心臓
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24 巻, 5 号
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  • 八巻 重雄, 安井 久喬, 角 秀秋, 米永 国宏, 中村 祐一郎, 菊池 利夫, 安喰 弘, 常本 実
    1992 年 24 巻 5 号 p. 515-522
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    孤立性完全型心内膜床欠損症56例(平均年齢1歳6カ月)を対象として本症の閉塞性肺血管病変を解析した.Down症を伴う症例に肺小動脈内腔の閉塞とその末梢肺小動脈の中膜の萎縮を合わせ持つ,いわゆる絶対的手術不適応とその寸前の症例が8例(平均年齢9カ月)みられ本症の大きな特徴であった.この原因は本症では生後6 カ月頃に肺小動脈中膜の退縮が, 特にDown症では高度にみられ, 閉塞性肺血管病すい状態になっているためと考察された.以上よりDown症を伴う完全型心内膜床欠損症では生後6カ月以内に根治手術を行うことが望ましいが,肺血管抵抗が7単位・m2以上ときには肺生検により手術適応の診断を行うべきと考えられた.肺生検診断では絶対的手術不適応例かIPVD2.2以上の症例は根治手術不適応とし,Down症で高度の間質の気腫を伴う症例,persistent pul-monary hypertension of newborn,肺小動脈低形成を合併した症例は特に注意が必要と結論された.
  • 山辺 裕, 伊藤 和史, 矢坂 義則, 柿本 哲也, 名村 宏之, 橋本 泰則, 横山 光宏
    1992 年 24 巻 5 号 p. 523-528
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    亜硝酸薬類似の血管拡張作用を有するβ遮断薬nipradilolの血管拡張作用が労作性狭心症の発作予防に臨床上有効な役割を果たているか否か明らかにすることを目的とした.20例の慢性安定型労作性狭心症を対象に,無投薬下運動試験とnipradilol投薬下(Nipr群10例)およびpropranolol投薬下(Prop群10例)の運動試験を行い,Swan-Ganzカテーテルによる血行動態の測定を行った.無投薬下試験と投薬下試験を同一運動量で比較した場合,心拍数とrate pressure productに対する抑制の程度は両薬剤で同一であったが,平均肺毛細管圧はnipradilolで28±9mmHgから24±8mmHg(p<O.05)へ有意に低下し前負荷軽減を示したのに対しpropranololでは27±7mmHgから29±7mmHg(ns)と有意の変化は示さず軽度上昇した.運動耐容時間はいずれの薬剤でも有意の延長がみられた.Nipradilolはβ遮断作用による心筋酸素消費の抑制に加えて,亜硝酸薬類似の前負荷軽減作用が臨床上心筋虚血の軽減に有効に作用する薬剤であることが示唆された.
  • 松村 憲太郎, 中瀬 恵美子, 芹沢 敬, 久保田 忍, 川合 一良, 斉藤 孝行
    1992 年 24 巻 5 号 p. 529-538
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠攣縮性狭心症,胸痛症候群,X症候群における冠循環動態の特徴を,左冠動脈DSAを用いて,種々の薬物負荷を行い検討した.冠循環指標としての左冠循環時間は,いずれの疾患群でも正常に比し有意に延長しており,また心筋灌流指標も異常を示した.これらの疾患群では冠末梢循環障害が存在することが推測され,冠動脈造影上不可視の冠末梢動脈の拡張障害が考えられる.胸痛症候群では硝酸剤に対する冠末梢反応性が障害されており,X症候群ではエルゴノビン左冠動脈内投与時の心筋灌流障害が冠攣縮性狭心症と同様に見られる.冠攣縮性狭心症ではジピリダモール左冠動脈内投与にて冠循環時間が正常化するが,心筋灌流は正常例とは異なり改善しない.このことより,冠攣縮性狭心症では冠末梢動脈のジピリダモールに対する反応不良と,冠小動脈より近位での短絡路の存在が推測される.
    胸痛症候群やX症候群の一部には,薬物負荷やペーシング負荷で明らかに冠末槍循環障害を示す症例が含まれており,rnicrovascular anginaといわれる病態を反映している可能性が高い.
  • 石川 欽司
    1992 年 24 巻 5 号 p. 539-540
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 下沢 達雄, 桑島 巌, 鈴木 康子, 星野 智, 金丸 晶子, 蔵本 築
    1992 年 24 巻 5 号 p. 541-546
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    老年者高血圧性心胞大(LVH)例における血圧日内変動の特徴を知る目的で,降圧剤を服用していない本態性高血圧患者38例を心肥大群(HT1群)15例(76.7±5.1歳)と肥大のない群(HT2群)23例(72.8±6.1歳)に分け,さらに正常血圧者群(NT群)11例(73.2±5.8歳)を対象とし,非観血的に24時間血圧を測定し,収縮期血圧(SBP)について24時間,日中(5:30-21:00),夜間(21:30-5:00)の平均を求めた.また等尺運動負荷前後の血圧変化についても検討した.LVHの判定にはMモード心エコーを用いLVMI>130g/m2をLVHありとした.
    外来血圧は高血圧群でNT群に比し高値であったがHT1,HT2群間で差を認めなかった.日中SBPはHT1群,HT2群がNT群に比し高値であったが,HT1,HT2群間に差を認めなかった.夜間収縮期血圧はHT1群(149±15mmHg)が,NT群(117±16mmHg)に比して有意に高く,HT2群(138±20mmHg)に比しても高い傾向にあった(p<0.10).また日中と夜間の収縮期血圧差,1日血圧変動係数はHT1群で他の2群に比べて小さかった.
    LVMIと夜間収縮期血圧,24時間収縮期血圧はそれぞれr=0.431,p<0.01,r=0.418,p<0.01と正の相関を示した.LVMIと日中夜間血圧較差はr=-0.325,p<0.05で,有意な負の相関を示した.LVMIと等尺運動後の血圧とは相関傾向を認めるにすぎなかった.老年者の心肥大の進展において夜間血圧の関与が大きいことが示唆された.
  • 今井 潤, 阿部 圭志
    1992 年 24 巻 5 号 p. 547-550
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 浩, 秋場 伴晴, 芳川 正流, 大滝 晋介, 小林 代喜夫, 中里 満, 橋本 基也, 佐藤 哲, 松嵜 葉子, 佐藤 哲雄, 中井 ...
    1992 年 24 巻 5 号 p. 551-556
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は生後1日目に,大動脈弓離断症(Celoria-Patton分類B型),心室中隔欠損症(VSD),動脈管開存症(PDA),右鎖骨下動脈起始異常の診断で大動脈弓再建,PDA切離と肺動脈絞扼術を受けた女児である.術後,心不全症状が続き,2カ月時に円錐中隔欠損のVSDをTeflon feltでパッチ閉鎖し,卵円孔直接閉鎖と肺動脈絞扼解除術を施行した.心不全症状は改善したものの,術直後から暗赤色尿,貧血が出現した.心エコーからVSD leakageとパッチが右室流出路に突出したための狭窄に起因する機械的溶血性貧血と診断した.
    輸血などの内科的治療で経過観察していたが溶血は改善せず,結局VSD閉鎖から3カ月後に死亡した.剖検所見から,溶血はパッチ閉鎖の際に補強の目的で使用したTeflon pledgetのroughな表面が右室流出路に突出していたために起きたものと考えられた.死因は機械的溶血性貧血と大量の輸血によるヘモジデローシスに起因する腎不全と思われた.
    術後の高度な機械的溶血性貧血の原因が外科的問題と考えられる場合,いたずらに内科的治療を続けるべきではなく,患者の全身状態,輸血の間隔や量などを総合的に判断し,積極的に再手術に踏み切ることが重要である.
  • 清川 裕明, 井内 和幸, 石川 忠夫, 〓野 謙介
    1992 年 24 巻 5 号 p. 557-561
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,54歳男で,胸部不快感と心電図異常の精査のため入院した.高血圧の既往はなく,心雑音や心拡大もなく,血液検査も異常なかった.心電図はII,III,aVF,V3~6のST-T変化(V4:巨大陰性T波)がみられ,運動負荷陽性であった.心臓の核医学的検査ではび漫性の心筋肥厚がみられた.断層心エコーでは左室腔の拡大や壁運動異常はないが,心尖部肥厚がみられた.また左室腔内に心尖部から左室流出路に向かうspontaneous echo contrast(SEC)がみられ,これはMモードでは線状エコーを示した.またカラードプラー断層心エコーにて軽度の僧帽弁閉鎖不全がみられた.
    冠動脈造影では左右冠動脈とも狭窄や拡張はないが,拡張期に右冠動脈と左前下行枝のそれぞれの末梢より左室腔内へび漫性に直接造影剤の流出がみられた.以上より左右冠動脈左室瘻を伴った心尖部肥大型心筋症を疑った.
    冠動脈左室瘻はまれな疾患であるが,肥大型心筋症との関連性が指摘される.また流動エコーは,従来モヤモヤエコーやSECと呼ばれるが,その原因については十分明らかではない.これまで冠動脈左室瘻とSECの合併の報告はないが, 心室瘤や高度の僧帽弁疾患のない例で,左室腔内にSECを認めることは極めてまれであり,冠動脈左室瘻からのシャント血流と左室腔内のSECに関連性が疑われ若干の考察を加え報告した.
  • 塙 晴雄, 寺邑 朋子, 土田 兼史, 朱 敏秀, 佐々木 祐幸, 岡崎 裕史, 柴田 昭
    1992 年 24 巻 5 号 p. 562-568
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性で診断は下咽喉癌(未分化型扁平上皮癌).当院耳鼻科で第1日目シスプラチン100mgと第2日目から5日目まで5-FUを1,000mg/日点滴静注した.1クール終了日の5-FU投与後17時間後,突然激しい胸部圧迫感が出現,心電図にてII,III,aVF,V3~V6で著明なST上昇を認め,急性心筋梗塞症を疑い当科に転科した.発作15分後血圧70mmHgと低下,ドパミンで血圧を維持した.硝酸剤の舌下後も胸痛,心電図とも改善を認めず,PTCR目的で発症1時間20分後,ST上昇の最中に冠動脈撮影を施行したが,両冠動脈共狭窄や攣縮を認めなかった.心臓カテーテル検査の途中から胸痛とS T 上昇の軽減がみられたがその後も100mmHg前後の血圧を維持するのに塩酸ドパミンを3日間要した.心筋酵素の逸脱はなく,3日後にはST上昇は基線に戻った.5-FUによる心毒性と考え,以後5-FUの投与はせず耳鼻科的に手術を受け,術後経過は胸痛もなく良好である.
    本症例は胸痛の持続とST上昇の最中の冠動脈造影所見から,5-FUの心毒性の機序として従来有力と考えられている冠動脈造影で可視的なspasm説とは異なる機序が考えられた.
  • 南沢 享, 新村 一郎, 近藤 治郎, 梶原 博一, 柴田 利満, 牧 隆敏, 岩本 真理
    1992 年 24 巻 5 号 p. 569-575
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠動脈閉塞に起因したと考えられる運動誘発性心室性頻拍が冠血行再建術後,消失した19歳の男子例を経験した.本症例は3歳と5歳の2度川崎病に罹患し,右冠動脈完全閉塞と左前下行枝に99%閉塞を残した.運動負荷心電図ではII,III,aVF,V3~6に虚血性ST低下があり,17歳以後,先行洞拍数130bpmで再現性のある運動誘発性心室性頻拍(VT)を認めた.VTはrate214bpm,右脚ブロック兼左軸偏位型で非持続性であった.VTは運動制限とpropranolol,mexiletineでコントロールされていたが,その後14.3秒の洞停止によるAdams-Stokes発作を起こした.交感神経β遮断剤の影響が考えられ,内科的治療の継続が困難になったため,19歳時に両側内胸動脈を冠動脈segment2,segment7に吻合するバイパス手術を行った.術後経過順調で,術前の運動負荷心筋シンチグラフィーでの前壁中隔から前壁および下壁にかけての灌流欠損は改善し,運動負荷心電図では最大心拍数187bpmでII,III,aVFにjunctional ST低下が軽度みられるのみで,VTは誘発されなかった.本症例は手術による虚血の改善とともに生命を脅かす不整脈の危険性が減少し,抗不整脈剤服用から解放され,社会生活への復帰が可能となった. こうした症例に対しては外科治療を積極的に考慮すべきと考えられる.
  • 藤井 信一郎, 田中 景子, 清水 正樹, 込田 暉夫, 渡辺 克仁, 山中 羊吾, 南 智之, 小出 司郎策
    1992 年 24 巻 5 号 p. 576-582
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は73歳女性.左半身麻痺,意識障害で入院.胸部X線写真でCTRは70%.頭部X線CTで,低吸収領域を認めた.断層心エコー図では左房内に可動性を有する2.8×2.2cmのボール状エコーを認めた.それは不規則な周期で,一定方向に旋回し,拡張末期には僧帽弁口に近づき,時には嵌入するような動きを示した.心エコー図のみにて,僧帽弁狭窄を主とする連合弁膜症に伴う浮遊ボール状血栓と診断し,5日後に手術を施行した.しかし,すでに左房内には存在せず,心耳内血栓除去と弁切開術を施した.術中,両側大腿動脈を触知しないため,腹部大動脈のsaddle embolismと考えFogatyのballon thrombectomyを施行した.
    僧帽弁狭窄症においても,左房内に浮遊ボール状血栓を生ずることは比較的まれである.自験例は心房細動を有しているが,手術および心エコー図所見より,弁狭窄の程度は比較的軽度で,左室機能低下を示す所見はなかった.凝固・線溶系検査では, 凝固系マーカー(fibrinopeptide A,thrombin-AT IIIcomplex)と,線溶系マーカー(D-dimer)とが著しい高値を示し,共に亢進状態にあった.これら所見を,術前および血栓除去・弁口開大後に認めたことは,かかる検査が,心内での血栓準備状態の診断に有用であることを示唆している.自験例同様,文献的にもボール状血栓例では,心エコー法で発見後,大部分が1週間以内に塞栓症を発症している.手術摘出例の予後は良好であるため,すみやかに手術をする必要がある.
  • 神谷 英樹, 石光 敏行, 平沼 ゆり, 榎本 強志, 杉下 靖郎, 関山 隆之
    1992 年 24 巻 5 号 p. 583-588
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    我々は,間歇性楽音様心雑音を呈する梅毒性大動脈弁閉鎖不全症の症例を経験した.
    症例は72歳男性,下肢浮腫,呼吸困難を主訴に来院した.胸骨左縁第3肋間に拡張期間歌性楽音様雑音を聴取し,心音図では約150Hzの拡張期雑音が記録された.Mモード心エコー図では大動脈弁に規則的な振動が記録され,断層心エコー図では大動脈弁右冠尖の一部が左室側に反転する所見が得られた. パルスドップラー法では, いわゆるharmonic patternが記録された.以上の所見は楽音様雑音の出現時のみに認められ,非出現時には認められなかった.よって楽音様雑音の音源は,拡張期に反転する右冠尖の一部の規則的振動と考えられた.カラードップラー法では3度の大動脈弁逆流が記録され,雑音の有無にかかわらず一定であった.楽音様雑音の出没には,呼吸,血圧,体位は無関係であり,亜硝酸アミル負荷もその出没に影響を与えなかった.血清梅毒反応陽性(TPHA2+,ガラス板法2+)であり, 梅毒性大動脈弁逆流と考えられた. 間歇性楽音様雑音を呈する大動脈閉鎖不全症の報告は数少なく,その音源が非侵襲的に同定された,まれな症例と考えられた.
  • 松岡 裕二, 西口 俊裕, 沖島 寶洋, 鈴宮 寛子, 秋元 馨, 高村 一志, 山崎 俊介, 田代 慎二郎, 早川 國男
    1992 年 24 巻 5 号 p. 589-593
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症を合併したvon Recklinghausen病(以下Rec.病と略す)のまれな母児例を経験したので報告する.症例は7カ月の長男と42歳の母親である.発端者は長男であり心雑音と体重増加不良を主訴に来院し,心電図異常と断層心エコー図で強い心筋の肥大を認め肥大型心筋症と診断した.母親は全く無症状で心雑音もなかったが,心電図胸部誘導のT波異常と断層心エコー図で非対称性中隔肥大を認め肥大型心筋症と診断した.Rec.病としての症状は両者ともに皮膚色素斑のみであった.肥大型心筋症がRec.病の本質的な症状の1つかどうかは不明であるが,Rec.病の患者を診察する際には無症状であっても断層心エコー図で肥大型心筋症の有無を検索する必要がある.
  • 海野 透理, 須藤 憲一, 森田 裕, 林 信成, 田所 雅克, 野口 顕一, 池田 晃治, 水野 明, 神代 秀爾, 石川 恭三, 内ケ崎 ...
    1992 年 24 巻 5 号 p. 594-599
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    原発性悪性心臓腫瘍は,極めてまれな疾患であり,その予後も極めて不良である.我々は,急性心タンポナーデをきたし,緊急手術を必要とした右房原発の平滑筋肉腫の1例を経験した.原発性心臓腫瘍の発生頻度は著しく低く,Strausら1)の剖検例480,331例の集計では0.0017%,Fineら2)の157,512例の集計では心膜腫瘤を含め0.028%である.McAllisterら3)の心臓および心膜原発の腫瘍,嚢腫553例の報告によると,心臓の良性腫瘍は319例(59.8%)であるのに対して悪性腫瘍は125例(23.5%)と少なく,特に悪性腫瘍の中でも平滑筋肉腫は1例で極めてまれである.そのためか,本症に関する報告の多くは自験例とともに過去の文献例を記載しているが,文献によって異なる事もあるのでここでは入手し得た文献により直接確認し得た症例のみを取り上げて一括した.1941年のWeirら5)の症例から今回の報告例まで,重複例6)~8)を除くと平滑筋肉腫は20例にすぎなかった.これら20症例の報告時の平均年齢は,43.9歳,男12例,女8例で,発生部位は左房9例,右房5例,右室5例,左室1例であった.治療に関しては化学療法,放射線療法,免疫療法,外科的療法が行われるが,本疾患そのものの発生頻度が極めてまれであることからどの治療が有効かは明らかではない.したがって心臓腫瘍の場合診断がつきしだい可能ならば,まず外科的療法を試みることはいうまでもないが,発生部位が心臓であることから腫瘍の全摘出は困難であることが多く予後不良である.
  • その薬理学的側面
    岡部 栄逸朗
    1992 年 24 巻 5 号 p. 604-616
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋虚血-再灌流障害のkey mediator がフリーラジカルであることについては,多くの研究者間で意見はほぼ一致している.しかし,いつ,どこで,どのような機構によってフリーラジカルが生成されるのかなど未解決な部分も多い.このような研究対象とは離れ,心筋興奮-収縮連関で中心的な役割分担をもち,しかも虚血-再灌流に際して高い障害感受性を示す小胞体(SR)機能に対するフリーラジカルの作用様式を明確にすることは,問題解決の基本の1つである.本稿では,これまでに得られた著者らの研究結果から, (1) フリーラジカルと SR の Ca イオン輸送系,(2)フリーラジカルと SR の Ca イオン放出チャンネル,(3)障害を起こし得るラジカル種,などについて薬理学的考察を試みた.そして,フリーラジカルの最終的標的が Ca イオン放出チャンネルをモジュレートするカルモジュリン関連反応段階であること,また,主要なラジカル種がsuperoxide radicalもしくはこれに由来するhydroxyl radicalないしsinglet oxygenであることの可能性について推論を加えた.
  • 草間 芳樹, Michele Bernier, David J. Hearse
    1992 年 24 巻 5 号 p. 617-628
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ローズベンガルの光増感を用いラット灌流心の組織内にて活性酸素を発生させ,その不整脈惹起性を検討した.活性酸素によるオキシダントストレスにて心電図変化(Q-T延長,T波陰性化)が出現し,さらに心電図変化に続き心室性期外収縮,心室頻拍,房室ブロックが認められた.これらは虚血,再灌流によらず有気灌流下にて出現した.ローズベンガル濃度と心電図変化,不整脈の出現時間との関係を検討すると,これらの間にdose-response relationがみられた.
    再灌流不整脈発現における活性酸素によるオキシダントストレスの関与を検討するため,再灌流早期にラット灌流心に対して加わるオキシダントストレスをローズベンガルの光増感により増強し,再灌流不整脈が増悪するかを検討した.左冠動脈結紮後の再灌流時から30秒間心臓を光照射しオキシダントストレス増強すると再灌流不整脈の頻度が増加し,また再灌流後早期に不整脈が出現した.
    以上のように本研究では活性酸素によるオキシダントストレスにて心電図変化と不整脈が発現し,また再灌流早期において心臓に対するオキシダントストレスを増強すると再灌流不整脈が増悪することが示され,活性酸素は再灌流不整脈の発現に関与する1因子であると考えられた.
  • 田村 裕男, 斎藤 頴, Benedict R. Lucchesi
    1992 年 24 巻 5 号 p. 629-642
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋の虚血/再灌流障害,殊に再灌流心筋壊死(梗塞)における活性酸素の関与についてはいまだ不明の点が多い.とりわけ実験的虚血/再灌流モデルにおけるフリーラジカルスカベンジャーの梗塞巣縮小効果は報告者によりこれを肯定するものと否定するものとの間で激しい論争が続いている.
    著者らはまず細胞外活性酸素の発生源である多核白血球に注目し,白血球の凝集・粘着に関与する細胞膜表面リセプターに対する特異的モノクローナル抗体を用い,本抗体の梗塞巣縮小効果につき検討した.ついで議論の核心であるsuperoxide dismutase(SOD)の梗塞巣縮小効果に関し文献的reviewを加え,従来のnegative studyの原因がSODの薬理学的不安定さに由来すると考え,より安定な長時間作用型修飾SODを用い梗塞巣縮小化に関し検討を加えた.
    これらの結果をふまえ,虚血/再灌流心筋障害の進展に対する白血球およびフリーラジカルの関与を明らかにしつつ,心筋障害(梗塞)の成立過程を時間的因子(time-window)からも検討し興味ある結果を得たので報告する.
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