心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
25 巻, 5 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 桑島 巌
    1993 年 25 巻 5 号 p. 491-502
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    携帯型自動血圧計の普及により,血圧日内変動に関して多くの知見が得られた.診察室や検診時の血圧値に比して24時間血圧や夜間血圧の方が,高血圧性臓器障害の指標である左室肥大の程度とよく相関することが明らかとなり,また白衣高血圧,早朝高血圧といった病態が注目されるようになった.また夜間血圧が下降しない疾患群も報告されている.夜間血圧を下げるべきか否かについてはまだ結論が得られていないが,急激な血圧下降は,特に老年者では避けるべきであろう.また降圧薬の評価においても日内変動への影響を考慮する必要がある.β遮断薬では昼間のみ降圧をもたらし,夜間血圧を下げないと報告されている.一方,カルシウム拮抗薬やα,β遮断薬では,昼,夜血圧とも下降させるが,夜間血圧に対しての効果は年齢により異なる.したがって,降圧薬の日内変動を論ずる場合には,患者の年齢を考慮すべきである.
  • 小川 剛, 牛山 和憲, 富沢 巧冶, 野口 祐一, 安井 和彦, 杉下 靖郎
    1993 年 25 巻 5 号 p. 503-507
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    本研究においては,1)各ステージ2分間の腕エルゴプロトコールを作製し,2)狭心症患者を対象として本プロトコールによる腕エルゴならびにBruce変法によるトレッドミル試験を実施し,それらの成績を比較した,3)さらに腕エルゴの冠動脈疾患における診断法としての有用性について検討した.結果:腕エルゴならびにトレッドミル試験中における各指標の変動度を評価した結果,1)心拍数,収縮期圧ならびにrate-pressure productの増加度あるいは上昇度については両者間に有意差を認めなかった,2)体酸素摂取量増加も同程度とみなされたが,腕エルゴの酸素脈増加はトレッドミル試験のそれと比較して有意に低い値を示し(p<0.01),呼吸商は大きい傾向を示した(p<0.1) , 3)腕エルゴのST低下度はトレッドミル試験のそれと比較して軽度であり(p<0.1),ΔST/ΔHRについては両者問に有意差を認めた(p<0.01) .結語:各ステージ2分間プロトコールによる腕エルゴはトレッドミル試験と同程度の加負荷を可能にしたが,上肢運動の機械効率は下肢のそれより低く,その結果ST低下度は軽度であり,冠動脈疾患診断率を低下させたと考えられた.
  • 剖検50例についての検討
    河合 裕子, 青崎 正彦, 小笠原 定雅, 岩出 和徳, 堀江 俊伸, 細田 瑳一
    1993 年 25 巻 5 号 p. 508-514
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    拡張型心筋症(DCM)では血栓塞栓症を合併しやすいとされるが,本邦での検討成績は少ない.本症剖検50例について心腔内血栓および梗塞の有無を調べ,塞栓症の既往例については臨床像も検討した.
    対象は,1972年1月から1990年5月までに当科で剖検を行った50例で,男性39例,女性11例,死亡時年齢は15歳から73歳,平均44.3歳であった.塞栓症既往例は10例で,男性7例,女性3例,死亡時年齢は17歳から65歳,平均40.9歳,観察期間は6カ月から8.1年,平均3.3年であった.
    その結果,剖検上,心腔内血栓は50例中35例(70%)で認められた.部位は左室25例(50%),右房6例(12%),右心耳5例(10%),左房4例(8%),左心耳2例(4%),右室9例(18%)であった.他臓器の梗塞像は腎20例(39%),肺12例(24%),脾5例(10),脳3例(13%),腸間膜2例(4%)であった.塞栓症10例の部位は,脳5例,肺3例,上肢1例,下肢1例であった.発症時の心機能はNYHA分類上IV度5例,IV度から改善直後3例,II度2例と80%に明らかな心不全を認めた.心電図では3例に心房細動,1例に上室性頻拍を認めた.塞栓合併例では8例(80%)に剖検上心腔内血栓が認められた.塞栓発症例に対してはwarfarin, ticlopidineが投与され,再発は認めなかった.
    塞栓症はDCMの予後悪化要因であり,warfarinなどによる抗血栓療法が必要と考えられた.
  • 松村 憲太郎, 中瀬 恵美子, 芦沢 敬, 久保田 忍, 川合 一良, 斎藤 孝行
    1993 年 25 巻 5 号 p. 515-524
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠攣縮性狭心症の冠循環をdigital subtractionangiography(DSA)を用いて定量化し,冠循環遅延を指摘すると同時に,末梢動脈としての左内胸動脈血流を測定し,冠循環との関連性を検討した.一般的に内胸動脈血流量は左冠循環時間,および心外膜冠動脈伝播時間と負の相関を示し,冠循環遅延があれば内胸動脈血流は減少した.冠攣縮性狭心症では左冠循環時間の有意な延長と左内胸動脈血流量の減少が見られた.冠循環遅延と内胸動脈血流の減少は,ともに末梢血管抵抗の増加を主に反映しており,冠攣縮性狭心症では心外膜冠動脈の異常反応性と同時に,冠末梢血管のトーヌス亢進と全身末梢動脈の血管抵抗の増加が推測された.
    冠攣縮性狭心症127例において末梢循環障害の合併頻度を検討した.片頭痛の合併頻度は冠攣縮性狭心症で25.2%と,正常例の9.1%に比し有意に高く,またレイノー現象は冠攣縮性狭心症で12.6%,正常例で4.5%と,冠攣縮性狭心症で多い傾向を示した.レイノー現象は比較的若い症例に多く,また男性に多い傾向を示した.一方,片頭痛の合併頻度は女性例で45.6%と,男性例の8.6%に比し有意に高かった.
    冠攣縮性狭心症では冠末梢血管抵抗の増加を反映して冠循環遅延が見られるばかりでなく,全身末梢循環も障害されており,片頭痛やレイノー現象合併例では左冠循環時間は著明に延長していた.冠攣縮性狭心症は冠動脈系の反応異常とともに,全身動脈系の反応異常を合併する病態と考えられた.
  • 山田 健二, 森本 紳一郎, 平光 伸也, 植村 晃久, 久保 奈津子, 木村 勝智, 菱田 仁, 水野 康
    1993 年 25 巻 5 号 p. 525-534
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    拡張型心筋症21例にmetoprololを投与したところ,心不全の軽減,心室性期外収縮数の減少がみられ,14例で有効,4例が不変,3例が悪化を示した.有効群と,不変・悪化群の2群間で,患者背景等各種指標について比較検討したところ,罹患期間(何らかの他覚的な心症状出現後の期間)が,有効群では3.1±1.5年,不変・悪化群では6.1±3.0年と罹病期間が,有効群で有意に短いことが明らかになった.また罹患期間が,3年以内の症例における本療法の有効率は,11例中10例(90.9%)で,一方4年以上の症例では,10例中4例(40.0%)と有意差が認められた.有効群と不変・悪化群で,脈拍数を検討したところ,有効群で観察期に比し,治療期で脈拍数の有意な減少が認められた(80.9±8.8→63.9±9.1/分)が,不変・悪化群では脈拍数の減少はみられなかった(84.9±21.1→85.9±34.2/分).また有効群では,末梢血のリンパ球におけるβ-receptor数は,投与後,平均値で投与前に比し2倍ほどに増加しており,β-receptorのup-regulationが認められた.以上より,拡張型心筋症におけるβ遮断薬療法は,罹病期間が3年以内の症例に有効で,4年以上の症例では特に慎重に行う必要があると結論された.また本療法の作用機序として,心拍数の減少,β-receptorのup-regulationが関与していることが示唆された.
  • 佐藤 仁美, 浅川 哲也, 小森 貞嘉, 吉崎 哲世, 田村 康二, 秋元 滋夫, 神谷 喜八郎, 上野 明, 小泉 潔, 内山 暁
    1993 年 25 巻 5 号 p. 535-538
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    洞調律の僧帽弁狭窄症兼大動脈弁閉鎖不全症に合併した上腸間膜動脈塞栓症を,CTにて早期診断し救命しえた1例を報告した.
    症例は54歳男性.23歳でリウマチ熱に罹患し,この頃より心雑音を指摘されていたが自覚症状もなく放置していた.平成元年9月25日,息切れを主訴に当科外来受診した.入院翌日の朝食後,突然腹痛を訴え,腸雑音の消失を認めた.僧帽弁狭窄症の存在と急性発症の腹痛より,腸問膜動脈塞栓症を疑い,腹部造影CTを施行したところ,上腸間膜動脈の閉塞を認め,急性上腸間膜動脈塞栓症と診断した.発症より約5時間後,血栓塞栓摘除術が施行され,その後の経過は良好である.腸間膜動脈塞栓症は早期診断が困難であり,その予後は極めて悪く,急性腹症の中でも重篤なものの1つとされている.本症例は早期診断により血栓塞栓摘除のみにて救命しえたまれな例であり,文献的考察を含め報告した.
  • 絹川 弘一郎, 横山 泰仁, 富安 斉, 伊藤 敦彦, 戴 素蘭, 田宮 栄治, 羽田 勝征, 大川 真一郎, 後藤 希代子
    1993 年 25 巻 5 号 p. 539-543
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    今回我々は洞不全症候群を合併したFabry病の1例を経験したので報告する.症例は50歳男性,主訴は失神発作である.平成2年より心電図異常を指摘された.平成3年4月より失神発作が出現.ホルター心電図上最大RR間隔が8.5秒に及ぶ洞停止を認め,洞不全症候群と診断した.心エコー上心尖部領域により著明な左室肥大を呈した.冠動脈は造影上正常であった.Overdrive suppression testにて修正洞結節回復時間は2,150msecと著明に延長しており,洞機能不全を確認した.失神発作に対し恒久的ペースメーカー植え込み術を施行し,その消失をみた.左室心筋生検組織のHE染色増にて心筋細胞内にび漫性に著明な空胞変性を疑わせる像を認めたため,白血球および血清中のα-galactosidase A活性を測定したところ,正常平均値の5%前後に低下しており,Fabry病と診断された.なお,本症例はごく軽度の蛋白尿を認めるのみで角膜,皮膚,神経に異常所見を認めず,ほぼ心臓に限局した非典型的なFabry病と考えられた.
  • 布廣 龍也, 清水 昭彦, 芦沢 直人, 磯本 正二郎, 香江 篤, 木谷 文博, 深谷 眞彦, 矢野 捷介
    1993 年 25 巻 5 号 p. 544-549
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    基礎心疾患を伴わない家族性洞不全症候群(SSS)2家系を経験した.家系Aでは,3世代で3例のSSSを,家系Bでは兄弟の2例でSSSを認めた.これら5 例全例で洞房ブロックおよびoverdrive suppression testにおける洞結節回復時間の延長(2.5~8.0秒)を認めた.心房連続刺激を施行した3例のうち1例では100/分の比較的低頻度刺激でWenckebach型房室ブロックが出現した.4例では体表面心電図のQRS幅が0.12秒以上で,3例ではHis束心電図のHV時間が65msec以上に延長していた.家系Aの3例ではHLA typingにて共通のハプロタイプA11,CW1が認められた.さらに,両家系の各々1例に心臓由来と考えられる突然死が認められた.以上より,基礎心疾患を伴わない家族性SSSは,洞結節とともに房室結節あるいはHis束以下の刺激伝導系に限局した機能障害を有する1つの独立した疾患である可能性が考えられ,第6染色体に関連した遺伝子があり,HLAとともに遺伝する可能性が示唆された.
  • 梅谷 健, 藤巻 信也, 井尻 裕, 渡辺 雄一郎, 桜林 耐, 小森 貞嘉, 田村 康二, 八坂 なみ
    1993 年 25 巻 5 号 p. 550-554
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性.主訴:動悸.現病歴:15年前に近医にて全身性エリテマトーデスと診断され,コルチコステロイド治療を受けていた.平成1年9月,動悸が出現し近医入院.ホルター心電図にて3:2~2:1のMobitz II型第2度房室ブロックを認め精査目的にて当科転院.前胸部,顔面,ならびに前腕の皮膚硬化,指尖部の短縮,指腹の小潰瘍,皮膚病理組織にて膠原線維の膨化,均一化を認め,進行性全身性硬化症と診断.血清学的検査にて全身性エリテマトーデスを示唆する所見は認められなかった.電気生理学的検査にてヒス束内ブロックを認め,ペースメーカー植え込み術を施行.自覚症状は改善した.本疾患に合併する伝導障害は進行性であると考えられるが,ペースメーカー治療が行われた症例は極めてまれであり報告する.
  • 戸叶 隆司, 中田 八洲郎, 大野 安彦, 住吉 正孝, 久岡 英彦, 小倉 俊介, 中里 祐二, 桜井 秀彦, 山口 洋
    1993 年 25 巻 5 号 p. 555-559
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ペースメーカー植え込み後に妊娠・分娩を経験した4例において,妊娠中の経時的な心機能変化につき,心エコーを用いて検討した,基礎疾患は3度A-Hブロック3例,3度ヒス束内ブロック1例であった.使用されたペースメーカーは,症例1,2,3は,VVI型,症例4はDDD型であった.症例1における左室拡張末期径(以下LVDd)は,妊娠初期44mm,中期48mm,後期50mm,分娩後8週44mm,左室駆出率(以下EF)は妊娠初期0.74,中期O.70,後期O.78,分娩後8週O.74と変化した.症例2では,LVDdは妊娠初期46mm,中期51mm,後期46mm,EFは妊娠初期0.66,中期080,後期0.77と変化した.また症例3,4においても同様に妊娠中期より後期にかけてLVDdの拡大を認め,これと並行してEFも増加を認めた.症例1,2,3は,VVIペーシングであり,心拍数は毎分70または72の設定された条件に固定されていた.しかし,心不全の合併はなく,1回拍出量の増加により,VVIペーシングでも妊娠中の循環血液量の増加に十分代償可能で,ペーシング拍数の増加やDDDペーシング, 心拍応答型ペースメーカーは必ずしも必要としなかった.
  • 谷河 浩二, 南 弘一, 津野 博, 上村 茂, 小池 通夫, 鈴木 啓之, 南 頼彰, 後藤 融平, 藤原 慶一, 内藤 泰顯
    1993 年 25 巻 5 号 p. 560-565
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は7カ月の女児.自動車の助手席でベビーシート使用中, 衝突事故に遭い, 胸部を含む全身を打撲した. 開放性外傷はなかった. 事故3 日後に発熱,嘔吐を主訴に当院入院し,心エコー図検査で多量の心嚢液貯留を認めた.全身状態は安定しており,利尿剤など抗心不全療法を3日間実施し,安全性が高いと考えられる出血の停止した時期(事故後7日目)に心嚢穿刺を行い血性心嚢液を60ml吸引した.その後,ピッグ-テイルカテーテルを挿入し持続吸引し,4日後抜去に至った.経過は順調で,比較的早期に治癒し得た.
    乳児の胸部鈍的外傷による心タンポナーデの報告はまれであり,その治療法はいまだ確立されていない.出血の進行状況,全身状態により治療方針を検討すべきである.
  • 杉 正文, 大江 正敏, 佐藤 文敏, 伊藤 祐子, 二宮 本報, 白土 邦男, 瀧島 任
    1993 年 25 巻 5 号 p. 566-570
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は40歳男性,主訴は心電図異常,心雑音.18歳,大工の仕事中にグラインダーがはずれ,胸部打撲,某医入院.胸部X線写真異常なく皮膚損傷部の縫合のみにて翌日退院.25歳,検診にて初めて心雑音を指摘されるも放置.40歳検診にて心電図異常,心雑音を指摘され精査目的にて当科入院.理学的所見では,第三肋間胸骨左縁にLevine 4度の汎収縮期雑音を聴取,同部に振戦を触知,また,その近傍に外傷性瘢痕を認めた.胸部X線写真は正常,心電図ではI,aVLに異常Q波を認めた.心臓カテーテル検査では右室中部にて酸素飽和度の有意な上昇あり,左右短絡率は13.0%.心エコー,MRI,左室造影にて,心室中隔と左右心室前壁接合部の穿孔と心室瘤形成が認められた.外傷性心室中隔穿孔は受傷後すぐに発症するとは限らず,本症例のように胸部外傷後,22年間無症状に経過した後に初めて心電図異常,心雑音を指摘される事もある.それ故,胸部外傷歴のある患者においては,本症の可能性を常に念頭におき診察することが重要である.
  • Entrainment現象による検討
    奥村 謙, 山部 浩茂
    1993 年 25 巻 5 号 p. 572-584
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    反復性持続性心室性頻拍症(VT)の発症機序をentrainment現象により検討した.陳旧性心筋梗塞例(OMI)のVT,特発性VT,右室異形成症例(ARVD)のVT中に,VTレートより5~10拍/分速いレートで数秒間心室ペーシングを行った.VTが停止しない場合にはレートを5~10拍/分増加し繰り返した.ペーシング部位は右脚ブロック型VTでは右室心尖部または流出路,左脚ブロック型VTでは原則として左室自由壁とした.OMI例のVTでは,14/15例(93%)でconstant fusionが認められ(entrainment診断基準1),ペーシング停止後VTが再開した.10例ではペーシングレートの増加によりfusionの程度が変化した(progressive fusion)(診断基準2).特発性VTでは,右脚ブロック左軸偏位型でベラパミル感受性のVTにおいて診断基準1と2を7例全例で認めたが,右脚ブロック右軸偏位型と左脚ブロック型の特発性VT例では複数箇所でペーシングを行っても診断基準は認められなかった.ARVDの2例では診断基準1,2を認めた.entrainment現象が観察されたVTでは全例で,刺激部位よりVT中の最早期興奮部位へ至る長い伝導時間すなわち緩徐伝導が認められた.またVTがペーシングにより停止する場合,緩徐伝導部での局所性ブロックによることが示された(診断基準3).VTの機序として,回路内に緩徐伝導部を有するリエントリーが考えられたが,一部の特発性VTの機序は不明であった.
  • 住吉 昭信
    1993 年 25 巻 5 号 p. 585-594
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    動脈硬化の発生,進展の鍵を握っているのは,機能的にしろ形態学的にしろ“内皮細胞傷害”である.透過性の亢進をきたすような内皮細胞傷害は,血管壁が有する代謝,除去する能力を越える血漿蛋白質の壁内への浸入を許し,そのために壁内にそれらが沈着することになる.この際高脂血症があるとより多量のLDLなどが壁内に浸入し,粥状硬化へのプロセスを著しく促進することになる.
    内皮剥離が起こるような動脈壁傷害は,壁在血栓を形成し,その器質化ないし修復は限局性の内膜の細胞線維性肥厚をもたらす.新生内皮は透過に対する障壁としての作用が十分でなく,そこには引き続き血漿蛋白の浸入もあって,やがて細胞線維性肥厚巣は粥状硬化巣へと進展することになる.
    血行力学的因子などと関連して血小板などが壊れる機会があると,血小板放出物質などにより,その中に含まれるPDGFの作用とも相まって軽微な非剥離性の内皮傷害が惹起される.また高脂血症もその中に含まれる過酸化脂質が直接に内皮を傷害し,これらが動脈硬化の初期発生に関与することが示唆された.また危険因子は重複すると傷害作用が相加ないし相乗される.
    以上のようなことについて,主として形態学的立場から,我々の実験成績を中心に述べた.
  • 篠山 重威
    1993 年 25 巻 5 号 p. 595-605
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ヒトの冠側副血行路の機能的意義に関しては,生理学的代償機序か心筋虚血重症度の指標かという点で見解の相違がある.急性心筋梗塞の後,早い時期に血栓溶解療法が行われた機会に,冠動脈造影によって冠側副血行路の種々の解析を行った.その結果,側副血行路の発達には心筋の虚血が必要であること,形成された側副血行路は梗塞心筋を実際に灌流すること,そして側副血行路の存在は心筋梗塞において障害組織を保護する上には限界があっても,心室瘤の形成は明らかに阻止するものであることが明らかにされた.
    動物実験で短時間の冠動脈閉塞を繰り返すと最終的には同じ冠閉塞によって局所壁運動の障害や,反応性充血が起こらなくなり,側副血行循環が発達したことが示唆される.この反応はheparinを併用することによって促進される.Heparinの血管新生促進効果は血管内皮の生長因子とレセプターの結合を増加することと,FGFが非活性化されることを阻止することに関係すると考えられている.この作用を臨床に応用してheparin前処置の下で運動負荷を繰り返し側副血行を発達させることを試みた.この方法が冠動脈疾患の新しい治療法に発展することを期待する.
feedback
Top