心臓
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24 巻, 12 号
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  • 福西 康修, 菅原 徹雄, 柳原 圭雄, 横山 博典
    1992 年 24 巻 12 号 p. 1347-1353
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠動脈造影像の狭窄率判定における視覚判読の特性を調べた. 視覚判読は4 人の循環器医が行った.ほぼ10%間隔に狭窄率が異なる10種類のアクリル製狭窄血管ファントムをシネ撮影した画像と,計算機でシミュレーションを行った狭窄血管像に対して直接シネ撮影した画像を判定に用いた.評価方法は視覚判読とノギス計測,および計算機による計測評価の3法を用いた.これらの評価順序はすべて順不同で行った.その結果,視覚判読による評価ではほぼ30~40%を境に軽度の狭窄は過小評価が, 中程度から重度の狭窄は過大評価がなされ,グラフ上ではS字型の偏向を示すことが判明した.この傾向は画質が悪くなるほどより顕著になった.この特性はX線撮影系での劣化を完全に除去した状態である,計算機で作成した狭窄血管像においても出現することより,人間の視覚系に存在する"錯視"に起因すると考えた.このS字型の偏向は,観察者の主観が介在するノギスを用いた評価方法においても画質の劣化とともに現れた.
  • 生化学検査および心筋シンチグラフィを用いて
    徳田 宇弘, 永田 正毅, 石蔵 文信, 西上 和宏, 山下 宣繁, 大森 文夫, 中谷 敏, 西村 恒彦, 宮武 邦夫
    1992 年 24 巻 12 号 p. 1354-1360
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】肥大型心筋症における心筋細胞障害を検討するためにCPK-MB,%LDH1,ミオグロビン(Mb),ミオシン軽鎖(MLC)の測定およびT1-201心筋シンチグラム(T1),In-111抗ミオシン抗体(111In-Fab-DTPA)心筋シンチグラム(In-AM)を施行した.【方法】肥大型心筋症45例に対してCPK-MB,%LDH1,Mb,MLCを測定し,このうち10例に対してT1およびIn-AMを施行した.【結果】1)MLCは0.56±0.55ng/ml(0ng/ml:2例,0<<1.0ng/ml:35例,1.0ng/ml≦:8例).2)経過観察中,CPK-MB,%LDH1,Mbの上昇する時期が各々6例(14%),19例(44%),7例(18%)で認められた.3)MLCとCPK-MB,%LDH1,Mbの間で相関関係は認められなかった.4)T1では,10例中4例で灌流欠損が認められ,In-AMでは全例び漫性集積があった.In-AMの集積の程度とMLCの間に相関関係はなかったが,In-AMの強集積例4例中3例ではT1で灌流欠損が認められ,左室機能低下が認められた.MLCの上昇がないCPK-MB,%LDH1の上昇例3例にもIn-AMでび漫性集積が認められた.【総括】MLCの上昇およびIn-AMの集積は心筋細胞壊死をあらわすと考えられている.今回,MLCの上昇のない例にもIn-AMのび漫性集積が認められたことより111In-Fab-DTPAは壊死心筋細胞以外に障害心筋細胞内に入る可能性があり,肥大型心筋症における障害心筋細胞の存在が考えられた.その障害度の評価には,MLC,CPK-MB,%LDH1,Mbの上昇およびT1での灌流欠損,In-AMでの集積を総合的に判断する必要がある.
  • 有用性と問題点
    瀬口 正史, 中沢 誠, 門間 和夫
    1992 年 24 巻 12 号 p. 1361-1365
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    完全大血管転換症の冠状動脈の起始部,およびその走行を正確に描出するために,心臓カテーテル検査時の大動脈造影の際に正面の管球を尾側に45度傾けて造影する,Laid-back法を試みた.21例の完全大血管転換症と両大血管右室起始症1例の22例に,Berman side-hole catheterを用いて,1ml/kgの造影剤を1秒間で注入した.2例では,バルーンを膨らませなかったために,描出が不良であったが,バルーンを膨らませた残りの20例では良好な描出が可能であった.手術時の診断との一致率は91%(22例中20例で一致)であった.右単冠状動脈の1例と壁内走行の1例が術前診断できなかった.Laid-back法はこれまでの大動脈造影よりも冠状動脈の起始,走行をより正確に描出できる方法であった.
  • 菅野 伸一, 近江 三喜男, 佐藤 香, 横山 斉, 三浦 誠, 佐藤 尚, 羽根田 潔, 毛利 平, 村田 祐二
    1992 年 24 巻 12 号 p. 1366-1371
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    修正大血管転位症(CTGA)に動脈側房室弁閉鎖不全(TR)を合併する頻度は25~50%といわれ,三尖弁置換(TVR)は多数報告されている.一方,静脈側房室弁閉鎖不全(MR)を合併した報告は少ない.我々は,CTGAに合併したVSDのパッチ閉鎖術後にSellers分類IV°のTRとMRを発症した症例に対して,VSD閉鎖5年7カ月後に2弁置換術を施行し良好な結果を得た.
    本邦ではVSD閉鎖術後にTRが発症したものは6例報告があったが,手術操作や圧負荷増大によるT弁機能障害により術直後に発症するものと,右室の機能的脆弱性により遠隔期に発症するものに分けられた.我々の症例ではVSD閉鎖にあたって弁輪,弁葉には操作を加えておらず,TR,MRの原因は弁下組織の瘢痕収縮と腱索の膜様部への牽引,癒着による可動制限が大きく関与していたと考えられた.また,T弁前尖は二次的に腱索延長をきたし,M弁後尖は裂隙が認められた.CTGAはその経過のいずれかの時期に高い確率でTRが発症すると考え,手術操作のみならず経過観察においても十分な注意を払う必要があると思われた.
    MRについては報告例が少なく,そのほとんどは弁輪縫縮術が施行されており僧帽弁置換術が施行された症例は少ない.二弁置換が必要となった症例は本邦では第1例目と思われる.
  • 竹内 成之
    1992 年 24 巻 12 号 p. 1372-1373
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 斉藤 寛文, 近田 正英, 高岡 哲弘, 水野 明, 鈴木 勝
    1992 年 24 巻 12 号 p. 1374-1379
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は32歳男性.主訴は労作時前胸部痛.関節症性乾癬(PA)で治療中の1991年3月21日労作時前胸部痛が出現して入院.冠動脈造影(CAG)でLADsegment 6の25%狭窄と第1対角枝(D1)末梢の閉塞と診断された.内科的治療で軽快して退院したが,前胸部絞扼感が出現して4月17日に再入院.4月21日に激しい前胸部痛がみられ,緊急CAGを施行したところ,LAD segment6はdelayを伴う99%狭窄に進行していた.PTCRにより90%狭窄に改善したが,2日後の確認CAGではLADは同部位で完全閉塞し,その後も数回の心室性頻拍と,頻回の胸痛発作およびshort run型心室性期外収縮がみられる状態が続いため手術適応とされ,左内胸動脈をLADに,大伏在静脈をD1にバイパスした.本例はHLAタイピングではPAに関連があるとされるHLA-A2,DRw8が陽性で,IgMの低下がみられ,RA因子は陰性だった.また高コレステロール血症,低HDL血症がみられた.乾癬には様々な代謝障害や血小板機能の亢進の他,閉塞性血管障害も合併するとされる.本例も遺伝学的・免疫学的因子を背景にして発症したPAの罹病期間のなかで,32歳という比較的若い年齢で冠動脈狭窄が発現したことから,乾癬に冠動脈の閉塞性疾患が偶然に合併したと考えるより,両疾患に何らかの関連がある可能性が強いと思われた.
  • 置換術および完全冠血行再建(3枝バイパス)を施行した1治験例
    宮本 直政, 許 俊鋭, 村松 俊裕, 元山 猛, 横手 祐二, 尾本 良三, 土肥 豊
    1992 年 24 巻 12 号 p. 1380-1384
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    僧帽弁乳頭筋断裂により心原性ショックに陥った急性心筋梗塞症例の救命は今日なお困難とされているが,今回49歳男性の症例を経験し,緊急で僧帽弁置換術および完全冠血行再建を施行し救命せしめた.平成3年3月12日胸痛発作で発症し,下壁梗塞の診断にて近医に入院した.第3病日に収縮期雑音が聴取され心不全が出現した.集中的治療も効果なく,心不全が進行し第5病日には心原性ショックに陥り当科に転院した.入院時心エコー図検査で僧帽弁前尖逸脱による僧帽弁逆流を認めた.経食道心エコー図では乳頭筋断裂が明瞭に観察できた.ただちにIABPを挿入,冠動脈造影を施行し3枝病変と診断した.緊急的に僧帽弁置換術および冠動脈3枝バイパス術を行った.僧帽弁前尖に広範な逸脱が観察され,後乳頭筋は腱索付着部より5mmの部位で完全断裂し,経食道心エコー図とほぼ一致した所見であった.第22病日には退院した.本症例では,乳頭筋断裂の確診が体表面からの心エコー図では得られなかったが,経食道心エコー法で確実な診断が可能であった.来院時心原性ショックの状態であったが,IABP挿入下,冠動脈造影による病変評価を行い冠動脈バイパス術を施行したことで,虚血心筋の可及的な回復が計られ術後の経過を良好にしたと考えられた.また,完全血行再建が行えたことより良好な遠隔期成績も期待される.
  • 真性か仮性かについての1考察
    鹿島 克郎, 宮原 健吉, 鬼丸 円, 鵜木 瑞子, 中村 一彦, 有馬 暉勝, 森下 靖雄, 平 明
    1992 年 24 巻 12 号 p. 1385-1390
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例1は60歳,女性.昭和54年に急性心筋梗塞で2週間入院.以後自覚症状なく経過したが,昭和63年6月下旬より胸痛発作出現,陳旧性心筋梗塞,左心室瘤,梗塞後狭心症の診断を受け当科関連病院に入院.入院時,心筋逸脱酵素の軽度上昇を認め,心電図ではI,aVL,V2~5でST上昇およびQS型を示した.胸部X線写真,心エコー図および左室造影にて著明な石灰化を伴う巨大左心室瘤と診断.心室瘤の形態,臨床経過および手術所見から真性心室瘤と考えられたが,術後組織標本の瘤壁は一部石灰化を伴う線維組織で構成され心筋組織は残存せず,組織学的には仮性心室瘤の所見とも矛盾しなかった.
    症例2は57歳,男性.昭和61年陳旧性心筋梗塞の診断を受け左室造影にて心室瘤を指摘された.翌62年1月下旬より胸痛出現し当科関連病院に入院.心電図上完全左脚ブロックを示し,心エコー図および左室造影にてnarrow neckを有する心室瘤を認め,形態学的に仮性心室瘤が疑われたが,術後組織標本では瘤壁に残存心筋組織が認められ真性心室瘤と診断された.これらの症例は真性心室瘤と仮性心室瘤の明確な定義づけが改めて問われる症例と考えられたので,この点につき考案を加え報告した.
  • 関口 昭彦, 松永 仁, 小塚 裕, 進藤 剛毅, 古瀬 彰
    1992 年 24 巻 12 号 p. 1391-1395
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性.20年前に悪性胸腺腫のため摘除術後に放射線照射を受けた.労作時の前胸部痛が出現し,精査の結果左前下行枝および回旋枝に狭窄を認めたため,冠状動脈バイパス術を施行した.術中所見から放射線照射に起因する冠状動脈狭窄と判断された.悪性疾患の予後向上に伴いこうした症例は増加すると考えられる.文献的考察を加えて報告すると共に,諸家の喚起を促したい.
  • 蛭田 義宗, 山内 俊明, 油井 満, 菅野 和治, 市原 利勝, 宇留 賀一夫, 河合 祥雄, 岡田 了三
    1992 年 24 巻 12 号 p. 1396-1401
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    特異な心電図を呈した心筋症の1剖検例を経験した.症例は37歳,女性.35歳時,起坐呼吸が出現し入院した.心胸郭比60%.心電図は,PR時間0.13秒,QRSに早期興奮波があり,QRS幅は0.11秒,右軸偏位がみられ一見右室肥大,左室起電力の低下を思わせた.心エコー図では左室の拡大と壁運動低下を認めた.心不全の末死亡した.
    剖検では心重量570g,両心室の拡大,右室壁肥厚,左室乳頭筋,肉柱の肥大がみられた.病理組織所見では,心筋の錯綜配列が強く,脂肪浸潤を伴う線維症,残存心筋の肥大,空胞変性等が認められた.刺激伝導系では,右脚の前,後放線とも線維性に途絶し,さらにHisの中間部より分岐部に複数の束・心室線維,すなわちMahaim束の存在が証明され,その分布は心室中隔のほぼ中央から左側にかけて左脚のすぐ裏側まで及んでいた.
    本例の興奮伝導は,途絶した左脚とMahaim線維の存在によりまず中隔の右側に,ついで左脚をバイパスして左室前壁のPurkinje線維網に,最後に左室後壁のPurkinle線維網に伝えられると推察される.結果的に左脚ブロックの所見は隠蔽され,さらに心筋症としての病態が加味されてこの特異な心電図が形成されたものと判断された.
    心筋症において,脚の途絶性病変とMahaim束の合併を病理組織学的に確認し得た例はまれであり,またMahaim束が左脚ブロックを隠蔽した例はほとんど知られておらず,貴重と考え報告した.
  • 小松 博史, 岡本 力, 林 鐘声, 石原 義紀
    1992 年 24 巻 12 号 p. 1402-1407
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心室中隔欠損症,心内膜線維弾性症に合併したQT延長症候群の1新生児例を報告した.心電図上QTc間隔0.68秒と著明なQT延長を認め,このため2拍目のP波が心室の絶対不応期に出現し2:1房室ブロックを呈し,また時にTorsades de pointes型心室頻拍となり,カウンター・ショックを必要とした.日齢70,心不全で死亡した.音刺激に対する反応はあり,血清カリウム・カルシウム・マグネシウムは正常であった.本症例では,QT間隔は,著明な変動を示し,QT間隔の延長に伴い,房室伝導は,1:1から2:1へと変化し,またT波は電気的交互脈を呈し,再分極過程の不安定さを示唆していた.また時には交代する脚ブロックを伴うこともあった.
    心室頻拍やT波の電気的交互脈の出現は,カテコールアミン投与による心不全治療奏功の時期に一致し,心不全を合併したQT延長症候群の治療には,注意が必要であると考えられた.
    刺激伝導系の病理組織学的検索では,QT延長症候群に見られるとされているプルキンエ細胞の肥大や集団塊は認めなかった.
  • 矢島 隆司, 丹羽 明博, 土肥 まゆみ, 白井 隆則, 新田 政男, 田中 正人, 神谷 敬三, 三宅 祥三, 嘉和 知靖之, 知識 研二 ...
    1992 年 24 巻 12 号 p. 1408-1413
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    重症肺塞栓発症のきわめて早期に右房内血栓消失を心エコー図にて確認しえた1例を報告する.症例は52歳女性,頻発する心室性不整脈および心収縮力低下のため子宮筋腫摘出術術前の心精査目的で施行した心臓カテーテル検査翌日の安静解除後起立時突然ショックとなった.発症40分後に記録した心エコー図にて,右室の拡大と,右房全体に7×3×5cm大の淡い多房状エコーを認めた.この異常エコーは三尖弁を介して右房右室間でto and froの動きを呈していた.直ちに大量の線溶抗凝固療法を施行したところ,15分後突然不穏状態,続いて全身けいれんが出現し,呼吸状態も悪化してきたため,挿管を始めとする全身管理を行った.20分後より血行動態・呼吸状態の改善と意識の回復をみた.線溶抗凝固療法開始から1.5時間後の心エコー図では,右心系の拡張は認めるものの心内の異常エコーはみられなかった.肺塞栓発症第9病日に下肢静脈血栓除去術,子宮筋腫摘出術および下大静脈フィルター挿入術と,全病態に対する一期的治療を施行した.第30病日に退院し経過は順調で現在経口抗凝固療法を持続し外来通院中である.肺塞栓症において右房右室内に血栓エコーを認める報告は散見されるが,薬物治療中に血栓の消失を観察した報告は少ない.肺塞栓症における心内血栓の文献的考察および本病態に対する線溶抗凝固療法の意義について報告した.
  • 野間 昭典
    1992 年 24 巻 12 号 p. 1417-1424
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    細胞内Caはいろいろな細胞機能発現に関係しているが,これを一定に保つためのCa排出機構の主なものとして,Na/Ca交換機転がある.心筋虚血に代表される細胞のエネルギー代謝の破綻は,最終的に細胞内のCa濃度を異常に上昇させる.一方,細胞内ATPの減少はATP感受性Kチャネルを活性化することが知られているが,このチャネルによって細胞膜電位を負電位に保つことは,Na/Ca交換機転によるCaの排出を維持するのに役立つ.
  • 乾 誠
    1992 年 24 巻 12 号 p. 1425-1433
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋の収縮弛緩は細胞内のカルシウム・イオン(Ca)によって制御されている.このCaは,主として細胞膜と筋小胞体(SR)の2つの膜系によって調節されている.SRからのCa放出は,SR終末槽に存在するCa放出チャンネルが開くことによって起こる.このCa放出チャンネルは,植物性アルカロイドであるリアノジンの結合能を指標として単離された.その結果,このチャンネルがT管あるいは細胞膜とSRとを接合するフット構造として存在することが判明した.興奮収縮連関では,SRのCa放出チャンネルとT管の電位依存性L型Caチャンネルとの連関が重要な役割を果たす.
    SRへのCa取り込みは,CaポンプATPase(AT-Pase)による能動輸送である.このSR能動輸送には,SR膜蛋白質であるホスフォランバンによる調節機構が備わっており心筋収縮性の調節に重要な働きを果たしている.ATPase調節に際しては,ホスフォランバンが直接ATPaseに結合することによりその機能を抑制し,ホスフォランバンがcAMP依存性に燐酸化されると両者が解離しATPaseの活性化が起こることが明らかとなった.
  • 田邊 勉
    1992 年 24 巻 12 号 p. 1434-1438
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    骨格筋および心筋細胞は,ともにジヒドロピリジン(DHP)感受性L型Ca2+チャネルを有しているが,そのチャネル特性は両細胞において非常に異なる.さらに異なるのは,興奮収縮連関機構における本蛋白質の役割である.これら両組織における差異を明らかにするために,骨格筋および心筋DHP受容体cDNAを,dysgenic筋管細胞に発現させ,その特性を比較すると,筋管細胞はそれぞれのDHP受容体の由来する細胞(すなわち骨格筋および心筋細胞)と類似の特性(興奮収縮連関のタイプおよび組織特異的L型Ca2+電流)を示した.これら機能的差異の分子的基盤を明らかにするため,種々のキメラDHP受容体をコードするcDNAを作製し,dysgenic筋管細胞に発現させ解析したところ,リピートII-III間の領域が骨格筋タイプの興奮収縮連関に必須であり,リピートIがCa2+チャネルの活性化にとって重要な働きをしていることが明らかとなった.
  • F. Hofmann, E. Bosse, A. Welling, R. Bottlender, P. Ruth, R. Hullin, M ...
    1992 年 24 巻 12 号 p. 1439-1448
    発行日: 1992/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
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