心臓
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26 巻, 2 号
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  • 小林 直彦, 小林 公也, 高野 幸一, 赤羽 知之, 益田 俊英, 堀中 繁夫, 八木 繁
    1994 年 26 巻 2 号 p. 103-110
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Colored microsphere(CMS)法による局所血流量測定に際し,使用するCMS量の上限および主要臓器血流量値に関し,Sprague-Dawleyラットを用い検討した.CMS使用量上限は1回注入では1,000,000個まで,連続注入では500,000個を4回まで使用可能であった.各臓器(心,肺,脳,腎,肝,脾,筋)血流量値は500,000個注入群と1,000,000個注入1群とで差がなく,500,000個4回の連続注入でも良い再現性を示した.またCMS法による心拍出量測定値は電磁流量計法のそれと比較し良好な相関(r=0.971,p<0.0001)を認めた.CMS法は放射性物質を用いないことから,比較的簡便に,また多量に使用することができ,局所血流量測定における有用な実験手技と考えられた.
  • 鯵坂 隆一, 外山 昌弘, 渡辺 重行, 杉下 靖郎, 斉藤 巧, 山内 孝義, 増岡 健志
    1994 年 26 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    運動効率は運動筋で消費される化学エネルギーのうち外的仕事に使用される機械的エネルギーの比率と定義される.本研究の目的は心疾患例の坐位エルゴメータ運動の運動効率(E)を測定し,その臨床的意義につき検討することにある.対象は男性心疾患患者30例であり,E測定のため,"0"ワット,20ワットおよびATの約80%に相当する運動強度の各6分間の定常運動負荷を施行し,各々の酸素摂取量(VO2)および呼吸商(R)を測定した.各運動強度における機械的エネルギー量は各ワット数に14.3を乗じて求め,消費エネルギー量はVO2およびRより算出した.これらより,gross,net,workおよびdelta Eを算出した.仕事率(WR)/VO2もしくはΔWR/ΔVO2についても算出し,Eとの関連につき,検討した.
    結果:gross E,net E,work E,delta Eは各々,17.6±2.0%,26.6±2.8%,44.3±5.2%,32.5±4.5%であった.また各E値とWR/VO2もしくはΔWR/ΔVO2との間にはきわめて良好な正相関を認めた.delta EとΔWR/ΔVO2との関連から概算すると,同一VO2(1l/分)であっても,なしうる仕事量には最大35ワット(約500カロリー/分)の差を生ずることが認められた.
    結論:心疾患患者においては,運動効率の差異により同一酸素摂取量での仕事量に差を生ずることが示唆された.心疾患患者の運動処方においては酸素摂取量のみならず運動効率にも配慮すべきであると考えられた.
  • 平田 展章, 酒井 敬, 榊 成彦, 大谷 正勝, 中埜 粛, 松田 暉
    1994 年 26 巻 2 号 p. 118-124
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    梗塞後心室中隔穿孔(VSP)の急性期手術施行16例の手術成績および成績に関与する因子について梗塞部位別に検討した.対象は前壁梗塞11例(年齢74±7歳,男女比4:7),下壁梗塞5例(年齢75±10歳男女比2:3)である.VSP発症から手術までの期間にはそれぞれ6±3日,5±3日であった.死亡例は前壁梗塞5例(45%),下壁梗塞2例(40%)であった.死因は梗塞部位を問わず全例低心拍出量症候群(LOS)およびそれに起因する多臓器不全(MOF)であり,術後平均10日目に失った.なお左室壁運動の指標としてwall motion score(WMS)(UCGにて左室を17分割しasynergy発生部位にポイントを与え加算)を用いた.(1)前壁梗塞例.死亡例はWMSが20以上の高値を示し,心係数(CI)をQP/QSで除した値(CI/QP/Qs=effective CI)は1.1以下の低値を示した.死亡例は術直後に0.1μg/kg/min以上のエピネフリンを要した.術前の腎機能,肝機能,手術時間,体外循環時間,大動脈遮断時間には差を認めなかった.(2)下壁梗塞例.死亡例は2例ともWMS,右房圧が高値を示し,右冠動脈近位部閉塞例であり右室梗塞を認めた.術直後に0.1μg/kg/min以上のエピネフリンを必要とした.術前の腎機能,肝機能,手術因子には差を認めなかった.以上より1)死亡例は梗塞部位にかかわらず,術前の左室壁運動低下例であった.2)前壁梗塞ではCI/Qp/QSの低値例が,下壁梗塞では右室梗塞例が死亡した.3)多量のエピネフリン必要例では術後強力な補助循環の積極的使用が考慮される.
  • ドプラ肺静脈血流速波形の解析による
    李 正明, 増山 理, 成山 和功, 高橋 宏, 堀 正二, 中村 幸二, 鎌田 武信
    1994 年 26 巻 2 号 p. 125-132
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性左心不全の血行動態を把握することは臨床上重要であり,その評価には従来より観血的手法による左房圧および心係数が用いられてきた.本研究では,これらの指標をドプラ肺静脈血流速波形の解析により非侵襲的に推定し得るかを明らかにした.対象はNYHA心機能分類III度以上の急性心不全例19例.全例右心カテーテルを肺動脈内に留置し,心不全治療前後の平均肺動脈楔入圧(PCWP)および心係数(CI)を計測した.同時に胸壁より超音波パルスドプラ法を用い肺静脈・左室流入血流速波形を記録した.肺静脈血流速波形から収縮期,拡張期ピーク速(S,Dcm/s),およびその時間積分値(TVI-S,TVI-D)を,左室流入血流速波形から拡張早期,心房収縮期ピーク速(E,Acm/s),およびその時間積分値(TVI-E,TVI-A)を求め,これらのドプラ諸指標と血行動態諸指標を多変量解析を用い比較検討した.〔結果〕(1)PCWPはDとの間に最も良好な相関を認めた(r=0.79).CIはSとの間にのみに有意な正相関を認めた(r=0.79).(2)多変量解析の結果,PCWPは推定式13.8+0.41*D-1.35*TVI-D-4.05*TVI-S/Dにより,またCIは推定式1.63+0.043*S-0.628*S/Dにより推定することができた(各々r=0.89,r=0.87).しかし,左室流入血流速波形の指標のみの組合せでは両指標を正確に推定し得なかった.観血的手法により計測される平均肺動脈楔入圧および心係数は,ドプラ肺静脈血流速波形の解析により非侵襲的に推定し得ることが示唆された.
  • 藤岡 達雄, 不藤 哲郎, 中江 出, 岩瀬 知行, 田仲 輝光, 田巻 俊一, 花田 正治, 佐藤 達朗, 中山 正吾, 西村 和修, 山 ...
    1994 年 26 巻 2 号 p. 133-140
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1980年4月から1992年12月までの間に当院に入院した急性大動脈解離症例161例のうち早期閉塞型症例55例(Stanford A型11例,B型44例)を対象として,その合併症,経食道エコー検査所見に基づく治療方針の決定ならびに長期予後(観察期間平均3年4カ月)について検討した.
    結果,早期閉塞型においても急性期重篤な合併症(心タンポナーデ,左胸腔内出血,縦隔内出血)を7例に認め,このうち3例に緊急手術を必要とした.特に入院時の経食道エコー検査において5cm以上の血管径拡大例や偽腔内血栓の占める比率の大きい症例は合併症を起こしやすかった.
    長期予後は一般に良好であるが亜急性期にみられる限局性偽腔内血流再開例(55例中15例27.3%)では慢性期,血流再開部位の拡大に注意を払う必要がある.さらに再解離も2例に認めたことから退院後も降圧療法を含めた厳重な経過観察が必要である.
  • 伊藤 一貴, 首藤 達哉, 細見 泰生, 平野 伸二, 宮崎 浩志, 東 秋弘, 杉原 洋樹, 河野 義雄, 朝山 純, 勝目 紘, 中川 ...
    1994 年 26 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例1は20歳女性.症例2は54歳男性.両症例とも主訴は,労作時呼吸困難および胸部圧迫感.胸部X線写真では,それぞれ心胸郭比56%,58%と心拡大を呈した.症例1は冠動脈造影および経食道心臓超音波法にて,症例2は冠動脈造影および大動脈造影にて,右冠動脈左バルサルバ洞起始症と診断した.両症例とも冠動脈造影像では有意な狭窄病変を認めず,心筋生検において心筋炎の所見を認めなかった.しかし,左室造影では症例1は前壁から心尖部にかけて壁運動低下を認め,症例2ではび漫性の著明な壁運動の低下そして左室内腔の拡大を認め拡張型心筋症様造影所見を呈した.以上より,比較的予後の良いとされる右冠動脈左バルサルバ起始症においても,経年的に冠奇形による虚血障害が蓄積されると高度な心機能障害に進行する可能性が示唆され,十分な経過観察および治療が必要と思われ報告する.
  • 永松 仁, 谷本 京美, 上田 みどり, 石塚 尚子, 堀江 俊伸, 細田 瑳一, 橋本 明政, 平山 統一, 黒澤 博身, 里見 元義, ...
    1994 年 26 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は26歳の男性.喀血を主訴に来院し,聴診上第二肋間胸骨左縁にて連続性雑音を聴取し,心電図上は左室肥大を認めた.患者は,5歳時に心臓カテーテル検査および心血管造影を受けており,右肺動脈上行大動脈起始症兼動脈管開存ならびに重篤な肺高血圧症が認められていた.今回,再び心臓カテーテル検査を施行したところ,約20年の自然経過で右肺の肺高血圧(44/16(24)mmHg)が軽減していた.外科的治療を行い,右肺動脈はダクロングラフトにて肺動脈幹に吻合し,動脈管は結紮した.手術成功例としては最年長例と思われる.術後経過は良好で現在無症状である.
  • 板岡 慶憲, 一色 高明, 佐伯 文彦, 山口 徹, 古田 昭一, 戸出 浩之, 遠田 栄一
    1994 年 26 巻 2 号 p. 152-156
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ドプラ断層心エコー図にて診断し得た巨大右冠動脈左室瘻の1例を報告する.症例は47歳,男性.労作時胸痛と心雑音を主訴に入院.負荷心電図で左室後壁の虚血性ST変化と,負荷心筋シンチグラムにて左室後下壁に再分布像を認め,同部の心筋虚血が示唆された.断層心エコー図で大動脈基部右前方より右室側壁,左室後壁を経由し左室内に開口する最大内径約20mmの異常血管像を認めた.ドプラ断層心エコー図では同血管内に拡張期にのみ流速75cm/secの血流シグナルを検出し,この血流が左室後方僧帽弁弁輪附近より左室心尖部に向かう左室内乱流シグナルに連続することが確認された.以上より右冠動脈左室瘻と診断,冠動脈造影にて確診後,瘻孔直接閉鎖術を施行.負荷心電図は術後陰性化し,ドプラ断層心エコー図では術直後および5年後でも異常血流シグナルは検出できなかった.
    右冠動脈左室瘻はまれな疾患で,ドプラ断層心エコー図にて非侵襲的に診断,術後の経過観察が可能であり,さらに瘻孔閉鎖術にて狭心症を治癒させることができ,冠スティール現象を直接確認し得た.
  • 里見 元義
    1994 年 26 巻 2 号 p. 157-159
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 高橋 淳, 家坂 義人, 全 栄和, 徳永 毅, 雨宮 浩, 藤原 秀臣, 野上 昭彦, 青沼 和隆, 廣江 道昭, 丸茂 文昭, 新田 順 ...
    1994 年 26 巻 2 号 p. 160-168
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    難治性上室性頻拍あるいは頻脈性心房細動を合併し,右側後中隔に副伝導路を有するB型WPW症候群2例においてカテーテルアブレーションを試みた.頻拍中最早期逆行性心房興奮および洞調律時最早期心室興奮部位を指標に右房後中隔に16-20Wで10-30秒間の高周波通電を施行し,症例1では通電時のみ副伝導路伝導の消失を認めるものの,計21回の通電にても完全離断には至らず,症例2では,左側および冠静脈洞内アプローチを含む計11回の通電にても副伝導路は離断できなかった.以上から本2症例とも高周波アブレーションの限界と考え,後中隔心房側からの150J連続2回の直流通電を施行しアブレーションに成功した.アブレーションによる合併症は認められず,症例1は15カ月,症例2は5カ月の経過観察にて,副伝導路伝導の再発および頻拍の出現は認められていない.
  • 佐竹 修太郎
    1994 年 26 巻 2 号 p. 169-170
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 上田 恭敬, 三嶋 正芳, 平山 篤志, 堺 昭彦, 三崎 尚之, 足立 孝好, 児玉 和久, 正井 崇史, 榊原 哲夫, 辻本 正彦, 小 ...
    1994 年 26 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Stanford A型の大動脈解離に合併した冠動脈主幹部解離により,切迫梗塞様の臨床病像を呈した症例を経験した.症例は54歳女性.平成3年5月15日23時頃より,胸痛・呼吸困難が出現したため来院.来院時の血圧は160/90mmHg,脈拍は65/分・整であった.前胸部に肺ラ音および拡張期心雑音を聴取し,心電図上II,III,aVF,V4~6誘導にてSTの低下を認めた.さらに血清CPKの上昇,心エコーにて前壁中隔の著明な壁運動低下を認めたため,切迫梗塞を疑い緊急冠動脈造影を施行した.その結果,左冠動脈主幹部に90%狭窄を認めたが,狭窄部形状はなめらかな病変であり,coronary dissectionと考えられる線状の陰影欠損を認めた.大動脈造影にて,上行大動脈内のflap形成と大動脈弁閉鎖不全(IV度)を認めた.以上より,Stanford A型の大動脈解離に,大動脈弁閉鎖不全,および冠動脈解離による心筋梗塞を合併したものと診断,緊急手術を行った.
    胸痛と共に虚血性心電図変化を呈する場合,心筋梗塞と即断しがちであるが,心筋梗塞の原因疾患として大動脈解離の合併を常に念頭において診断する必要があると再認識させられた.
  • 大倉 宏之, 鷹津 良樹
    1994 年 26 巻 2 号 p. 177-181
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は26歳女性.第1子分娩時,胎盤早期剥離あり子宮収縮薬使用.5日後に突然前胸部圧迫感出現,硝酸薬にて軽快した.心電図変化より急性心筋梗塞を疑われて転院となった.現症では両側下肺野に湿性ラ音聴取.胸部X線写真では心拡大著明.心電図では左側胸部誘導で陰性T波,aVLでのQ波を認めた.心エコーではび漫性特に前壁中隔~心尖部に著明な壁運動低下があり,冠動脈造影では有意狭窄を認めなかった.利尿薬,血管拡張薬にて左室壁運動はすみやかに改善.慢性期の冠動脈造影時に冠攣縮の存在が確認された.周産期の心筋梗塞は非常にまれであり,その原因は冠動脈解離,動脈硬化,冠動脈血栓,冠攣縮と様々であるがその原因を特定しえないことが多い.本例は子宮収縮薬による冠攣縮がその成因と考えられた症例であり,同様の報告は,本邦においては過去に5例とまれであるため文献的考察を加え報告した.
  • 東 祐圭, 近藤 政彦, 今井 健介, 川端 美緒, 小林 千春, 堤 健, 真島 三郎, 傅 隆泰
    1994 年 26 巻 2 号 p. 182-187
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は動悸発作を主訴とする61歳の女性.心電図は顕性WPW心電図波形を示し,臨床電気生理学的検査でnode-ventricular fiberの存在は否定され,Kent束の局在は右房側壁と考えられた.Kent束の順行有効不応期は280msec,1:1房室伝導能は300msecで,心房早期刺激法,連続刺激法ともにS-δ時間の延長は認めず,isoproterenol負荷でKent束の不応期の短縮,伝導の促進が見られた.δ波はverapamil, ATP, propranolol, disopyramideの投与およびpropranolol投与中のValsalva手技で消失した.またpropranolol投与で消失したδ波は硫酸atropineの投与で再出現した.
    本例はKent束伝導が薬理学的に房室結節の伝導に類似したまれなWPW症候群の1例と考えられた.
  • 山口 あけみ, 野出 孝一, 大谷 勝彦, 島津 敬, 白井 潤, 和田 博子, 伊東 宏
    1994 年 26 巻 2 号 p. 188-193
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は20歳男性で心不全を初発症状とし,他医にて心筋生検の結果,心筋炎後の拡張型心筋症類似状態と診断されていた.心エコー図検査,心室造影,核医学検査にて,著明な左室内腔の拡張と両心室の全周性壁運動低下を認め,拡張型心筋症様所見を呈していたが,高CK血症の存在より筋疾患を疑い,筋電図検査,大腿四頭筋の筋生検を行い筋ジストロフィーの診断を得た.ジストロフィン染色ではpatchyな染色性を示し,Becker型進行性筋ジストロフィーおよびそれによる心不全と診断した.Becker型進行性筋ジストロフィーは心筋病変を合併することはまれで,心不全を合併したとする報告は少ない.本例は心不全を初発症状とするまれな1例と考えられたので報告する.
  • 柴本 茂樹, 柏原 赳, 作山 欽治, 川上 房男, 多胡 基, 奥野 巍一, 辻 求, 河口 直正, 大西 俊造
    1994 年 26 巻 2 号 p. 194-199
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    55歳男,S49年より胸内苦,動悸を自覚した.S59年本院にて褐色細胞腫摘除術施行.術前検査ではCTR=47%,ECGはTの平低化,UCGはLVDd=55mm,下壁は13mmと肥厚し同部の壁運動が低下していた.T1心筋シンチでは欠損なし,Tc-PYP心筋シンチでは心筋に集積を認めていた.術後もVPC頻発,左室壁運動の低下が進行するためH3年7月心精査入院.血圧120/80mmHg,脈拍66/分整,心音清.尿中カテコールアミン上昇なし.薬物の誘発試験は陰性であった.CTR=49%ECGは左房負荷,Rの減高,Tの平低化.UCGはLVDd=60mm,左室壁運動はび漫性に低下していた.冠動脈は正常,左室造影ではLVEFは32%であった.左室心内膜生検を施行し光顕では心筋細胞の大小不同性と間質の線維化を認めたが炎症細胞は認めず,電顕では心筋細胞周辺部に電子密な変性物質の沈着,ミトコンドリアの退行性変性の傾向等を認めた.通常,褐色細胞腫の心病変は腫瘍摘出後は回復するといわれているが,本症例は拡張型心筋症類似の病態に悪化した.褐色細胞腫の罹病期間が10年と長期のためカテコールアミン心筋症が不可逆性の変化を示したと考えた.
  • 曽原 寛, 合屋 雅彦, 矢島 隆司, 杉本 圭市, 宮原 康弘, 清水 善次, 廣江 道昭, 丸茂 文昭, 高部 和彦, 伊藤 信夫
    1994 年 26 巻 2 号 p. 200-205
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は74歳男性.主訴は呼吸困難.平成2年3月2日に労作時の呼吸困難と下腿浮腫を認めたため当院を受診入院となった.身長160cm,体重69kg,血圧110/92mmHg,呼吸数40回/分.頸静脈に怒張を認めた.胸部X線写真上はCTR87%と著明な心拡大と軽度の肺うっ血を呈し,心エコーでは多量の心膜液を認めたため,心膜穿刺で血性液約1000mlを採取した.細胞診所見と組織化学的,免疫組織化学的染色(keratin陽性,EMA陽性,CA19-9陰性,CEA陰性),および電顕所見(細胞表面の豊富なlong slender microvilliと細胞質内のdesmosome)から悪性中皮腫と診断され,胸部造影CT,Ga-67シンチ,Tc-99m標識赤血球による心プールシンチとT1-201心筋シンチのdual isotope SPECT,TEE(食道エコー)から心膜原発性悪性中皮腫と診断された.アスベストと胸膜原発の悪性中皮腫との関連は有名であるが心膜原発との関連性についてはまだ十分に知られていない.本例では清酒醸造業従事歴があり,醸造濾過工程でアスベストが使用されていて,気管支洗浄液からアスベストを証明できたことからその関連性が強く示唆され,同業者の健康問題として看過できないと思われた.
  • 河合 祥雄
    1994 年 26 巻 2 号 p. 206-208
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 悦田 浩邦, 宮本 明, 水野 杏一, 荒川 宏, 杉藪 康憲, 里村 公生, 田畑 博嗣, 永吉 広和, 渋谷 利雄, 五十嶋 一成, 栗 ...
    1994 年 26 巻 2 号 p. 209-212
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    アテレクトミーが下肢末梢動脈血管形成術の新しいアプローチ法として注目されている.しかし,アテレクトミーカテーテルはバルーンカテーテルに比較してカテーテルが硬く,対側からのアプローチは不可能である.今回我々は,左外腸骨動脈の6cmの完全閉塞に対して,アテレクトミーを施行する際に,対側の大腿動脈からのバルーンアンギオプラステイを併用することで良好な開存を得た症例を経験した.症例:74歳男性.主訴:左下肢痛.入院時現症と経過:入院時,左大腿動脈の拍動は微弱で,アンクルプレッシャーインデックス(API)は右1.09左0.14だった.まず,健側の右大腿動脈を穿刺し4mmPTAバルーンで左外腸骨動脈の拡張を試みた.この時点で左大腿動脈の拍動が触知良好となったため,同部位を穿刺し安全にアテレクトミーが施行可能だった.造影上一部ヘジーなところを認めたため,さらに8mmPTAバルーンによる拡張を追加した.以上の操作で閉塞部位は良好な開存を得た.24時間後のAPIは,1.03と正常化し,患者は翌日から歩行開始,2日後に軽快退院した.本例では術後6カ月時点で症状の再発を認めていない.
  • 平松 京一
    1994 年 26 巻 2 号 p. 213-214
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
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