冠疾患に対する中小都市での問題点を把握するために,35-60歳の男性における冠危険因子とその影響要因を,新潟市在住勤労者359名と農村住民300名で比較した.都市勤労者では血清総コレステロール値が高く,農村住民で高血圧者が多かった.栄養摂取状況の比較から,農村住民で食塩摂取量が多く,高血圧者が多いことと一致した.しかし摂取総エネルギー,脂質摂取量と,コレステロール含有量が多い食品の摂取頻度は,バター・チーズなどの乳製品を除き,都市勤労者で少なく,血清総コレステロール値の差を摂取食品の差によってのみ説明するのは困難であった.
一方,都市勤労者39名,農村住民13名でトレッドミル運動負荷試験結果を比較したところ,都市勤労者で有意に運動耐容能が低く,都市勤労者の日常身体活動量が農村住民より少ないと推察された.
ついで,都市勤労者276名について1日の運動量をカロリーカウンターで測定し,冠危険因子との関係を調査した.その結果,都市勤労者における体重当たりの運動量は,BMI,血清総コレステロール値と有意な負相関を,血清HDLコレステロール値と有意な正相関を示した.すなわち,中小都市における勤労者では,身体活動量が少ないことが,肥満,血清脂質といった冠危険因子に悪影響を与えていることが明らかとなった.
以上の結果より中小都市において虚血性心疾患を予防するためには,運動不足を防ぐことによって冠危険因子の悪化を抑制することが重要であることを,広く啓蒙することが有効と考えられた.
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