心臓
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26 巻, 4 号
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  • 抗リン脂質抗体との関連
    鈴木 伸, 児玉 裕幸, 大橋 増生, 向井 正明, 加藤 一暁, 佐藤 孝一
    1994 年 26 巻 4 号 p. 341-347
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデス患者(以下SLE)26例を対象に,心臓弁膜病変と抗リン脂質抗体,SLEの疾患活動性と罹患期聞,加齢等の関連について検討した.弁膜病変は断層心エコー・ドプラ法により評価し,抗リン脂質抗体の検出には,ELISA法によるIgG抗カルジオリピン抗体および希釈組織トロンボプラスチン抑制試験によるループス抗凝固因子を測定した.本症では,僧帽弁および大動脈弁の硬化,肥厚,逆流性病変が高頻度に認められ,特に,肥厚病変が特徴であると考えられた.また,2例では僧帽弁位に疣贅が認められた.IgG抗カルジオリピン抗体は対象の38%に,ループス抗凝固因子は46%に検出された.僧帽弁肥厚は,IgG抗カルジオリピン抗体陽性例に多く認められ(p<0.01),僧帽弁の疣贅や,II度以上の僧帽弁逆流をきたした患者では,いずれも抗リン脂質抗体が陽性であった.一方,抗DNA抗体価,血清補体価,SLE罹患期間,年齢などと,弁膜病変とは差は認められなかった.これらのことより,SLEにおける心臓弁膜病変は,抗リン脂質抗体と関連があるものと示唆された.
  • 心室期外収縮抑制効果との対比
    井上 博, 笠貫 宏, 小川 聡, 下村 克朗, 早川 弘一, 杉本 恒明, 加藤 和三
    1994 年 26 巻 4 号 p. 348-354
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    メキシレチンの心室頻拍(VT)抑制効果を26施設共同で検討し,心室期外収縮(PVC)抑制効果と対比した.メキシレチンで治療されたVT(PVC3連発以上)を持つ症例88例を対象とした.PVC総数の抑制(≧75%)は40%で認められた.連発性PVCの抑制(≧75%)は,2連発,3連発,4連発,5連発以上で分けると,それぞれ54%,65%,79%,78%と,連発数が増すに従い抑制効果が高くなる傾向を示した.VTの抑制(≧75%)は64%でみられ,完全な抑制は42%でみられた.女性(p<0.05)および体重当たりの投与量が多い例(p<0.01)で,VT抑制効果が高かった.以上より,メキシレチンは単発性PVCに比べ連発性PVCを抑制する効果が大きく,また連発数が増すにつれてその抑制効果が大きくなる傾向を示した.PVC総数に対する抑制効果から,VT抑制効果を推測するには慎重でなくてはならない.
  • 小野 直見, 本康 宗信, 清水 雄三, 青木 俊和, 福井 敦, 西川 英郎, 角田 裕, 小西 得司, 中野 赳
    1994 年 26 巻 4 号 p. 355-360
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    PTCAにて再灌流後,冠動脈造影上no-reflow現象を呈した急性心筋梗塞例の臨床所見および左室壁運動の経時的変化に関して検討した.対象は急性心筋梗塞にて緊急PTCAを行った11例で,以下の2群に分け,比較検討した.no-reflow群;緊急PTCAにより責任冠動脈が90%以下の狭窄度に改善したにもかかわらず造影遅延を示した急性心筋梗塞5例.control群;PTCA後90%以下の狭窄度に改善し,造影遅延のなかった急性心筋梗塞6例.左室壁運動はPTCA直前,1-2日,7-14日の断層心エコーにて評価. 左室短軸像から左室を1 3 分割し,normal 0,hypokinesis 1,akinesis 2,dyskinesis 3として合計しスコア化した.no-reflow現象を示した例は急性心筋梗塞で緊急PTCAを行った連続80例中8例で,その頻度は10%であった.この8例中,左室壁運動を経時的に観察しえた5例をnoreflow群とした.no-reflow群は5例,全例男性で,平均年齢62.6±7.8歳,control群は男性3,女性3例で,平均年齢66.5±7.7歳であった.2群間で臨床所見の各指標間に有意差はないが,no-reflow群でPeak CKは高値の傾向で,平均動脈圧,心拍数は低値の傾向があった.血清総蛋白,アルブミン,白血球数,血小板数,総コレステロール値に差はなかった.責任冠動脈病変部位,PTCA前後の冠動脈狭窄度,側副血行路の有無,罹患枝数に関して差はなかった.局所壁運動スコアはno-reflow群では有意な経時的変化はないが,control群ではPTCA前に比べて1-2日後にスコアの有意な減少があった.PTCAによる再灌流後,アンギオ上no-reflow現象を示す急性心筋梗塞例では左室局所壁運動の改善が悪かった.臨床所見,血液生化学所見,冠動脈病変部位,側副血行路の有無,狭窄度に関してno-reflow現象を示す例と示さない例との間に差はなく,noreflow現象を示す例をPTCA前に予測することは難しい.以上よりno-reflow例では冠動脈狭窄度が改善しても,左心機能の回復が十分でないことから慎重な経過観察,内科的管理が必要であると考えられた.
  • 徳田 宇弘, 永田 正毅, 田口 誠一郎, 大坪 亮一, 矢坂 正弘, 栗田 隆志, 相原 直彦, 仲宗根 出
    1994 年 26 巻 4 号 p. 361-369
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    卵円孔開存は,paradoxical embolismの原因となったり,カテーテル焼灼術および電気生理学的検査施行の際には有利な条件となったりする.今回,経食道心エコー法(TEE)を用いて卵円孔開存の有無を予測しうるかを検討した.
    (対象と方法)発作性上室性頻拍の患者15例.(1)TEEにて,1)バルサルバ手技のみ,2)バルサルバ手技下のコントラストエコー法および3)コントラストエコー法のみの3方法を施行し検討した.卵円孔開存陽性とは,(A)バルサルバ手技下にコントラストエコー法を施行し,右房にコントラストの出現と同時にバルサルバ手技を解除し,解徐後3心拍以内に左房にコントラストが出現した時,あるいは(B)コントラストエコー法のみで,右房にコントラストが出現した後3心拍以内に左房にコントラストが出現した時,とした.(2)右大腿静脈からカテーテル(カテ)を用いて,カテが卵円孔を通過するか否かを調べた.(結果)(1)卵円孔開存陽性の基準(A)を満たす症例は5例で,基準(B)を満たす症例はなかった.(2)基準(A)の症例のうちバルサルバ手技解除後1心拍以内に左房にコントラストが出現した3例では,全例カテにて卵円孔を通過可能で,その他の症例ではカテによる通過は不可能であった.(考按)カテにて卵円孔開存の存在が確認された症例は全例1心拍以内にコントラストが左房に出現し,これまでの卵円孔開存陽性の基準である3,4心拍以内に出現するという基準とは異なっていた.また,バルサルバ手技のみ施行した際にもバルサルバ手技解除後3心拍以内に左房にコントラスト様エコーが出現する例が2例あり,従来通りのバルサルバ手技下のコントラストエコー法およびコントラストエコー法のみを施行した時,誤って卵円孔開存陽性と判断する可能性がある.したがって,バルサルバ手技のみも施行する必要があると考えられた.(結語)TEEにてカテ通過可能な卵円孔開存の存在を予測することは可能であり,それにはバルサルバ手技下のコントラストエコー法でバルサルバ手技解除後1心拍以内に左房にコントラストが出現するという基準が妥当であると考えられた.
  • 宮尾 益理子, 桑島 巌, 鈴木 康子, 三谷 健一, 宇野 彩子, 松下 哲, 蔵本 築
    1994 年 26 巻 4 号 p. 370-375
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    老年者白衣高血圧の鑑別診断および臓器障害の評価における心電図および心エコー図の意義について検討する目的で,高血圧患者46例と正常血圧者13例において24時間血圧測定値と心電図,心エコー図の所見について検討した.外来受診時の収縮期血圧が160mmHg以上であるにもかかわらず,24時間平均値が140mmHg未満の例を白衣高血群(WC群:16例),140mmHg以上を真性高血圧群(TH群:30例)とした.
    心電図所見はSokolow-Lyonの基準により,左室肥大(LVH)なし,high-voltageのみ(HV),highvoltageにST-T変化を伴う(LVH)の3群に分類,各群における各々の頻度を比較した.WC群における「LVHなし」の頻度は81.2%で,NT群76.9%と差がなかったが,TH群の36.7%に比し有意に高かった.外来時高血圧を呈する患者における,心電図の「LVHなし」のpositive predictive valueは54.2%,negative predictive valueは86.4%であった.このことから心電図上「LVHなし」所見の有無が白衣高血圧の簡易な鑑別法として有用と思われた.
    しかし一方,心エコー図での検討では左室心筋重量係数(LVMI)はWC群117.0g/m2であり,NT群の89.8g/m2に比し有意に大で,TH群130.0g/m2と差がなかった.このことから,心電図に比し心肥大の検出には精度の高い心エコー図での評価によれば白衣高血圧群では左室肥大は存在していることが示され,決して「無害」な病態ではないことを示した.
    以上の成績より,外来高血圧患者の白衣高血圧の鑑別には,心電図上の『左室肥大なし』の所見が有用であるが,心エコー図上左室肥大は存在し,白衣高血圧患者は臓器障害の面からは正常者と同一ではないことが示された.
  • 今井 潤
    1994 年 26 巻 4 号 p. 376-381
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 杉生 祐史, 葉 昌義, 大月 務, 山鹿 昭彦, 吉山 秀樹, 住田 英二, 阿座上 志朗, 菊竹 修平, 田中 政史, 古賀 義則, 戸 ...
    1994 年 26 巻 4 号 p. 382-387
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    大動脈弓離断症(Interruption of the aortic arch;IAA)はまれな先天性心疾患である.このうちIAAに心室中隔欠損症(VSD)と肺動脈下行大動脈幹(Pulmonary ductus descending aorta trunk;PDDT)を合併する,いわゆるEverts-Suares and Carsonの三徴を呈するタイプは成人まで生存することはほとんどないとされている.我々は成人になり診断されたEvertsらの三徴を合併したIAAを経験した.患者は47歳女性で,生後6カ月で先天性心疾患を指摘され,以後cyanosis,無酸素発作等を自覚するも放置.26歳時に結婚し,一子を無事に出産している.しかし,その後しだいに労作時のcyanosisが増強するようになり当科入院.著明なcyanosisは認めるも,differential cyanosisは明らかでなかった.胸部X線写真では左II弓の著しい突出,心電図では著明な右室肥大が認められた.MRIや心臓カテーテル検査等にて鷲尾の分類のI-A型に相当するIAAと診断した.酸素負荷では,後述のごとく肺血管の反応性は維持されていたが,左右等圧の肺高血圧症で,血行動態的にも上行,下行両大動脈とも十分な血流が保たれており,根治手術は見合わせ内科的に治療を続けることとした.
    本例は我々の知る限り,Evertsらの三徴を合併したタイプでは最高齢であり,しかも分娩も無事に達成しており,精査時より約2年6カ月経過した現在も日常生活が可能な極めて稀な1例と思われ,ここに報告する.
  • 中津 忠則, 森 健治, 吉田 哲也, 林 弘治
    1994 年 26 巻 4 号 p. 388-393
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は日齢4の男児で,呼吸障害が出現し,胸部X線像にて右側に胸水貯留像を認めた.胸腔穿刺にて白濁オレンジ色の胸水を採取し,組成より乳糜胸と診断した.心音はギャロップリズムを示した.左上肢と両下肢の脈が弱いため左橈骨動脈造影を行い大動脈弓離断症と診断した.心臓カテーテル検査にて,心室中隔欠損および動脈管開存は伴わず,stretched foramen ovaleを認めた.また左鎖骨下動脈起始部は大動脈弓より離断しており,下行大動脈とも離れていた.本例は新生児期にすでに下行大動脈への豊寓な側副血行路を形成していたが,心不全および難治性乳糜胸による呼吸不全のため日齢26に死亡した.大動脈弓離断症において,左鎖骨下動脈起始部の離断している病型の報告例はなく,Celoriaなどの従来の分類では表現できない症例と考えられたので報告する.
  • 経食道心エコー法の有用性
    高橋 将文, 高橋 和彦, 松沢 浩, 武田 久尚, 木下 俊文, 伊藤 久雄, 田所 正路
    1994 年 26 巻 4 号 p. 394-398
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,女性.1992年6月検診にて心雑音指摘,精査目的にて入院となった.経胸壁心エコー検査では上行大動脈の拡大と大動脈弁閉鎖不全を認めたが,大動脈弁尖の形状ははっきりしなかった.大動脈造影では大動脈弁輪部より上行大動脈が嚢状に拡大しており,最大径は約60mmであった.冠動脈造影では回旋枝が右バルサルバ洞より起始する冠動脈起始異常を示していた.さらに経食道心エコー検査を行ったところ,大動脈弁尖のドーミングとプロラプスおよび大動脈二尖弁を認めた.また上行大動脈の拡大,右冠動脈および回旋枝起始部,さらには大動脈後方と左房の間の回旋枝の走行異常についても観察可能であった.以上より冠動脈起始異常と大動脈二尖弁を合併した大動脈弁輪拡張症と診断し,Cabrol手術を施行した.先天性大動脈二尖弁と冠動脈起始異常が合併した大動脈弁輪拡張症は極めてまれであるが,これら大動脈弁輪部付近の観察および診断に経食道心エコー法が非常に有用であると考えられた.
  • 井上 正
    1994 年 26 巻 4 号 p. 399-402
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 早川 拓治, 石井 良直, 川村 祐一郎, 川嶋 栄司, 本田 肇, 長谷部 直幸, 羽根田 俊, 山下 裕久, 飛世 克之, 小野寺 壮吉 ...
    1994 年 26 巻 4 号 p. 403-407
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.朝方の労作時胸痛を主訴に当科に入院した.入院後の胸痛出現時の心電図では,I,II,aVL,V3~V6にST低下とV2~V5に陰性U波を認めた.トレッドミル運動負荷試験では,ST低下度,胸痛出現までの運動時間に日内変動および日差変動を認め,冠攣縮の関与が示唆された.大動脈造影では,右冠動脈の入口部は不明であり,冠動脈造影では,左冠動脈回旋枝が末梢より本来の右冠動脈領域まで灌流していた.また,左前下行枝近位部に50%狭窄を認めたが,運動負荷にて同部は99%狭窄となり,自然発作時と同様の心電図変化を伴った.以上よりSmith Type Iの左単冠動脈症に運動誘発性冠攣縮性狭心症を合併した1例と診断した.単冠動脈症の報告例は増加してきているが,冠攣縮性狭心症の合併を冠動脈造影にて証明し得たものはまれであり,運動負荷にて確定診断できたので報告する.
  • 小松 隆, 千葉 実行, 蓬田 邦彦, 三上 雅人, 三国谷 淳, 小野寺 庚午, 高橋 健, 中山 寛
    1994 年 26 巻 4 号 p. 408-415
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.主訴は動悸.昭和30年より動悸発作が出現していたが,しだいに発作頻度が増加するため精査加療目的にて入院.臨床心臓電気生理学的検査では安静時His束心電図は洞周期820msec,PA35msec,AH75msec,HV35msecとすべて正常であった.しかし,心房早期刺激法では,基本周期600msec連結期S1S2380msecから330msecの範囲で,S2に続くQRSは正常型から右脚ブロック(以下RBBB)型へと変化し,さらにS1S2 320msecから310msecの範囲でHV間隔の延長を認め,数連発の正常型QRS発作性上室性頻拍(以下PSVT)の誘発後,RBBB型PSVTへの移行を認めた.さらにS1S2300msecの範囲ではHV間隔の延長を認めたが,それに続くQRSは左脚ブロック型に変化した.S1S2290msecから240msecの範囲で突然のAH間隔延長を認め,数連発の正常型PSVTが誘発された後,RBBB型PSVTへの移行を認めた.心室早期刺激法では,逆伝導の最早期興奮部位は冠静脈洞にあり,連結期の短縮にもかかわらず逆伝導時間は一定であった.本症例は左房左室間に副伝導路を有する潜在性WPW症候群であり,心房早期刺激法による連結刺激間隔短縮時にHV時間の伝導遅延があるにもかかわらず,正常型QRS波形のPSVTが誘発されたまれな症例と思われた.
  • 大山 高令, 並木 重隆, 星 俊安, 大谷 余志, 板井 勉, 中島 克彦, 加藤 仁志
    1994 年 26 巻 4 号 p. 416-420
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    今回我々は感染性心内膜炎(IE)に合併した細菌性脳動脈瘤(MCA)破裂後neck clipping術にて救命しえた症例を経験したので報告する.症例は24歳女性.歯科処置後1カ月間微熱が持続し近医を受診.心雑音出現で当院紹介されIEにて入院.抗生剤(PCG)投与にて軽快後,残存う歯抜歯後に髄膜刺激症状出現.CT・脳血管造影にてMCA破裂によるくも膜下出血と診断.髄膜炎の合併がみられたが抗生剤再投与で軽快した.しかし脳血管造影再検にてMCAの拡大傾向を認め脳動脈瘤neck clipping術を施行し,良好な経過で退院した.IEでは治療経過中の神経学的徴候に注意しCT・脳血管造影を積極的に行い,MCA破裂を早期に発見するとともに,効果的な治療法を選択する重要性が示唆された.
  • 猪又 孝元, 瀧澤 淳, 高橋 稔, 大島 満, 渡辺 賢一, 広川 陽一, 柴田 昭
    1994 年 26 巻 4 号 p. 421-426
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は52歳男性.1991年11月22日右被殻出血に対する血腫吸引術施行後より高熱,意識障害,血圧低下を認め,26日当科転院.24日の髄液検査上,白血球増多を示し,髄膜炎と診断された.入院時心電図上全誘導にわたるST上昇,心エコー上びまん性壁運動低下,心筋逸脱酵素の著増を認めたが,冠動脈造影上狭窄病変を認めなかった.11月29日施行の99mTcピロリン酸心筋シンチグラムでは全周性の著明集積を示したが,12月2日撮影の67Ga心筋シンチグラムでは明らかな集積を認めなかった.経過中DICを合併したが,一般的療法にて心機能,意識レベルとも急速に改善した.発症7週目に施行した左室心内膜心筋生検では急性心筋炎治癒期の所見が認められた.
    99mTcピロリン酸は心筋障害を, 67Gaは炎症細胞浸潤をその集積機序としており,本例における心筋シンチグラム所見は,急性心筋炎の炎症治癒過程での特定の時期を反映する可能性が考えられた.
  • 新井 正, 成宮 茂利, 早川 和良, 高屋 忠丈, 戸島 敏, 打田 敦, 吉見 直己, 安田 洋
    1994 年 26 巻 4 号 p. 427-432
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の女性,主訴は咳嗽と胸部X線異常影,既往歴および家族歴に特記すべきことなし.入院時胸部X線写真にて左肺尖部異常影があり,胸部単純造影CTおよびDSAによる大動脈造影にて,左鎖骨下動脈瘤と診断され,死亡後の病理解剖にて,動脈硬化性の動脈瘤と確定診断された.鎖骨下動脈瘤の発生頻度は少なく,文献的に検索しえた症例は,1992年までに自験例を含め,本邦において100例の報告にすぎない.性別では,男性71例,女性27例,不明2例で,最高齢は75歳,最年少は10歳で比較的若い男性に多いのが特徴的であった.左右差に関しては,左側48例,右側38例,両側12例,不明2例でやや左側が多く,また病因別では,動脈硬化によるものが最も多く,22例であった.
  • RR間隔-連結期関係からみた心室性不整脈の臨床的評価法
    猪岡 英二, 高橋 孝, 貴田岡 成憲, 興野 春樹, 佐藤 昇一, 白土 邦男, 佐川 貢一, 猪岡 光, 小島 康彦
    1994 年 26 巻 4 号 p. 433-441
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ホルター心電図により突然死へ進展する危険性の高い致死性不整脈を予測し,あわせてPVC発生機序を推定する解析法(Analytic Ambulatory ECGStudy)につき報告した.ホルター心電図を,通常の解析を行うと共に,不整脈,時間情報をフロッピーディスクへ転送しパソコンでPVCに先行する直前の洞収縮のRR間隔をX軸にそれに続くPVCの連結期(CI)をY軸にプロットし直線回帰式の勾配(a),RR間隔及びCIの平均値±標準偏差値(Sd)を計算し,特発性不整脈群,心疾患群,及びいわゆる突然死群につき比較した.その結果,特発性不整脈群は全例,a<0.2,Sd<40msecのFixed typeに,突然死群では大多数はa>0.2,Sd>40msのMixed type,一部a<0.2,Sd>40msecのScattered typeに属し,特にMixed typeに有意に高く出現,一方心疾患群では,全typeにわたり分布し,以上の特徴からPVCの危険度推定が可能であった.次いでPVC発生頻度の心拍依存性とBasic Cycle Length変動とCI(PVC出現時間)関係からPVC発生機序の推定を試みた.電気生理学的にReentryを示唆した4例,否定的な3例で検討したが,前者で心拍依存性は正相関(徐脈で多発),且つ徐脈で伝導時間は短縮したのに対し,後者では心拍依存性は負相関(頻脈で多発),且つ頻脈で出現時間が短縮し,実験モデルで示されたDelayed Afterdepolarizationの特徴を示した.以上から本法により非観血的にもPVC発生機序の解析が可能と結論された.
  • 犀川 哲典, 伊東 盛夫, 有田 眞
    1994 年 26 巻 4 号 p. 442-451
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    我々は従来より,独自の方法で心室性期外収縮(VPC)の心拍依存性を24時間心電図記録からパターン化し,それぞれのパターンの特徴とそれに対する抗不整脈薬の効果を検討し報告してきた.本論文では,これまでの報告を整理して紹介した.検討した薬物は,vaughan Williams分類のI, II ,IV群のdisopyramide, mexiletine, propafenone, pilsicainide, atenolol, propranolol, diltiazemの7つの抗不整脈薬である.その結果,I群の4つの薬物のうち,pilsicainideを除く3つの薬物はVPC-HR関係の促進型と非促進型のいずれにも等しく有効であった.しかし,pilsicainideは両型に有効ではあるものの特に非促進型により高い有効率を示した.Atenololとpropranolol,そしてdiltiazemは促進型にのみ有効であった.
    一方この心拍依存性を心拍変動性と関連づけて解析すると興味深い結果が明らかとなった.促進型が非促進型に比し,TP, LFが有意に高いこと(p<0.05),そしてHFも高い傾向(p<0.1)を示した.またピルジカイニドは投与後にLF,LF/HFを有意に低下させた.心拍変動とVPCの心拍依存性を対比することでVPCの新しい解析が可能となった.
  • 村川 裕二
    1994 年 26 巻 4 号 p. 452-456
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    異所性自動能を機序とする副収縮において,洞調律によるelectrotonic tonic modulationのためにその周期が修飾され得ることが知られている.この考えに基づいて洞調律下に心室性のmodulated parasystoleが出現する数学モデルを作成した.構成要素として洞周期,副収縮周期,不応期,代償性休止期が生じる条件,およびmodulationの様式を規定するphase-response curveを取り入れた.このモデルより,副収縮と非副収縮それぞれに特異的な連結期対先行RR間隔の関係を求めた.ホルター心電図記録60例の結果とモデルの結果を比較すると,15例と17例がそれぞれ副収縮と非副収縮に特徴的な連続期対先行RR間隔の関係を持っており,他は判別できなかった.また,副収縮性心室期外収縮の発生頻度は一様な心拍数依存性を示さないこともモデルより示唆された.
  • 矢永 尚士, 岡島 光治
    1994 年 26 巻 4 号 p. 457-473
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2013/05/24
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