心臓
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22 巻, 6 号
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  • 鰺坂 隆一, 渡辺 重行, 増岡 健志, 藤田 享宣, 松本 龍馬, 杉下 靖郎, 伊藤 巌
    1990 年 22 巻 6 号 p. 633-639
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠攣縮性狭心症における交感神経系の機能を検討するために,冠攣縮性狭心症(VA)22例,労作狭心症(EA)17例および健常(NC)9例に寒冷負荷試験を施行し,その循環反応ならびに血中ノルエピネフリン(PNE)濃度の変化を比較検討した.結果:寒冷負荷に対する昇圧反応(平均血圧上昇度)には3群間で差異を認めず,心拍数も軽度ではあるが,3群とも同程度に増加した.しかしPNE濃度の増加度はVA群がNC群より有意に(p<0.025)小であり,VA群のうち,冠動脈に有意狭窄を認めなかった14例の増加度はEA群,NC群のいずれに対しても有意に(p<0.05,p<0.01)小であった.結論:冠攣縮性狭心症では寒冷負荷に対する血中ノルエピネフリン濃度の上昇は小さいにもかかわらず,循環反応は健常群と差異がないことから,交感神経刺激に対する心血管系の反応性はむしろ充進している可能性が示唆された.
  • 清水 寛正, 李 鍾大, 加藤 大, 清水 哲司, 小川 一也, 原 晃, 中村 徹
    1990 年 22 巻 6 号 p. 640-646
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    安静時胸痛を主訴とし,冠動脈に器質的狭窄を有さず,発作中,Treadmi11運動負荷試験およびエルゴノビン静注時(≦0.4mg)に,虚血性心電図変化を証明できなかったいわゆる胸痛症候群患者17例(男9名,女8名)を対象に,アセチルコリン(ACh)冠動脈内注入による冠攣縮誘発試験を行った.ACh注入前後の冠動脈造影像より主要冠動脈各分節の内径を測定し,内径変化率を算出した.そのうち最大変化部位の収縮率(MCR)を各患者の冠血管反応の指標とした.対象をさらにAChで胸痛が誘発された群(ACh胸痛(+)群:7名),されなかった群(ACh胸痛(-)群:10名)に分け,典型的な冠攣縮性狭心症(VSA群:9名)および胸痛の既往のない対照群(17名)と比較検討した.
    ACh冠動脈内注入により虚血性心電図変化はACh胸痛(+)群で5例に認めたが,ACh胸痛(-)群では皆無であった.ACh胸痛(+)のMCR(66±18%)は,ACh胸痛(-)群(28±10%)より有意に大であった.ACh胸痛(-)群のMCRは,対照群(26±12%)と差がないのに対して,ACh胸痛(+)はむしろVSA群(85±18%)に近いMCRを示した.このことは,いわゆる胸痛症候群の中にも,一部,冠攣縮が関与している症例が存在していることを示唆する.しかしACh胸痛(+)群では7例中5例がdiffse constrictionを示したのに対し,VSA群では9例中6例がfocal constrictionを示したことは,両者の病態の相違を示しているとも考えられた.
  • 益岡 弘司, 岡本 紳也, 位田 正明, 小西 得司, 浜田 正行, 中野 赳, 林 辰弥, 鈴木 宏治
    1990 年 22 巻 6 号 p. 647-651
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    PTCAを施行した18例において,第1回のバルーン拡張の直前直後と30分後,および24時間後に大腿動脈血を採血し,tissue plasminogen activator(t-PA), t-PA inhibior(PAI), Protein C, Antithrombin III(AT III)を測定した.合併症を伴わなかった16例では,これらの因子は有意な変動を示さなかった.2例で急性冠閉塞から心筋梗塞を発症したが,この2例では共にバルーン拡張直後よりt-PAとPAIの両者が上昇し始め,24時間後には著明な高値となった.Protein CとAT IIIに有意な変動は認めなかった.PTCAに伴う心筋梗塞発症の,超急性期の線溶動態を解明するものとして注目される.一方,4カ月後の冠動脈造影にて再狭窄を認めた群(5例)と再狭窄を認めなかった群(11例)に分けて検討すると,再狭窄群ではProtein CがPTCA直後に有意に上昇したが,非再狭窄群ではPrctein Cは,むしろ減少傾向を示した.しかしt-PAとPAIの変動に差は認めなかった.
  • 馬場 俊也, 上田 修, 岡崎 英隆, 高地 恭二, 古賀 伸彦, 桜井 淳一, 乗田 浩明, 樗木 等, 伊藤 翼, 前沢 秀憲
    1990 年 22 巻 6 号 p. 652-657
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠動脈バイパス術(以下CABG)後のバイパスグラフトの狭窄・閉塞に対する経皮的冠動脈形成術(以下PTCA)の有用性と問題点などについて検討した。PTCAの対象となったものは,のべ26症例39病変であった.症例は男19例女7例で,平均年齢は57.1歳であった.CABGからPTCAまでの期間は20日~5年3カ月,平均15カ月であった.グラフト病変は,1年以内の症例が84,6%と大部分を占めた.全体の成功率は74.4%であった.静脈グラフト病変は35病変で,限局性病変は79.3%,び漫性病変66.7%であった.限局性病変では遠位側吻合部,体部が77.1%を占めた.グラフト別では,RCAへの成功率が高かった.び漫性病変のうち85.7%は完全閉塞例であった.その半数は術後1カ月以内の症例であった。合併症は7.7%で全てび漫性病変の症例であり,1例で心筋梗塞に移行した.バイパスグラフトの狭窄・閉塞に対するPTCAは成功率も高く有効な治療法と思われたが,重大な合併症を起こすこともあり十分な注意が必要と思われた.
  • 荷見 源成, 豊崎 哲也, 藤田 直也, 永田 まこと, 天沼 澄子, 仁木 清美, 堀江 俊伸, 細田 瑳一, 長尾 博明, 廣江 道昭, ...
    1990 年 22 巻 6 号 p. 658-668
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    近年,特発性心筋症におけるアドレナリン感受性や受容体(AR)数変化が注目されている.そこで我々は,生検心筋組織のARを形態学的,定量的に解折し,本疾患群との関連を検討した.肥大型心筋症(HCM)10例,拡張型心筋症(DCM)10例,洞不全症候群(SSS)を主徴とする5例を対象とし,生検により採取された右室(RV)の心内膜心筋組織を用いて,α1,βARの密度を定量的ミクロオートラジオグラフィー法(MARG)により検討した.α1,βARのgrain平均値(/25×25μm2)は,HCMRV(n=10)で各々27.3±5.6,23.0±4,2,DCM-RV(n=10)で10.2±3.5,13.4±3.7,SSS-RV(n=5)で11.4±2,1,15.4±1.5であり,HCM症例におけるα1,βARが,他の2群に比較し有意に増加していた(p<0.001).また,心筋細胞の肥大とα1,βAR数はHCM,SSS群で相関していた.
    MARGにより,in situにおける病的心筋のAR解析が可能であった.HCM症例ではARの感受性充進が推論されているが,本研究によれば心室筋のα1,βARの増加が異常肥大を起こす一因と考えられた.またARの増加が心筋細胞肥大に影響を及ぼすことが証明された.一方,DCMではその病因にARの変化が関与する可能性は少ないと考えられ,軽症の症例ではβ遮断剤の使用に注意を要すると考えられた.
  • 丸山 圭史, 東 伸郎, 垣内 孟, 中橋 弥光, 小田 洋平
    1990 年 22 巻 6 号 p. 669-673
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は60歳女.5歳時大量喀血の既往あり.突然呼吸困難と血疾が出現し救急入院.動脈血ガス分析にて著明な低酸素血症を認めた.心電図上広範囲にST上昇を認め急性心筋梗塞を疑い冠動脈造影を施行した.その結果,左冠動脈では前下行枝近位部および回旋枝末梢より,また右冠動脈では近位部および遠位部より拡張蛇行した異常交通血管を認め,左下肺野を除く末槍肺動脈が造影されたが冠動脈には閉塞や有意狭窄はなかった.また主肺動脈と右肺動脈末梢で著明な収縮期圧較差がみられたため,肺動脈造影を行ったところ左肺動脈基始部での完全な陰影欠損,および右肺動脈末梢の多発性狭窄を認めた.本例は酸素投与のみにて急速に症状が改善した.入院5週間後,positron CTにより,H215Oを用いて心筋血流量を測定したところisosorbidedinitrate5mg静注後に右室および左室前壁中隔で著明な低下を認め,coronarystea1の可能性が示唆された.
    以上より本例は両側冠動脈左肺動脈痩を有し,しかも幼少期に生じたと思われる原因不明の慢性左肺動脈基始部閉塞と慢性肺梗塞の合併が疑われた.しかし急性のNon Q心筋梗塞の合併の可能性については完全には否定できなかった.
  • 河合 裕子, 川越 康博, 酒井 吉郎, 雨宮 邦子, 楠本 雅子, 関口 守衛, 木全 心一, 広沢 弘七郎
    1990 年 22 巻 6 号 p. 674-679
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    右室梗塞は,後下壁梗塞に合併する事が多く,ほとんどの場合それによる右心不全は急性期に見られるのみであり,長い経過後に発症してくることはまれである。今回我々は,後下壁心筋梗塞発症4年後に右心不全と薬剤抵抗性の不整脈を示し,病理学的には著明な右室の菲薄化と心筋組織の脂肪変性を認めたまれな1例を経験したので報告する.
    症例は59歳の男性で,1982年に急性後下壁心筋梗塞を発症した.その後,浮腫肝腫大が出現し,1986年2月大量の飲水をきっかけに心不全となり,4月当科に入院した.治療により心不全は改善したが,カテーテル検査では著明な右室の駆出率低下を認めた.経過中,心室頻拍が頻発し,数種類の抗不整脈剤を投与したが,副作用のためにいずれも長期間の投与は不可能で,7月,患者は心室頻拍,心室細動のため死亡した.剖検の結果,後下壁心筋梗塞に加えて右室梗塞の所見が認められた.また,右冠動脈の閉塞部位以下の灌流領域の右室壁は,厚さ3mm以下と著明に菲薄化していた。
  • 吉田 茂夫, 岡本 史之, 吉田 祐一, 松崎 智哉, 佐々木 潤
    1990 年 22 巻 6 号 p. 680-684
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    各種薬剤治療抵抗性の心室頻拍・細動を伴った正常冠動脈の異型狭心症に対し,抗パーキンソン剤のレボドーパ,カルビドーパ合剤を投与し劇的な改善を認めた.
    症例は,48歳女性で1986年秋より早朝胸痛発作が出現し,1987年11月末より意識消失を伴う激しい胸痛発作を繰り返すようになり,即入院.十分量のカルシウム拮抗剤,亜硝酸剤等を投与加療するも増悪傾向を認め,また心室頻拍・細動も頻回に起こすようになったため1988年10月抗パーキンソン剤のレボドーパ,カルビドーパ合剤投与する.投与2日目より発作が消失し1年ぶりに社会復帰が可能となった.
    異型狭心症に対し抗パーキンソン剤が有効とする報告は欧米からのわずかな報告のみで本邦では見当らない.発症要因が多彩である異型狭心症とドーパミン系との関係についても文献的考察を加えた.
  • 手取屋 岳夫, 田中 信行, 向井 恵一, 川尻 文雄, 岩 喬
    1990 年 22 巻 6 号 p. 685-689
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデス(以下,SLE)は様々な臓器障害を呈するが,心臓血管領域でも高血圧症,心膜炎,心筋炎,心筋梗塞などが知られている.今回,著者らはSLEを基礎疾患とする感染性心内膜炎による僧帽弁閉鎖不全症例に対して,僧帽弁置換術を施行して良好な結果を得たので報告する.
    症例は30歳,男性で昭和58年に腎病変などからSLEと診断され,ステロイド療法を受けていた.昭和62年に外傷が発端となって,黄色ぶどう球菌による急性心内膜炎に罹患した.抗生物質の投与により炎症症状は消失したが,僧帽弁閉鎖不全症が出現し心不全に陥った.内科的治療にもかかわらず左室機能の低下,肺高血圧が増悪してきたため,僧帽弁置換術を施行した.術前は特に腎機能に注意を払ってステロイド量を漸減した、手術は特に問題なく施行し得たが,術後一時的に低拍出状態に陥り,大動脈内バルーンカテーテルによる補助を必要とした.また,術後数日にわたって血小板減少が持続し皮膚病変などSLE症状の再燃がみられたため,ステロイドを増量せざるを得なかった.本邦ではSLE症例に対する弁置換術の報告がなく,欧米でも散見するのみであるが,このようにリスクが高い症例にも,症状の原因を正確に見極め必要とする治療を積極的に行うべきと考えられる.
  • 浅野 博, 曽根 孝仁, 坪井 英之, 佐々 寛己, 前田 正信, 村瀬 允也
    1990 年 22 巻 6 号 p. 690-695
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    59歳の男性で高度の大動脈弁狭窄症に基づく急性肺水腫にて入院した.入院直後,torsad ed epointes型心室頻拍から心室細動発作を頻回に生じ,直流通電と大動脈バルーンパンピングにて急性期を治療し得た.心電図でII,III,aVFおよびV4からV6にかけて著明なST低下と心筋逸脱酵素の著明な上昇を認めたので,心筋梗塞合併の有無を確認するため,血行動態が安定した第9病日に201TlClと99mTc-PYPの同時収集によるDualSPECTを施行した.Tlシンチグラフィでは心尖部の集積欠損を,PYPシンチグラフィでは胸壁と心尖部への強い集積と全周性の心内膜側に偏位した淡い集積を認め,全周性心内膜下梗塞の合併と直流通電による前胸壁ならびに心尖部傷害と診断した.第56病日の冠動脈造影では左右冠動脈とも有意狭窄はみられなかった.正常冠動脈で全周性の心内膜下梗塞を惹起した原因として,著明な心筋肥大による心筋の酸素需要と供給の不均衡による可能性が高いと考えられた.心電図変化や血清酵素のみでは診断困難で予後不良とされている全周性心内膜下梗塞をDual SPECTにより生前に確定診断し得た貴重な1例と思われた.
  • 三條 順子, 山田 はるか, 佐々木 英樹, 山崎 博之, 清水 光行, 磯貝 行秀, 二階堂 孝
    1990 年 22 巻 6 号 p. 696-700
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,40歳,男性.呼吸困難,左下肢しびれ感を主訴に入院となった.入院後の検査では,心臓,縦隔,肺,骨に多発性に腫瘍が認められ,前縦隔生検の結果,softpart sarcomaと診断された。Adriamycin, cyclophosphamide, vincristine併用療法による治療を行うも効果は認められず,放射線療法の反応にも乏しく,症状が出現してから約3カ月後に亡くなった.病理解剖の結果,右心室は12×9×10cmの大きな腫瘍で占められており,同部位が原発と考えられた.転移は,肺,骨,胸壁,頸部軟部組織頭部皮下軟部組織に認められた.組織学的所見から,本腫瘍は血管肉腫と判明した.
    原発性心臓腫瘍の頻度は全剖検例の0.0017~0.28%と報告されており,非常にまれである.このうち,良性腫瘍は約80%,悪性腫瘍は約20%といわれている.その中で,血管肉腫は本邦において27例の報告が認められ,心臓原発悪性腫瘍の第1位を占めている.本腫瘍は,比較的化学療法に対する感受性が低いうえに転移が早いため,予後が悪く,早期発見が大切と考えられた.
  • 宮尾 智子, 川嶋 剛史, 西川 俊介, 高山 幸男, 小菅 一彦, 森 渥視
    1990 年 22 巻 6 号 p. 701-705
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    両側冠動脈入口狭窄は,重篤な症状を呈する.我々は,大動脈炎症候群による両側冠動脈入口部狭窄に起因する狭心症の1例を経験したので報告する.症例は,18歳,女性.労作時胸痛を訴えて来院.運動負荷心電図にて,I, aVL,V3-6でST低下を認め,心電図変化から左冠動脈主幹部狭窄と推測し,冠動脈造影を施行した.左冠動脈入口部に90~99%狭窄を確認したが,造影後,徐脈,血圧低下をきたし,約1時間30分後に緊急A-C bypass術を施行したが,救命し得なかった.術申所見からは右冠動脈入口部狭窄も認め,病理所見から大動脈炎症候群と確定診断した.大動脈炎症候群では,病変が両側の冠動脈入口部に限局し,高度狭窄,閉塞をきたす場合があることを念頭においた慎重な検査が必要である.
  • 渡邉 泰徳, 布施 勝生, 小西 敏雄, 幕内 晴朗, 久木田 雅弘, 石綿 清雄, 中西 成元, 関 顕
    1990 年 22 巻 6 号 p. 706-710
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    小児期に川崎病に罹患し成人期になってから狭心症の出現してきた2例に対して冠状動脈バイパス術(CABG)を行ったので報告する。症例1は17歳の女1生で6歳の時に川崎病と診断された.症例2は30歳の男性で1歳の時持続する発熱があり泉熱と診断されていたが,その症候から川崎病と診断できた.いずれの症例も冠状動脈造影にて動脈瘤および狭窄病変を認めた.手術は若年成人ということを考慮して2例とも左内胸動脈を使用し,術後の経過は良好である.成人期に発症した川崎病後遺症としての冠状動脈病変に対するCABGの報告例は少ない.しかし川崎病が報告されてから20数年たち患児も成人期に入ってきていることから,狭窄病変の進行とともに発症してくるこのような症例は今後増加してくるものと考えられる.
  • 特に心エコー図の経過について
    越智 弘, 石橋 豊, 中沢 芳夫, 泉 司郎, 三浦 弘資, 長岡 三郎, 盛岡 茂文, 森山 勝利
    1990 年 22 巻 6 号 p. 711-716
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    拡張型心筋症類似の臨床像への移行を心エコー図にて追跡し得た心サルコイドーシスの1例を報告する.症例は25歳男性で,両側肺門リンパ節腫脹,眼症状からサルコイドーシスと診断されていたが,入院8カ月前から心電図上,房室ブロックとなった.入院後,ステロイド療法により房室ブロックは改善した.入院時,心エコー図では,左室内径の軽度拡大,左室壁の肥厚が認められ,左室壁運動はほぼ正常であった.初回入院後19カ月後には心不全の出現,心拡大が認められるようになり,心エコー図上,左室内径の著明な拡大,左室壁運動の著明な低下が認められた.その後,左室内径はさらに拡大し,右室の拡大も見られるようになった.初回入院後32カ月後にはIII度房室ブロックの出現,心不全にて死亡した.剖検では両心室は拡大し,左室壁のほぼ全周性に,肉芽腫の癩痕像と考えられる線維化が認められた.本症例のように短期間に心エコー図所見が進行することが他臓器に病変がなくても心サルコイドーシスを疑う上で重要と思われた.
  • 並木 重隆, 大畑 和義, 武藤 巌, 三浦 克弥, 畑 日出夫, 上所 洋, 加茂 悦爾
    1990 年 22 巻 6 号 p. 717-723
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    褐色細胞腫にはショック症状とともに心電図上,急性心筋梗塞様の変化を呈する症例がある.今回,入院時に心電図上心筋梗塞を疑い心エコー図でも前壁心尖部のasynergyを確認したが,その後,左室内に可動性血栓の出現と塞栓症を併発したカテコールアミン心筋炎の1例を経験した.
    症例は58歳女性.嘔吐,心窩部痛を主訴に入院.発汗強度,四肢冷感と低血圧をきたし,心電図上,前胸部誘導にST上昇と異常Q波の出現,血清酵素の増加,心エコー図で心尖部akinesisを認め,急性心筋梗塞と診断した.脱水と血液濃縮のため,翌日心エコー図を再検したところ,左室内可動性血栓の出現を認め,さらに翌日,右片マヒと失語症を併発した.その後,血圧の変動が著明で精査の結果,褐色細胞腫と判明した.一方,冠動脈造影では器質狭窄を認めず,本症例は褐色細胞腫によるカテコールアミン心筋炎と診断され,副腎腫瘍摘出術が行われた.
    本症では,一般に,心筋梗塞様の心電図変化と,時にショック症状,循環血液量の減少,血液濃縮,さらに血小板凝集能の充進がみられる.本例では,そこに左室心尖部asynergyが観察され,血流の停滞も加わり,心内血栓の好発状態となっていた.本例は過剰のカテコールアミン放出が心筋傷害のみならず,体液,血液凝固系に対しても強く影響していたことが窺われたまれな症例と考えられた.
  • 三井田 努, 小田 弘隆, 佐藤 広則, 樋熊 紀雄
    1990 年 22 巻 6 号 p. 724-728
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    硫酸マグネシウム(MgSO4)静注が有効であった薬剤起因性torsadedepointes(Tdp)の2例を経験した.第1例は,79歳女性,WPW症候群による上室頻拍が持続し,うっ血性心不全を併発して入院した.上室頻拍は心房細動に移行し,プロカインアミド1g,ベラバミル240mgの投与により房室接合部調律となったが,QT間隔は0.60秒に延長し・Tdpが頻回に出現した.薬剤起因性Tdpと診断し,MgSO42.47gを静注した.QT間隔は短縮しなかったが,投与直後からTdpは再発しなくなった.第2例は,71歳男性,心房細動のためジソピラミド300mgの投与を受けていたが,高血圧性心臓病で心不全症状を示して入院した。ジゴキシン投与後,洞調律となり,QT聞隔が0.56秒に延長し,多形性心室頻拍と単形性持続性心室頻拍が出現した.QT間隔の延長と心室頻拍出現様式から,薬剤起因性Tdpと診断し,MgSO42.47gを静注した.投与後,多形性心室頻拍,単形性持続性心室頻拍とも再発はなかった.薬剤起因性Tdpの治療は,原因薬剤を直ちに中止し,心臓ペーシングまたはイソプロテレノールにより心拍数を増加させ,QT間隔を短縮させることであるが,MgがTdpに有効であるとの報告がある.著者らは,2例の薬剤起因性TdpにMgSO4を投与し,投与直後からTdpの再発を抑制でき,副作用も全く認めず,MgSO4は,薬剤起因性Tdpの治療に有効かつ安全な治療剤であると考えられた.
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