心臓
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25 巻, 9 号
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  • 内藤 丈詞, 山本 一博, 三嶋 正芳, 南都 伸介, 平山 篤志, 朝田 真司, 松村 泰志, 中真 砂士, 増山 理, 児玉 和久
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1003-1008
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    運動負荷T1-201心筋シンチグラム上,梗塞と考えられる領域の再分布が,同領域における残存心筋の虚血を反映するか否かにつき検討した.陳旧性前壁中隔梗塞症100例において運動負荷T1-201心筋シンチグラムを施行し,SPECT像の短軸面断層像から求めたmaximum circumferential profilecurveを定量解析した.initial像における欠損領域の平均% T1-uptakeと,delayed像における同領域の平均%T1-uptakeの差をΔ%T1-uptakeとし,再分布の指標とした.虚血の指標として心房ペーシング負荷時における局所乳酸摂取率(ΔLER)を用いた.虚血が存在すると考えられる(ΔLER<0)例と存在しないと考えられる(ΔLER>0)例のΔ%T1-uptakeは,それぞれ12±7%,3±5%であった.ΔLER≧0群60例中,最も高いΔ%T1-uptakeは10%であった.以上のことから,陳旧性心筋梗塞例においてΔ% T1-uptakeが10%を越える再分布は,残存心筋の虚血を強く示唆すると考えられた.
  • 神原 啓文
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1009-1011
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 瀬川 郁夫, 田代 敦, 平盛 勝彦, 佐藤 衛
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1013-1019
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1982年6月から1992年3月まで,当科で施行した右心室心内膜心筋生検445例中,慢性心房細動を合併した症例は62例であった.基礎疾患は拡張型心筋症25例,肥大型心筋症7例,高血圧性心疾患6例,甲状腺疾患4例,アルコール性心疾患4例,僧帽弁膜症3例,慢性心筋炎2例,筋緊張性ジストロフィー1例,SLE1例,陳旧性心筋梗塞1例,心内膜心筋線維症1例および原因不明の心房細動7例であった.原因不明の心房細動例は男6例,女1例,平均年齢49歳,確認された心房細動の持続期間は6カ月から4年,平均1.9年,心エコー図上の左室駆出率は平均60%,心係数は2.9l/min/m2であった.これらの症例の右室心筋に,間質の線維化(4/7),心筋細胞の肥大(4/7),配列異常(5/7),変性(2/7)および心内膜の線維性肥厚(2/7)を認めた.1例には異常を認めなかった.原因不明の慢性心房細動症例の中には,心室心筋の病変を有するものがある一方,心房細動の指摘から数年後に心不全で発症した拡張型心筋症が25例中7例あった.原因不明の慢性心房細動患者においても心筋症を念頭においた注意深い管理が必要と思われた.
  • 中西 敏雄, 松本 康俊, 小田川 康久, 本村 栄章, 瀬口 正史, 里見 元義, 中沢 誠, 門間 和夫
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1020-1028
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    先天性大動脈弁狭窄症に対する経皮的バルーン拡張術の有効性を検討した.1988年から1992年までに,乳児期重症大動脈弁狭窄症4例(0-60日),大動脈弁狭窄9例(10カ月-10歳)に対しバルーン拡張術を行った.Single balloon法が4例,Double balloon法が9例,最近の症例はできるだけDoubleballoon法を用いるよう努力した.バルーン径/弁輪径比は88±7%であった.大動脈弁狭窄では術前の左室-大動脈圧差82±26mmHgから術後37±28mmHgに減少した.70,87mmHgの圧差を残した2例を除き7例で手術を回避,ないし先送りし得た.乳児期重症大動脈弁狭窄症の生存は1例のみで,残り3例は心内膜線維弾性症や未熟児に伴う合併症で死亡した.以上より乳児期重症大動脈弁狭窄症の治療には検討すべき点が残されているが,小児期の大動脈弁狭窄に対しては経皮的バルーン拡張術が治療の第1選択となりうるといえる.
  • PTCA施行時の胸痛および心電図所見についての検討
    原 政英, 前田 利裕, 秋満 忠郁, 米持 英俊, 丹羽 裕子, 下山 信夫, 幸松 晃正, 犀川 哲典, 坂田 利家
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1029-1033
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞患者において無症候性心筋虚血の意義を検討するため,PTCAを梗塞責任冠動脈の残存狭窄病変に対し施行した群と狭心症に施行した群につき虚血時の症状,体表面心電図および冠動脈内心電図(ic-ECG)の変化を比較検討した.対象は左前下行枝にPTCAを施行した初回梗塞患者22例(62±8歳,男19例,女3例)と狭心症28例(64±9歳,男21例,女7例).梗塞患者はいずれも左前下行枝が責任冠動脈と考えられ,その支配心筋は心筋シンチグラム,左室造影および運動負荷でviabilityが確認された.虚血の指標にはv2,ic-ECGのST上昇度を用いた.胸痛を0=無痛,1=わずかに感ずる胸痛,2=強いが耐えられる痛み,3=強く耐えられない痛みの4段階(pain score)に分類した.梗塞例と狭心症例のv2,ic-ECGのST上昇度は有意差はなかったが,前者は後者に比し有意に無症状例が多く(55%vs18%,p=0.007)胸痛も軽かった(pain score:梗塞例vs狭心症例0.6±0.7vs1.6±1.1,p<0.001).梗塞患者は虚血時の症状に乏しく臨床上注意を要する.
  • 病型,ペーシングモード,年齢による相違
    末次 哲朗, 浜崎 秀一, 大徳 和久, 川瀧 正光, 柴田 邦彦, 野元 域弘, 中尾 正一郎, 田中 弘允
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1034-1040
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    洞機能不全症候群(SSS)に対して,ペースメーカー植え込み術を施行した101例を対象として,塞栓症ならびに心房細動の発生頻度を検討した.塞栓症は7名(6.9%)に発生したが,7名の全てがRubenstein分類III型に属し,6名が70歳以上の高齢者であった.I,II型における発作性心房細動の発現はペースメーカー(PM)植え込み前後において全く認められなかった.III型における心房細動のPM植え込み後の発現頻度改善率は,70歳以下群にて有意に高く,悪化率は,VVI群と70歳以上群において有意に高かった.また,actual survival curveによるIII型の慢性心房細動ならびに塞栓症出現頻度の検討では,いずれも生理的PM群に比しVVI群にて高率であった.これらの事実より,SSSIII型の心房細動の発現において加齢,VVIは促進因子であることが示唆された.SSSにおける塞栓症発生のhigh risk群と考えられるIII型の高齢者に対しては,生理的ペーシングを行うべきであると考えられた.
  • 夛田 浩, 越野 雄祐, 加藤 浩司, 西尾 宏之, 三澤 利博, 林 多喜王, 久津見 恭典, 中井 継彦, 宮保 進, 島田 佳文, 金 ...
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1041-1046
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の男性.幼少時より呼吸困難,チアノーゼがあり,また検診にて心雑音を指摘されるも放置していた.入院の約2カ月前に下腿の発赤,腫脹等の深部静脈血栓症様の症状があった.呼吸困難が増悪したため当科に入院となった.
    入院時の血液検査にて,赤血球855万/mm3,Hb23.3g/dlと著明な赤血球増多症と認めた.胸部X線写真では右第2弓と左第4弓の突出,左第2弓の軽度の陥凹を認めた.心電図は,洞性調律で右室肥大の所見を呈していた.心臓超音波検査にて,大動脈騎乗,大きなII型の心室中隔欠損を認め,右室造影検査では,大動脈が描出され,また右室漏斗部の狭窄が確認された.冠動脈に有意狭窄はなかった.血液サンプリングにより算出した右-左短絡率は46.8%であり,また右室圧と左室圧は同等であった.第14病日に,突然,前胸部の激痛が出現し,ショック状態となった.心電図はaccelerated idioventricular rhythmとなっていた.緊急冠動脈造影にて左冠動脈主幹部の完全閉塞を認めた.PTCR・大動脈バルーンパンピングを含めて各種蘇生術を行うも死亡した.
    本症例にみられた左冠動脈主幹部閉塞による急性心筋梗塞はその急激な発症様式,突然の心電図変化より,奇異性塞栓による可能性が最も高いと考えられた.本例のように左冠動脈起始部の完全閉塞をきたした成人Fallot四徴症の報告例は今までになく,極めてまれな症例と考えられた.
  • 高 英成, 北村 信夫, 春藤 啓介, 川島 雅之, 館林 孝幸, 木村 俊一, 三木 太一, 山口 明満, 首藤 達哉, 細見 泰生, 沢 ...
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1047-1054
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.狭心症精査のため,国立舞鶴病院に入院中,切迫梗塞を発症し,緊急ACバイパス術を目的として救急車での搬送を試みたが,血圧の低下を伴う心室頻拍が持続するようになった.このため再度国立舞鶴病院に引き返し,IABPを挿入,さらに右冠動脈にパーフュージョンカテーテルを挿入し,血行動態の安定と心室頻拍の消失を見た後,当院へ搬送した.発症から10時間後,右冠動脈と左回旋枝に大伏在静脈を使用してACバイパス術を行った.経過は良好であり,術後グラフトは開存し,心電図でII,III,aVFにQ波を認めるものの下壁の壁運動は良好である.緊急ACバイパス術を必要とする重症冠動脈疾患の搬送に際し,パーフュージョンカテーテルの挿入が可能であるなら,患部冠動脈末梢の心筋保護が確実であり,搬送中の安全が保たれ,手術成績の向上が期待できる.
  • 藪中 宗之, 堀本 和志, 五十嵐 慶一, 児玉 奈津子, 会沢 佳昭, 竹中 孝, 関口 守衛, 前澤 秀彦
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1052-1057
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は76歳男性.1986年に心室頻拍にて当科に入院.冠動脈造影像は正常で,左室造影では左室駆出率が61%で,前側壁と心尖部に軽度の収縮低下をみた.退院後は抗不整脈薬投与下にてLown IV aの心室性不整脈を呈した.1991年1月心室頻拍が再び頻発したため当科に再入院した.心筋逸脱酵素の上昇や他に心筋炎を疑わせる所見はなく,冠動脈造影は正常であった.左室造影ではび漫性に壁運動低下がみられ,左室駆出率は34%と著しく低下していた.両心室の心内膜心筋生検像では左室に強い間質線維化と心筋変性,および軽度の小円形細胞浸潤を認め,心筋炎後の組織変化と推察した.心筋炎後に心室壁運動低下をきたす場合がある事は知られているが,本症例のように5年の経過で拡張型心筋症様病態に至る過程を観察し得た症例は数少なく,心筋炎から拡張型心筋症への移行を考える上でも興味深い症例と思われた.
  • 関口 洋平, 池田 淳, 杉 正文, 滝田 有, 二宮 本報, 伊藤 祐子, 滝島 任, 白土 邦男, 洞口 正之
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1058-1063
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    18年の経過の間に非閉塞性肥大型心筋症(以下HNOCM)から心室中部閉塞性肥大型心筋症(以下MVO)へ進展を観察しえた1例を経験した.症例は,1973年,心陰影拡大と心電図異常を指摘され心臓カテーテル検査を施行し,HNOCMと診断された.その後自覚症状はなかったが,1990年,心電図所見の変化を指摘され,再度心臓カテーテル検査を施行し,心室瘤を合併したMVOと診断された.MVOは肥大型心筋症(以下HCM)の1亜型であり,左心室の砂時計状の形態と心室内圧較差をその特徴とする.心室瘤を合併したMVOは,心室性不整脈,血栓症などの発症の報告もあり,今後も注意深く観察することが必要であり,また,HNOCMからMVOへ進展が観察された例は過去には報告されてなく,HCM,MVOの自然経過を理解するうえで重要な症例と思われた.
  • 北 俊之, 井内 和幸, 中林 智之, 若栗 宣人, 石川 忠夫, 〓野 謙介, 久保 正
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1064-1068
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,56歳男性,主訴は発熱.既往症に第12胸椎圧迫骨折があり,55歳時に,洞不全症候群の診断にて近医でペースメーカ植え込みを施行.56歳時,発熱のため当科紹介され入院.入院時の血液検査では炎症反応を認めるも,血液培養では菌は同定されなかった.胸部X線では,肺炎像が認められ,各種の抗生剤で効果なく,心エコーで三尖弁中隔尖にvegetationがあり,細菌性心内膜炎と診断しペニシリンGにて発熱と肺炎は軽快したが,途中腰痛出現し,胸腰椎単純X線,CT検査で,第9,10胸椎椎体骨髄炎と診断し手術を施行した.難治性の骨髄炎と肺炎を合併したペースメーカ植え込み後の細菌性心内膜炎のまれな1例を経験したので報告した.
  • 大谷 藤郎
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1070
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 土居 弘幸
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1071-1074
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 高野 健人
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1075-1083
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    近年,ヘルス・プロモーションの具体的展開として,また都市開発のテーマとして,「健康都市」という概念が定着しつつある.
    我が国において,健康都市プロジェクトを発展させるためには,都市全体の構造と機能を見通しながら,かつ住民の健康を中心においた評価手法の開発が必要である.
    そこで,健康,物的環境,社会的環境に関する多側面からなる情報を体系的に収集し,妥当性・信頼性の高い指標を作成し,地図上にマッピングして評価する手法を開発した.
    また,諸指標の構造を,因子分析,クラスター分析,正準相関分析などにより解析した結果をもとに総合的に検討し,レーダー・チャート方式の表現方法を試みた.
    さらに,今後の健康都市づくりムーブメントは個々の地域に根付いた効果的な活動の展開が必要とされる.そのため,小地域単位の健康都市評価手法について今後の可能性を検討した.
  • 小西 正光, 寺尾 敦史, 馬場 俊六
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1084-1093
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    我が国においては,近年,生活環境の変化は著しく,その変化は大都市を中心に,従来の日本型ライフスタイルから近代型ライフスタイルへと大きく移行しつつある.そのことが都市住民の健康にどのような影響を与えているかを正確に把握し,それに対応した予防対策を考えていかねばならない.このために,ここでは,厚生省が1990年に実施した循環器疾患基礎調査の成績および我々の疫学調査成績を基に,循環器疾患の三大リスクファクターとされている血圧・血清総コレステロール・喫煙について,その推移を観察した.その結果,全国的には血圧値は低下傾向にあり,高血圧者の頻度は減少傾向にあるにもかかわらず,都市部では拡張期血圧値の高い高血圧者の割合が増加していること,また,血清総コレステロール値の上昇傾向が強いこと,喫煙はやや低下傾向にあるものの,依然として高い喫煙率であること,などが明らかになった.このようなリスクファクターの推移と,現在までの循環器疾患の疫学調査の成績を基に,都市部における循環器疾患の動向について考察し,そのことを踏まえて,大都市における循環器疾患予防のための環境整備について提言した.特に,個人のライフスタイルの問題にのみ目をむけるのではなく,健康なライフスタイルをサポートする都市環境全般に対する対策が重要であることを強調した.
  • 新潟市内勤労者と農村住民の間における冠危険因子への影響要因の比較
    豊嶋 英明, 田辺 直仁, 林 千治, 宮西 邦夫, 和泉 徹, 柴田 昭, 尾崎 信紘, 山本 朋彦, 藤原 満喜子, 大宮 國廣
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1094-1098
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠疾患に対する中小都市での問題点を把握するために,35-60歳の男性における冠危険因子とその影響要因を,新潟市在住勤労者359名と農村住民300名で比較した.都市勤労者では血清総コレステロール値が高く,農村住民で高血圧者が多かった.栄養摂取状況の比較から,農村住民で食塩摂取量が多く,高血圧者が多いことと一致した.しかし摂取総エネルギー,脂質摂取量と,コレステロール含有量が多い食品の摂取頻度は,バター・チーズなどの乳製品を除き,都市勤労者で少なく,血清総コレステロール値の差を摂取食品の差によってのみ説明するのは困難であった.
    一方,都市勤労者39名,農村住民13名でトレッドミル運動負荷試験結果を比較したところ,都市勤労者で有意に運動耐容能が低く,都市勤労者の日常身体活動量が農村住民より少ないと推察された.
    ついで,都市勤労者276名について1日の運動量をカロリーカウンターで測定し,冠危険因子との関係を調査した.その結果,都市勤労者における体重当たりの運動量は,BMI,血清総コレステロール値と有意な負相関を,血清HDLコレステロール値と有意な正相関を示した.すなわち,中小都市における勤労者では,身体活動量が少ないことが,肥満,血清脂質といった冠危険因子に悪影響を与えていることが明らかとなった.
    以上の結果より中小都市において虚血性心疾患を予防するためには,運動不足を防ぐことによって冠危険因子の悪化を抑制することが重要であることを,広く啓蒙することが有効と考えられた.
  • 村山 正博
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1099-1112
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    健康増進の立場から都市環境整備を考える際,健康とは「通常の日常生活上の苦痛がなく,医学検査上の異常値があってもそれが進行して生命的予後やQOLを障害することがない状態」と定義し,それを阻害する因子を取り除き,また改善することがこのテーマの意義である.本邦における高齢化社会に向けて,健康の意義を疾患の有無ではなく,QOLの立場から捉えることを「健康都市宣言」に取り入れることを提言した.その意味では,健康都市には日常生活の最も基本的な動作である「歩く」,「動く」ための環境整備を行うことがその第一歩である.
    従来,厚生省はその指導者として「健康運動指導士」,労働省はトータルヘルスプロモーション(THP)における「ヘルスケアトレーナー」,「ヘルスケアリーダー」,日本体育協会では「スポーツプログラマー」の養成を行っており,ようやくそれが軌道に乗ってきた.また,その場として厚生省は「健康増進施設」に関する構想により,具体的機能を呈示しているが,現実にそれが満足されている施設の数は不足しており,「どこがその機能をもって指導を行うか」に関しては将来展望が明確に出てこない.1つの案は現在の保健所機能を変革させ,このような機能のセンターにすることと,「リハビリテーションセンター」や「スポーツ医学センター」構想を健康都市計画の中に取り入れることである.益々,増加が予想される心筋梗塞慢性期患者など従来の医療システムでは十分なケアができない社会復帰後の慢性期疾患を有する人にもこれらの施設は利用でき,今後の本邦の医療システムの変革につながるものと考えている.
  • 澤井 廣量
    1993 年 25 巻 9 号 p. 1113-1121
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    都市の巨大化,都市の過密化と共に,医療面においても,非常に良好な地域と,劣悪な地域との格差が広がっている.そして,東京,大阪,名古屋など大都会での寿命の伸びは明らかに鈍化している.大都市での光の当たらない地域,これらの地域では,経済的にも環境においてもまた医療面においても,置いていかれているか切り捨てられようとしている.
    大都市東京も健康な都市へと再建の道を模索しなければならない.特に東京にあっては,いわゆる下町では,住宅の密集,道路網の不備,経済の悪化,医療,保健,福祉の遅れなどが指摘される.したがって東京ではこのような地域での環境整備が重要である.大都市にあっては,医療面では,大学病院,専門病院において医療を受けられる人は,ほんのわずかである.
    大都市においては,等しく豊んでいるわけではない.いろいろの面で等しく受益できるわけではない.医療の谷間にある所,人に対し,きめ細かく施策をたて補完する必要がある.医療の恩恵を等しく十分に受けられるような施策が必要である.
    人の健康を維持あるいは増進させるような都市,すなわち健康都市に脱皮させる,あるいは健康都市を目指すような施策こそが最重要課題といえよう.
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