心臓
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24 巻, 6 号
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  • 鰺坂 隆一, 山内 孝義, 渡辺 重行, 増岡 健志, 斉藤 巧, 藤田 享宣, 松本 龍馬, 飯田 要, 杉下 靖郎, 稲葉 武, 野口 ...
    1992 年 24 巻 6 号 p. 651-659
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患における心筋虚血誘発試験としてのイソプロテレノール(ISP)負荷試験の有用性を運動負荷(エルゴメータ)試験を対照としてジピリダモール(DP)負荷試験のそれと比較検討した.
    対象の内訳は冠動脈造影上有意狭窄を有する労作狭心症67例,X症候群22例,異型狭心症17例,非定型的胸痛34例の計140例であった.ISP負荷はISPを0.02μg/体重kg/分で3分間静注し,以後3分ごとに漸増し,負荷中止点は運動負荷に準じた.DP負荷はDP0.56mg/体重kgを4分間で静注するものとした.心筋虚血の判定は心電図上のST変化によった.
    労作狭心症群での負荷揚性率はISP負荷90%(運動負荷93%)に対し,DP負荷47%(運動負荷85%)であり,X症候群でのそれはISP負荷78%に対し,DP負荷0%であった.他の病型では両薬剤負荷の間に成績の差を認めなかった.重篤な不整脈の出現はいずれの負荷試験でも認めなかった.
    以上より,労作狭心症においても,X症候群においても,心電図上の心筋虚血発現頻度はISP負荷がDP負荷よりも高く,両負荷試験の臨床的意義には差異があると考えられた.
  • 朝山 純, 山原 康裕, 松本 高士, 宮崎 浩志, 辰巳 哲也, 山本 慎一, 坂井 龍太, 井上 美穂, 大森 斎, 井上 大介, 中川 ...
    1992 年 24 巻 6 号 p. 660-665
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    アドリアマイシン(doxorubicin)の心毒性の機序について種々の可能性があげられているが,その1つに細胞内カルシウム過負荷がある.今回,乳頭筋をプログラム電気刺激してregular contractionと筋小胞体機能に依存するmaximum postextrasystolic potentiation(PESP)を作成し,アドリアマイシンの筋小胞体への作用を検討した.アドリアマイシンはregular contractionに比較するとPESPを著明に時間依存性に抑制した.アドリアマイシンの心毒性の原因のひとつである細胞内カルシウム過負荷の機序に筋小胞体機能不全が関与していると推察された.臨床で,アドリアマイシン心筋症の発現の早期発見にPESPの減弱の有無の検討が有用であろう.
  • 木全 心一, 川名 正敏, 内田 達郎, 小川 洋司, 田村 光司, 金子 昇, 細田 瑳一
    1992 年 24 巻 6 号 p. 666-674
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    約1972年7月より1989年12月までに東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所のCCUに入室した急性心筋梗塞の1,573例について検討を加えた.この間の平均死亡率は16.7%であるが,最近になるにつれて死亡率が低下してきている.この低下の理由を,各時期に入室してきた症例の患者背景の推移と,治療法の進歩より検討を加えた.
    1.患者背景
    年齢は上がるほど死亡率が上昇する.当CCUに入室してくる症例についてみると,70歳以上の症例の比率が年と共に増加してきている.また,非Q波梗塞の方がQ波梗塞より死亡率が高い.入室してくる症例の中で,非Q波梗塞の比率が年を追って上昇している.また,梗塞の既往のある症例の死亡率が高いが,梗塞の既往のある症例が入室してくる比率も年を追うごとに増加してきている.以上,3つの要因は,CCUでの死亡率を上げる因子として働いている.これに対して,Killip重症度の1度の症例が入室してくる比率が増し,これだけが死亡率を下げる要因として働いている.
    2.治療法の進歩
    このように患者背景より見ると死亡率を上げる要因が強くなっているにもかかわらず,死亡率が下がってきている理由の1つとして治療法の進歩が上げられる.
    非Q波梗塞,梗塞の既往のある症例の死亡率が徐々に低下してきている.非Q波梗塞は再梗塞を生じる率が高いことが,死亡率を高くする原因の1つとなっている.近年,適応があると考えられた症例に対して,梗塞早期に経皮的冠動脈形成術,冠動脈バイパス術を積極的に行い,このことが再梗塞による死亡率を下げる力となっていると考えられる.
    また,急性期ポンプ失調に対する治療法も進み,Killip 3度の症例では年を追って死亡率が低下してきている.4度の症例も死亡率が低下する傾向を認めるが十分でなく,このため最近では死亡例の半数強の死因が心原性ショックとなっている.
  • 初回梗塞-枝病変例の長期追跡調査による検討
    高木 洋, 下村 克朗, 佐藤 磐男, 鎌倉 史郎, 笠松 謙, 深見 健二, 土師 一夫, 寺尾 敦史, 小西 正光
    1992 年 24 巻 6 号 p. 675-680
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    既に発症した心筋梗塞(MI)患者の冠動脈硬化進展(再発)に及ぼす冠危険因子(RF)の影響はいまだ明らかでない.そこで,MIの二次予防におけるRFの意義解明のために,初回の急性MIで入院し冠動脈造影で1枝のみに狭窄(≧75%)を認めた107例(男98,女9例,平均53歳)の予後とMI前と後のRF(喫煙歴,高血圧,高コレステロール(TC)血症,糖尿病,肥満)を追跡調査し,MIの前後の各RFが発症後の冠動脈硬化進展に及ぼす影響を単変量,および多変量解析を用いて検討した.
    【結果】平均7±3年の追跡期間中,27例(25%)に心事故が発生した.そのうち22例が冠動脈硬化の進展が明らかであった再発例(5±3年後,再梗塞15例,狭心症の再発・増悪7例)であり,うち17例が多枝病変への進行例であった.再発の有無で諸因子を比較すると,再発例のMI後の喫煙率(50vs24%)が高率(p<0.05)であったが,他の因子に差はなかった.性,年齢,MI前のRFの単変量による累積再発率に差はなかったが,MI後のRFについては,喫煙継続30例で高率で(p=0.03),高TC血症7例(≧250mg/dl)でも高い傾向を示した(p<0.06).多変量解析では,MI後の再発危険因子としては発症後の高TC血症が,初回MI時に有した危険因子改善の有無については喫煙の継続が,再発の独立因子であった(p<0.05,0.05)
    【結論】一枝病変初回梗塞例の発症後の喫煙継続と高コレステロール血症は,梗塞後も冠動脈硬化進展の促進因子であり,二次予防上それらの是正は重要と考えられた.
  • 冠危険因子について考える心
    戸嶋 裕徳, 上野 高史, 冷牟田 浩司
    1992 年 24 巻 6 号 p. 681-682
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 石田 宏之, 松田 義和, 小松 博史, 黒田 啓史, 岡本 力, 石原 義紀, 神谷 康隆
    1992 年 24 巻 6 号 p. 683-689
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心室中隔欠損に,右単冠動脈が原因と考えられる拡張型心筋症様の心不全を合併した乳児例を経験したので報告する.症例は4カ月男児.新生児期より哺乳力の低下,体重増加不良がみられていたが,4カ月時に初めて心雑音を指摘され当科受診,高度の心不全を呈していたため入院となった.心エコー上,小さな漏斗部心室中隔欠損と拡張型心筋症様の左心機能低下がみられ,右単冠動脈症が疑われた.201Tl心筋SPECT(single photon emission computedtomography)では左室の著明な拡大と中隔部位外のTlの取り込みがほとんどみられず,これは欠損側の冠動脈還流部位にほぼ一致した.大動脈造影に依ってLipton分類RII-Aの単冠動脈症と診断した.心電図上,ST-T部が日々変化しており心筋への欠流の不安定さが示唆された.利尿剤,Ca拮抗剤,α-blockerの併用に依って,一時的に安定した血行動態を得たが,8カ月時に肺炎を契機として心不全が進行し死亡した.
    単冠動脈症に心室中隔欠損のみを合併した例,また拡張型心筋症様の心不全を合併した例は非常にまれであり,小児期の報告は本邦では初めてのものである.本例は
    単冠動脈により慢性心筋低酸素状態にあったと考えられ,その原因について若干の考察を行った.
  • 右肺動脈上行大動脈起始との関連および術式について
    秋田 裕司, 松岡 優, 早渕 康信, 高橋 芳夫, 黒田 泰弘, 北川 哲也, 脇坂 佳成, 滝 浩樹, 三木 理, 加藤 逸夫, 江川 ...
    1992 年 24 巻 6 号 p. 690-694
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    遠位型大動脈肺動脈中隔欠損を合併した新生児例に,我々が新しく開発した術式で根治手術を施行し救命したので報告する.
    症例は日齢20日の男児で,生後まもなく心雑音および呼吸不全を認めた.心エコー検査により遠位型大動脈肺動脈中隔欠損および心房中隔欠損と診断し,日齢26日に手術に成功した.右肺動脈は上行大動脈右後外側部より起始し,右肺動脈入口部と中隔欠損孔との間に距離があったため,手術には大動脈肺動脈中隔欠損孔が新しい右肺動脈入口部となるように直接吻合する新しい術式を用いた.この術式は,術後の吻合部狭窄の危険性が少なく,このタイプの遠位型大動脈肺動脈中隔欠損に有用であると思われる.
  • 井門 明, 加藤 淳一, 佐藤 元彦, 長根 忠人, 大崎 純三, 館田 邦彦, 小野寺 壮吉
    1992 年 24 巻 6 号 p. 695-700
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の女性.胸痛出現当初は,心電図上II,HI,aVFのST上昇を認め,時間経過とともにV2からV6のSTも上昇してきた.急性心筋梗塞の診断で,coronary interventionを目的に緊急冠動脈造影を行った.造影上Seg.4PDとSeg.7で完全閉塞であり,心電図上のST上昇誘導とも一致するため,双方を責任冠動脈とする急性心筋梗塞と判断した.より広い灌流域をもつと思われるSeg.7の病変に対しPTCRを行ったが奏功せず,急激に血行動態が悪化し,患者は心不全のため死亡した.本例は,冠動脈造影上塞栓を示唆する充盈欠損を呈しており,他の部位に動脈硬化性狭窄病変を認めないこと,基礎疾患に心房粗動があり,完全房室ブロックのため脈拍数40/分前後の徐脈が続いていたこと,脳梗塞の既往があること,発症までに狭心症発作の既往がなかったこと,UKが全く無効であったことなどを考えると,血栓塞栓が冠動脈に流入し発症したことが推測された.
    冠動脈塞栓症が原因と考えられ,右冠動脈と左冠動脈の2枝を責任血管とする心筋梗塞は,我々が検索し得た限りその報告例はなく,きわめて貴重な症例と思われる.
  • 薗田 正浩, 永田 秀穂, 久木 原正, 網谷 滋, 橘 裕紀, 真田 純一, 中村 一彦, 有馬 暉勝
    1992 年 24 巻 6 号 p. 701-706
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は40歳の女性.34歳頃より主に冬期に5分程度の労作時前胸部痛を自覚していたが放置していた.検診で心電図異常を指摘されて当科へ入院となり,負荷心電図によってI,II,aVF,V1~6で著明なST低下が認められた.冠動脈造影で左冠動脈前下行枝,右冠動脈の完全閉塞が認められ,左冠動脈主幹部,回旋枝,右冠動脈右室枝に多発性の冠動脈瘤が認められた.冠動脈瘤を合併した重症二枝病変であり冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting:CABG)を施行した.冠動脈瘤の成因は動脈硬化性と先天性が大部分とされている.本例には冠危険因子を認めず,眼底にも動脈硬化性変化を認めなかった.また,他の合併奇形もなく,冠動脈の組織学的所見上動脈炎瘢痕期の像を呈し,冠動脈瘤の発生部位およびその形態像より,川崎病後遺症としての冠動脈瘤が最も疑われた.成人期に発症した川崎病後遺症としての冠動脈病変に対するCABGの報告,組織学的所見の報告,および左冠動脈主幹部動脈瘤の報告例は少なく,本例は貴重な症例と考えられるので報告する.
  • 辻 信介, 井上 純一, 土橋 清高, 深水 良, 久原 敏夫, 辻 秀雄, 藤瀬 嘉則, 山元 博, 松尾 修三
    1992 年 24 巻 6 号 p. 707-711
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    狭心症症状を主訴として来院した陳旧性心筋梗塞患者で画像診断法,特に心臓MRI検査により仮性心室瘤の合併を診断した.本例は長期生存例と思われる興味深い症例で若干の考察を加え報告する.症例は75歳女性.既往歴は65歳時,心筋梗塞.主訴は前胸部圧迫感.入院時,心電図はV1~V4でQSパターン,II,III,aVF,V1~V6でST上昇を示したが心筋逸脱酵素の上昇は認めなかった.心エコー,CT像にて心尖部を中心とした左心室瘤と辺縁が石灰化したもう1つの腫瘤を認め,仮性心室瘤の存在を疑った.左冠動脈造影上,前下行枝は近位部で完全閉塞しており,左心室造影上,心室瘤を認めたが仮性心室瘤は造影されなかった.心臓MRI検査では左心室瘤の下方に心膜に囲まれ,内部に器質化した血栓をもつもう1つの腫瘤を認め,仮性心室瘤と最終診断し,手術により確認した.本例の仮性心室瘤の形成時期は明らかではないが,病歴上10年前の心筋梗塞発症後1カ月後に,詳細不明の一過性ショック状態を認め,その後症状なく経過していること,心室瘤内血栓形成と心室瘤辺縁の石灰化形成等からみて,仮性心室瘤の形成後に約10年間生存しえた例と考えられた.本邦での報告20数例のうち,10年間生存し確定診断しえた例はなかった.本症例のごとく両心室瘤間に血液の流入がない場合,診断方法としては左心室造影検査よりも心臓MRI検査の方が有用であると考えられた.
  • 大井田 史継, 長尾 伊知朗, 伊藤 譲治, 小川 研一, 飯塚 昌彦, 久野 恒一
    1992 年 24 巻 6 号 p. 712-718
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    今回我々は単独心房梗塞と思われる2症例を経験した.2症例とも心筋由来の血清酵素の明らかな上昇が見られたが,心電図において有意なST変化を認めず,P-Taの偏位と上室性期外収縮のみが見られた.その偏位はYoungらが述べた基準を十分に満たすものであり,かつ梗塞部位は左房前壁と推測できた.この偏位は4,5日で消失したが慢性期負荷心電図にて,2症例とも急性期と同じ誘導に,同様なP-Taの偏位を認め,時間の経過と共に改善した.この変化は心房の生理的構造および特性を考えると,単に左心房の虚血のみを反映しているのではなく,運動負荷により左心機能を代償する心房の形態学的変化の関与の可能性も示唆され,興味深い所見と思われた.
  • 塙 晴雄, 和泉 徹, 小玉 誠, 田辺 恭彦, 津田 隆志, 柴田 昭, 熊倉 真, 樋熊 紀雄
    1992 年 24 巻 6 号 p. 719-723
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    慢性心不全状態で発症し,67Ga心筋シンチグラム上著明な集積を示し,心筋生検にて心筋炎を確認できた2例に対してステロイド治療を行った.症例1は44歳の女性.心不全状態が徐々に悪化するためステロイドを投与した.投与2カ月後には壁運動はEF28%から60%へと劇的に改善し,67Gaの心筋集積も著明に減少した.ステロイドを漸次減量したところ7カ月後に再燃し,ステロイドの増量とアザチオプリンの併用療法にて再度壁運動の改善を認めたが,カリニ肺炎を併発し死亡した.症例2は54歳の女性.慢性心不全状態で来院.3カ月後に67Ga心筋シンチで著明な集積を認め,ステロイドを開始した.投与1カ月後に壁運動改善は認めなかったが67Gaの心筋集積は消失し,半年後の右心カテーテル検査で肺動脈楔入圧所見の著明な改善を認めた.以上より病態が悪化しつつある慢性心筋炎で6 7 G a筋集積や心筋生検で活動性ありと確認された症例には,慎重な経過観察のもとでステロイド治療を試みれば,病状の改善を望める症例が存在すると考えられた.
  • 松森 昭
    1992 年 24 巻 6 号 p. 724-725
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 坂本 直哉, 梅沢 滋男, 稲田 美保恵, 尾林 徹, 足立 博雅, 是永 正義, 金山 正明, 田中 信行, 向井 恵一
    1992 年 24 巻 6 号 p. 726-732
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:58歳,女性,主婦.入院6年前頃より胸部圧迫感が年に数回出現,2年前より右肺動脈拡を指摘されていた.1カ月前より労作性呼吸困難が出現,増強したため入院.胸部聴診上II音の分裂と肺動脈成分の亢進を認め,動脈血ガス分析はPO2,47.4Torr,PCO2 30.2 Torrと低下,心エコー上右室肥大を認め,肺動脈平均圧は41mmHgと上昇していた.肺血流シンチにて広範な欠損像を認め,肺動脈造影にて右肺動脈主幹部から下葉枝にかけ多発性の血栓付着を認めた.以上の所見より慢性肺血栓塞栓症と診断し,抗凝固療法を施行したが臨床症状の改善は一時的であったため,肺動脈血栓内膜除去術を施行し,肺動脈圧,PaO2ともに改善した.慢性肺血栓塞栓症は,特徴的な症状に乏しく診断困難とされ,いまだその報告例は少ない.また,その治療については抗凝固療法などの保存的治療は一般に有効性に乏しく,近年肺動脈血栓内膜除去術の成績の向上に伴い本症の予後の改善が報告されている.本例の臨床経過は慢性肺血栓塞栓症の診断,治療を行う上で示唆に富むものと考え報告する.
  • オキシダントストレスの役割
    Michael J.Shattock, Hiroshi Matsuura, David J. Hearse
    1992 年 24 巻 6 号 p. 733-750
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 西村 昌雄, 佐藤 伸之, 渡部 良夫
    1992 年 24 巻 6 号 p. 751-766
    発行日: 1992/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    再灌流時不整脈の発生機序を調べるため,t-butyl hydroperoxide(TBH)を用いて,ウサギ洞結節および房室結節細胞の膜脂質を過酸化させ,活動電位ならびにイオン電流に及ぼす効果を検討した. T B Hは両結節細胞のCa2+電流コンダクタンスを初期に増加させた後,減少させ,その結果自動能を一過性に促進後,抑制することが明らかとなった.Ca2+電流の不活性化曲線はTBHにより脱分極側に偏位し,勾配因子も増加した.遅延整流性K+電流はCa2+電流と同様に2相性の変化を生じたが,過分極により活性化される内向き電流と背景電流は単相性に増加した.房室結節細胞ではTBHにより早期後脱分極と遅延脱分極が発現した.前者はCa2+電流の著明な増加が,後者は細胞内Ca2+過負荷が機序をなすと考えられた.以上,TBHによる膜脂質過酸化は結節細胞の生理的自動能の充進とその後の抑制,さらには異常自動能を惹起し,房室結節伝導を抑制する事が示唆された.
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