約1972年7月より1989年12月までに東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所のCCUに入室した急性心筋梗塞の1,573例について検討を加えた.この間の平均死亡率は16.7%であるが,最近になるにつれて死亡率が低下してきている.この低下の理由を,各時期に入室してきた症例の患者背景の推移と,治療法の進歩より検討を加えた.
1.患者背景
年齢は上がるほど死亡率が上昇する.当CCUに入室してくる症例についてみると,70歳以上の症例の比率が年と共に増加してきている.また,非Q波梗塞の方がQ波梗塞より死亡率が高い.入室してくる症例の中で,非Q波梗塞の比率が年を追って上昇している.また,梗塞の既往のある症例の死亡率が高いが,梗塞の既往のある症例が入室してくる比率も年を追うごとに増加してきている.以上,3つの要因は,CCUでの死亡率を上げる因子として働いている.これに対して,Killip重症度の1度の症例が入室してくる比率が増し,これだけが死亡率を下げる要因として働いている.
2.治療法の進歩
このように患者背景より見ると死亡率を上げる要因が強くなっているにもかかわらず,死亡率が下がってきている理由の1つとして治療法の進歩が上げられる.
非Q波梗塞,梗塞の既往のある症例の死亡率が徐々に低下してきている.非Q波梗塞は再梗塞を生じる率が高いことが,死亡率を高くする原因の1つとなっている.近年,適応があると考えられた症例に対して,梗塞早期に経皮的冠動脈形成術,冠動脈バイパス術を積極的に行い,このことが再梗塞による死亡率を下げる力となっていると考えられる.
また,急性期ポンプ失調に対する治療法も進み,Killip 3度の症例では年を追って死亡率が低下してきている.4度の症例も死亡率が低下する傾向を認めるが十分でなく,このため最近では死亡例の半数強の死因が心原性ショックとなっている.
抄録全体を表示