた.超音波検査所見では71例中正常26例(36,6%),非対称性中隔肥厚(ASH)32例(45.1%),対称性肥大(LVH)9例(12.7%),心尖部肥大(AH)4例(5.6%)であった.心電図と超音波検査所見との関係では陰性T波の出現誘導部位が多くその電位が0.5mV以上の症例に肥大の所見を高率に認めた.高血圧症の合併あるいは心電図上の左室肥大を伴っている例では肥大を認める例が多く,左心機能低下例5例は全例に両者の合併を認めた.以上よりドック会員において心電図上陰性T波の出現をみた場合その誘導部位と深さについて,経時的変化をみていくとともに超音波検査により肥大の程度についてチェックしていく必要がある.
    さらに高血圧症あるいは心電図上の左室肥大を伴っている症例では特に注意深い経過観察が必要である.
  • 平井 章三, 山崎 純一, 石河 利一郎, 高見 徹, 長谷川 純一, 小竹 寛, 真柴 裕人, 谷口 巌, 荒木 威, 森 透
    1989 年 21 巻 4 号 p. 436-441
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    比較的高年齢なLutembacher症候群で手術的に根治し得た症例を経験したので報告する.症例は50歳女性.胸部X線で心胸郭比76%,肺動脈拡大を認めた.心電図は心房細動,右軸偏位,不完全右脚ブロック,右室肥大を認めた.心音は,II音の固定性分裂,IIpの充進,第2肋間胸骨左縁で収縮期駆出性雑音および拡張期逆流性雑音を認めたが,openingsnap,拡張期左室充満性雑音(ランブル)は認めなかった.心エコー図では,右室の拡大,心室中隔の奇異性運動を認めドプラ断層法では心房レベルでの左→右シャント血流を検出し心房申隔欠損症(ASD)を確認した.一方,僧帽弁エコー輝度増強,前尖のdorning形成,および拡張期弁後退速度の減少,後尖の前方運動を認め,僧帽弁狭窄症(MS)も認めた.心臓カテーテル検査では,左→ 右シャント率84%であった.手術時Sellors2型MSおよび中等度のASDを確認し交連切開術およびASD閉鎖術を行い術後経過良好である.本症例は,中等度の大きさのASDにMSが合併し右心系の著明な拡大をきたし,心房細動も加わったためにいわゆるsilent MSを呈していた高年齢者Lutembacher症候群の1例で,手術的に根治し得た本邦最高例と考えられ報告した.
  • 渡辺 孝, 阿部 稔雄, 田中 稔, 竹内 栄二, 水野 俊一, 細川 秀一, 堀 明洋, 佐久間 貞行
    1989 年 21 巻 4 号 p. 442-446
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    早急に膵頭十二指腸合併切除術を必要とする十二指腸乳頭部癌を有する重症末槍性肺動脈狭窄症に,血管拡張用バルーンカテーテルを用いたballoondilatationを行った.右室収縮期圧は,103mmHgから45mmHgまで減少し,心拍出係数は,1.76l/min/m2から2.1l/min/m2まで増加した.患者は,この19日後に膵頭十二指腸合併切除術を無事終え,現在健康な生活を送っている.本法は適応,実施方法を誤らなければ,容易かつ安全であり,患者の負担も少なく,有意義である.
  • 三原 純司, 西村 文朗, 吉野 靖, 岩本 耕太郎
    1989 年 21 巻 4 号 p. 448-452
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は19歳男性.昭和62年8月15日午後1時より動悸を自覚.近医を受診し頸動脈洞マッサージ,眼球圧迫等施行されるも効なく,徐々に呼吸困難増強のため,同日午後8時30 分当院受診.来院時起坐呼吸で淡赤色泡沫状疾を喀出.頸脈脈怒張(血圧110/60mmHg,心電図は心拍238/分)の発作性上室性頻拍(以下PSVTと略す)を示した.胸部X線像は心胸比53.5%,肺水腫の所見を認めた.PSVTに対しプロカインアミド,ベラパミールを使用するも不応のため,DC100J施行し洞調律に回復.心電図はAtypeWPW症候群を示した.心エコーにて大動脈弁右冠尖逸脱,僧帽弁逸脱,左室腔拡大,左室壁運動低下を認めた.心臓カテーテル検査でARSellersII度を認め,EF62%と軽度低下,201T1・心筋シンチグラムにて前壁部限局性集積低下を認めた.大動脈弁逸脱,僧帽弁逸脱,左室壁運動低下,WPW症候群によるHR238/分という著明なPSVTのコンビネーションにより急性肺水腫をきたしたと思われ,またこれらの病因を考える時,一連の関連が示唆され興味深い症例と考えられた.
  • 大里 和雄, 小西 堅正, 中尾 武, 堀田 祐紀, 名村 正伸, 金谷 法忍, 大家 他喜雄
    1989 年 21 巻 4 号 p. 453-458
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性期に右冠動脈と左冠動脈回旋枝の同時閉塞を認めた若年者心筋梗塞症を報告する.症例は33歳の男性で発作後2時間で当院入院となり,直ちに緊急冠動脈造影を施行した.右冠動脈と左冠動脈回旋枝両方に完全閉塞を認め,また前下行枝より右冠動脈および回旋枝へのpoorcollatera1を認めた.まず右冠動脈に対してPTCRを施行し,狭窄度25%の良好な再開通を得た.続いて左冠動脈回旋枝にはPTCAを施行し狭窄度25%の十分な拡張が得られ,宋梢が良好に造影された.
    慢性期の冠動脈造影では右冠動脈,左冠動脈回旋枝それぞれ狭窄度25%以下であった.またergonovine負荷試験では右冠動脈,左冠動脈回旋枝各々にspasmが誘発された.
    本例はspasmが関与したと思われる急性期2枝同時閉塞を認めた若年者心筋梗塞症に対してPTCR,PTCAを施行し得た興味ある症例である.
  • 山口 浩一, 高柳 寛, 林 輝美, 井上 晃男, 山中 俊彦, 酒井 良彦, 諸岡 成徳, 高畠 豊
    1989 年 21 巻 4 号 p. 459-464
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Carbamazepineによって洞機能の抑制がまれに認められるが,Rubenstein III型の洞不全症候群の心電図所見を認めた報告はなく,薬剤血中濃度との相関についての検討も十分でない.本剤によると考えられる洞機能抑制を以下に報告する.症例は76歳女性で乳癌の骨転移,甲状腺機能低下症,三叉神経痛で近医に入院中Carbamazepine(TegretolR)を1日0,6g投与され,動悸,眼前暗黒感を訴えた.心電図にて上室性頻拍と洞停止を認め当科に転院した.入院2日目より同剤の内服を中止したところ,翌日より頻脈一徐脈発作は消失し,症状も改善した.第5病日に電気生理学的検査を行い洞結節回復時間は1,740msec,心房早期刺激にて頻拍の誘発を認めなかった.そこでラ再度Carbamazepineを0.6g/day分3で投与開始し,血中濃度と心電図の推移をみながら発作誘発を試みた.内服24時間後より頻脈一徐脈発作を認め,自覚症状も強くなったため総量1.Ogで中止した.Carbamazepine血中濃度はいずれも治療域内で,そのピークは頻脈一徐脈発作に先行した.
    本例における上室性頻拍とその終了時の洞停止は,本剤中止3カ月後も同様に認めていることからも潜在性の洞機能不全が存在し,本剤により顕在化されたと考えられた.
  • 田端 達生, 有田 幹雄, 秋津 嘉男, 友渕 佳明, 山本 勝広, 上野 雄二, 西尾 一郎, 増山 善明
    1989 年 21 巻 4 号 p. 465-469
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は53歳女性.15歳時心雑音を指摘され,44歳時左片麻痺が出現した.昭和60年11月5日,労作性呼吸困難を主訴に当科へ入院した.入院時,脈拍は毎分55で不整,血圧は右上肢176/40,左上肢190/50,両下肢140/50mmHgであった.頸部ならびに腹部に血管雑音を聴取した.心尖部に収縮期雑音(III/VI),拡張期雑音(II/VI)を聴取し,左半身の不全麻痺を認めた.CRPは陰性,赤沈は1時間値12mmと炎症所見は認められなかった.胸部X線で心胸郭比64.8%と拡大がみられ,大動脈および冠状動脈の著明な石灰化が認められた.心電図では心房細動,左室肥大を呈し,心エコー図にて僧帽弁弁尖の肥厚が認められ,ドップラー法にて左房内に逆流が認められた.心血管造影検査では,大動脈弁にSellersll度の逆流と僧帽弁にSellersIV度の逆流を認めた.また左・右冠状動脈の著明な石灰化と,その起始部に動脈瘤様拡張病変を認めた.大動脈炎症候群に僧帽弁膜症を合併する頻度は3-7%と少ないが,本例の僧帽弁変化は本症による炎症性病変によるものと考えられる.一方,冠状動脈病変を合併する頻度は10%程度であるが,著明な石灰化がみられたとの報告は少なく,大動脈炎における一連の炎症性病変によるものと考えられる.
  • 屋宮 和哉, 薗田 正浩, 鬼丸 円, 馬渡 浩介, 橘 裕紀, 中村 一彦, 橋本 修治
    1989 年 21 巻 4 号 p. 470-474
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    弾性線維性仮性黄色腫の25歳の女性で,狭心症と高血圧の精査を目的に冠動脈造影と腎動脈造影を施行した.幼児期から労作時に胸部圧迫感が生じ,高血圧を指摘されていた.中学生の頃から頸部,腋窩,下腹部に皮疹が出現した.心電図では運動負荷後にI,II,III,aVF,V3からV6誘導で著明なSTの低下がみられた.冠動脈造影では左前下行枝と回旋枝が閉塞していたが,右冠動脈から良好な側副血行路が発達しており,左室の壁運動は正常であった.左冠動脈の末梢に数個の動脈瘤がみられ,腎動脈の宋梢にも動脈瘤が多数みられた.今まで血管造影を施行した症例の報告は少なく,合併症として冠動脈瘤や腎動脈瘤がみられたのは他に1例のみである.冠動脈閉塞の原因として動脈瘤の関与が,高血圧の原因として腎動脈瘤による腎血管性高血圧が考えられた.
  • 術前・術後4カ月および1年における心エコー検査による心機能評価
    川村 誠, 近森 大志郎, 土居 義典, 浜重 直久, 米澤 嘉啓, 小田原 弘明, 楠目 修, 小澤 利男, 泉 敏, 田宮 達男
    1989 年 21 巻 4 号 p. 475-480
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Marfan症候群による大動脈弁閉鎖不全症および重症心機能低下(%FS:12)のため急性心不全を呈し,Bentall手術により救命できた35歳男性につき報告する.心機能低下を伴う大動脈弁閉鎖不全症の手術適応について考察するとともに,心エコー図で認められた拡張早期僧帽弁閉鎖と続発性心筋症を思わせる心筋シンチグラフィー所見についても合わせて提示する.
  • 河村 慧四郎
    1989 年 21 巻 4 号 p. 482-483
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 心筋の光顕,電顕的免疫組織化学
    出口 宏章, 北浦 泰, 河村 慧四郎
    1989 年 21 巻 4 号 p. 484-497
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    マウスのcoxsackie B3 virus性心筋炎の心筋,ならびにウイルス性または特発性心筋炎患者の生検心筋において光顕,電顕,免療組織学的にリンパ球,マクロファージを同定し心筋局所免疫機構の検索を行った.マウスのウイルス性心筋炎急性期の心筋壊死病巣には多数のasialoGM1+細胞,T細胞の浸潤を認めた.T細胞サブセットでは,Lyt1+helper/inducerT細胞がLyt2+cytotoxic/suppressorT細胞より多数を占め,T4/T8比は高値を示した.B細胞の浸潤は少数であった.第3,12カ月でも,病巣中に少数のasialo GM1+,T細胞の浸潤が残存した.電顕では,asialo GM1+,Lyt1+細胞,マクロファージが心筋細胞と接する所見が認められ,これらの心筋細胞では様々な変性所見や心筋細胞の壊死像が観察された.
    ウイルス性または特発性心筋炎患者の生検心筋では,Leu2a+cytotoxic/suppressor,Leu3+ helper/inducerT細胞,Leu7+細胞の浸潤を認めた.T4/T8比は1.2±1.Oを示すが,症例間に一定の傾向は見られなかった.電顕では,Leu2a+ 細胞が心筋細胞と接触する所見が観察された.中にはリンパ球が心筋細胞の側面から胞体内に嵌入する像や,介在板の間に侵入する所見(emperipolesis)も認められた.また,Leu3細胞とマクロファージとの接触像も観察された.
    ヒトおよびマウスのウイルス性心筋炎の心筋病変においては,細胞性免疫の関与が極めて重要である.電顕で観察されたリンパ球やマクロファージと心筋細胞との接触像は心筋細胞障害との関連で興味ある所見と考えられた.また,helperT細胞とマクロファージとの接触像は前者の活性化を示唆する像であり,細胞性免疫においていわばimmune-regulationを示す所見と推測された.
  • 高本 哲郎, 古賀 義則, 戸嶋 裕徳, 横山 三男
    1989 年 21 巻 4 号 p. 498-508
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    拡張型心筋症(DCM)および心膜・心筋炎における免疫機構の異常を解明する目的で,モノクローナル抗体を用いて,末棺血のリンパ球膜抗原動態の解析を行った.DCM患者のリンパ球サブセットでは,CD4/8比の上昇を認め,二重染色法による検討ではsuppressorT細胞が著明に減少しておりhelper/suppressor細胞比の上昇を認めた.リンパ球漕性化機構の検討では,ConA,PHAいずれの刺激に対してもDCM患者ではCD8陽性細胞膜上のIL-2receptorおよびHLA-DR抗原の出現率が低値を示した.また,DCM患者リンパ球を自己血清freeの条件下で培養すると,Tリンパ球サブセットは正常化する一方,健常人リンパ球をDCM患者血清とともに培養すると,CD4陽性細胞の増加を認めた.したがって,DCM患者ではsuppressorT細胞の数の減少および活性化機構の異常がみられ,血清中にはこれらのTリンパ球の異常を誘導する液性因子が存在するものと考えられた.
    心膜・心筋炎回復期のリンパ球サブセットの検討では,心膜炎ではリンパ球サブセットの異常は認めなかった.一方,心筋炎では,特に心電図異常や左室壁運動異常を残した不完全治癒例において,CD4/8比の上昇およびB細胞,活性化リンパ球の増加が認められた.したがって,Tリンパ球の異常は心筋・心膜炎においてもその治癒過程を修飾する重要な因子と考えられた.
  • 松森 昭, 河合 忠一
    1989 年 21 巻 4 号 p. 509-521
    発行日: 1989/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    我々の開発した実験モデルは,高度の心筋炎が高頻度に発症する利点があり,ウイルス性心筋炎およびその後に発症する拡張型心筋症類似の病変に対する予防・治療法を検討するのに有用である.この実験モデルでは特異抗体を含む抗血清やワクチン投与により心筋炎の予防が可能であることが明らかとなり,特定のウイルス感染の流行時には試みられるべき療法であると思われる.また抗ウイルス剤ribavirinやアルファ・インターフェロンがウイルス性心筋炎に有効であることが明らかとなり,今後ウイルス性心筋炎の治療に応用できる日も近いと思われる.一方,本モデルでは,ステロイドおよび免疫抑制剤cyclosporineは急性期の投与ではウイルス性心筋炎を悪化させることが明らかとなった.
    今後,本実験モデルを用いて,ウイルス性心筋炎およびその後に発症する拡張型心筋症類似の病変の発症病理,特にウイルス感染に対する免疫応答性の検討や,心筋炎遷延化の機構の解明を試みることにより,その予防,治療の道を探りたいと考えている.
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