心臓
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25 巻, Supplement5 号
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  • 安部 良治, 山下 一弘, 出川 敏行, 円城寺 由久, 池田 隆徳, 杉 薫, 矢吹 壮, 山口 徹
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 3-8
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    高速フーリエ変換(FFT)を用いた周波数分析により発作性心房細動(Paf)予知の可能性を検討した.Paf群33例と健常40例(N群)に対し,X・Y・Z誘導心電図を200心拍加算平均後,P波終末より60,70,80ms前方からの100ms区間(P60,P70,P80)でFFTを行い,各々の(1)AR1:20-60Hz面積/0-20Hz面積×100,(2)AR2:60-100Hz面積/0-60Hz面積×100,(3)MR20-60:20-60Hz電位/Peak電位×100を算出した.その結果,P80区間でのみ両群間に有意差を認め,Y誘導ではPaf群はN群と比較して,AR2は有意差を認めなかったが,AR1が有意に大であり,それは30・40Hz付近の電位増加によると考えられた.Z誘導ではPaf群はN群と比較し,AR2は有意差を認めなかったが,AR1が有意に小であり,それは30-50Hz付近の電位減少によると考えられた.P波終末より80ms前方からの100ms区間での周波数領域分析にてPaf検出が可能と考えられ,その予知に対する有用性が示唆された.
  • 周波数成分と発作性心房細動との関係
    下野 真由美, 藤木 明, 谷 昌尚, 水牧 功一, 井上 博
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 9-14
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    発作性心房細動(Paf)症例では,洞調律時の加算平均心電図の特徴として心房波遅延電位の存在とfiltered P duration(FPD)の延長が指摘されている.しかしPafの有無により比較した加算平均心電図心房波指標はFPDのみに有意差を認め,さらに左房負荷を有する例はPafの既往のない例でもFPDの延長を認めた.そこで今回周波数解析を用いPafの有無と周波数成分の関係を調べた.対象はPaf(+)群20例,Paf(-)群25例で,各々200心拍のP波同期加算平均心電図を記録し,P波をX・Y・Zの各誘導につきBlackman-Harris window(4-Term)を用いフーリエ変換した.0-20Hzの面積を20-50Hzの面積で除したarea ratio(AR50),0-40Hzの面積を40-100Hzの面積で除したarea ratio(AR100),20,30,40,50,100Hzの各々のmagnitudeを最大magnitudeで除したmagnitude ratio(MR20,30,40,50,100)と,従来の心房加算平均心電図のFPD,P波終末20msecのRMS電位(LP20)を二群間で比較検討した.Z誘導のAR100のみがPaf(+)群で有意に高値を示し,Z誘導以外の他の誘導では両群で有意差は認められなかった.以上,周波数解析による周波数成分の検討は,左房負荷により従来の心房加算平均心電図のFPD等の諸指標でPafの判別が困難な際にも,有用な指標となる可能性が示唆された.
  • 山田 貴久, 福並 正剛, 大森 正晴, 岩倉 克臣, 熊谷 和明, 金銅 伸彦, 辻村 英一郎, 阿部 泰士, 西川 永洋, 伯耆 徳武
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 15-19
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    体表面加算平均心電図(SAE)が自律神経機能検査として有用であるか否かを検討した.対象は自律神経障害のある糖尿病(DM)患者11例(DM(+)群),それのないDM(DM(-)群)11例と両者に年齢をほぼマッチさせた健常者13例(C群)である.SAEはR波およびP波同期法にて記録し(帯域;40-300Hz,加算回数;200心拍),フィルター化QRS波の電位(QRSV)を計測した.R波同期法のQRSVに対するP波同期法のQRSVの,PR間隔変動に基づく減衰度(%ΔV)をSAEにおける自律神経障害の指標として求めた.%ΔVはDM(-)群やC群に比しDM(+)群で有意に低値を示したが,DM(-)群とC群間に有意差はなかった.R波同期法とP波同期法のSAEのQRSVを比較することにより自律神経障害を検出しうる可能性が示唆された.
  • 久保 雅宏, 松岡 優, 多田羅 勝義, 後口 ユリ, 早渕 康信, 新居 正基, 大村 博美, 黒田 泰弘
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 20-26
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    WPW症候群における加算平均心電図の特徴を,発作性上室頻拍の有無および副伝導路付着部位との関連性について検討した.WPW症候群23例(発作の既往のある8例と既往のない15例)および健康小児21例を対象とし,40-300Hzの帯域フィルターを用いて加算平均心電図を記録し,ベクトルマグニチュード法で表示した.WPW症候群では対照者に比べて,加算平均心電図のQRS幅およびQRS初期における微小電位の持続時間は延長し,QRS初期20msecおよび40msecの電位の実効値が低かった.
    WPW症候群のうち,頻拍発作の既往のある患者は既往のない患者に比べて,QRS幅およびQRS初期における微小電位の持続時間は有意に延長していた(145±9msecvs.131±18msec,p<0.05および49±7vs.37±9msec,p<0.01).またQRS初期20msecおよび40msecにおける電位の実効値は,それぞれ有意に低値を示した(7±4μVvs.14±5μV, p<0.01および12±4μVvs.23±8μV,p<0.01).一方,副伝導路の部位による加算平均心電図所見の違いは明らかでなかった.
    加算平均心電図所見は上室性頻拍発作のリスクを有するWPW症候群患者の検出に有用と考えられた.
  • 諸江 一男, 案浦 美雪, 松尾 邦浩, 熊谷 浩一郎, 荒川 規矩男, 広木 忠行
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 27-31
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:Pilsicainide(PLS)の心室性不整脈に対する効果の判定に加算平均心電図(SAECG)が有効か否かを検討した.方法:一日5,000個以上の心室性期外収縮を有する18例にPLS単回投与後,2週連続投与を行った.投与前,単回投与2時間後,2週連続投与後にSAECGによるfiltered QRS幅(fQRS),QRS終末部40msの平均電位(RMS40)を検討した.結果:9例でPLSが有効(A群)7例で無効(B群)2例で増悪を認めた(C群).PLS単回投与前と2 時間後のRMS 40の差ΔRMS 40はA 群が有意に大であった(A群:46.8±33.4ms;B群:8.9±9.5msec;p=0.04)が,しかし,投与前と2時間後のfQRSの差ΔfQRSはなかった.C群ではΔfQRSは著明に延長していた.総括:PLSの単回投与後のSAECGによる検討は抗不整脈の効果のみならず催不整脈の早期発見にも極めて有用であった.
  • 手島 保, 桜田 春水, 日吉 康長, 岡崎 英隆, 野村 周三, 柳瀬 治, 徳安 良紀, 本宮 武司, 杉浦 昌也, 平岡 昌和
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 32-36
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    加算平均心電図の異常値の基準は経験的に決定されたものであり,健常人の加算平均心電図の検討は十分ではない.今回我々は健常な成人100例の加算平均心電図を検討し,以下の結果を得た.加算平均心電図の指標のうちf-QRS値とLAS40値については対象例の分布は正規分布を示した.RAS40値については左に偏った分布をとり正規分布を示さなかったが,logRMS40は正規分布を示した.従来の異常値の基準によればLP陽性と判定される例が健常人の11%に認められた.しかし持続性心室頻拍が誘発される確率が極めて高く,我々がhigh riskと考えているRMS40値が10μV以下の例は健常人には皆無であった.健常人の加算平均心電図の各指標の基準値を平均値±2×標準偏差で求めると,f-QRSは120msec,LAS40は43msec,RMS40はlogRMS40より逆算し14μVであった.文献的に考察すればLAS40とRMS40には機種間における差は少ないと考えられたが,f-QRSは機種間で多少の差がみられた.従来の基準ではLP陽性と判定された場合でも,病的であるかどうかの判定には基礎心疾患の有無とRMS40の値を考慮すべきである.
  • Time domain解析法とfrequency domain解析法との比較
    合屋 雅彦, 野上 昭彦, 家坂 義人, 曽原 寛, 矢島 隆司, 杉本 圭市, 磯村 孝二, 清水 善次, 高橋 淳, 全 栄和, 青沼 ...
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 37-43
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    陳旧性心筋梗塞患者における体表面加算平均心電図のtime domain解析指標およびfre-quency domain解析指標の再現性について検討した.対象:発症より1カ月以上経過した陳旧性心筋梗塞患者30例.方法:体表加算平均心電図をART社製1200EPXを用いて3回連続記録した.結果:time domain解析各指標f-QRS,LAS,RMS)の再現性は高く(すべてのr>0.98,p>0.0001),frequency domain解析法ではarea ratio(AR)で中等度の再現性を認めたものの, spectral temporal mapping法のfactor of normality(NF)の再現性は極めて低値であった.X,Y,Zおよびcomposite誘導の最小値(NFmin)について検討したところ,数値再現性はやや向上した.診断基準による診断結果の再現性を検討すると,time domain解析指標は90%以上の結果一致率を認め,ARでは83%であった.NFの結果一致率は70-80%で,NFminでも63%と改善は認められなかった.総括:陳旧性心筋梗塞患者における体表加算平均心電図諸指標の再現性は,time domain解析各指標において高値で,frequencydomain解析指標ではarea ratioにてのみ高く,spectral temporal mapping法のfactor of normalityでは低値であった.
  • Time domain方式とfrequency domain方式との比較
    寺脇 一江, 長澤 進, 高橋 敬子, 佐々木 亮太郎, 杉澤 一彦, 安冨 栄生, 田畑 文平, 岩崎 忠昭
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 44-47
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:陳旧性心筋梗塞(OMI)例での心室頻拍(VT)の予知について加算平均心電図(SAE)により,timedomain方式とfrequency domain方式を用い梗塞部位別に比較検討した.方法:対象はOMI例305例でSAEよりQRS vector magnitudeを求めRMS40を測定し,RMS40<15μV未満を心室遅延電位(LP)陽性とし,またQRS部につき高速フーリエ変換を行い,Area Ratio(AR)を算出,AR<5未満をFFT陽性とした.結果:OMI例では前壁,下壁梗塞ともに,両方式においてVTに対するnegativepredictive valueは高値であったが,sensitivity等はtime domain方式の方が優れていた.またOMI例では両方式を併用すると,両梗塞部位においてVTに対するspecificity, positive predictivevalueが改善した.総括:OMI例でのVTの予知について,各方式単独では前壁,下壁梗塞ともに,time domain方式がより優れているが,両方式の併用により,両梗塞部位にてVTの予知の信頼性の改善を得た.
  • Michael E. Cain
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 48-61
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 矢久保 修嗣, 小沢 友紀雄, 楊 新春, 笠巻 祐二, 花川 和也, 福井 利章, 渡辺 一郎, 小牧 宏一, 谷川 直, 斎藤 頴, 八 ...
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 62-68
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    我々は実験的に心筋虚血を作成してその際の加算平均心電図(SAE)とspectrotemporal map(STM),spectral turbulence analysis(STA)の変化を検討した.雑種成犬6頭を対象とし,頸動脈よりPTCA用のバルーンカテーテルを挿入し左冠動脈前下行枝を2時間閉塞した後,カテーテルを抜去し血流の再灌流をした.冠動脈閉塞前(Cont)冠動脈閉塞後2時間(0cc),再灌流直後(Rep),再灌流後30分(Rep30)において,SAEは,Del Mar Avionics社製Model459,563を用いてHolter法を利用するSAE(Holter SAE)により検討した.時間軸成分はbandpassfilter40-250Hz,100-250Hz,150-250HzのQRS全体のroot mean square voltage(40RMS,100RMS,150RMS)検討し,それに周波数成分を加えたSTAやSTMを検討した.STAの評価は,隣接時相面間の相関平均(ICM)とその標準偏差(ICSD),spectral entropy(SE)を用いた.RMS40,RMS100はContが,0ccで小さくなり,Rep,Rep30にはその回復がみられた.RMS150,ICM,ICSD,SEでも心筋虚血の変化がみられた.HolterSAEを用いて心筋虚血前,虚血中,その回復時の変化を検討した.SAEやSTAやSTMは心筋の虚血とその回復を捉えることが可能と考えられた.
  • 酒井 龍一, 佐々木 康之, 須山 和弘, 翠川 隆, 古田 精市
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 69-75
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    PTCAはischemic preconditioning(IP)の良いモデルとなる.今回PTCA中の体表12誘導心電図・冠内心電図・体表加算心電図・副血行路の変化を検討しI P への役割を明らかにする. 1 枝病変患者16名を対象として,初回PTCA時に標準12誘導心電図にて変化を認めたIP群8例と,変化を認めない対象群8例とに分け比較検討した.標準12誘導・冠内心電図はPTCA前・inflation中に記録し,変化が最大の誘導でR波高・ST変化を計測した.体表加算心電図は40-250Hz filterにてfilteredQRS・RMS40・RMStotalを,150-250Hz filterにて高周波成分のfiltered QRS・RMSを計測した.IP群で副血行路は初回inflation 時に増強したが,2回目以降は変化がなかった.IP群でR波高・ST高ともに上昇する傾向にあった.体表加算心電図では40-250Hz filterは測定parameterに変化はないが,150-250Hzの高周波成分ではRMSが両群とも初回より減少した。副血行路がIP形成の直接的機序とは考えられなかった.PTCA中高周波成分のRMSは減少した.
  • 運動負荷法と心房ペーシング法の比較
    藤森 ひろみ, 加藤 貴雄, 金 応文, 亀井 真一郎, 黒木 伸一, 早川 弘一
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 76-81
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:心拍数変動に対する心室性不整脈の反応につき,運動負荷試験中の加算平均心電図を調べ,心房ペーシング中の変化と対比して不整脈発生機序との関係を検討した.方法:心室頻拍(VT)11例(特発性4例,拡張型心筋症4例,陳旧性心筋梗塞3例),心室期外収縮(VPC)10例を対象とした.運動負荷試験中の心拍数90,110,130,150/分の際の洞収縮QRS波形を50心拍加算,filtered QRS duration(fQRS)とQRS 終末部 40 msec の平均電位(RMS 40)を測定しVT群,VPC群で比較.電気生理学的検査中,心房ペーシングを行ったVT例では各心拍毎のfQRS,RMS 40を調べた.結果:1)心拍数の増加に伴い,基礎疾患を有するVT 7例全例,特発性VT 4例中3例で,またVPC群では10例中4例でfQRSが延長.2)RMS 40はVT群で減少する傾向があったが,VPC群では心拍数依存性はみられなかった.3)ペーシングにより心拍数を増加させた場合には,fQRS,RMS 40ともほとんど不変であった.総括:基礎心疾患を有するVT例では,運動負荷により心拍数を増加させると,QRS高周波成分がfQRS延長,RMS 40減少というリエントリーを起こしやすい方向へと変化し,VPCのみの例ではこの変化は明らかでなかった.また,心房ペーシングにより心拍数を増加させても一定の変化がみられなかったことから上記の変化に内因性カテコラミンの関与が示唆された.
  • 松下 昌之助, 三井 利夫, 寺田 康, 厚美 直孝, 軸屋 智昭, 榊原 謙, 筒井 達夫, 岡村 健二, 堀 原一
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 82-86
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    filtered QRS 全体の平均電位であるRMST(Root-Mean-Square Total)の虚血に対する反応を開心術の大動脈遮断時間,およびラット心臓のglobal ischemiaを用いて検討した.開心術63例において大動脈遮断解除2時間後のRMST,Σ(X+Y+Z)のR波高,およびII誘導のR波高の3指標と大動脈遮断時間の相関は,RMSTがR(Σ)より強く,R(II)では相関はみられなかった.ラット(N=6)の両側肺虚脱による全心筋虚血では,RMSTは虚血前値が33±13μVであるのに対し,虚血3分後には24±9μV,虚血6分後には11±7μVまで低下した(前値に対しそれぞれ,p<0.05,p<0.005).一方,R(II)の虚血前値,3分後,6分後値は変化を示さなかった. RMSTはNa電流に依存しており, 虚血によるNa電流の減少が,周波数成分に影響を与え,高周波数成分のみのRMSTの虚血感受性を高めていると推定された.
  • 山内 康照, 野上 昭彦, 合屋 雅彦, 高橋 淳, 新田 順一, 小池 朗, 全 栄和, 伊藤 宏, 青沼 和隆, 家坂 義人, 丸茂 文 ...
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 88-93
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    プログラム心室刺激により誘発された心室頻拍の周期と,time domain およびfrequency domain解析の諸指標との関係を比較検討した.方法:陳旧性心筋梗塞(OMI)患者60名にプログラム心室刺激と加算平均心電図(SAECG)を施行,健常群30名にSAECGを施行した.プログラム心室刺激によって誘発された心室性不整脈に従って,OMI患者を4群に分けた.頻拍周期250msec以上の持続型単形性心室頻拍(slow SMVT) 群9名,250msec未満の持続型単形性心室頻拍(fast SMVT)群9名,持続型多形性心室頻拍(SPVT)群6名,持続型VTの非誘発(No VT)群36名である.結果:Timedomain解析の指標では,f-QRSおよびLAS40は25,40,80Hzいずれのhigh pass filter(HPF)においても,slow SMVT群でのみ他の4群より有意に高値であった.25Hz HPF後のRMS 40はslow SMVT群でのみ他の4群より有意に低値であった.誘発心室頻拍の周期とf-QRS,LAS40の間には有意の相関があった.Frequency domain解析の諸指標では,slow SMVTとfast SMVTとの間に有意差はなく,いずれも他の3群に比べて有意にarearatioは大きく,factor of normalityは小さかった.多変量解析によると,25Hz HPF後のf-QRSと80Hz HPF後のRMSが,slow SMVT誘発の独立予測因子であり,VT周期にかかわらずすべてのSMVT誘発を予測する因子は80Hz HPF後のLAS40とarea ratio(area20-50Hz/0-20Hz)であった.総括:陳旧性心筋梗塞患者においてfrequency domain解析によるSAECG諸指標は頻拍周期にかかわらずすべての持続型単形性心室頻拍を予測するのに対して,time domain解析による指標は頻拍周期の長い持続型単形性心室頻拍のみ予測する.
  • 中里 祐二, 岩 亨, Guy Fontaine
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 94-100
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    健常者50名,過去に既往がありかつプログラム刺激により誘発可能な心室頻拍(VT)を有する非虚血性心疾患患者23名を対象に,加算平均心電図を15分以内に2回記録した後,time domain法(TDM),2種類の周波数解析法(FFT1,FFT2),および三次元表示法(spectro temporal mapping:STM)を施行し,各解析法の臨床的有用性につき比較検討した.VT予測の診断精度は,TDMでは従来の診断基準値で93%と良好であった.FFT1では79%,FFT2では78%であったが,診断基準値の変更により,それぞれ88%,92%とTDMとほぼ同等のレベルまで改善した.ところがSTMは55%とTDM,FFTに比し著しく劣っており,診断基準値の変更による修正も不可能であった.さらに,2回の記録間の診断一致率は,STMではTDM,FFTよりも低く,再現性の点でも劣ることが確認された.各解析法の中でSTMは,診断精度,再現性ともに不良であり,臨床的有用性は低いと考えられた.
  • 川端 美緒, 綱川 宏, 中山 雅裕, 真島 三郎
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 101-105
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Spectro-temporal mapping(STM法)における至適解析区間に関し検討した.対象は正常例10例,心筋梗塞例20例(sustained VT例8例,VT-例12例)である.正常例においては,QRS波に由来する50-200Hz領域の高周波成分は,解析区間長80-150msのとき, 解析区間始点QRS内側40ms-外側10msのpower pectrumでほぼ減衰を認めた.そこでSTMの解析区間を計16種設定し(最終解析区間始点QRS内側60,40,20,0msの4種,解析区間長80,100,120,150msの4種),心筋梗塞例における解析結果の相違とsustained VTに対するsensitivity,specificityの値を見た.QRS末尾高周波成分は従来のFFTの結果と同様,解析区間長が長くなるほど減衰しやすい傾向が見られた.sustained VTに対するsensitivity,specificityは区間長80-120msで,最終解析区間始点QRS内側20ms,区間長150msで,QRS内・側40msの組み合わせの時最も良い値をとった.STM法の結果は解析区間により影響を受け,結果の判定時考慮が必要と思われた.
  • 高速フーリエ変換を用いて
    笠巻 祐二, 小沢 友紀雄, 谷川 直, 渡辺 一郎, 児島 隆介, 矢久保 修嗣, 高橋 義和, 花川 和也, 福井 利章, 斎藤 頴
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 106-111
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    発作性心房細動(Paf)例において洞調律時のP波の周波数成分を解析することにより心房受攻性(AV)を評価し得るか否かを検討した.方法:Pafの既往を有し,臨床心臓電気生理学的検査(EPS)にてAVを認めた15例とPafの既往がなく,AVを認めない9例を対象とした.疾患の内訳はPaf13例,洞不全症候群(SSS)9例,発作性上室性頻拍(PSVT)2例であった.これらの症例に対し,洞調律時に100心拍加算平均を行ったP波について高速フーリエ変換(FFT)による周波数成分分析を行い,各周波数帯の面積比(AR)を算出し各々比較検討した.結果:1)0-50Hzに対する50-100,50-150HzのARはAV陽性群において有意に高値であった.2)0-20Hzに対する20-50HzのARは両群で有意差を認めなかった.結語:Paf例においてFFTを用いた周波数成分分析を行うことにより非観血的にAVを評価し得る可能性が示唆された.
  • 土井 智文, 井上 智夫, 板垣 毅, 清水 宏紀, 吉田 明弘, 大西 祥男, 横山 光宏
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 112-118
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    器質的心疾患を有する患者の心室遅延電位は持続性単形性心室頻拍,突然死と密接に関係するとされている.しかしその検出法,評価法は施設,報告者によって異なる.時間軸領域解析,周波数領域解析に加え時間周波数解析による評価もなされるようになってきた.我々は以前より心室遅延電位に対し従来の時間軸領域の解析に加えWigner分布による時間周波数解析を行ってきた.我々は今回その有用性につき検討したので報告する.
  • 矢久保 修嗣, 小沢 友紀雄, 楊 新春, 渡辺 一郎, 笠巻 祐二, 花川 和也, 福井 利章, 国本 聡, 小牧 宏一, 谷川 直, 斎 ...
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 119-124
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Holter心電図法を利用した加算平均心電図(Holter SAE)よりSpectral turbulence解析(STA)を検討し, Spectrotemporal map(STM) を作成した.心室頻拍を伴う心筋梗塞(VT)群5例,心室頻拍のみられない心筋梗塞(No VT) 群12例,健常成人(Control)群5例を対象とし,Holter SAEはDelMar Avionics社製Model 459,Model 563を用いてSTMを作成した.STMを評価する指標は隣接時相面間相関の平均とその標準偏差を示すICMとICSD,そして,時相の平均的な周波数成分に対する不一致率をみるSEを用いた.ICMはNoVT,Controlに比べVTでは小さく,ICSDはNo VT,ControlよりVTは大きく,そして,SEではVTがNo VT, Controlより大きかった. 正常範囲をControlのmean±2SDとして,異常ICM,異常ICSD,異常SEを決定した.これらの2つの以上を満たすものを異常STAとすると,VTでは80%にみられ,No VTでは17%,Controlには異常STAはみられなかった. Holter SAEのSTAやSTMは心室頻拍を評価することが可能であり,臨床的に有用と考えられた.
  • 1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 125-128
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 心内膜および心表面delayed potentialとの対比
    鎌倉 史郎, 清水 渉, 岡野 嘉明, 栗田 隆志, 高木 洋, 相原 直彦, 大江 透, 磯部 文隆, 小坂井 嘉夫, 下村 克朗
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 129-134
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    持続性心室頻拍(SVT)例におけるQRS外late potential(LP)の分布と心室内delayed potential(DP)との関係を検討する. 方法:SVTを伴う器質的心疾患48例に体表面32-48点でLP mapを記録し,backward filterを用いてQRS終点より後方40msec間のRMS値を計測した.45例で左右心室30点以上から心内膜電位を,11例で87点から心表面電位を記録し,QRS外にDPが存在する心室領域(DPA)を調べ,RMS>0.4μVの体表面LP領域(LPA)と対比した.結果:(1)LPAを有した37例全例にDPAが認められた.(2)LPは左前胸部および右前胸部の上,中,下方の6区域に分布し,それぞれ左室前壁-前部中隔の中央-基部,左室心尖部-前側壁中央部,左室下後壁,右室流出路部,右室中央部, 右室下部のDPAと対応した.(3)DPを含む心筋を切除した5例にLP電位の低下とLPAの縮小-消失がみられた.総括:体表面LPAは心内DPAをよく反映し,その分布様式から心室内のDP存在部位を6区域に分類して推定しうると考えられた.
  • 加算平均心電図体表面分布の経時的変化からの推定
    加藤 千雄, 菱田 仁, 近松 均, 嶋地 健, 可児 篤, 野場 万司, 安井 直, 松山 裕宇, 渡辺 佳彦, 水野 康
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 135-139
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞症(AMI)を対象に,発症当日より胸背部28単極誘導点から加算平均心電図(SAE)を経時的に記録し,既報の独自の体表面分布図(DRmap)を描き,その経時的変化を検討した.
    DR mapは,AMI発症後1カ月以降に持続性心室頻拍(SVT)を発症した例,心室頻拍を認めなかった例いずれも経時的に変化した.しかしながら,発症第3病日から第2週頃を境にその差が明瞭となり,SVT例では特徴的所見(大きな極大と,正領域に囲まれた狭い負領域)を,高頻度に認めた.この間にリエントリー回路の成立に必要なcritical slow conductionzoneが造られるものと思われ,これは従来のin vivoおよびin vivoの実験結果に近似していた.
    DR map法を用いてSAEの体表面分布を,AMI発症後より経時的に記録,検討することにより,心筋梗塞に伴うSVTの電気生理学的発生基盤の成立時期を非侵襲的に推定し得たと考えた.
  • 八巻 通安, 友池 仁暢, 安井 昭二
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 140-142
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心室遅延電位の成因および心室不整脈との関連を明らかにする目的で,三次元心臓モデルを用いて心室遅延電位のシミュレーションを行い,心室細動の誘発を試みた.心臓モデルは心房筋,心室筋,特殊伝導系を含む1.5mm3の等方向伝播の分割ユニット約50,000個から構成した.電気的にsilentな円盤状の線維組織の周囲に梗塞残存心筋6層(9mm)を設定,左室側壁梗塞を作成した.心筋梗塞周囲3層以上の残存心筋の伝導速度CVを0.3m/s以下とした時,LPが出現した。LP陰性のモデル(全層のCV;0.5m/s)に比べLP陽性のモデル(梗塞周囲4層のCV;0.2m/s)では少数回の早期刺激で心室細動が誘発された.梗塞周囲に興奮伝導遅延部位を設定することで,心室遅延電位の発生がシミュレートされた.
  • 國分 俊典, 粟野 直行, 木戸 カヤノ, 小野 正博, 丸山 幸夫
    1993 年 25 巻 Supplement5 号 p. 143-148
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ウェーブレット変換(wavelet transform:WT)はフーリエ変換より高周波領域の時間分解能が高く,特に局所振動の位置情報の解析に適している.本法を用いて心電信号の時系列解析を行い,本法の有用性について検討した.方法:WTは信号波形をアナライジングウェーブレット(analyzing wavelet:AW)と呼ばれる関数で解析する方法である.今回,解析に用いたAWは余弦波にHanning windowをかけて作成した.モデル波形,健常者心電図,薬効,およびレイトポテンシャル例について,1Hzから100Hzまでを解析した.結果:モデル波形,および健常者心電図の解析では,複数の信号をピーク時相として分離観察できた.Disopyramide 100mgを静注した例では,投与前後において心電図のQRS波形に変化を認めなかったが,本法で周波数解析すると,高周波領域においてエネルギー値の減少が観察された.レイトポテンシャルは40Hz近傍より100Hzまで,独立した波形として分離観察できた.結語:本法は,今回提示した薬効評価やレイトポテンシャル症例の検討のほか,P波,T波などに含まれる微小信号の検出に有用であるといえる.
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