心臓
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24 巻, Supplement5 号
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  • 及川 直樹, 井上 博, 大谷 余志, 安喰 恒輔, 郭 宗徳, 山下 武志, 確井 雅博, 村川 裕二, 野崎 彰, 杉本 恒明
    1992 年 24 巻 Supplement5 号 p. 5-10
    発行日: 1992/12/10
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ホルター心電図記録中の急死例を経験した.症例は陳旧性心筋梗塞(3枝病変,駆出分画20%)の61歳男性,1990年9月急性心筋梗塞から心室細動(Vf)をきたしたが,救命された.硝酸イソソルビド,メキシレチン,エナラプリル等の投与を受け,同年11月退院.翌年8月胸部不快感出現し,同19日ホルター心電計装着中に夜間床の中で突然死した.ホルター心電図では,多形性で連発を伴う心室期外収縮(PVC)約2,400個/6時間を認め,死亡直前に非持続性心室頻拍が出現するようになり,次いで持続性心室頻拍からVfに移行した.ホルター心電図上は,新たな虚血発作の所見はなく,心拍変動パワースペクトル分析から迷走神経緊張低下の関与の小さい例と考えられた.いずれの心室頻拍(VT)もPVC後の長い休止期をもつ洞調律に続くPVCから始まっており,VT,Vfの原因として,いわゆるlong-short sequenceによる不応期の不均一性の関与が示唆された.
  • 仁木 清美, 笠貫 宏, 大西 哲, 雨宮 邦子, 梅村 純, 田村 光司, 庄田 守男, 細田 瑳一
    1992 年 24 巻 Supplement5 号 p. 11-18
    発行日: 1992/12/10
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    本症例は難治性持続性心室頻拍を繰り返す拡張型心筋症の1例で,amiodaroneが著効を示しその後1年間はまったく症状を認めなかったにもかかわらず突然死した.Holter心電図および自覚症状では予測できなかったが,amiodarone投与下での電気生理学的検査(EPS)では心室頻拍の予防効果が認められなかったことから,amiodaroneの長期投与の効果の予測におけるEPSによる薬効評価の有用性を示唆するものと考えられた.
  • 死亡した7例と心蘇生された1例の検討
    森 拓也, 垂見 敏明, 森井 繁, 中井 久太夫, 保田 憲基, 位田 正明, 小西 得司, 中野 赳, 井阪 直樹, 岡野 秀治, 清水 ...
    1992 年 24 巻 Supplement5 号 p. 19-24
    発行日: 1992/12/10
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    対象は1984年3月から1991年6月までの間に三重大学第1内科関連病院にて経験された8症例である.年齢は45歳から79歳で,男女各4例である.基礎疾患は,虚血性心疾患(IHD)が5例,僧帽弁狭窄症が1例,IHDの疑いが2例である.IHDの5例は,2例が急性心筋梗塞(AMI)発症後の心破裂および心室中隔穿孔,1例は冠攣縮によるAMI,1例は陳旧性心筋梗塞に由来する心不全である.ホルターECG所見は,IHDでは,1例はVT-VFから徐脈性不整脈となり,他の4例は徐脈性不整脈を呈していた. 僧帽弁狭窄例はDisopyramide投与中にTorsades de pointesが出現し,心蘇生に成功している.IHD疑いの2例は徐脈性不整脈を呈していた.発症から死亡までの時間は,7例中4例が1時間以内であった.致死的不整脈発生時の行動は,8例中2例が睡眠中であった.従来心臓性突然死のECG所見はVT-VFが多いとされているが,今回徐脈性不整脈症例が多く認められた(75%).
  • 河埜 功, 小森 貞嘉, 斎藤 勇三, 桜林 耐, 渡辺 雄一郎, 望月 弘人, 本間 元, 田村 康二
    1992 年 24 巻 Supplement5 号 p. 25-30
    発行日: 1992/12/10
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心房細動は血栓塞栓症合併やWPW症候群に合併したもの以外は生命予後を左右することは少ないとされているが,我々は心房細動から心室細動に移行した陳旧性心筋梗塞の1例を経験したので報告する.症例は49歳,男性.1985年8月8日広範前壁梗塞(CPKのpeak値は7,670mIU)で入院となった.リハビリテーション後の冠動脈造影は有意な狭窄はなく,左室駆出率は38%であった.その後外来治療を行っていた.1989年11月労作時息切れを主訴に2回目の入院となった.入院時の心胸郭比は59%で,心電図上は陳旧性広範前壁梗塞,洞性頻拍,左軸偏位,両房負荷を認めた.うっ血性心不全に対しドパミンを3μg/kg/min.で持続点滴静注を開始後症状の改善がみられたため1μg/kg/min.に減量し,デノパミン,1日量15mgの内服を開始した.不整脈評価のためのホルター心電図検査中に動悸を訴えたが経過観察をしていたところ,昼食摂取中に意識消失発作が出現した.心肺蘇生は成功した.ホルター心電図では洞性頻拍から頻拍性心房細動に,その後多形性心室頻拍となり心室細動に移行していた.心房細動は高度の心機能障害例では突然死につながる不整脈になる可能性があり,注意が必要と考えられた.
  • 松永 康弘, 三崎 拓郎, 大竹 裕志, 松本 勲, 川筋 道雄, 渡辺 洋宇, 曽根 孝仁, 近藤 潤一郎
    1992 年 24 巻 Supplement5 号 p. 31-37
    発行日: 1992/12/10
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    発作性心室細動に対して外科治療を行い,良好な結果を得たので,報告する.症例は20歳,男性.1991年5月12日,意識消失をおこし,前医にて心室細動(Vf)と診断され,直流除細動にて救命された.6月28日,同様の発作があった.8月4日,5日にも同様の発作を認め,当科を紹介された.QT時間は正常で,電気生理学的検査にて異常電位は認めず,心房,左室心尖部(LVA)での連続刺激,プログラム刺激では心室頻拍(VT),Vfは誘発されなかった.しかし,右室流出路(RVOT)および右室心尖部(RVA)のプログラム刺激(S1S2S3)にて極めて短時間のVTからVfが誘発された.複数回のVf発作と,救命の既往があり,若年者であることから,外科治療の適応とした.術中,RVOT・右室前壁・LVAでの刺激でいずれもVfが誘発可能であり,その契機となるVTの最早期興奮部位は径が約4cmのRVOT領域に存在した.この部位をVT起源と判定し心筋切除と冷凍凝固を行った.なお,VT起源がある程度の範囲をもっていたため,植え込み型除細動器を同時に植え込んだ.術後の誘発試験でVT,Vfは誘発されず,自然発作も認めていない.
  • 木島 幹博, 五十嵐 盛雄, 橋本 博道, 松本 秀一, 池田 精宏, 大和田 憲司, 大和田 尊之, 丸山 幸夫
    1992 年 24 巻 Supplement5 号 p. 38-43
    発行日: 1992/12/10
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠攣縮性狭心症と診断され,外来で経過観察中に突然死した7例について,その臨床的特徴を検討した.攣縮部位は左主幹部が1例,左前下行枝近位部4例,右冠動脈近位部2例といずれも支配領域の広いところで発生しており,しかも発生時7例中4例で心室頻拍,または心室細動を認め2例に失神を,1例に収縮期血圧60mmHgの低血圧を伴った.退院後死亡に至るまでの観察期間は,3-38カ月(平均11カ月)であった.この間少なくとも2剤以上の狭心症薬が投与されていたが,7例中6例では狭心症発作が残存していた.しかし,死亡前2カ月間に限ってみると全例発作はなく,表面的には一応コントロールされていた形だが,ホルター心電図などによる詳細な検討がなされておらず,無症候性心筋虚血のあった可能性が否定できなかった.死亡時刻は深夜から早朝にかけて多くみられ全例瞬間死と思われる形をとっていたため,自宅または自宅近くで死亡していた.病院での治療を受ける間のなく死亡に至ったことを考えると,ハイリスク群を同定し,頻回にホルター心電図などで経過を観察しながら,十分な冠拡張剤を投与することが重要な予防法であると考えられた.
  • 河合 祥雄, 岡田 了三, 伊東 宏, 前田 盛, 横田 慶之, 志手 淳也
    1992 年 24 巻 Supplement5 号 p. 44-47
    発行日: 1992/12/10
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心尖部肥大型心筋症の62歳女性急死剖検例を報告した.心外膜冠状動脈に狭窄なく,中隔17mm,後壁14mmの肥厚を示し,軽度の筋層内小動脈の狭小化を認めた.組織学的に,左室基部にみられず中間部以下に筋束性錯綜配列,中問部の内・中層,心尖部全層に間質性心筋線維症がみられるという,他の巨大陰性T波と心尖部肥大を呈した肥大心剖検例と同様の所見を示した.
  • 寺島 充康, 横田 慶之, 津村 泰弘, 竹内 陽史郎, 上野 洋, 河島 哲也, 川合 宏哉, 志手 淳也, 清水 雅俊, 本多 由佳, ...
    1992 年 24 巻 Supplement5 号 p. 48-53
    発行日: 1992/12/10
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    拡張型心筋症(DCM)における突然死例の臨床ならびに病理組織学的特徴を明らかにするため,当施設にてDCMと診断され,経過観察中に突然死した16例(SD群)の臨床ならびに病理組織所見を心不全死した49例(CHF群)と対比しつつ検討した.
    【結果】( 1 ) 初診時のN Y H A 心機能分類重症度III・IV度の症例はCHF群に比しSD群で有意に低頻度であったが,両群の年齢,性,血圧,心拍数,経過観察期間,軽症高血圧歴および中等量飲酒歴の頻度には差を認めなかった.(2)初診時胸部X線上の心胸郭比,12誘導ならびにホルター心電図所見,心エコーならびに心臓カテーテル検査指標は両群間で有意差を示さず,両群の右室心筋生検所見(心筋肥大,線維化,心筋変性,配列の乱れ)にも差がなかった.(3)剖検所見では心重量,心筋平均横径,線維化率,変性の程度には差を認めなかったが,CHF群に比しSD群には中等以上の細胞浸潤および配列の乱れが高頻度に観察され,病理組織学的に心筋炎の関与が示唆される症例が高頻度に含まれていた.
    【結語】DCM症例,特に突然死例には心筋炎が関与する症例が高頻度に含まれている可能性が示唆された.
  • 的場 梁次, 藤谷 登, 袖崎 賢一郎, 河野 朗久, 山田 正, 三ツ国 洋一, 大西 俊造
    1992 年 24 巻 Supplement5 号 p. 54-60
    発行日: 1992/12/10
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1982年から86年までの5年間に大阪府監察医事務所で剖検された心臓性急死810例中既往歴を有するものは47%あり,既往歴中最も多いものは高血圧(38%,以下HT)であり,以下虚血性心疾患(13%,以下IHD),糖尿病(11%,以下DM),気管支喘息( 7 % ) , 消化性潰瘍( 4 % ) となっている. これらのうち,頻度の多い3既往歴について統計的検索を行った.平均年齢はHT62.7±13.1歳(mean±S.D.),IHD65.6±12.1歳,DM57.5±10.4歳であり,各群間に有意差はないがややDM群が若く,性別で見るとIHD群,DM群では男女ほぼ同年齢であったが,HT群では男59.8±12.5歳,女69.1±12.3歳と女性が高い傾向にあった.心重量を見ると,各群間に差はなく,いずれの群も男性が女性より大であったが,特にDM群でその傾向が強かった(男395±111g,女318±64g).冠動脈の硬化度を強さに応じて4 段階に分け, 各群の平均値を調べたが, いずれも硬化は強かったものの各群間の差はなかった.次に,死亡前の鬱血性心不全の有無を調べるため,心室筋内に心房利尿ペプチド(ANP)が存在するか否かを検索した.免疫組織学的方法で15例の心臓性急死の心室内ANPを検索したところ,心筋梗塞の1例にかなり強くANP穎粒を認め,大動脈弁閉鎖不全の1例に軽度認めたが,他はいずれも認められなかった.
  • 大国 真彦
    1992 年 24 巻 Supplement5 号 p. 61-68
    発行日: 1992/12/10
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 安川 透, 上嶋 権兵衛, 石川 連三, 大石 知実, 斉藤 徹
    1992 年 24 巻 Supplement5 号 p. 69-73
    発行日: 1992/12/10
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    救急現場心電図が施行された病院前心肺停止160例を対象として,心電図,蘇生率,K濃度(以下K)を検討した.心疾患(以下C群)は105例(65.6%)と過半数を占め,なかでも突発する急性心停止が68例と最も多く,非心疾患(以下NC群)は55例であった.現場心電図が良好に記録された131例では,心室細動(以下Vf)はC群,現場34.9%来院時27.9%に対し,NC群現場17.8%来院時2.2%と激減した.心静止(以下Asy)はC群,現場38.4%来院時45.3%で,NC群現場48.9%来院時55.6%と増加した.心拍再開入院率はC群13.3%,NC群43.6%とC群で有意に不良であった.心停止より心肺蘇生開始までの時間とKとの間にはr=0.55と相関を認め,心停止時間を反映し,予後予測因子となりうると思われた.Kと心電図変化の検討では,救急現場,来院時ともにVf群と電導収縮解離(以下EMD)群の間には差を認めず低値であり, 救急現場でVfまたはEMDで,来院時Asy群は高値を示した.また救急現場,来院時ともにAsy群はVfまたはEMD群より有意に高値であった.このことより,病院前心肺停止例の心電図変化はVfまたはEMDを経過してAsyに至った可能性が示唆された.以上の結果よりC群は現場でVfが多く,VfはKより心停止時間も短いと推定されるが,NC群より蘇生率は有意に不良で,救急現場に除細動が導入されれば,蘇生率の一層の向上につながると思われた.
  • 心室細動の3次元コンピュータ・モデル
    岡崎 修, 魏 大名, 春見 建一
    1992 年 24 巻 Supplement5 号 p. 74-78
    発行日: 1992/12/10
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    致死的不整脈である心室細動(Vf)の発生機序を考察する目的で,多心拍シミュレーションが可能な心房・心室筋および刺激伝導系を含む5万個の3次元セルユニット(最小填充)モデルを用いPurkinje線維(P)と心室筋(V)の連結期に対する活動電位持続時間短縮率Dynamic coeffcient(DC)を微小電極法による実験値より求め,本短縮率と(V)の相対不応期の伝導遅延をモデルに設定,160msec間隔の心外膜連発刺激によりVfを誘発させ,興奮波の伝播過程を3次元isochrone mapにより解析し,次の結果を得た.
    1)活動電位300~360 msecで得られる短縮率DCを(P)80%(V)18%とした場合,左室心外膜の5連発の期外刺激でVfが誘発された.
    2)活動電位361~500 msecで得られるDCを(P)17%(V)5%にした場合Vfは誘発されなかった.
    3)3次元解析によりVfが誘発される状況下では,心内膜側から不均一性の興奮波面が生じていた.
    期外刺激が心室細動を発生させる機序には,心筋細胞の伝導遅延を生じた状態で,連結期の短いPurkinje線維と心室筋の活動電位持続時間の短縮率の差が大きくなることが加わることが要因であると考えられた.
  • 水牧 功一, 藤木 明, 谷 昌尚, 下野 真由美, 篠山 重威
    1992 年 24 巻 Supplement5 号 p. 79-85
    発行日: 1992/12/10
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性虚血早期の心室細動発生には,心筋細胞の興奮性の低下のみならず,心筋線維配列に関連した異方向性伝導の変化も関与する可能性がある.今回,イヌの左室心表面マッピングを用い,急性虚血時の左室心筋異方向性伝導の変化と,急性虚血早期における心室細動発生への異方向性伝導の関与について検討した.雑種成犬13頭を麻酔後開胸.電極間2mmの双極電極を5mm間隔で48点配列したマップ電極(25×35mm)を,6頭は左室前壁,7頭は左室後壁に装着し,それぞれ左前下行枝,回旋枝結紮前と後1分ごとにフクダHPM7100で,マップ電極中央の刺激(周期長300ms)による等時線図を作成した.虚血前より心筋線維長軸方向の伝導速度(θL)は垂直方向(θr)より大であり異方向性伝導が認められた.左室前壁,後壁いずれにおいても,急性虚血によりθL,θr,は低下するが,その程度はθrでより大であり,θL/Tは前壁,後壁とも同様に増大し,異方向性伝導が増強した.前壁の虚血で4回,後壁の虚血で2回,冠閉塞7分以内に心室細動が生じたが,機能的ブロックが長軸方向に出現し垂直方向の遅い伝導を介しリエントリーが形成される部位や,逆に垂直方向の伝導遅延が増強しブロックが生じ,長軸方向の伝導を介し興奮が旋回する部位が認められ,これらが一拍毎に変化した.この機能的ブロックと興奮の旋回に,急性虚血による異方向性伝導の増強が関与すると考えられた.
  • 基礎心疾患の有無による病態の相違
    五十嵐 裕, 相沢 義房, 田村 雄助, 田辺 恭彦, 田村 真, 池主 雅臣, 山添 優, 柴田 昭, 鈴木 薫, 本田 康征
    1992 年 24 巻 Supplement5 号 p. 86-90
    発行日: 1992/12/10
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心停止蘇生成功例の原因,特徴,予後を基礎心疾患の有無の観点から調べた.心停止蘇生成功例30例を対象とした.基礎心疾患を有する群(Group I,n=16)では電気生理学的検査(EPS)を行い,基礎心疾患を有さない群(Group II,n=14)ではエルゴノビン試験とEPSを行った.Group IではEPSにより持続性心室頻拍が10例に誘発され,WPW症候群の2例で心室応答の速い心房細動が誘発された.また他の2例で房室伝導障害が認められた.観察期間28±19カ月でEPSにて有効な治療法が確認された11例中1例で突然死したが,治療効果がなかった4例中2例が突然死し,1例が再発した.Group IIでは検査までの待機中にST上昇を伴う自然発作が3例に起こり,エルゴノビン試験で冠攣縮が5例に誘発された.また,EPSで心停止時に心室細動が認められた2例で心室細動が誘発された.観察期間23±19カ月で冠攣縮群では予後は良好であったが,他の6例中1例で心停止の再発が起こった.このように基礎心疾患群ではEPSで高率に原因の推定が可能であり,逆に,見かけ上基礎心疾患を有さない例では冠攣縮の関与が大きかった.心停止蘇生成功例では基礎心疾患の有無によって原因が異なり,原因究明には基礎心疾患を考慮したアプローチが必要であると思われた.
  • 小野 晋司, 野原 隆司, 奥田 和美, Mohiuddin IH, 神原 啓文
    1992 年 24 巻 Supplement5 号 p. 91-93
    発行日: 1992/12/10
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 誘因としての「労作」に関する基礎疾患・臨床事項別の差について
    沢山 俊民, 中村 節, 川井 信義, 鼠尾 祥三, 長谷川 浩一, 三谷 一裕
    1992 年 24 巻 Supplement5 号 p. 94-98
    発行日: 1992/12/10
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:死亡誘因としての「労作」の関与について,基礎疾患別ならびに他の臨床事項別の差異について検討した.対象:入院精査を受け,経過観察中に心臓突然死を遂げた63例(平均年齢:65±12歳,男性4 6 例, 女性1 7 例) . 方法: 死亡状況を詳細に検討し,死亡が労作時(日常労作を含む)か,安静時(睡眠中またはベッド上で安静中)かによって2群に分類(労作時群:28例,安静時群35例)し,両群間における基礎疾患ならびに死亡直前の臨床事項に関して検討した.結果と考按:(1)大動脈弁膜症(主に大動脈弁閉鎖不全)では,他疾患に比し安静時死亡が高率であった.この機序としては,安静時の徐脈が本症の増悪因子と考えられた.(2)肥大型心筋症と拡張型心筋症の間では安静時と労作時死亡に差を認めなかった.このことは,従来とは見解を異にする成績が得られた.(3)男性は女性に比し,心房細動例は洞調律例に比し,ともに労作時死亡が有意に多かった.男性に労作時死亡が高率であった機序としては,冠動脈疾患の関与が最も考えられた.(4)NYHA心機能分類では,安静時死亡例にIII度以上の重症例が有意に多かった.(5)抗不整脈薬使用例では安静時死亡が有意に多かった.この機序としては,安静時死亡はより重症例が多かったことより陰性変力作用の問題点が最も考えられた.総括:心疾患患者の急死予防にあたっては,「労作」よりも,今回有意差が得られた上記の基礎疾患ならびに臨床諸事項に留意すべきものと考えられた.
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