腎血管性高血圧ラットに,Ca拮抗薬としてbenidipineを長期間投与し,高血圧性心肥大と冠予備能に及ぼす影響を,colored microsphere法(CMS)により検討した.雄のSprague-Dawleyラットを用い,腎血管性高血圧ラット(RHR:2K-1 C Goldblatt)を作成し,sham operationを施行したもの(ShC,n=9)を対照とした.tail-cuff法にて4週間血圧が160mmHg以上であることを確認した後,RHRをbenidipille治療群(T-RHR,n=9)と未治療群(U-RHR,n=9)に分け,benidipine:5mg/kg/dayを6週間投与した.実験3日前に麻酔人工呼吸下に開胸し,左房にPEチューブ10を,前日に大腿動脈にPEチューブ50を挿入し後頸部に固定した.実験は無麻酔無拘束下で施行し,冠血流量および心拍出量の測定は,CMSを用いたreference bloodsample法により施行した.安静時冠血流量を測定後,最大冠血流量を評価する目的で,carbochrome;12mg/kgを左房より投与し,再び冠血流量を評価した.T-RHRでは血圧は全末梢抵抗の減少に伴って低下し,左室重量は著明に減少した(2.63±0.07vs3.54±0.10mg/g,U-RHR,p<0.01).またすべてのラットにおいて,血圧と左室重量とは有意な正の相関関係(r=0.974,p<0.001)を示した.安静時冠血流量はT-RHRで有意に(p<0.05)に増加した.最大冠血流量と冠予備能は,U-RHRではShCより低下していたが,T-RHRではU-RHRと比べ有意に増加した.以上よりbenidipineは,すでに高血圧と心肥大が存在した後でも,心肥大の退縮をもたらし,冠予備能を改善せしめ,降圧薬として優れた特徴を持つことが示唆された.
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