心臓
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21 巻, 7 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 奥村 健二, 秋山 直彦, 塚本 英人, 橋本 秀和, 伊藤 隆之, 小川 宏一
    1989 年 21 巻 7 号 p. 813-818
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    実験的糖尿病ラットの心筋脂質の変動とインスリンの効果をみるため,ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットで検討した.リン脂質含有量は,4週ではあまり変化がなかったが,8週ではホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルコリンの減少とスフィンゴミエリンの増加がみられ,8週中の後半の4週間のインスリン治療で改善された.トリグリセリドはすでに4週より高値を示し,またコレステロールも8週で高く,インスリン治療で完全に正常化した.細胞内のセカンドメッセンジャーと考えられている1,2-ジアシルグリセロールは,トリグリセリドと同様高値を示し,4,8週で対照群と比較して各28%および19%と増加したが,インスリン治療により改善しなかった.以上より,糖尿病性心筋障害の発生には,コレステロールやトリグリセリドなどの中性脂質の関与,特に1,2-ジアシルグリセロールの増加が関与することが示唆された.またインスリンによる1,2-ジアシルグリセロールの増加はインスリンの作用によると思われた.
  • 速水 弘, 桜田 春水, 平岡 昌和
    1989 年 21 巻 7 号 p. 819-824
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Vaughan Williamsによる抗不整脈薬分類でIc群に属する新しい抗不整脈薬であるflecainideの遅延後脱分極やそれに基づくtriggeredactivityに対する抑制効果を検討した.低K+,高Ca2率液で灌流したモルモット右室乳頭筋に1~3.3Hzのトレーン刺激を加えて遅延後脱分極やtriggered activityを誘発せしめ,これに対する2μMと10μMのflecai・nide投与後の効果を微小電極法により検討した.Flecainideは,遅延後脱分極の振幅を減少させ,その連結期を延長せしめた.それらの抑制の程度は2μMより10μMの方が高度であった.遅延後脱分極のみられる際に発現するtriggered activityとその連続による頻拍に対してもfiecainideは抑制効果が観察され,薬剤の洗い流しによりこれらの効果は回復した.Flecainideの遅延後脱分極抑制作用の機序としては,細胞内Na流入減少によりNa-Ca交換機構を介するCa2÷の細胞外へのくみ出しが促進され細胞内のCa2+ 負荷が軽減されたこと,あるいは一過性内向き電流に対する直接的な抑制が推測された.
  • 磯本 正二郎, 谷川 宗生, 山田 祐子, 山近 史郎, 上田 康雄, 鹿谷 隆朗, 青井 渉
    1989 年 21 巻 7 号 p. 825-829
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者(DM群n=19)において24時間Hol-ter心電図を用いて,総心拍数(THB),最低心拍数(minHR),日内変動について罹病期間〔自律神経障害が出現すると予想される年数により,罹病期間を8年以下(n=8)と9年以上(n=11)の2群に分け〕との関連について検討し,以下の結果を得た.
    1)THBはDM群で99,999±11,952拍,性,年齢をマッチさせた対照群で92,938±7,400拍であり,DM群の方が有意に多かった(P<0.05).2)minHRはDM群で54.1±8.0拍/分,対照群で47.1±4.9拍/分であり,DM群の方が有意に多かった(P<0.01).罹病期間8年以下ではminHRは50拍/分未満のことが多く,9年以上では50拍/分以上のことが多かった.3)心拍数日内変動の指標として昼問4時間心拍数と夜間安静時4時間心拍数との差(PM-AM4hrHR)を罹病期間との関係で検討すると,罹病期間9年以上の群は罹病期間8年以下の群に比し有意に低値を示し(p<0.05),心拍数の日内変動の減少を認めた.夜間最低心拍数は迷走神経の活性を反映することから,夜間最低心拍数の高値は迷走神経障害を示唆し,DMの罹病期間の長い症例ほど,夜間最低心拍数の高値,および,日内変動の減弱を示したことは自律神経障害によるものと考えられた.
  • 蛭田 義宗, 油井 満, 菅野 和治, 山内 俊明, 市原 利勝, 宇留賀 一夫, 富永 邦彦, 若狭 治毅
    1989 年 21 巻 7 号 p. 830-836
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    年齢と臨床像に興味深い関連の推察された肥大型心筋症の1家系を経験した.
    家系内には突然死5例を含む.3世代27例につき精査したが,うち若年者3例では肥大型心筋淀様心電図異常を有するにもかかわらず壁肥厚は認めず,中壮年者5例では典型的肥大型心筋症像を認め,さらに最高齢者2例では拡張型心筋症類似の臨床像を呈していた.17歳の発端者と68歳の症例に経右室心内膜下心筋生検を行い得たが,両者とも心筋線維の肥大と間質の線維化が共存していた.
    本家系は,近年諸家により報皆の散見される肥大型心筋症から拡張型心筋症様病態へ移行する特殊な自然歴を持つ家族性心筋症である可能性が疑われ,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 龍野 勝彦, 石神 直之, 菊池 利夫, 高橋 幸宏, 村上 保夫, 森 克彦, 三森 重和
    1989 年 21 巻 7 号 p. 837-842
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    漏斗部VSDの手術例210例について,VSDの形態と合併症の関係について調べた。漏斗部VSDはA型(肺動脈弁下),B型(漏斗部孤立),C型(漏斗部全欠損)に分けられ,A型は肺動脈弁との関係からさらにA-(1) 型(右肺動脈尖下),A-(2) 型(左右肺動脈尖下),A-(3) 型(左肺動脈尖下)の3亜型に分類された.A-(1)型VSDは漏斗部VSDの57%を占めており,大部分が大動脈弁のVSDへの逸脱あるいはバルサルバ洞の膨隆を伴っており,その30%に大動脈弁閉鎖不全およびバルサルバ洞動脈瘤破裂が合併した.A-(2) 型VSDはA-(1) 型とA-(3) 型の中間の臨床的特色を有しており,大動脈弁やバルサルバ洞の突出を示した症例と大動脈縮窄を伴う肺高血圧を合併した乳幼児列が半分ずっ見られた.A-(3)型VSDではほとんどの症例が大動脈縮窄と肺高血圧を伴う乳児例であった.B型VSDでは肺動脈弁に近い欠損ではA-(1)型と似ていて,大動脈弁の逸脱した症例が多かったが,三尖弁に近い室上稜下の欠損では右室漏斗部狭窄を伴うものが多かった.C型VSDは大部分が肺高血圧を伴う乳児例であったが,5歳の2例に大動脈弁の逸脱を認めた.
  • 田中 誠, 野坂 秀行, 木村 剛, 横井 博厚, 安本 均, 浜崎 直也, 堀内 久徳, 金 公宅, 長谷川 浩二, 神畠 宏, 新藤 高 ...
    1989 年 21 巻 7 号 p. 843-850
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠動脈病変がどのように進行するかは,虚血性心疾患の治療方針を決定したり患者の予後を考える上で重要な問題である.昭和49年7月から昭和62年6月までに当院において2回以上冠動脈造影を受け,その間PTCAやバイパス手術を施行されていない380症例を対象に検討した.これらのうち60例に心筋梗塞の発症が認められ(以下A群),155例に梗塞発症を伴わない冠動脈病変の進行が認められた(以下B群).165例は冠動脈病変の進行は認められなかった(以下C群).糖尿病,高血圧,喫煙,高βリポ蛋白血症はB群においてC群に比し有意に高く認められた.高コレステロール血症,高中性脂肪血症,低HDL血症,高尿酸愈症はいずれもB群において高い傾向にあったが有意差は認められなかった.エルゴノビン負荷試験陽性率(完全または亜完全閉塞)はB群においてC群に比し有意に高く認められた.観察期間3年未満と3年以上では前者に比し後者においてB群の比率が有意に高くなっていた.一方A群は今回検討したどの因子においてもC群と有意な差は認められなかった.梗塞非発症の冠動脈病変進行には糖尿病,高慮圧,高βリポ蛋白血症,冠動脈スパスム,時間が有意に関与していたが心筋梗塞発症にはどの因子も有意に関与していなかった.梗塞非発症の冠動脈病変進行と心筋梗塞発症には異なった機序が関与している可能性が示唆された.
  • 本間 彰, 秋場 伴晴, 芳川 正流, 大滝 晋介, 小林 代喜夫, 中里 満, 鈴木 浩, 佐藤 哲雄, 鷲尾 正彦, 中村 千春
    1989 年 21 巻 7 号 p. 851-854
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は心雑音,頻脈,多呼吸を主訴に生後9日目に入院した男児.胸部X線で心拡大と著明な肺うっ血像を認めた.心エコー図で,大動脈弁輪径は5mmと狭く,弁のドーム形成がみられた.左室短縮率は19%と低下していた.連続波ドップラー法で左室-大動脈圧較差は約50mmHgと推定された.心不全が高度であったため,生後IO日目に体外循環下に手術を施行した.大動脈弁は粘液腫状に肥厚した二尖弁で,両交連部に切開を加えて狭窄の解除を計った.術後経過は良好で,心不全は軽減した.心エコー図で左室短縮率は47%と正常化し,連続波ドップラー法による左室一大動脈圧較差は約40mmHgであった.自験例は,我々が検索した限りでは本邦で2番目の年少手術成功例と思われる.
  • 姉崎 利治, 鈴木 正孝, 吉川 晴夫, 土田 兼史, 鎌田 滋夫, 朱 敏秀, 宮下 正弘, 大関 一, 佐志 隆士
    1989 年 21 巻 7 号 p. 855-859
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    人間ドックの胸部X線写真の異常陰影から偶然に発見されたpulmomary artery sling(以下,PAsling)の,無症候・成人列を報告した.症例は48歳の女1生.小児期より喘鳴,呼吸困難等の自覚症状はなかったが,昭和62年9月,人間ドックの胸部X線写真にて右主気管支上方の異常陰影を指摘され精査.胸部X線写真側面像にて気管の後方からの圧迫,食道造影にて前方からの食道圧排像を認めた.胸部CTで右肺動脈から分岐し気管と食道の間を迂回する左肺動脈を指摘され,心臓カテーテル検査を施行し,肺動脈造影にて右肺動脈から分岐し,気管の右側から後方を迂回し末構へ分布する左肺動脈を認め,PA slingと診断した.その他の心内奇形はなかった.PA slingは,本邦では14例の報告があるが,いずれも小児例であり喘鳴,呼吸困難などの自覚症状を有する.成人例の報告は,本邦では初めてで,世界でも数例で非常にまれであるので報告した.
  • 板金 広, 安田 光隆, 秋岡 要, 田原 旭, 柳 志郎, 成子 隆彦, 寺柿 政和, 奥 久雄, 竹内 一秀, 武田 忠直
    1989 年 21 巻 7 号 p. 860-862
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠動脈バイパス術における内胸動脈グラフトの使用増加に伴い,その術後狭窄に対するPTCAの報告がわずかながら行われている.症例は74歳の男性で,左主幹部完全閉塞と右冠動脈50%狭窄のため左前下行枝に左内胸動脈,右冠動脈に大伏在静脈を用いバイパス術を施行した.術後の冠動脈造影にて前下行枝と内胸動脈の吻合部に90%の狭窄を認めたため同部位にPTCAを試みた.大腿動脈よりアプローチし,guiding catheterは10cm短縮したJudkins-4-Right, guide wireは0.014 inch high torque floppy,balloon catheterはSimpson-Robert low profile 2.5mmを用い6気圧2分でinflationし25%狭窄を残したが開大に成功した.内胸動脈グラフトの普及に伴い術後狭窄に対するPTCAはより安全に施行でき,今後汎用される手法として期待された.
  • 平尾 見三, 沖重 薫, 田中 一司, 鈴木 文男, 鈴木 文男, 佐竹 修太郎, 比江嶋 一昌
    1989 年 21 巻 7 号 p. 863-868
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は動悸発作を有する75歳男性.心臓電気生理学的検査にて,発作性“上室”性頻拍が誘発されたが,頻拍中にR-R間隔が漸増した.この時,ヒス束心電図上,心房波に先行していたヒス束波(および心室波)が徐々に遅れて出現し,ついにはブロック(A-H Wenckebach型)に至った.この所見より,ケント束をリエントリー回路に含む房室リエントリー性頻拍は除外された.心房興奮が下位より上位で,心房波が心室波に一部重畳すること,また,verapamilが頻拍停止に有効であったこと等より,本頻拍の機序として房室結節リエントリー性頻拍が考えられた.心房一ヒス束聞のブロックにもかかわらず頻拍が持続することより,リエントリー回路下部に下部共通路の存在を想定した.一方,頻拍中に加えた心房早期刺激が頻拍周期に影響を及ぼさないこと,心房周期に強いalternansがみられたことより,上部共通路の存在の可能性が示唆された.以上のように,本例ではリエントリー回路が房室結節内に限局し,その上部・下部に共通路が存在すると考えられる電気生理学的所見が得られた.
  • 伊藤 浩二, 山本 勝広, 葛城 充明, 中村 吉成, 友渕 佳明, 有田 幹雄, 上野 雄二, 西尾 一郎, 増山 善明
    1989 年 21 巻 7 号 p. 869-874
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    成人型家族性完全房室ブロックは,我々が検索し得た限りでは,これまで本邦における8家系を含む23家系の報告しかなく,多くは3枝ブロックとされている.今回我々は,洞機能障害,心房粗動を合併する本症の1姉妹例を経験したので,HLA抗原型の検索を含めて報告する.発端者は38歳で,主訴は眼前暗黒感にて心房粗動,完全房室ブロック接合部補充調律を呈し,諸検査にて心に明らかな基礎疾患を認めなかった.電気生理学的検査ではA-H ブロックであり,永久ペースメーカーを植え込んだ.発端者の姉は43歳で,無症状であるが,心房粗動,完全房室ブロック,接合部補充調律を呈した.電気生理学的検査ではA-H ブロックと洞結節機能低下を認めたが,右室心筋生検では著変を認めなかった.さらに両症例を含む家系内に,第1度房室ブロック,洞性徐脈,突然死を認めた.HLA検査では,BW-39, CW-7, DRW-9の3抗原型が多く認められ,遺伝学的素因の関与が示唆された.
  • 宮本 昭彦, 垣花 昌明, 杉下 靖郎, 伊藤 巌, 井島 宏, 堀 原一, 木村 雄二
    1989 年 21 巻 7 号 p. 875-881
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,男性.家族歴:母と兄弟に高血圧あり.既往歴:48歳頃より収縮期血圧180mmHgの高血圧を指摘された.現病歴:50歳頃より右鼠径部に拡大傾向のある拍動性腫瘤が出現し,最近左側にも同様の腫瘤が出現した.昭和61年2月某病院にて,胸腹部にわたる広範な大動脈瘤および両側総腸骨・大腿動脈瘤と診断され,後者に対して動脈瘤人工血管置換術を施行された.同年10月精査加療目的にて当院循環器内科入院.入院時血圧:右上肢110/60mmHg,左上肢104/60mmHg.右下肢測定不能,左下肢110/50mmHg.脈拍78/分,整.胸部X線写真:心胸郭比49%,下行大動脈の拡張,蛇行と一部の石灰化を認めた、心電図:正常.大動脈CT:下行大動脈の横隔膜上から総腸骨動脈分岐部に及ぶ広範な大動脈瘤(最大径8cm)を認めた.冠動脈造影:右冠動脈,左冠動脈に紡錘状拡張を認めた.昭和62年2月19日当院循環器外科にて胸腹部大動脈瘤に対して動脈瘤人工血管置換術が施行された.術中に得られた大動脈壁の病理所見からは内膜下層の粥腫が認められた.炎症所見は認められなかった.本例における冠動脈瘤の成因は,大動脈壁の病理所見から推定して動脈硬化性と考えられるが,冠動脈,胸腹部大動脈および冠動脈以外の末梢動脈に共存する多発性動脈瘤の報告はなく,冠動脈瘤と胸腹部大動脈瘤の合併例の1例報告があるのみである.
  • 中村 隆志, 片平 敏雄, 岡室 周英, 辻 康裕, 高橋 徹, 国重 宏, 古川 啓三, 勝目 紘
    1989 年 21 巻 7 号 p. 882-888
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    難治性心不全の主因が前腕に作成された内シャントの拡大によることを面行動態の面から解明しえた慢1生透析患者の,1例を経験し,シャント閉鎖により心不全の消失をみたので,報告する.
    患者は47歳,男性.主訴は労作時呼吸困難,7年前に内シャント作成術を受けている.身体所見では瘤状に拡大した内シャント,頸静脈怒張,心拡大を呈し,検査所見では左室のび漫性壁運動低下,高度の僧帽弁逆流を認めた.心エコー図,超音波ドプラ法によりシャントの圧迫閉鎖前後で著明な心拍出量の変化が観察され,右心カテーテル検査により確認された.内シャントの永久閉鎖により,心不全症状はすみやかに消失し,心拡大は2カ月後,僧帽弁逆流も5カ月後には消失し,左室壁運動の改善を認めた.
    本例ではシャント閉鎖により高拍出性心不全が治癒したことから,長期間の変化としてシャントの拡大により,流量が増大し,心不全をきたしたと考えられた.内シャントの心機能に対する影響は一般に軽微とされるが,心不全を有する患者や,シャントの増大が認められる患者については内シャントの影響を注意深く再評価すべきであると考えられた.
  • Syndromemyxomaと考えられる1例
    西崎 良知, 三河 内弘, 時岡 正明, 西崎 進, 正岡 佳子, 谷崎 真行, 藤田 邦雄
    1989 年 21 巻 7 号 p. 889-893
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    我々は,今回右心系に多発性粘液腫を認めた22歳の患者を経験したが,本患者は13歳の時Cushing症候群として両側副腎の摘出術を行っており,術後の組織学的診断は副腎皮質の結節性異形成であった.その後ハイ.ドロコーチゾンの投与で経過を観察中であったが,昭和59年6月18日突然呼吸困難を起こし入院,心エコー断層にて右房に1ケ,右室に3ケの心臓腫瘍を認めた.手術的に摘出したが組織学的には粘液腫であった.その後の経過は良好であり,3年間の経過観察では腫瘍の再発は認めていない.本患者について検討すると,本患者は顔面,特に眼の周囲に多数の黒子があり,10年前には副腎の結節性異形成で起こったCuShing症候群が認められたこと,また心臓粘液腫は多発性のものであったことなどより,Vadailletらのいう“Syndrome myxoma”にあてはまるものと思われた.しかし彼らのいう家族遺伝性については本例では認められなかった,本症候群は外国では現在まで40例が興告されているが本邦においては1例の報告があるのみであり,今後の経過も含めて興味があると考えて報告した.
  • 高橋 徹, 沢田 尚久, 志賀 浩治, 岡室 周英, 辻 康裕, 国重 宏, 北村 誠, 宮尾 賢爾, 伊東 宏
    1989 年 21 巻 7 号 p. 894-900
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肺塞栓症による急性肺高血圧症の予後は,適切な治療により急性期を乗り切れ再発防止が有効に行われた場合は通例良好で,慢性肺高血圧症に至る予後不良例はまれとされている.このたび,我々は卵円孔開存による奇異牲塞栓症と思われる症状を伴い,反復性肺塞栓症から肺高血圧症が不可逆的となった症例を約4年間観察しえたので報告する.症例は現在72歳,女性.軽労働中に急に呼吸困難を生じたが,数日後意識レベルの低下と右片麻痺の出現のため入院となった.入院時,神経学的異常所見に加えて頻呼吸を認め,検査所見ではLDH,FDPの高値,著明な低酸素血症が持続した.診断確定後,線溶療法と抗凝固療法によく反応し全く神経学的異常を残さず退院した.6カ月後にワーファリンを中止したが,その後数カ月して広範囲肺塞栓が再発した.この際,初回と同様の治療に加えGreenfield pulmonar yembolectomy catheterを試用したが,慢性期のためか不成功で肺高血圧症は増悪傾向を見せた.初回発作から約3年8カ月後にも諸検査を施行したが肺高血圧症の改善なく,肺性心の病態を呈し予後不良と考えられた.肺塞栓症について抗凝固療法の打ち切り時期決定には慎重を要すること,原因としての静脈血栓症から奇異性塞栓を生じうること,反復性の場合は通常の治療が不十分なことがある,と考えられた.
  • 桑原 正知, 川副 浩平, 鬼頭 義次, 藤田 毅, 公文 啓二, 田中 一彦
    1989 年 21 巻 7 号 p. 901-904
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    我々は連合弁膜症や三尖弁疾患例のうち三尖弁の変化の著明なものには積極的に生体弁による三尖弁置換術を施行しているが,僧帽弁と三尖弁との二弁置換例で術後肺動脈圧が著しく上昇し失った症例を経験した.48歳の男性で経過の長い僧帽弁狭窄兼三尖弁閉鎖不全例で術前肺動脈圧は44/24(30)でPp/Ps O.42であった.僧帽弁は27mm,三尖弁は31mmのいずれもISPXにて置換術を施行した.人工心肺からの離脱は容易であったが術後Ps/PsはO.8と上昇し一時抜管できたものの呼吸状態が悪化し再挿管となった.左房圧は術直後は低下したがすぐに上昇し中心静脈圧は再挿管の頃までは低いままで経過した.Pp/PsはO.9を越えしだいに多臓器不全となって術後24日目に死亡した.剖検では肺中細動脈の中膜の肥厚と問質の線維化が認められた.術前からの左心不全,僧帽弁狭窄解除の程度,肺血管病変の不可逆性進行,術中術後の肺血管収縮因子,肝障害や体外循環の影響などもその原因として考えられるが,長期の僧帽弁狭窄症の患者では左右心室のポンプ機能にアンバランスが生じており,これが術後の肺動脈圧の上昇に影響した可能性もあると思われた.
  • 特に心エコー所見について
    堀米 仁志, 土田 昌宏, 監物 久夫, 城 一也, 上岡 克彦, 松本 正智, 木川 幾太郎, 大谷 信一, 中込 正昭, 菅間 博
    1989 年 21 巻 7 号 p. 905-909
    発行日: 1989/07/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は初発時1歳9カ月の男児で,左肩甲骨に原発した線維肉腫の摘出手術から1年後に,肺転移巣と同時に左房,左室内の転移巣が心エコーにて発見された。化学療法に反応し,左房内に淡い陰影を残すのみとなったが,心転移から1年6カ月後に癌性収縮性心膜炎に至り死亡した.心膜切開術施行時の心膜生検で線維肉腫が確認された.左房,
    左室内腫瘍の経過観察に心エコーは極めて有用であったが,心外膜や縦隔内の腫瘍は十分に捉えられず,腫瘍の全体像を捉えるのに時間を要した.心転移巣の診断に際しては,断層心エコーに加え,CTスキャンやMRI等の他の検査法を併用し,心内腔の腫瘍の心周囲への連続性や縦隔内腫瘍の存在を検討することが重要と考えられた.
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