心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
22 巻, 9 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 鼠尾 祥三, 井上 省三, 長谷川 浩一, 忠岡 信一郎, 覚前 哲, 中村 節, 河原 洋介, 沢山 俊民
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1005-1012
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    非閉塞性肥大心筋症において運動時に血行動態が悪化する例の臨床的特徴を明らかにするために,運動時の血圧反応の程度と臨床所見を対比した.
    Treadmill運動負荷時に血圧反応が乏しい群(血圧上昇度≦25mmHg)は,血圧反応が良好な群(血圧上昇度≧60mmHg)に比して以下の所見が多くみられた.
    (1)NYHA II度,(2)肥大型心筋症の家族歴,(3)心電図の電気軸異常,(4)V1のP-terminalforceの増大,(5)異常Q波,(6)V5のR波振幅2.OmV未満,(7)SV1+RV54.0mV未満,(8)QRS時間の延長,(9)運動時にST下降,(10)心尖拍動図A波率の高値,(11)心エコー図で左室壁厚/左室拡張宋期径がO .7以上.
    したがって,本症においてこれらの所見を有する例は運動時に血行動態が悪化する可能性が大きいことが示唆された.
  • 和泉 徹
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1013-1015
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 長期外来管理下での成績
    今鷹 耕二, 北原 陽之助, 内藤 滋人, 世古 義規, 藤井 潤
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1016-1023
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    対象は急性心筋梗塞を発症して朝日生命成人病研究所に来診し,1カ月以上生存した113例(男99例,女14例)で,同施設通院中(平均6.0年)の累積生存率を生命表法により求めた.累積生存率は1年後98%,3年後90%,5年後82%,7年後71%,9年後68%と欧米での成績と比べても高い生存率を示した.合併症として糖尿病を有するものでは心臓死,再梗塞を生じる確率が45例中15例(33.3%)と非糖尿病での68例中10例(14.7%)に比べて有意に高かった(p<0.01).脳卒中,高脂血症,高血圧を有するものでも有意ではないが心臓死,再梗塞の確率が高い傾向があり,これらの因子は心筋梗塞の予後に悪影響を及ぼしている可能性が示された.
  • 森 光弘, 深谷 眞彦, 坂本 俊文, 村島 潤, 谷川 宗生, 清水 昭彦, 木谷 文博, 橋場 邦武
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1024-1033
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    デルタ波を伴う頻拍性心房細動(Paf)の発作歴を有するWPW症候群28例(男25例,女3例,A型15例,B型13例,平均51±17歳)について,2~15年間(平均5 .6±4.5年)長期経過観察を行った.抗不整脈薬による治療を行っている21例のうち,Pafの発作が3年以上認められなかったもの8例,発作はあるが失神やめまいが認められなくなったもの3例,発作時心電図で最短R-R間隔が50msec以上の延長を示したもの3例で,このうちの2例では発作時においてもデルタ波が認められなくなった.また,洞調律時の心電図でデルタ波が消失したもの2例,間欠型に移行したもの1例,慢性心房細動に移行した2例のうち1例ではデルタ波が消失し,他の1例では間欠型であった.副伝導路切断術を施行した2例では,手術後発作は消失した,臨床心臓電気生理検査を施行した20例のうち,最短の副伝導路順伝導有効不応期が250msec以下のhighrisk例は15例であったが,このうち内科的治療が不十分であった1例と無治療の1例に急死を認めた.今回の我々の検討では,内科的治療によって,Paf時の臨床症状あるいは心電図所見などの改善が得られた症例もあったが,治療が不十分なhighrisk例の中には急死例もあり,長期の内科的治療に際しては,十分な管理と継続的な治療が重要であると思われた.
  • エルゴノビン負荷時の検討
    新井 芳行, 清水 賢巳, 末松 哲男, 杉原 範彦, 北 義人, 清水 邦芳, 源 雅弘, 新田 裕, 川腰 肇, 荒木 勉, 竹田 亮祐 ...
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1034-1038
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    器質的狭窄を持たない冠攣縮性狭心症例を対象としエルゴノビンにより発作誘発を行い,その際の心拍数,不整脈について1)冠動脈の左右別による差があるか否か?2)冠攣縮時と解除時で差があるか否か?について検討した.対象と方法:亜硝酸剤が有効である労作時または安静時の胸痛発作を有し選択的冠動脈内エルゴノビン負荷試験により冠動脈の完全または亜完全閉塞された51例(男性44例,女性7例):54病変に対し検討を行った.50%以上の器質的狭窄を認めた例は対象より除外した.結果:1)心拍数は右冠動脈攣縮時に64.3±14.2から59.1±13.1へと有意に減少し(p<0.05),左冠動脈攣縮時には増加傾向を示した.2)房室ブロックは右冠動脈攣縮時に20.5%と高率に認められたが,左冠動脈攣縮時には認められなかった.3)心室性期外収縮は右冠動脈i攣縮時に20.5%,解除時に13.6%,左冠動脈攣縮時に10.0%,解除時に10.0%と高率に認められた.心室性期外収縮については冠攣縮による閉塞時と攣縮解除時で頻度および,重症度に差がなかった.また冠動脈の左右別による差も認められなかった.器質的狭窄を持たない冠攣縮性狭心症の発作誘発時には高率に不整脈を認め,また重症不整脈の発生もあり,厳重な注意が必要と考えられた.冠攣縮性狭心症例における不整脈の治療と予防には,冠攣縮性狭心症そのものの治療と予防が必要と考えられた.
  • 今井 美佐, 飯島 徹, 布施 幸彦, 飯塚 利夫, 長谷川 昭, 鈴木 忠, 村田 和彦
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1039-1044
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    22歳女性.15歳頃からめまいを自覚していた.昭和62年7月,意識消失発作を主訴として当科に入院した.入院時,心拍数は40/分で,房室接合部調律を示し,モニター心電図上約8秒間の心停止をみた.胸部X線では心陰影に著変なかったが,下大静脈の欠損が認められたが,上大静脈,大動脈,右室および左室の形態,位置関係に異常はなかった.消化管のX線透視では,上部消化管は逆位にあり,腹部エコーでは肝はほぼ正中に位置し,脾はX線CT検査で胃の後方に分葉状に認められた.本症例のごとく,心内奇形を伴わない孤立性左心症は極めてまれで,本邦ではこれまでに8例,欧米においても12例の報告をみるに過ぎない.また,洞機能不全症候群を合併した症例の記載はない.
    内臓逆位を伴う左心症は,胎生早期の腸管回転と心原基の心軸回転のくい違いにより生じると推定されており,そのため,本症の90%以上に心内奇形の合併がみられる.また,調律異常の合併も高率に認められているが,洞機能不全症候群の合併例の報告はない.我々は,Adams-Stokes発作を伴う洞機能不全症候群を合併し,心内奇形を伴わない孤立性左心症の1例を経験したので報告する.
  • 阿部 聖裕, 関谷 達人, 住元 巧, 向井 幹夫, 田中 留美, 濱田 希臣, 日和田 邦男, 国府 達郎
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1045-1049
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    狭心症を合併した冠動脈一気管支動脈異常交通症の1例を経験した.冠動脈造影上,左右冠動脈に有意狭窄を認めなかったが,澗結節動脈から異常血管を介して左右の気管支動脈が造影される所見を認め,冠動脈一気管支動脈異常交通症と診断した.本症例は運動負荷心電図,運動負荷タリウム心筋シンチグラフィーで運動時に右冠動脈支配領域の心筋虚血が確認され,異常交通を介する冠血流のsteal現象による可能性が示唆された.従来から報告されているような先天性チアノーゼ性心疾患,慢性閉塞性肺疾患,肺血流障害などの肺血流減少をきたす基礎疾患を認めない冠動脈一気管支動脈異常交通症は本症例が初めてであり,本交通症の存在自体と心筋虚血との関連について検討するうえで極めて貴重な症例と思われた.
  • 王 郁英, 片山 和裕, 松崎 益徳, 藤井 崇史, 河野 通裕, 山岸 隆, 小川 宏, 尾崎 正治, 松田 泰雄, 楠川 禮造
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1050-1054
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例=52歳,男性.49歳時,健診にて心肥大を指摘されたが,自覚症状なく放置.52歳時,健診にて心房細動,心エコー図にて左室後壁背方に異常なecho free spaceを指摘され,精査目的で来院.胸部X線写真では心胸比59%,心房細動を呈し,聴診では,心尖部に最強点を有するLevine II/VIの収縮終期雑音を聴取.心エコーでは前記所見の他,右房内血栓,II.のMRを伴う僧帽弁前尖逸脱を認め,心プールシンチでも左室後壁背方に異常な腔を認めた.心血管造影では冠動脈は正常であったが,冠静脈洞の右房開口部は左室後壁背方にまで嚢状に拡大しており,冠静脈洞憩室と診断した.
    本疾患の報告例は少ないが,WPW症候群の合併や重篤な不整脈の発生,また突然死をきたした例が報告されている.一方,憩室の外科的摘除により不整脈を消失させうるとの報告もあり,治療方針について慎重な検討が必要である.
  • 川原 健彦, 永田 正毅, 大森 文夫, 山岸 正和, 玉井 淳, 石蔵 文信, 川副 浩平, 植田 初江, 由谷 親夫, 末吉 敦, 宮武 ...
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1055-1060
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性.動脈管開存症で経過観察中,1988年12月末より発熱が持続するため近医入院となった.血液培養にて連鎖球菌が検出され,大動脈弁逆流により心不全徴候をきたしたため当院転院となった.超音波検査にて肺動脈内巨大疵腫,大動脈弁の穿孔およびバルサルバ洞破裂による大動脈一左房短絡血流が認められた.動脈管開存症に合併した感染性心内膜炎と診断し,感染と心不全に対して強力に薬物治療を行ったが,心不全が急速に増悪したため感染活動期に緊急手術を施行し,救命しえた.動脈管開存症の感染性心内膜炎で本例のように右心系のみならず左心系にも炎症が波及した重症例の報告は少なく,その治療に急性期手術療法が効を奏した1例であった.
  • 馬場 雄治, 小西 弘起, 松崎 伸治, 小川 明男, 中村 誠志, 瓦谷 仁志, 那須 通寛, 庄村 東洋
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1061-1066
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞の経過中,まず三尖弁乳頭筋断裂,ついで心室中隔穿孔を合併した1例を経験した.症例は73歳男性の急性下壁梗塞例で,第3病日に三尖弁の右房への逸脱による重症三尖弁逆流をきたし,ついで第6病日心室中隔穿孔を合併した.明らかな心不全徴候を欠いたが,.血圧および心係数が低値で経過し,心胸比の増加を認めたため,第21病日心臓カテーテル検査を施行したところ,右冠動脈近位部の完全閉塞,右室における血液酸素濃度の有意な増加を認め,右房圧は平均16mmHgで右室類似波形を呈していたが,肺動脈圧および肺動脈懊入圧は正常であった.第25病日の術中所見では三尖弁前尖および後尖に付着する乳頭筋の断裂による両尖の右房への逸脱と心室中隔基部後壁側の穿孔を認めたため,入口弁置換と梗塞部切除および穿孔部直接縫合術を施行し,現在心症状なく社会復帰している.
    急性心筋梗塞の合併症としての三尖弁乳頭筋断裂の報告は1例のみとまれであるが,本例のようにさらに心室中隔穿孔をも合併した例の報告はなく,極めてまれと考えられたのでその血行動態の特徴にも若干の検討を加えて報告した.
  • 鈴木 洋, 松原 仁志, 松崎 明広, 村上 幹高, 山田 斉, 嶽山 陽一, 片桐 敬
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1067-1073
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,73歳,女性.昭和63年9月,冷汗,悪心,嘔吐を伴う前胸部の圧迫感が出現し,意識低下もきたして当科を受診した.受診時,意識混濁し,脈拍は毎分40で整,血圧は触診で74mmHgとショック状態を呈していた.肺野にはラ音は聴取しなかったが下腿に浮腫を認めた.心電図上,心房細動,完全房室ブロック,II, III, aVFおよびV3R~V55RでST上昇を認め,心臓カテーテル検査では,肺動脈梗入圧13mmHg,右房圧12 mmHg,心係数1.8l/min/m2で,右冠動脈Seg. 1で完全閉塞を認め,右室梗塞を合併した急性下壁梗塞と診断した.ドーパミンの点滴静注および右室ペーシング下に直ちにPTCAを施行し,十分な再疎通が得られてからは,完全房室ブロックは消失して洞調律に復帰し,II, III, aVFのST上昇も入院時より著明に低下し,右房圧も7mmHgに低下して心係数は2.3l/min/m2に増加し,血行動態上も著明な改善を認めた.その後の経過も順調で,慢性期の心電図では,III, aVFでQS型を呈するもののIIでの異常Q波は認められなかった.また慢性期の心臓カテーテル検査では,左室および右室の壁運動異常も認められず,PTCAによる拡張部は十分に開存しており,血行動態指標も全て正常であった.以上より,完全房室ブロックや右室梗塞を合併した急性下壁梗塞例には,direct PTCA等による発症早期の血流の再灌流による心筋保護が,特に重要であると考えられた.
  • 大黒 哲, 土師 一夫, 小川 洋司, 下原 篤司, 河口 正雄, 野々木 宏, 深見 健一, 住吉 徹哉, 平盛 勝彦, 今北 正美, 由 ...
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1074-1079
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞症に合併する心破裂は心原性ショックに次いで本症の主要な死因であり,広義には,左室自由壁破裂,心室中隔穿孔,乳頭筋断裂を含む.同一例に複数の心破裂を生じることは少ないが,最近我々は,心室中隔穿孔,仮性心室瘤形成を合併し,仮性心室瘤の破裂により死亡した,急性心筋梗塞症のまれな1例を経験したので報告した.
    症例は71歳男性,急性下後壁梗塞発症後,第4病日に心室中隔穿孔を合併し,当院CCUに入院した.大動脈内バルーンポンプ法を含む内科治療によってQp/Qsが1.5~1.5で,血行動態も安定し,重篤な他臓器障害も認めなかったことから,待機的手術の方針とした.しかし,急性期に成人呼吸窮迫症候群を合併したため,手術の施行が不可能となった,第22病日,左室自由壁破裂により死亡した.剖検では,梗塞部に仮性心室瘤が形成されていた.心二重破裂,仮性心室瘤合併例はまれであり,本例は貴重な1例であると考えられた.
  • 志田 憲彦, 矢野 和俊, 加治 良一, 岡村 孝, 津田 泰夫, 仁保 喜之, 川内 義人, 徳永 皓一, 金谷 庄藏, 藤野 武彦
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1080-1085
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    術前2方向心エコー図(bidirectional echocardiography)によりKent東部位診断を行い,術中心表面マッピングによりこれを確認し,Kent束切断術を行ったWPW症候群の1例を経験したので報告する.症例は37歳の男性,主訴は失神発作.昭和57年,数秒の失神発作出現し,WPW症候群に伴う発作性心房細動の診断を受ける.昭和63年6月より,治療抵抗性の頻拍性心房細動発作が持続し,左心不全症状も出現したため,当科入院.心電図はB型WPW症候群を伴う頻拍性心房細動.Mモード心エコーで,心室中隔に収縮早期後方運動がみられ,さらに2方向心エコー図で早期収縮が右室後側壁で最も早いことが推定された、術中,心表面マッピングで同部位に早期興奮を認め,Kent束切断術を施行.術後の心電図では,デルタ波は消失した.本例は2方向Mモード心エコー法が副刺激伝導路の部位診断に有用であることを示した1例である.
  • 山中 達彦, 橋本 正樹, 児玉 和紀, 岡林 清司, 田口 治義, 大谷 美奈子, 米原 修治, 西山 正彦, 新本 稔
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1086-1092
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    副腎動脈塞栓術中に急激にカテコールアミン上昇を伴う心筋傷害を呈し,15時間という短い経過で死に至った,47歳女性の巨大褐色細胞腫例を経験したので報告する.ICU入室時の血中ノルアドレナリンは1,700ng/ml(正常値;0.10~0.41ng/ml)と顕著な上昇を認め,その後も漸増し6,300ng/mlに達した.同時に,心電図におけるST,Tの変化,多彩な不整脈等より臨床的にカテコールアミンによる心筋傷害を疑った.しかし,経過中,心エコー図で心室中隔の壁運動の低下を認め,心電図変化としては一過性のST上昇を頻回に繰り返し,さらにニトログリセリンの投与によりST上昇の改善を認めたことより,冠動脈スパズム後の急性心筋梗塞の合併も考えられた.病理解剖では冠状動脈に血栓,塞栓による閉塞所見はなく,心筋,心内膜にも梗塞を示唆する所見を認めなかった.左室心筋のPTAH染色像では中央に横紋が不規則に凝集した心筋細胞を認め,contraction band necrosisの像を呈したが,炎症細胞の浸潤はなかった.
    本症例のごとく巨大褐色細胞腫症例で,カテコールアミンの急激かつ顕著な上昇を伴う急性心筋病変を病理学的に認めた症例は文献的にも珍しく報告した.本症例はノルアドレナリンの顕著な上昇を確認しており,かつ心電図にて広範なST,T変化を認めた.また文献的にみても本症例における心筋病変はカテコールアミンの一次的な作用が背景にあると考えられるが,臨床的には,冠動脈スパズム後の急性心筋梗塞の合併による可能性も考えられた.
  • 大友 純, 後藤 敏和, 鈴木 昌幸, 荒木 隆夫, 三浦 民夫, 斉藤 博昭, 斉藤 幹郎, 横山 紘一, 大友 尚, 高橋 克朗
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1093-1098
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性胸部圧迫感と呼吸困難で近医に入院したが,その7日後にショック状態となり,当院に搬送された.心タンポナーゼの状態で,血性心嚢液排液後,症状は改善した.冠動脈造影で,右冠状動脈領域に著明な血管新生像と,腫瘍濃染像を認めた.その後,症状の悪化なく,39病日にいったん退院し経過良好であったが,初回入院時から約5カ月後に右血胸水の状態で再入院となった.2回目の冠動脈造影では,腫瘍濃染像は増大し,右冠状動脈はその遠位部において完全閉塞しており,左冠状動脈からの側副血行により造影された.ダイナミックCTで,右心房に主座を置く,血管に富む腫瘍の存在が認められた.この時点で,本例は血管肉腫であり,その一部が破綻して心タンポナーデ,血性胸水をきたしたものと臨床診断し,放射線療法を行ったが,発症より7カ月後に死亡した.剖検では,右心房原発の血管肉腫が証明され,多発性肺転移・副腎転移も認められた.
    本症はまれな疾患で,生前診断は難しいとされ,血管造影の診断的意義についても一定の見解が得られていない.本例において,短期間に腫瘍濃染像の増大を認めたことは,本症における血管造影上の興味深い所見と思われた.
  • 代田 浩之, 鈴木 伸治, 大井 宏夫, 内田 睦郎, 三山 博司, 高谷 純司, 桜井 秀彦, 中田 八洲郎, 山口 洋, 粕谷 秀樹, ...
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1099-1103
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    66歳,主婦。家族歴に心筋症なし.19歳より気管支喘息の治療として1日数回のエピネフリン皮下注射(1回200から700μ 齢最高1,000μg)を約20年間継続した.47歳頃,心電図で心肥大を指摘され,63歳時安静時の胸部圧迫感を自覚した.既往に高血圧なし.入院時,血圧168/72mrnHg(以後130-150/70-90),IV音(+)血清コレステロール325mg/dl,血液・尿カテコールアミン正常,肺機能は一秒率36%,胸部X線で肺過膨張・心胸比51%,心電図は洞調律・QRS高電位(RV11.4,SV13.0,RV53.6各mV)・陰性TV3-5,心エコー図で心室中隔/左室後壁馴8/8mm,冠緬脈造影で龍の狭窄なし。左室造影で収縮正常・駆出率78%,カテーテル検査で心室内圧較差なし,左室心筋生検で,心筋肥大・錯綜配列・不規則斑状線維症を認めた.肥大型心筋症と診断,外来で経過観察中.
    心筋病変はカテコールアミン心筋炎の成れの果てとして矛盾するものはないが,非対称性中隔肥厚には喘息発作時の右室負荷,エピネフリンによる一過性左室負荷などの関与も考えられる.肥大型心筋症のカテコールアミン病因説を支持する症例と考えられる.
  • 三木 宏志, 中川 義久, 佐藤 幸人, 中村 拓郎, 野田 倫代, 高橋 正明
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1104-1110
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    激症型急性心筋炎の2例:症例1は,45歳女性.ショックと繰り返す心室頻拍のために入院翌日死亡した.症例2は,16歳男性.入院時心係数1.75と低値を示したが重篤な不整脈等の合併なく順調に経過した.2例とも組織による心筋炎の確定診断がついた.症例1の心エコー図は,中隔堅厚10mm,後壁壁厚11mm,LVEF39%で,心嚢液貯留を少量認めた.症例2では,中隔壁厚21mm,後壁壁厚16mmと著明な心筋の腫大を認めたが,人院22日目にほぼ正常となった.LVEFは入院時32%であったが,9日目には77%と改善した.入院時より心嚢液貯留を認めたが,29日目にはほぼ消失した.この2症例の左室壁運動はびまん性に低下していたが,注目すべき所見は,局所壁運動において,(1)収縮期に外側へ突出する領域が認められた.(2)拡張期に内側へ陥凹する領域が認められた.(3)収縮と拡張の時相が各領域で一致していなかった.(4)上記所見は必ずしも冠動脈の支配領域とは関係しなかった.ということであり,これらの所見は“左室全体の奇異性運動”と呼べるものであろう.これは各領域の心筋の炎症の程度の差による可能性が考えられた.この激症型急性心筋炎の2例に認められた“左室全体の奇異性運動”は,急性心筋炎の診断に重要であると思われた.
  • 森谷 晋, 岩永 史郎, 池田 史彦, 吉川 勉, 赤石 誠, 小川 聡, 半田 俊之介, 中村 芳郎, 柳川 達生, 丸山 博, 片岡 邦 ...
    1990 年 22 巻 9 号 p. 1111-1116
    発行日: 1990/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたIa群抗不整脈薬であるcibenzolineは,disopyramideと同等の有効性を有しながら,抗コリン作用が少ないという利点を持つ.急性心筋梗塞後にみられた発作性心房粗動の予防を目的としたcibenzolineの投与中に,低血糖発作をきたした症例を経験した.症例は78歳の男性.昭和62年12月急性前壁中隔心筋梗塞症で入院した.発症9日目に動悸を伴う心房粗動が認められ,cibenzoline150mg/日の経口投与を開始した.Cibenzoline投与7日目から早朝に一過性の意識レベルの低下が認められ,14日目早朝,錯乱・興奮状態になり27mg/dlの低血糖を認めた,2日後cibenzolineを中止し,中止後16日目には血糖値は正常化した.本症例はグルカゴン負荷6分後のインスリン値が異常高値を示し,潜在性インスリン分泌腫瘍の関与は否定できなかったが,cibenzoline投与中止後現在まで低血糖症状を認めていない.このためcibenzolineが,本症例の低血糖発作の主要な原因であると考えた.Cibenzolineによる低血糖はフランスで7例,米国で1例報告されている.これらの症例では低血糖時の血中濃度が中毒域であったが,本症例では低血糖時に測定した血中濃度は治療域であった.また,米国例に比べて本症例では低血糖が遷延した.Cibenzolineによる低血糖の発症機序は明らかにされていないが,本症例ではインスリン過剰分泌とグルカゴン分泌障害が関与していると考えられた.
  • 1990 年 22 巻 9 号 p. 1122-
    発行日: 1990年
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
feedback
Top