心臓
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25 巻, 10 号
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  • 山岸 正和, 宮武 邦夫
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1141-1154
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    近年の超音波技術の発達により超音波発振子が極小型化され,カテーテル先端に装着しうる探触子の臨床応用が可能となった.カテーテルを用いた血管病変治療技術の進歩と相まって,血管内超音波法による臨床例における冠循環計測が益々重要視されつつある.カテーテル型超音波ドプラ法(ドプラカテーテル,ドプラフローワイヤ)を用いて実時間での冠血流動態解析や,冠動脈血流速パタンからみた疾患の病態生理が明らかにされつつあり,臨床的にも連続の式を応用して冠動脈狭窄度定量化への途も開かれた.血管内エコー法は欧米での臨床研究が先行しているのが現状であるが,血管形成術後評価や薬剤反応性の解析など取り組むべき課題は多い.治療用カテーテルとの一体化や超音波像の3次元構成技術など今後の開発余地も多く残されている.本稿では血管内超音波ドプラ・エコー法を用いた臨床研究の到達点を述べ,今後の展望をも概説した.
  • Digital substraction right ventriculographygraphy による
    宿輪 昌宏, 波多 史朗, 福井 純, 大村 浩之, 坂井 秀章, 浅井 貞宏, 牛見 陽, 六倉 正英, 山佐 稔彦, 今村 俊之, 原 ...
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1155-1160
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性肺動脈血栓塞栓症(以下APTE)に対する血栓溶解療法前後の肺血流動態を観察する目的でDSAによる右室造影(以下DS-RVG)を施行し,リアルタイム・サブトラクション像観察後,肺動脈主幹部,右主肺動脈,肺野宋梢血管領域に関心領域を設定し時間濃度曲線(以下TDC)を作成した.肺動脈血流は急性期はゆるやかな立ち上がりを示し,肺動脈からの消失も遅延していた.慢性期の造影では肺動脈血流は急峻になり,肺動脈からの消失も速やかになった.肺野末梢血管領域の血流は,急性期は著明に減少しゆるやかな階段状の増加を示し,排泄時間も明らかに延長していた.慢性期には,肺野末梢血管領域の血流は急峻になり,消失も速やかになった.
    以上の事より,APTEの血栓溶解療法の前後,および慢性期に右心カテーテル検査施行後,DS-RVGに引き続きTDCを測定することにより,病変の程度,治療効果,血流動態の推移について詳細な情報が得られると考えられた.
  • 異方向性伝導特性と薬効
    堤 規之, 小川 聡, 岡田 豊, 定永 恒明, 古野 泉, 三田村 秀雄
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1161-1167
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    I群抗不整脈薬モリシジンが梗塞心での興奮伝播様式を修飾し,抗不整脈作用および催不整脈作用をもたらす機序を解明することを目的とした.対象には左冠動脈前下行枝結紮後7日目の亜急性期心筋梗塞犬モデル7頭を用いた.健常部(右室自由壁)および梗塞部心表面より各々800,600,400,300msec間隔の連続刺激を30拍加え,30拍目の刺激の興奮伝播様式を96チャンネル高密度心表面マッピング電極で記録し解析した.
    次に右室早期刺激法による心室頻拍の誘発を行った.その後モリシジンを2および4mg/kg投与し,同様の測定を行った.無投薬下では300msec間隔の刺激時に梗塞部心筋線維に平行(L)方向で健常部に比べて伝導速度の有意な低下を認めた(p<0.05).モリシジンは健常部L方向で300msec間隔の刺激時にのみ有意な抑制効果を示した.
    梗塞部L伝導では4mg/kg投与時800msec刺激時から有意な抑制効果を認めた(p<0.05).右室早期刺激法による心室頻拍/細動の誘発ではモリシジンの投与による誘発の抑制は認めなかった.モリシジン4mg/kgの投与により心室頻拍は心拍数297から206/分へと徐拍化した.誘発された心室頻拍時の心表面マッピングではリエントリー回路におけるL方向の伝導速度の低下が認められた.以上の結果よりL方向の伝導低下がモリシジンの徐拍化の機序である可能性が示唆された.
  • 宝田 正志, 康井 制洋, 岩堀 晃, 降旗 邦生, 川滝 元良, 伊藤 健二, 高山 鉄郎, 長田 信洋
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1168-1174
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    今回我々は心房内血流転換術を施行し,経時的に2回以上にわたって運動能の測定を行った症例の遠隔期の成績と肺機能を検討することを目的とした.対象は1985年6月以前にMustardおよびSenning手術を施行した17例である.手術時年齢は平均1歳10カ月,術後経過年数は平均10年8カ月であった.運動負荷はトレッドミルによるブルース法にて行った.
    運動持続時間は-2SD以内でsubnormalの数値を示し,経時的に平坦傾向かやや下降傾向を示した.最大心拍数も平均で毎分177±13とやや心拍増加不全の傾向を示した.最大酸素摂取量(Vo2max)も平均で37.2±8.2ml/kg/分とやや低値を示した.
    肺機能はVC,FEV1.0.き,MVVにて正常予測値に比しやや低値を示した.
    また経過観察中突然死例が2例にみられ,ホルター心電図の結果等から術後ほぼ10年を経過すると各種不整脈の出現頻度が多くなるように思われた.
    特に運動能の著明な低下を認めなくても10年以上の遠隔期を過ぎて突然死をみたことから特にハイリスクの不整脈を有する患者に対しては,積極的にこれに対応する治療管理の導入が必要と思われた.
  • 突然死6例の臨床的特徴
    阿部 秀樹, 青木 健郎, 太田 るみ子, 河合 裕子, 木住 野晧, 太田 茂樹, 渡辺 直, 西中 知博, 山西 秀樹, 林 和秀, 南 ...
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1175-1183
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1986年7月より,1991年11月までに施行した冠スパズム誘発試験(エルゴノビン負荷)1,732例中,完全閉塞型冠スパズム(type A)が誘発された243例(全体の16.5%,自然発作16例)について,平均2.2±1.0年の追跡調査をした.
    243例中男性213例,女性30例,平均59±10歳であり,2枝完全閉塞型冠スパズム16例,3枝完全閉塞型冠スパズム1例,梗塞の既往のある群(OMI(+)群)85例,梗塞の既往のない群(OMI(-)群)158例であった.完全閉塞型冠スパズム誘発部位261枝中,83%が器質的冠狭窄50%未満であった.
    243例中,223例(91.8%)で追跡可能であったが死亡13例中,突然死が6例(2.5%)あった.冠動脈造影より突然死までの期間は23±0.5年であり,全例男性,平均62±10歳で年齢に有意差はなく,左室収縮能(LVEF)はむしろ生存群より有意によかった(LVEF67.2±9.5%vs56.4±11.7%,p<0.05).全例,有意の器質的冠狭窄を有さず,梗塞の既往もなく,右冠動脈の完全閉塞型冠スパズムが4例あった.
    突然死6例全例に喫煙習慣があった.完全閉塞型冠スパズムを有する冠攣縮性狭心症に対しては,可及的長期な経過観察と内科加療継続が望ましいものと思われた.
  • 杉本 恒明
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1184-1185
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 奥野 隆久, 正津 晃
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1186-1192
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞150例のうち5例(3.3%)に心室自由壁破裂をきたし,うち3例を緊急手術にて救命しえた.いずれも発作後2時間40分-5時間に血栓溶解療法を受けている.第1例は回旋枝閉塞で,入院3日目に右室下壁に2カ所の亀裂,第2例は回旋枝閉塞で2日目に左室側壁の梗塞部からのoozing,第3例は対角枝90%狭窄と回旋枝閉塞で,6日目に左室後壁に亀裂と梗塞部oozingを認め,いずれも体外循環,心停止下に止血しえた.
    心室自由壁破裂の所見としてはelectro-mechanicaldissociationが有名であるが,これは破裂の末期症状であり,これを認めてからでは救命の可能性は少ない.心筋梗塞後の経過にて,胸痛再発,血圧低下,頻脈,脈圧減少,不穏などの症状があった時は,まず第1に心エコーにて心膜腔液貯留の有無を確認することが大切で,これにより心室自由壁破裂を救命する途がひらける.
  • 谷口 昌史, 西尾 夏人, 上野 康尚, 堀田 成紀, 久保 実, 大木 徹郎, 坪田 誠, 関 雅博
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1193-1198
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は14歳男児.2歳8カ月時に心室中隔膜様部欠損に対しパッチ閉鎖術を施行された.
    平成3年5月,不明熱の精査目的で入院したところ,咽頭培養と血液培養で黄色ブドウ球菌が検出され,断層心エコー図で心室中隔パッチ上に疵贅の付着を認めた.抗生剤投与により解熱し,疵贅の縮小とエコー輝度の増強を認めた.13週間後に抗生剤を中止したが16週間目に発熱し,血液培養で再び黄色ブドウ球菌が検出された.その後は抗生剤投与に反応せず,疵贅は拡大傾向を示し,肺塞栓症の合併も認めたため,手術的に切除した.疵贅は2.0×1.8cmでパッチと連絡があり,中隔壁は著明に肥厚していた.同時にVSDの完全閉塞も確認された.
    VSD術後遠隔期の感染性心内膜炎の頻度は少なく,完全閉鎖の確認された報告は極めてまれである.また黄色ブドウ球菌を起炎菌とし,パッチ上に疵贅形成をきたした報告はない.
  • 近田 正英, 小塚 裕, 五十嵐 寛, 古瀬 彰, 杉本 和彦, 落合 秀宣, 井上 清
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1199-1202
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    WPW症候群に心筋梗塞を合併すると,WPW伝導によるQRS波の変化のために,心電図から,梗塞部位を判定するのは困難となる.また,標準12誘導心電図からの副伝導路の部位診断も,心筋梗塞の影響を受ける可能性がある.
    今回我々は,WPW症候群に心筋梗塞と不安定狭心症を合併し,CABGと副伝導路切離を同時に行った症例を経験したので報告する.
    症例は48歳男性で,労作性狭心症と心電図上WPW症候群と診断されて,外来でフォローされていたが,不安定狭心症となり入院し心臓カテーテル法検査で,前壁および下壁の陳旧性梗塞と左主幹部を含む多枝病変(LMT-90%,LAD#6-99%,RCA#1-99%,#2-99%)が確認された.冠状動脈造影と左室造影の所見と負荷心筋シンチグラムの所見を検討してバイパス部位を決定した.1991年11月13日に大伏在静脈を用いたCABG(LAD,OM)と,右側副伝導路切離の同時手術を行った.左心機能が低下した左主幹病変であるため術前の電気生理学的検査は省略し,術中のmappingをもとにCABG後副伝導路を切離し,ペーシングにて副伝導路の切離を確認して,手術を終了した.まれな症例であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 関口 信哉, 高橋 敦, 江口 学, 近藤 朗彦, 須永 達哉, 荻原 真理, 名越 温古, 斎藤 宣彦, 染谷 一彦, 川田 忠典
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1203-1207
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    僧帽弁逸脱症候群(MVP)に対しCarpentier'sringを用いた弁輪形成術を行い,術直後より著明な溶血性貧血を認めた症例を経験した.症例は65歳男性.60歳時より心雑音を指摘されるも放置63歳時に心不全にて入院,心エコーにて腱索断裂によるMVPと診断,左室造影ではSellers分類III度の僧帽弁逆流(MR)を認めた.同年Carpentier's ringを用いた弁形成術を施行,術直後より貧血の進行とともに網赤血球数の増加,末梢血液中には破砕赤血球を多数認めた.その他間接ビリルビン,血清LDHの高値,血清ハプトグロビンの低値を認め溶血性貧血と診断.65歳時,貧血の進行を認め再入院.経食道心エコーにて残存するMRの血流がCarpentier'sringに衝突している所見が得られ,これが機械的溶血の機序として考えられた.入院中の安静により貧血は安定し退院後の日常労作にて増悪する傾向が認められた.人工弁置換手術後の溶血性貧血はしばしぼ認められるが本症例のように弁形成術後に溶血性貧血をきたすことはまれであり報告する.
  • 宮川 朋久, 大浦 弘之, 南澤 俊郎, 小沢 正人, 肥田 敏比古, 市川 隆, 三浦 秀悦, 盛合 直樹, 千葉 直樹, 鎌田 潤也, ...
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1208-1214
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    今回,房室ブロックに対して人工ペースメーカーの植え込みを行った後に,心室頻拍による意識消失発作を繰り返した1症例を経験した.症例は61歳,女性.平成2年3月15日に人工ペースメーカー(VVIモード,基本レート60/分)の植え込みを行った.同年5月6日に約5分間意識を消失した.心電図上自己調律ではII,III,aVF,V3-6でT波が陰性化しQT時間は0.56sec(QTc時間0.57sec)と延長していた.自己心拍が頻回にみられるため,基本レートを50/分に変更した.Holter心電図検査では心室性期外収縮後の自己心拍のQT延長とU波の増高およびpause-dependent QU延長があり,心室性期外収縮に対するセンシング不全がみられた.5月29日にも意識消失し,頻拍性不整脈またはてんかんを疑い,プロパフェノン450mg/日とフェニトイン300mg/日を投与した.8月15日,意識消失発作が出現した時のモニター心電図では,自己調律の後に心室性期外収縮のR on Tから多型性心室頻拍が発生した.心臓マッサージを施行し,心室頻拍は停止した.なおも心室性期外収縮が頻発したが,ペーシング頻度を70/分に増加させた後,心室性期外収縮は抑制され,心室頻拍も消失した.ペースメーカー植え込みに際しては,血行動態のみではなく植え込み後のペーシングレートに伴うQT時間の変化など詳しい分析を行うことが必要と考えられた.
  • 拡張期にも心尖部から心基部に向かう高流速の血流を認めた1例における検討
    西川 永洋, 増山 理, 山本 一博, 田内 潤, 堀 正二, 鎌田 武信
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1215-1219
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    超音波ドプラ法にて収縮期のみならず拡張期にも心尖部から心基部に向かう高流速の血流速波形を左室中部狭窄部で認めた心室中部閉塞性肥大型心筋症の1例(42歳,女性)を対象とし硝酸薬,βプロッカー投与に伴う左室内血流動態の変化につき検討した.
    コントロール時において,かかる血流は収縮早期,収縮後期,拡張早期にピークを認める3峰性を呈しており,収縮早期に最高流速を記録した.ニトログリセリン投与に伴い,収縮早期ピーク血流速には著明な変化は認めず,収縮後期ピーク血流速は若干上昇したものの,拡張早期ピーク血流速は減少した.一方,プロプラノロール投与により収縮早期,収縮後期,拡張早期ともコントロール時に比しピーク血流速は低下した.
    心室中部閉塞性肥大型心筋症の左室内血流動態は硝酸薬,βブロッカー投与により変化し,その変化は両薬剤で異なることが示された.
  • 竹中 克
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1220-1221
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 吉田 裕司, 前田 均, 高田 俊之, 竹内 素志, 山辺 裕, 井上 智夫, 秋田 穂束, 川原 康洋, 横山 光宏, 大林 千穂, 伊東 ...
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1222-1227
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は75歳女性.胸内苦悶感,顔面の浮腫を主訴に来院.理学的所見では顔面浮腫,頸部静脈の怒張等の上大静脈症候群を呈し,聴診上心膜摩擦音を聴取した.肝腫大を伴うも,表在リンパ節腫脹は認めなかった.胸部X線ではCTR70.2%と心陰影の拡大および両側胸水を認め,また縦隔陰影の拡大も伴っていた.心電図では一過性の心房細動,低電位を認めたが入院時は正常洞調律であった.
    検査成績では血沈の亢進,CRP高値またLDH,hANPの高値を示した.心エコーで,両心房内にほぼ腔を占居する腫瘤を認め,左室後壁にも腫瘍エコーを伴っていた.CT,MRIおよびGaシンチで,腫瘍は縦隔内に広範に伸展しており,心臓では両心房内の腫瘤形成を示していることが確認された.以上の所見より心房細動を伴う上大静脈症候群を呈した心臓内および縦隔内の腫瘍と診断CTガイド下針生検による組織学的検索の結果,び漫性大細胞型B細胞性悪性リンパ腫と診断され,Vincristin,Cyclophosphamide,Farmorubicin,Prednisolone四剤による化学療法を開始した.治療に良好な反応を示し,腫瘍サイズの著明な縮小および症状の改善を認め,現在治療経過観察中である.
  • 和田 明珠, 安田 正之, 佐藤 裕之, 高谷 純司, 桜井 秀彦, 山口 洋, 河野 浩章, 岡田 了三, 高沢 賢次, 渡部 幹夫, 細 ...
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1228-1232
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    72歳,女性.脳梗塞で入院.心エコー図で左房内に可動性の腫瘤,心血管造影で右冠状動脈より栄養血管,造影剤による腫瘍濃染を認めた.腫瘍はMRI,SE法で4×4cm,周辺部は筋肉と同信号,内部に蜂窩状の高信号があり,FE法では無信号に近い低信号を示した.ヘモジデリン沈着を伴った粘液腫と診断された.手術による摘出腫瘍は4.0×4.5×3.5cm大,褐色蜂窩状の割面を呈した.粘液腫特有の組織像の一部に著しいヘモジデリンの沈着および石灰化を認め,顆粒状,星雲状のGamna-Gandy結節様病変を認めた.Gamna-Gandy結節は門脈圧充進時のうっ血脾内小出血後のヘモジデリン沈着を本態とする脾柱内小結節であるが,本例は血流による機械的刺激等が誘発した粘液腫内小出血に続発した類似病変とみなされた.MRI画像上,鉄沈着の診断が容易になり,今後粘液腫の病態評価の上で役立つ所見と考えられた.
  • 田川 辰也, 廣岡 良隆, 竹下 彰, 岡留 健一郎, 杉町 圭蔵, 丁 健
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1233-1237
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    炎症性腹部大動脈瘤は大動脈瘤壁の著しい線維性肥厚と周囲組織への浸潤,増殖を特徴とする疾患である.今回我々は,術前,腹部大動脈破裂と診断された炎症性腹部大動脈瘤の1症例に遭遇したので報告する.症例は60歳,女性.突然の強い腹部および背部痛の訴えで来院した.造影CT検査により腹部大動脈周囲に血液と同じ濃度の腫瘤があり,後腹膜腔への造影剤の漏出を思わせる所見が認められた.腹部大動脈瘤破裂の診断で開腹手術を施行したところ,腹部大動脈壁の著明な線維性肥厚を認め,血腫は認められなかった.病理組織検査の結果,大動脈壁は外膜に高度の線維性肥厚とリンパ球を主体とした慢性炎症細胞の浸潤および多数のリンパろ胞を認め,炎症性腹部大動脈瘤と診断された.炎症性腹部大動脈瘤は術前診断が難しく,開腹してはじめて気付かれることが多い.それゆえ,内科医は遭遇する機会が少なく,そのことが,なお一層本症の診断を困難にしている.本症の発生頻度は全腹部大動脈瘤の2.5-20%と決して少なくはなく,腹部大動脈瘤の診断上,念頭に置くべき疾患と考えられる.
  • 井上 正
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1238-1240
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 松尾 信郎, 田仲 輝光, 高橋 正行, 古川 孝美, 中村 保幸, 三ツ浪 健一, 木之下 正彦
    1993 年 25 巻 10 号 p. 1241-1246
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    列車同士の衝突事故に遭い,急性心筋梗塞(非Q波型)様の心電図を呈した心挫傷の症例を報告する.患者は72歳の女性で,ヘリコプターでの搬入時には,頭胸部の外傷を認め,意識レベルはGlasgow ComaScaleで4-5であった.CT検査中に血圧が40-50mmHgとショックに陥り,カテコールアミンでの血圧維持を必要とした.心電図ではII,aVF,V2-V6でSTの上昇を認め,非Q波形心筋梗塞が凝われた.胸部X線では心胸郭比68%,右第一肋骨の骨折,両肺野のうっ血所見を認めた.Swan-Ganzカテーテルでの血行動態はForrester Subset 3であった.また,心室期外収縮と心房期外収縮が多く見られた.強心薬,血管拡張薬,抗不整脈薬を使用し,人工呼吸器を必要とした.心エコーでは,右室前壁心尖部よりの部分は奇異性運動を,左室は心基部を除く壁運動低下と心筋の菲薄化を認めた.第7病日の心エコーでは心尖部の一部を除いて壁運動異常は回復していた.心エコーでの心筋の壁運動異常は冠動脈に起因する心筋梗塞では説明できず心挫傷と診断し,心不全に対して治療を行った.また,冠動脈造影検査では冠動脈は正常であり動脈硬化性病変は認めなかった.
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