心臓
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25 巻, 8 号
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  • 多施設共同前向き調査
    杉本 恒明, 岩 喬, 下村 克朗, 児玉 逸雄, 橋場 邦武, 橋本 敬太郎, 春見 建一, 早川 弘一, 平岡 昌和, 渡部 良夫, 井 ...
    1993 年 25 巻 8 号 p. 885-892
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    日本循環器学会不整脈診療基準に関する調査研究委員会は,連発性心室期外収縮(PVC)の治療の必要性と予後を明らかにするため,全国94施設から登録された402例を2年間追跡調査した.追跡結果は330例(男性196例,女性134例,平均年齢51歳)で得られた.基礎疾患は虚血性心疾患82例(うち心筋梗塞60例),心筋症64例(うち拡張型44例),高血圧症45例などであり,95例には基礎心疾患はなかった.330例中34例(10.3%)が死亡し,うち26例(7.9%)が心臓死であった.不整脈死は14例(4.2%)であり,この内12例は器質的心疾患を持っていた.基礎心疾患を持たない95例あるいは無治療の73例には不整脈死は認められなかった.PVC連発数が増すにつれ心臓死の頻度が高くなる傾向を示した.NYHA心機能分類,心胸郭比,%FSで判定される心機能低下群において,心臓死,不整脈死とも頻度が高かった.心機能低下と不整脈死との関係は拡張型心筋症で有意であったが,虚血性心疾患では明らかではなかった.以上,連発性PVCが致命的な不整脈に移行するか否かは,基礎心疾患の種類と重症度に基づくことが示唆された.
  • 堀尾 武史, 河野 雅和, 安成 憲一, 村川 浩一, 横川 晃治, 池田 美和子, 福井 敏樹, 加野 裕章, 武田 忠直
    1993 年 25 巻 8 号 p. 893-899
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    降圧薬を服用していない左室肥大を有する本態性高血圧症患者19例を対象として,携帯型自動血圧計にて24時間血圧を測定し,24時間,日中(6:00-19:30),夜間(20:00-5:30)の収縮期および拡張期血圧の平均を求めた.また,Mモード心エコーにて左室重量係数等を算出し,これらと24時間血圧との関係を調べた.さらに,対象19例のうち男性13例に対し,enalaprilを長期投与し,6カ月間投与を受けた10例を対象に,再び24時間血圧測定とMモード心エコーを施行,心肥大退縮と24時間血圧変化との関係を検討した.
    対象19例における左室重量係数は夜間収縮期血圧と正の相関を示し,相対壁肥厚度および左室後壁厚は夜間拡張期血圧と正相関した. Enalapril長期投与試験では,6カ月後外来随時血圧,24時間,日中,夜間血圧はいずれも収縮期,拡張期ともに有意に低下し,左室重量係数は平均7.4%減少した.左室重量係数の低下率は外来随時収縮期血圧,24時間,日中,夜間の収縮期および拡張期血圧の下降率と有意な正相関を示したが,日中血圧に比べ夜間血圧の下降率との相関がより強かった.
    以上のことより心肥大の進展には夜間血圧が強く関係し,その退縮にも夜間降圧の関与が大きいことが示唆された.
  • 加算平均心電図の周波数領域および時間領域の解析
    久保 雅宏, 松岡 優, 秋田 裕司, 早渕 康信, 松家 豊, 黒田 泰弘
    1993 年 25 巻 8 号 p. 900-906
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Duchenne型進行性筋ジストロフィー症(DMD)23名(10-33歳,平均17.9歳)について,加算平均心電図の周波数領域および時間領域の解析を行い,異常加算平均心電図(abnormal SAE)陽性者の臨床病態を検討した.
    QRS波終末部20msec前からST-T部分60msecまでの計80msec区間を高速フーリエ変換し,7例に周波数領域解析において異常を認めた.一方,時間領域における異常は4例に認められ,この4例は周波数解析におけるabnormal SAEも陽性であった.周波数領域解析での異常例は正常例に比して年齢が高く,左室短縮率および最大左室後壁後退速度が有意に低下していた.Abnormal SAEの重症心室性不整脈に対する敏感度は周波数領域解析および時間領域解析でそれぞれ60%および30%であり,特異度は共に92%であった.
    以上,DMDにおける加算平均心電図の評価に周波数領域の解析は有用であり,abnormal SAEは心筋障害の程度および重症不整脈の発生と関連していることが示唆された.
  • 野村 昌弘, 中屋 豊, 若槻 哲三, 三好 由貴子, 岸 史子, 斎藤 憲, 伊東 進, 中安 紀美子, 西谷 弘, 松崎 健司, 上野 ...
    1993 年 25 巻 8 号 p. 907-913
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    生体内の電流源を三次元的に推定可能な心磁図法を用い心室性期外収縮における心室最早期興奮部位の推定を行った.心室性期外収縮例6例において7チャンネルニ次微分型dc-超伝導量子干渉形を用いて前胸部63点における磁界分布図を作成した.この磁界分布図より最小二乗解析により電流dipoleの位置を計算し,心電図同期MRI画像を用いて心臓上の解剖学的位置同定を行い,体表面電位図から推定される心室性期外収縮発生源と比較した.QRS開始20msecの時点における磁界分布図から電流源の位置を推定すると,体表面電位図から推定される発生源とほぼ一致した.心磁図法は,磁界勾配より電流dipoleそのものを三次元的にベクトル解析でき,心磁図法と心電図同期MRI断層法を併用した心室性期外収縮発生源の位置推定は,体表面電位図法ならびに心臓電気生理学的検査と相補的に新たな知見を提供し得ると考えられた.
  • とくに心電図所見について
    長谷川 浩一, 沢山 俊民, 河原 洋介, 田村 敬二, 鼠尾 祥三, 中村 節, 三谷 一裕, 末綱 竜士, 佐藤 徹
    1993 年 25 巻 8 号 p. 914-918
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性肺塞栓症は,本邦でもまれではなく,急死の一因となりうる.今回,本症43例を対象として発症の背景因子,臨床事項を解析し,特に急性期心電図所見の特徴を明らかにした.[結果]1,背景因子は,術後または臥床中が8例,カテーテル検査後・深部静脈血栓・高血圧が各6例であった.また本症は男女の別なく若年から高齢者まで発症した.2.臨床症状・徴候:呼吸困難が37例(86%)と最も多く,胸痛14例(33%),頸静脈の怒脹・著明なa波が21例(49%)にみられ,ショック・失神18例(42%)中8例(44%)が死亡した.3.動脈血ガス・血液生化学:PaO2<65かつPaCO2<40mmHgが79%,白血球増加(>8,000)62%,LDH上昇62%.4.急性期心電図所見:全例ではV1,2のST上昇(37%)・T波陰転(78%),S1(56%)が高率にみられ,右脚ブロック(27%),S1Q3T3(24%),S1S2S3・右軸偏位(各20%),肺性P(15%)は低率であった.死亡例に限れば,V1,2のST上昇(57%)・T波陰転(100%),右脚ブロック(86%),V4-6のST下降(43%)が高率であった.[総括]急性肺塞栓症の早期診断は,臨床状況の急変時に本症を想起することから始まる.急性期心電図では,V1,2のST上昇・QT延長を伴うT波陰転,S11を重視すべきで,徐脈,右脚ブロック,V4-6のST下降合併例の予後は不良と考えられた.
  • 伊藤 一貴, 首藤 達哉, 森口 次郎, 佐藤 重人, 富岡 裕彦, 甲原 忍, 細見 泰生, 平野 伸二, 朝山 純, 勝目 紘, 中川 ...
    1993 年 25 巻 8 号 p. 919-924
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,女性.主訴は,労作時胸部絞扼感.運動負荷および過呼吸負荷心電図では,II,III,aVF,V5-6においてhorizontalにSTの低下を認めたが,運動負荷T1心筋シンチグラフィーでは灌流低下は認められなかった.左室造影では,壁運動異常を認めず.冠動脈造影および大動脈造影では,左冠動脈主幹部の完全閉塞と右左冠動脈の吻合が認められた.吻合血管は右後下行枝から右室壁前面を上行し,左冠動脈前下行枝と回旋枝の分岐部に連絡しており,その形態および走行から,冠動脈奇形によることが示唆された.先天性冠動脈吻合ならびに慢性期左冠動脈主幹部完全閉塞はいずれもまれな疾患とされており,その両者の合併例は極めてまれと思われ報告する.
  • 加藤 雅也, 中村 展招, 田中 慎司, 井上 勝美, 後藤 泰利, 中沢 芳夫, 米田 治彦, 山本 悦正, 永松 力, 磯田 康範, 益 ...
    1993 年 25 巻 8 号 p. 925-929
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Dual SPECT(99mTc+201TlCl)にて確定診断できた非常に狭い領域の急性前側壁梗塞の1例を経験したので報告する.症例は55歳の男性.前胸部絞扼痛を訴えるため近医より紹介された.心電図上II・III・aVF・V5-6のST低下,aVLのST上昇とQ波を認め,急性心筋梗塞を疑って緊急冠動脈造影を行った.左冠動脈第1対角枝の側枝が1本完全閉塞していたが症状が激烈であり,これによる急性心筋梗塞と確診できなかった. このため, 第3 病日にdual SPECTを施行したところ,閉塞冠動脈の灌流域と一致する前側壁の一部に,99mTc-PYPの集積と201TlClの取り込み欠損を認め,第1対角枝の側枝閉塞による急性心筋梗塞と確定診断した.Dual SPECTは急性心筋梗塞の局在診断に有用であるといわれるが,本症例のように心電図変化や血清酵素・冠動脈造影で確定診断しかねる,狭い領域の急性貫壁性心筋梗塞の診断に有用であると思われた.
  • 久保 俊彦, 田川 博章, 松本 有司, 安藤 洋志, 安藤 真一, 芦原 俊昭, 福山 尚哉
    1993 年 25 巻 8 号 p. 930-935
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.急性心筋梗塞発症後1時間でウロキナーゼ36万単位による経静脈的血栓溶解療法を受けたが不成功.発症4時間後に責任病変である左冠動脈第1対角枝の完全閉塞に対してPTCAを施行し,再灌流に成功した.後療法としてヘパリン,アスピリンを投与していたが,再灌流成功51時間後に突然ショック状態となった.心エコーで大量の心嚢液が貯留しており,心タンポナーデによるショックと考えられ,心嚢穿刺を行ったところ血行動態は速やかに改善した.心嚢液は血管内血液とほぼ同等の成分であり,出血による心タンポナーデと判断された.冠動脈再灌流に伴う出血性梗塞または心外膜炎による出血が,血栓溶解療法あるいは後療法としての抗凝固療法により助長され,心タンポナーデに至ったものと考えられた.
  • 渡口 真佐夫, 上江洲 徹, 知花 朝美, 花城 久米夫, 古謝 景春
    1993 年 25 巻 8 号 p. 936-940
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例71歳,胆嚢結石のために胆嚢摘出術の既往のある男性.安静時胸痛のため来院.初診時,標準心電図およびホルター心電図上特異的ST上昇所見は得られなかった.運動負荷試験では非特異的ST変化が見られたが狭心痛はなかった.1年半後右上腹部疼痛,発熱のため入院.総胆管結石,胆道炎と診断.入院中胆道結石疝痛とともに左前胸部の圧迫痛が生じた.モニター心電図で一過性のST上昇が記録され異型狭心症と診断した.胆道疝痛時に異型狭心症の発作が頻発しかつ持続時間が通常の発作よりも長かった.血圧上昇,頻脈があり交感神経緊張状態にあると思われたが,それによって誘発されたかは不明であった.冠動脈造影では左冠動脈に軽度の狭窄がみられたが有意な狭窄はなかった.右冠動脈は正常であった.心筋収縮異常はなかった.胸痛発作が消失してから総胆管切開術が施行された.手術開始約1時間後胆道切開操作中にST低下が始まり一過性にST上昇が生じ,心室性期外収縮が頻発した.ニトロールが静注されSTは正常化した.術中血圧,脈拍の変動はほとんどなく,低酸素,過換気や電解質異常もなかった.手術中のST上昇は交感神経緊張以外の因子も関与しているものと思われた.
  • 青木 啓一, 高梨秀一 郎, 古田 昭一, 並木 隆雄, 澤田 準, 相澤 忠範, 加藤 和三, 河合 祥雄, 岡田 了三
    1993 年 25 巻 8 号 p. 941-945
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    本邦で手術対象となる大動脈弁狭窄症の原因としては,先天性(二尖弁),リウマチ性が多く,老人性大動脈弁石灰化による大動脈弁狭窄症の弁置換例の報告はいまだ少ない.今回,我々は冠動脈病変を合併した老人性大動脈弁石灰化による大動脈弁狭窄症症例(70歳,男性)に,大動脈弁置換術と2枝冠動脈バイパス術を同時施工し良好な結果が得られたので報告する.
  • 小田口 浩, 相馬 康宏, 四津 良平, 鈴木 孝明, 田口 真一, 工藤 樹彦, 桜井 義也, 森 厚夫, 川田 志明, 小川 聰, 岩永 ...
    1993 年 25 巻 8 号 p. 946-951
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    植え込み型除細動器(ICD)の2症例を経験したので報告する.
    症例1は59歳男性.失神を伴う数回のVT発作に対し蘇生術を受けた.電気生理学的検査(EPS)の結果,陳旧性心筋梗塞と僧帽弁閉鎖不全を伴う薬剤抵抗性多源性VTと診断した.術中VT発生源同定のためのマッピングが不可能だったためICDの適応と確定した.胸骨正中切開により3種類の電極を心筋あるいは心膜内面に縫着し,ジェネレーターを腹壁皮下に留置した.術後3回のVT発作があったがいずれもICDの放電により停止した.症例2は45歳女性.失神を伴う数回のVT発作があり蘇生術を受けた.EPSの結果薬剤抵抗性再発性VTと診断した. VT時急速な血圧低下による失神状態となるため,VTの発生源を同定するためのマッピングは不可能であった.以上からICDの適応とした.手術は症例1と同様に施行し,術後VTの発作は生じていない.
  • 田中 茂夫
    1993 年 25 巻 8 号 p. 952-953
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 久保 奈津子, 森本 紳一郎, 平光 伸也, 山田 健二, 植村 晃久, 松原 由朗, 野村 雅則, 菱田 仁, 水野 康
    1993 年 25 巻 8 号 p. 954-959
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は25歳の男性で,感冒様症状の後に心不全症状が出現し入院した.心電図では,I,aVLのQS波とV4-V6でST上昇ならびにR波の減高が認められた.心エコー図では心嚢液貯留が軽度ながら観察され,左室駆出率は38%と低値を示した.入院直後,好酸球は5%(835/mm3)であったが徐々に増加し,第9病日には17%(1,173/mm3)にまで達した.しかし,自然経過にて好酸球数は減少した.入院当日の右室心内膜心筋生検ですでに,心内膜と心筋間質に好酸球とリンパ球の著しい浸潤と好酸球の脱顆粒が認められ,同部位では心筋細胞の融解~消失化が観察され,好酸球性心筋炎と診断された.第19病日よりプレドニゾロン30mg/日の漸減投与を開始した.2回目の第29病日の心生検では,好酸球の浸潤はみられなかったものの,心筋細胞の変性が一部にみられた.好酸球増多をきたす基礎疾患はなく,皮膚描記試験が陽性で,アレルギーの素因が考えられた.ステロイド剤投与前より諸症状が軽快している点より,好酸球性心筋炎が認知されずに自然軽快することもありうると思われた.軽微な好酸球増多でも,好酸球性心筋炎が発症する症例が存在することが明らかとなり,原因不明の心不全では本症の可能性を常に念頭におく必要がある.
  • 伊藤 正典, 高橋 秀房, 安原 修一郎, 山村 真由美, 多々見 良三, 石瀬 昌三
    1993 年 25 巻 8 号 p. 960-964
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心臓は膠原病により侵される主要臓器の1つであり,心病変の存在は予後に大きな影響を与える.今回,我々は心筋炎発症を契機として診断されたMCTDの1例を経験したので報告する.症例は33歳,女性.昭和61年9月23日,発熱,背部痛を主訴に当科入院.入院時,CPK,GOT,LDHの上昇を認め,第4病日,心臓カテーテル検査を実施.冠動脈造影では異常所見を見なかったが,左室造影では,壁運動はdiffuse hypokinesisを示し,駆出率は36%と著明に低下していた.同時に行った心内膜下心筋生検では,心筋線維の変性および,心筋線維間への単核細胞浸潤が見られ,心筋炎と診断された.一方,入院時検査成績にて,抗核抗体および,抗RNP抗体が陽性であり,また,皮膚所見として,Raynaud現象,手指の皮膚硬化を認め,MCTDが基礎にあることが判明した.ステロイドパルス療法およびそれに引き続きステロイド維持療法を行い,臨床症状は速やかに改善し,第49病日に実施した2度目の左室造影では,駆出率は87%と正常に回復し,心筋生検でも,心筋炎の所見は消失していた.
    MCTDにおける心病変は,心膜炎の頻度が最も高く,心筋炎合併の報告は数例のみである.しかし,SLEでも抗RNP抗体陽性例で,心筋炎合併が多いことが報告されており,MCTDにおける心筋炎合併は,疾患特異性を持つ可能性もあり,さらに検討を重ねる必要があると思われる.
  • 宝田 正志, 康井 制洋, 岩堀 晃, 降旗 邦生, 赤城 邦彦, 佐々木 佳郎, 田中 祐吉, 西川 俊郎, 西村 和修, 薗 潤, 鏑木 ...
    1993 年 25 巻 8 号 p. 965-970
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は11歳4カ月の時,拡張型心筋症(DCM)にて当科に入院し,その後渡英して11歳8カ月の時,同所性心臓移植手術を受けた.術後経過は良好にて拒絶反応もこれまで軽度のものが数回みられたのみである.
    現在心移植後2年9カ月を経過してQOLも良好であり,元気に復学し部活動も行っている.今回はこの症例の術後の心電図経過,運動能を中心に報告した.
    レシピエントの経時的安静時心電図は,移植後に2個のP波の出現と一方の消失,不完全右脚ブロック像の出現,II,aVF,V6におけるT波の平低化等がみられた.しかしこれらの所見と拒絶反応との関係は特にないと思われた.トレッドミル(ブルース法)による運動負荷にては,chronotropic incompetenceがみられ,運動耐容時間も健常児に比し低値であった.
    今後心移植後の運動能の改善とQOLを向上させるため積極的な運動リハビリテーションに対する至適プログラム作成の必要性があると考えられた.
  • 原田 信行, 山崎 英文, 賀来 俊, 上田 慶二, 伊藤 雄二
    1993 年 25 巻 8 号 p. 971-974
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    我々は,これまで本邦にて報告のない高齢者のMRSA感染性心内膜炎の2症例を経験したので報告する.
    [症例1]85歳,女性.聴神経腫瘍で寝たきり状態であったが,MRSAが皮膚化膿巣および静脈血より分離され,敗血症,播種性血管内凝固症候群(DIC)の臨床診断のもと抗生物質等による治療を行うが効なく死亡.剖検では大動脈弁,僧帽弁の疣贅,周辺への炎症の波及,バルサルバ洞破裂,心タンポナーデの所見を示した.
    [症例2]89歳,女性.悪性リンパ腫にて化学療法中の患者であったが尿,喀痰および動脈血よりMRSAが検出され,敗血症,DICの診断で抗生剤等の投与を行うも多臓器不全のため死亡.剖検所見では僧帽弁,三尖弁の疣贅,周辺心筋への炎症の波及,心外膜側の出血が認められた.
  • 長田 鉄也, 橋本 雅史, 内野 敬, 工藤 龍彦, 内山 隆史, 石井 俊彦, 木口 英子, 増田 茂, 石井 壽晴, 伊吹山 千晴, 古 ...
    1993 年 25 巻 8 号 p. 975-980
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    感染性心内膜炎の経過中に,巨大な仮性左室瘤を合併した僧帽弁閉鎖不全症例を経験した.僧帽弁後尖側弁輪直下に横径約2cmの瘤との交通部を認め,同部より生じた仮性左室瘤が左房とも交通したものと考えられた.左房左室内腔より僧帽弁人工弁置換術および瘤入口部閉鎖を行い,著明な心機能の改善を得た.手術時には既に心内膜炎の所見は見られず,仮性左室瘤発生の要因として僧帽弁輪石灰化による影響も考えられた.感染性心内膜炎に起因する仮性左室瘤はまれであり,僧帽弁輪下より生じた報告例はごく少数である.早期の診断と手術治療が必要と考える.
  • 高橋 将文, 高橋 和彦, 松沢 浩, 武田 久尚, 山田 隆之, 伊藤 久雄, 田所 正路
    1993 年 25 巻 8 号 p. 981-985
    発行日: 1993/08/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.主訴は左胸背部痛,胸部X線写真上左第1号の拡大,左肺野のみの軽度肺水腫様所見を示し,動脈血ガスはPaO2 54.8mmHg,PaCO2 34.7mmHgと低酸素血症を示していた.胸部CT検査にて,解離性大動脈瘤と診断したが,酸素投与にもかかわらず低酸素血症がさらに増悪したため肺梗塞を疑い,右心カテーテル検査および肺動脈造影を行った.肺動脈圧は,51/12(25)mmHgと中等度の肺高血圧を示し,右主肺動脈は高度の狭窄が認められた.大動脈造影では上行大動脈遠位部からのエントリーおよび逆行性解離が認められた.以上により,解離した上行大動脈が右肺動脈を圧排し,肺動脈血流の減少により肺梗塞様症状をきたしたものと診断し,緊急に上行~弓部大動脈人工血管置換術を施行した.
    急性解離性大動脈瘤の合併症において,肺動脈の狭窄および閉塞は極めてまれな合併症である.また,もし肺梗塞と誤診され,抗血栓抗凝固療法が行われた場合には致命的となりうることがあるため,まれではあるが非常に重要な合併症と考えられる.
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