心臓
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26 巻, 1 号
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  • 特に糖尿病症例において
    脇 英彦, 児玉 和久, 大畑 雄咲, 堀 辰之, 相馬 英一, 坂本 善弘, 小杉 圭右, 清水 靖久, 増山 理
    1994 年 26 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    運動負荷試験を用い,無症候性心筋虚血の臨床像を検討した.
    方法および結果:エルゴメーター運動負荷試験陽性で冠動脈造影を施行し,冠動脈に有意な狭窄を認めた155例のうち,胸部症状を有する群(有症候群,n=66例)と有さない群(無症候群,n=89例)に分けた.運動負荷量,年齢,性差,冠動脈罹患枝数,心筋梗塞の有無には両群間に有意差はなかった.また,高血圧症,高脂血症の合併率も両群間に差異はなかった.一方,糖尿病の合併率は無症候群で有意に高く,温度痛覚閾値は無症候群で有意に高かった.次に,心筋虚血の程度を変える目的で運動負荷試験に比し,より高度の心筋虚血を引き起こすと考えられるPTCAのballoon inflation時における胸部症状の有無について検討した.結果,糖尿病を合併した無症候群においても約64%で胸部症状が出現し,無症候は痛覚閾値が高いためと考えられた.
    総括:糖尿病における無症候性心筋虚血の原因として,心筋虚血の程度のみならず糖尿病性神経障害による知覚低下が重要な役割を果たしていると推察された.
  • 梗塞前狭心症,梗塞発症パターンの関与について
    加勢田 直人, 早崎 和也, 本田 喬, 土井 理, 堀内 賢二, 松田 宏史, 庄野 弘幸, 本田 俊弘, 牧 明
    1994 年 26 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性前壁梗塞に対する再灌流成功後の左室壁運動改善に影響する因子を検討する目的で,再灌流療法に成功した53例を慢性期壁運動改善群と非改善群に分け,以下の因子を比較検討した.その結果,(1)両群で再疎通時間に差はなかった.改善群は,非改善群と比較し,(2)急性期の側副血行の頻度が高く,また,残存冠狭窄度が軽い傾向にあったが統計学的には有意差はなかった.(3)梗塞前狭心症の既往を有する例および梗塞発症時の断続型胸痛例が有意に多かった.(4)狭心発作が頻発し,不安定狭心症から心筋梗塞に移行した発作頻発型の発症パターンが多い傾向にあった.以上より,再疎通時間,側副血行の有無,残存冠狭窄度といった因子以外に,梗塞前狭心症の既往や発症直前の狭心発作の頻発,発症時の胸痛の断続といった梗塞発症パターンが,独立した心筋防御因子として再灌流成功後の壁運動改善に作用している可能性が示唆された.
  • 繰り返す心不全歴を中心として
    河合 裕子, 小笠原 定雅, 堀江 俊伸, 細田 瑳一
    1994 年 26 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    〈目的〉拡張型心筋症(DCM)重症例,特に心不全例について,心不全歴を分析することにより心臓移植の適応時期を検討した.
    〈対象と方法〉当施設で臨床的に血管拡張薬療法が始められた1976年以後から1992年の間に当施設に治療および精査目的で入院したDCMのうち,難治性心不全により死亡した65例(男性49例,女性12例.15歳~72歳)を対象とした.
    これらに対し,心不全病歴を中心として発症時から死亡までの経過をretrospectiveに調査した.
    〈結果〉
    1)自覚症状が出現してから初回NYHA4度の心不全が出現するまでは,平均36カ月,内科治療に抵抗性の難治性心不全の固定までは平均64カ月,難治性心不全が固定してから死亡までは,平均9カ月であった.
    2)心不全出現の間隔は回数を重ねるに従い短くなった.2回目のNYHA4度の心不全で3度までしか軽快しない例が再び4度になるには平均7.5カ月であり,3回目の心不全で死亡するものが最も多かった.
    3)3回目の心不全になった症例の生存率は18%と低値であった.
    4)最善の内科的治療を行ってもNYHA4度の心不全の回数が3回目となった時,また退院時NYHA3度までしか軽快しない時が予後6カ月から1年と予想された.これらの中には,心臓移植の対象となる例があると考えられた.
  • 矢崎 義雄
    1994 年 26 巻 1 号 p. 22-23
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • ASH出現前後の心電図変化
    神谷 康隆, 大中 正光, 糸井 利幸, 林 鐘声, 浜岡 建城, 尾内 善四郎
    1994 年 26 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    小児期発症の非閉塞性肥大型心筋症(HNCM)6例の非対称性心室中隔肥厚(ASH)出現前後における心電図変化を検討した.対象6例の初診時年齢は6~15歳(平均10.5歳),男4例,女2例であった.初診時の主訴は学校検診の心電図異常5例,心筋症の家族歴1例であった.初診時は全例心エコー上心肥大を認めず,1~8年(平均4年)の経過でASHが出現した.壁肥厚部位は心室中隔限局が5例で,残りの1例は心室中隔から側壁に進展していた.初診時の心電図異常は,異常Q波(II・III・aVF:4例,V5 V5,6:2例),R波増高(V1:3例),R波減高(V2,3:2例,V5,6:2例),陰性T波(II・aVF:1例)であった.ASHが確認された時点で新たに認められた心電図異常は,異常Q波(II・III・aVF:1例),R波減高(V5,6:2例),T波陰転(I・aVL:2例,V2~4:4例)であった.HNCMのASH出現前後の心電図所見は,ASH出現前にはII・III・aVF,V5,6の異常Q波,V1のR波増高,V2,3,V5,6のR波減高を組み合わせたパターンがみられ, A S H 出現時にはI・aVL,V2~4のT波が陰転化する傾向を認めた.
  • 多喜乃 俊雄, 茂木 格, 田代 敦, 向井田 春海, 大沢 正樹, 青木 英彦, 水沼 吉美, 深見 健一, 平盛 勝彦
    1994 年 26 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    今回,我々は,右冠動脈左バルサルバ洞起始症に大動脈弁閉鎖不全症を伴った1例を経験したので報告する.68歳,女性,主訴:前胸部痛,現病歴:平成2年1月初旬より,労作安静にかかわらず数分間持続する胸痛が出現するようになったため,精査目的で当科入院となった.入院経過:入院後しばしば胸痛を訴え心電図を記録したが,明らかな虚血性変化は認められなかった. 運動負荷試験,isoproterenol負荷でも有為な心電図変化は確認できなかった.心臓カテーテル検査では心内圧,左室駆出率とも正常範囲内であった.
    大動脈造影ではII度の大動脈弁閉鎖不全が確認された.冠動脈造影では左右冠動脈とも,左バルサルバ洞から各々起始し,有意狭窄性病変は認められなかった.まとめ:本症は比較的まれな疾患で,狭心症,心筋梗塞,不整脈の合併や,突然死が報告されている.今後,外来での慎重な経過観察が必要と思われた.
  • 佐藤 悦郎, 百瀬 篤, 仲 元司, 臼田 正恒, 関口 守衛
    1994 年 26 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は慢性気管支炎にて外来通院中の74歳の女性で胸痛を主訴として受診.虚血性心疾患を疑い冠動脈造影を施行し,右冠動脈-気管支動脈-肺動脈への異常交通を認めた.さらに肺動脈造影によって異常血管からの血流が肺動脈下葉枝に流入し中枢部まで逆流していることを確認し得た.冠動脈-気管支動脈異常交通症はチアノーゼを示す先天性心疾患,大動脈炎症候群,慢性呼吸器疾患に合併することが多いが,いずれも減少した肺血流を補う側副血行路の意義が推測されている.本症例では検査所見より,従来推測されてきた側副血行路としての異常交通症とは異なった機序による症例と考えられた.
  • 山本 健, 小川 宏, 片山 和裕, 市岡 隆志, 池田 安宏, 藤井 善蔵, 清水 英明, 矢野 雅文, 古谷 雄司, 三浦 俊郎, 河野 ...
    1994 年 26 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    狭心症を診断する際,心電図でのST変化をとらえることは大変重要である.運動負荷時,ST,T変化を示さない労作性狭心症の報告は見られるものの,自然発作時にST変化を示さない不安定狭心症についての詳細な報告は少ない.今回,不安定化した狭心症であるにもかかわらず,発作時に明らかなST変化を伴わず,狭心症の診断を心電図で行うことが困難であった3症例を経験した.今回報告した3症例はいずれも左冠動脈前下行枝が責任血管であり75%以上の狭窄を有していた.3症例ともはっきりした胸痛発作時にとられた心電図にてST-T変化を認めなかった.重症狭心症例においてさえ発作時にST-T変化を示さないこともあり心電図所見のみから本病態を診断するには注意が必要である.
    また今回報告した3症例はともに発作時心電図にて一過性の陰性U波の出現を見ており,陰性U波も重要な所見と考えられた.
  • 竹中 孝, 堀本 和志, 会沢 佳昭, 太田 貴文, 五十嵐 慶一, 藤原 正文
    1994 年 26 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    両側冠動脈肺動脈瘻に,冠攣縮が関与したと考えられる陳旧性心筋梗塞と安静時狭心症を合併した1例を経験したので報告する.
    症例は63歳女性で,51歳時に広範前壁の急性心筋梗塞の既往があり,今回早朝の安静時胸痛を主訴に入院した.心電図にてI,aVL,V2~6の異常Q波を,安静時201T1心筋シンチグラムにて前壁,心室中隔,側壁,心尖部にかけての広範な灌流欠損を認め,左室造影では前側壁から心尖部にかけての心室瘤をみた.冠動脈造影では右冠動脈円錐枝および左冠動脈前下行枝近位部より起始し,肺動脈主幹部に開口する両側冠動脈肺動脈瘻(左-右短絡率6.1%)を認めたが,冠動脈に有意狭窄はなかった.左冠動脈内へのacetylcholine注入により左冠動脈前下行枝に完全閉塞を生じ,胸痛が出現したことから,冠攣縮が安静時胸痛の原因と考えられ,また12年前の心筋梗塞発症の際にも冠攣縮の関与が強く疑われた.
    冠動脈瘻に合併した冠攣縮による狭心症ならびに心筋梗塞の報告はまれであり,冠動脈瘻に伴う心筋虚血の原因として,steal現象の他に冠攣縮の合併も考慮する必要がある.
  • 葛城 充明, 植田 初江, 由谷 親夫, 今北 正美, 羽尾 裕之, 阪井 康仁, 安田 聰, 野々木 宏, 土師 一夫
    1994 年 26 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性.胸痛にて入院し,心電図上完全房室ブロックとII,III,aVF,V4~V6,V3R,V4RにてST上昇を示した.緊急ICT,PTCAの施行により閉塞していた右冠動脈の再開通が得られたが低心拍出状態を脱することができず,心室ペーシングから心房心室順次ペーシングに変更することによりいったん状態が改善した.その後センシング不全を主とするペーシング不全の発生に伴い状態が悪化し,各種の集中治療を試みたが救命することはできなかった.剖検にて右冠動脈近位部の粥腫性硬化斑の破裂と完全閉塞,左室側壁,下後壁,後部心室中隔,右室の広範囲,および右房に急性心筋梗塞を確認した.臨床経過上右房梗塞の存在が血行動態維持を困難にした-因と考えられ,病理組織にて確定診断を得たので報告する.
  • 坂本 和典, 桑子 賢司, 祖父江 晃, 白石 宏志, 木住野 哲, 林 祐己, 古江 尚, 水口 國雄
    1994 年 26 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,63歳女性.家族歴に特記すべきことなし.1979年に上肢のしびれ感,1983年に嗄声が出現し進行性に増悪した.1989年当院内科に四肢しびれ感,両下肢浮腫の精査を目的に入院した.ポリニューロパチー,巨舌,皮膚症状等よりアミロイドーシスを疑い,直腸および皮膚生検により確診を得た.心エコー図・ドプラ所見では,大動脈弁,僧帽弁,三尖弁の肥厚と弁口の狭小化を認めた.なお肺動脈弁は生前には記録不能であったが,剖検にて弁の肥厚と狭窄が判明した.患者は各種の治療に抵抗性で,肺炎と心不全を併発して1年6カ月後に死亡した.剖検では,心を含めて全身に血管壁を中心としたアミロイドの沈着が認められ,免疫組織化学的検索にてAL型の原発性アミロイドーシスと診断した.アミロイドーシスに伴う弁狭窄の報告は調べ得た限りでは生前診断例はなく,剖検例が2例あるのみである.我々は生前に心エコー図法およびドプラ法にて弁の肥厚と狭窄を診断し得た1例を経験したので報告する.
  • 小林 直彦, 大川 真一郎, 杉浦 昌也, 今井 保, 久保木 謙二, 渡辺 千鶴子, 上田 慶二, 田口 智也, 大坪 浩一郎
    1994 年 26 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性.68歳時の心電図は正常洞調律,心房性期外収縮を示していたが,71歳の時失神発作が何回か出現し入院となる.入院時脈拍45/分,心電図はQRS幅0.08秒の2:1房室ブロックを示した.失神発作は高度房室ブロックへ進展したためと解され,人工ペースメーカー植え込み術を施行し以後失神発作はみられなくなった.昭和59年6月腹痛,黄疸にて入院.腹水を伴った肝癌の破裂にて死亡した. 剖検では心臓は310gで冠硬化は軽度. 刺激伝導系の検索では房室結節正常,しかし膜性部後下縁に7×4.5×7mm大の嚢胞があり,気管支原性と診断.この嚢胞によりHis東貫通部は上方に圧排され,高度の萎縮と線維化を示した.His束分岐部,左,右両脚の変化は軽度であった.以上より本例の房室ブロックは心臓膜性部に迷入した気管支嚢胞による圧排のためのHis束貫通部の高度萎縮と線維化により惹起されたものと診断された.
  • 茅野 千春, 佐々木 康之, 翠川 隆, 武井 学, 降旗 章子, 須山 和弘, 米沢 孝典, 丸山 隆久
    1994 年 26 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.既往に心筋梗塞を思わせるエピソードはない.平成3年5月より労作時息切れ等の心不全症状が出現し7月に入院,強心薬,利尿薬で心不全は軽快したが持続性心室頻拍の出現をみた.腹部エコー,腹部CTより右副腎腫瘍を認め血中,尿中のノルアドレナリンの上昇,下大静脈のサンプリングで右副腎静脈のノルアドレナリンが120ng/dlとステップアップし異常高値であり褐色細胞腫と診断した.褐色細胞腫に心病変を伴っていたため心筋梗塞とカテコールアミン心筋症との鑑別が問題となった.左室は著明に拡大し全体に壁運動が低下していたが特に前壁中隔から心尖部で強かった.心エコーで同部位の壁厚は薄くエコー輝度も上昇していた.通常の冠動脈造影では狭窄病変を認めなかったが,アセチルコリン負荷によって左前下行枝本幹にスパズムが誘発され完全閉塞となった.安静時のタリウム心筋シンチでは前壁中隔より心尖部で集積低下,欠損像を呈した.本例の心病変が,過剰のカテコールアミンによるカテコールアミン心筋症か,左前下行枝を責任冠動脈とする陳旧性心筋梗塞か鑑別はできなかった.経過中出現した心室頻拍は,電気生理検査でイソプロテレノール負荷でも誘発されなかった.褐色細胞腫の腫瘍摘出術後も加算平均心電図のlate potentialは陽性だったが,平成3年8月以降心室頻拍は出現しなかった.
  • 中野 知子, 清水 光行, 小川 和彦, 溝上 恒男, 入交 修, 八木 寿夫, 磯貝 行秀
    1994 年 26 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    筋強直性ジストロフィーは,ミオトニア,筋萎縮,白内障を主症状とするミオパチーで,様々な心病変が合併する.症例は筋強直性ジストロフィーにて経過観察されていた41歳女性で,心悸亢進を訴え来院した。上室性頻拍症と診断したが停止できず,緊急入院となった.入院時,180~190/minの頻拍を認め,verapamil,deslanosideの投与により心拍数90~100/min,2:1~3:1の心房粗動となった.発作前の体表面心電図では,心拍数53/minの洞性リズムであった.電気生理学的検査にて,HV時間の延長,洞機能不全と診断された.Permanent pacemakerを植え込んだ上で,頻拍性不整脈の治療を行った.その後,外来で経過観察中に,房室ブロックが進行した.心臓の刺激伝導障害や不整脈は,この疾患の50%以上にみられる重大な合併症である.しかし,洞機能不全はまれである.筋強直性ジストロフィー症における,頻拍不整脈を治療するにあたっては,潜在性の房室ブロックや洞機能不全の存在の可能性を念頭において抗不整脈薬を投与すべきである.
  • 肺動脈原発の悪性線維性組織球腫の1例
    深田 英利, 中島 茂, 山田 節子, 水重 克文, 藤岡 宏, 阪本 整司, 森田 久樹, 前田 肇, 松尾 裕英
    1994 年 26 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肺動脈に原発する悪性腫瘍は,現在まで124例の報告しかなくまれな疾患である.したがって本疾患を念頭において検査されることはほとんどなく,心血管造影法施行前に非侵襲的に診断されたという報告は皆無である.我々は,肺動脈に原発した悪性線維性組織球腫の症例を経験し,これを経食道アプローチを含む超音波ドプラ心エコー法を用いて心臓カテーテル検査前に非侵襲的に発見し,悪性腫瘍と診断しえたので報告する.
    症例は63歳,男性.労作時呼吸困難を主訴として当科に入院となった.入院時現症では,第3肋間胸骨左縁に収縮期,拡張期雑音を聴取した.経胸壁ドプラ心エコー法では三尖弁逆流を認め,その逆流血流速より推定した右室圧は91mmHgと著明な高値を示したが,肺動脈弁とその直上の肺動脈などに異常所見はなかった.しかし,経食道心エコー検査を施行したところ,肺動脈分岐部,主幹部に管腔を大きく占める塊状エコーが認められた.入院約1カ月後の経胸壁心エコー法では,右室流出路に表面が極めて粗な塊状エコーを新たに認めた.この腫瘤の表面エコー性状や発育経過より,本症例は肺動脈に原発し右室に進展した悪性腫瘍と診断した.その後の心血管造影検査で,右室流出路,肺動脈内に可動性のある腫瘍陰影を6箇認め,左冠動脈より派生する栄養血管も同定しえた.外科的な治療を行い,その組織診断は悪性線維性組織球腫であった.
    肺動脈に原発する悪性腫瘍の診断と経過観察,さらに随伴する血行動態異常の把握に経食道アプローチを含むドプラ心エコー法は有用と思われた.
  • 伊藤 一貴, 首藤 達哉, 細見 泰生, 平野 伸二, 宮崎 浩志, 東 秋弘, 杉原 洋樹, 河野 義雄, 朝山 純, 勝目 紘, 中川 ...
    1994 年 26 巻 1 号 p. 84-89
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    アレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA)は,気管支喘息,好酸球増多,全身性の血管炎をTriasとする症候群であり,急速に進行する全身性の血管炎により致死的病状を呈するため,早期診断,治療が必要とされている.また心症状の合併率は高く,その出現は予後を大きく決定するとされている.今回我々は,不整脈,心不全など心症状を認めたAGAの症例に心臓カテーテル検査を施行.冠動脈造影にては軽度の壁不整を認めるのみであったが,左室造影ではび漫性の著明な壁運動低下を認めた.しかし心筋生検では,心筋間質および小血管周囲への好酸球を含む炎症細胞の浸潤を認め,間質は著明な線維化変性をきたしていたことより,本例の心機能障害の機序としてAGAを基礎とした好酸球の浸潤による直接の障害が示唆された.
  • 和田 嗣業, 李 鍾大, 清水 寛正, 佐竹 一夫, 岸 慎治, 宇隨 弘泰, 杉山 太枝子, 川崎 記生, 坪川 明義, 山本 雅之, 清 ...
    1994 年 26 巻 1 号 p. 90-95
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,49歳,拡張型心筋症の男性.43歳の時,脳梗塞にて構音障害をきたしたことがある.1989年2月,心エコーで,左室心尖部に,可動性を有する血栓を2個認めた.MRIで多発性の脳梗塞像を認め,左心室内血栓による多発性の脳塞栓症と推察された.塞栓症再発の危険性が高いと判断し,血栓摘出術を施行した.術後,ワーファリンでトロンボテストを20%前後に維持し,チクロピジン(300mg/日)を併用していたが,1989年4月(血栓摘出術1カ月後),1990年12月,1991年11月の計3回,左室心尖部に血栓の再発を認めた.初回は術直後であり,後の2回は心不全増悪時に出現し,ワーファリン,チクロピジンの量は一定であったが,心不全状態の改善とともに血栓は消失した.その間,塞栓症を示唆するエピソードはなく,血栓は自然溶解したと考えられた.
    本症例は,心機能低下と血栓形成の関連を示す貴重な症例であり,血栓の再発,消退は心尖部の血流停滞の程度に依存しているものと推察された.
  • 篠山 重威
    1994 年 26 巻 1 号 p. 96-97
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
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