心臓
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27 巻, 12 号
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  • 申請50症例のまとめと予後判別のための指標の検討
    戸嶋 裕徳, 矢崎 義雄, 河合 忠一, 安田 寿一, 高尾 篤良, 杉本 恒明, 河村 慧四郎, 関口 守衛, 川島 康生, 小柳 仁, ...
    1995 年 27 巻 12 号 p. 1033-1043
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1994年9月までに提出された日本循環器学会心臓移植適応検討会の適応判定申請例は50症例に達した.うち2例は取り下げとなったが,判定を行った48症例につき調査し以下の結果を得た.
    1)5例は公式の検討会開催を待たずに死亡した.
    2)資料の不備や現時点での適応なしなどの理由により6例は保留と判定された.また1例は肺血管抵抗増大のため適応なしと判定された.
    3)適応ありと判定された36例中14例が2年以内に心不全または突然死により死亡した.7例は米国において移植手術を受けた.
    4)内科的治療によって3例は改善して当面は移植の必要性がなくなった.1994年末現在の待機中患者は13例である.
    5)心臓移植適応ありと判定後最長余命1年を予測しうる指標を求めるために,判定後1年以内に死亡した12例に対し2年以上生存した7例および臨床像の改善を認めた3例の計10例を対照群として,多変量解析数量化理論第II類を応用して生死の判別を試み,両群をよく判別しうる予後指数を求めることができた.
    6)今回の解析結果から得られた1年以内の予後不良因子は,心機能NYHA IV度,3回以上のIV度心不全の既往の他,従来用いられてきた血行動態的指標よりは低電位差(肢誘導<5mm),異常Q波>2誘導,QRS間隔の延長といった心電図に関する情報が心筋自体の高度の病変を反映する所見として予後不良を示唆し,心臓移植の適応を考える上で重要な意義をもつと思われた.ただし統計処理に用いた症例数が少ないので,今後も引き続き症例を増すと共に今回は検討できなかった血中ノルアドレナリン,ANPおよびBNPなどの神経体液性因子その他の予後予測因子をも含め再検討することが望まれる.
  • 小児での試行
    浜田 洋通, 太田 文夫, 黒崎 知道
    1995 年 27 巻 12 号 p. 1044-1049
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    血液と心内膜境界をリアルタイムに自動検出する新しいエコーシステム,Acoustic quantification法を用い,健康小児15例の拡張末期・収縮末期左室短軸断面積およびその変化率を測定し,従来のマニュアルトレースによる測定計測値をスタンダードとしてその信頼性を検討した.Acoustic quantification法の値とマニュアルトレースの値は拡張末期左室断面積(r=0.94),収縮末期左室断面積(r=0.80)ともに良好な相関を示した.測定絶対値は過小評価となり,拡張末期左室断面積は一次回帰式でY=0.54X+1.30(X:マニュアルトレースの値,Y:Acoustic quantification法の値),収縮末期左室断面積はY=0.50X-0.36であった.また左室断面積変化率はY=0.81X+26.5の式で回帰され,マニュアルトレースによる測定計測値より大きい傾向を示した.Acoustic quantification法での小児の左室短軸断面積測定はマニュアルトレース法と比較し,相関は良好であるが,計測値は過小評価となりその臨床適用には注意を要する.今後,断面積・容積変化率や変化速度等の相対値の臨床適用を検討する必要がある.
  • 湯浅 豊司, 高田 重男, 島倉 淳泰, 中村 由紀夫, 臼田 和生, 山田 素宏, 紺谷 真, 小林 健一
    1995 年 27 巻 12 号 p. 1050-1056
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    動物実験において,ジギタリスは動脈および心肺圧受容体機能を亢進させることが示されている.今回,心不全患者の障害された心肺圧受容体機能をジギタリスが改善するか否かを明らかにするため,軽・中等症心不全患者10名を対象に-10,-20mmHgの下半身陰圧に対する筋交感神経活動(MSNA)の反応をセジラニド0.4mg静注前後で比較検討した.MSNAは微小神経電図法を用い,腓骨神経より導出した.また,他の反射性交感神経反応に及ぼすジギタリスの効果を,等尺性運動負荷によるMSNA反応により評価した.
    安静時心拍数は,セジラニド投与により有意に滅少したが,収縮期圧,拡張期圧,中心静脈圧に変化はなかった. 安静時M S N A は3 1 . 6 ± 1 6 . 2 から26.6±13.5bursts/minへ有意に低下した.下半身陰圧-10,-20mmHgにより中心静脈圧は有意に低下したが,低下の程度は投与前後で差はなかった.下半身陰圧に対するMSNAの増加率は,-20mmHgでセジラニド投与後有意に大であった.心肺圧受容体感受性を,中心静脈圧の変化度に対するM S N A の増加率の比で示すと, 投与前3 . 8 ± 1 2 . 9から投与後2 0 . 8 ± 1 8 . 2 % / m m H g へと有意に亢進した.等尺性運動負荷に対するMSNA反応には投与前後で差はなかった.以上より,ジギタリスは心不全患者の心肺圧受容体機能を改善し,それに伴い亢進した交感神経活動を低下させた.
  • 小林 直彦, 小林 公也, 高野 幸一, 高田 正則, 土谷 範昭, 八木 繁, 松岡 博昭
    1995 年 27 巻 12 号 p. 1057-1064
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    腎血管性高血圧ラットに,Ca拮抗薬としてbenidipineを長期間投与し,高血圧性心肥大と冠予備能に及ぼす影響を,colored microsphere法(CMS)により検討した.雄のSprague-Dawleyラットを用い,腎血管性高血圧ラット(RHR:2K-1 C Goldblatt)を作成し,sham operationを施行したもの(ShC,n=9)を対照とした.tail-cuff法にて4週間血圧が160mmHg以上であることを確認した後,RHRをbenidipille治療群(T-RHR,n=9)と未治療群(U-RHR,n=9)に分け,benidipine:5mg/kg/dayを6週間投与した.実験3日前に麻酔人工呼吸下に開胸し,左房にPEチューブ10を,前日に大腿動脈にPEチューブ50を挿入し後頸部に固定した.実験は無麻酔無拘束下で施行し,冠血流量および心拍出量の測定は,CMSを用いたreference bloodsample法により施行した.安静時冠血流量を測定後,最大冠血流量を評価する目的で,carbochrome;12mg/kgを左房より投与し,再び冠血流量を評価した.T-RHRでは血圧は全末梢抵抗の減少に伴って低下し,左室重量は著明に減少した(2.63±0.07vs3.54±0.10mg/g,U-RHR,p<0.01).またすべてのラットにおいて,血圧と左室重量とは有意な正の相関関係(r=0.974,p<0.001)を示した.安静時冠血流量はT-RHRで有意に(p<0.05)に増加した.最大冠血流量と冠予備能は,U-RHRではShCより低下していたが,T-RHRではU-RHRと比べ有意に増加した.以上よりbenidipineは,すでに高血圧と心肥大が存在した後でも,心肥大の退縮をもたらし,冠予備能を改善せしめ,降圧薬として優れた特徴を持つことが示唆された.
  • 倉岡 節夫, 折田 博之, 渡辺 隆夫, 乾 清重, 後藤 智司, 鷲尾 正彦, 秋場 伴晴
    1995 年 27 巻 12 号 p. 1065-1069
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    過去17年間に経験した59例のinfective endocarditis(IE)のうち10例(17%)が先天性短絡疾患を基礎疾患に有していた.短絡疾患はVSD 2例,V S D + P A + M A P C A 2 例, P D A 3 例, V a l s a l v a 洞動脈瘤破裂2例,anomalous origin of left coronary artery from pulmonary artery(ALCAPA)1例で,発症時平均年齢28.1歳,男4例,女6例であった.7例が活動期IEでNYHA心機能分類IV度であり,5例の刺激伝導障害と3例の肺梗塞を認めた.手術は1例を除き,短絡病変の完全な修復のほかに弁病変を有する症例に対して,機械弁置換術5例,弁形成術4例,人工弁移植を伴わない弁切除術(弁切除非置換術)3例を,大動脈弁5弁,僧帽弁2弁,三尖弁3弁,肺動脈弁3弁に対して施行した.1例が局所感染の残存による仮性大動脈瘤破裂で遠隔死したが,累積観察期間平均7.6年で実測生存率90%であった.若年者の三尖弁IEに対して弁形成が不可能な場合,機械弁置換術後の遠隔予後は必ずしも良好とは言えず,また三尖弁完全切除を施行した1例では右心不全の監視が重要となり問題を残した.肺動脈弁切除例は術後問題なく健在である.
  • 三井田 孝, 中村 裕一, 岡田 正彦
    1995 年 27 巻 12 号 p. 1070-1076
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体に対する薬物療法が,虚血性心疾患(IHD)の一次予防と二次予防に効果があるかを検討した.新潟県下9施設のFHヘテロ接合体37例(男性18例,女性19例,平均年齢52.1±11.3歳)を対象とした.IHD合併の有無により患者を一次予防群(I群:n=20例)と二次予防群(II群:n=17例)に分け,IHDの新規発症および症状の悪化と総コレステロール(TC)のコントロール状態との関係を調べた.平均観察期間は6.0±2.0年であった.全患者のTCは,治療後23.6%低下し(329±12mg/dl→255±10mg/dl;平均±SE,p<0.001)LDLコレステロールも23.1%低下した(251±12mg/dl→193±9mg/dl,p < 0 .001) . 37例中13例( 35.1 % :I 群7 例, II群6例)でTC値が220mg/dl以下にコントロールされ,IHDの新規発症や症状の悪化は認めなかった.治療によりTCが正常域にコントロールできなかった患者では,I群13例中2例にIHDが新規に発症しII群11例中2例で症状が悪化した.TCのコントロールが不良だった患者では,投与薬剤のコンプライアンス不良と薬剤の投与量不足が多い傾向を認めた.以上よりFHヘテロ接合体に対する薬物療法は,TCを220mg/dl以下の正常域まで低下させればIHDの一次予防および二次予防に効果があることが示唆された.TCコントロール不良群には,薬物療法の強化やLDLアフェレーシスの併用が望まれる.
  • 青木 貴徳, 原田 貴之, 加藤 淳一, 塩越 隆広, 西條 泰明, 森本 寛, 増川 才二, 川嶋 栄司, 青木 秀俊, 村上 忠司, 神 ...
    1995 年 27 巻 12 号 p. 1077-1083
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.左室後側壁に最大径6.5cmの心室瘤が存在し,この流入口は1.3cmと瘤径に比較し小さく,術前に仮性心室瘤と診断したが,摘出標本の病理学的検討では心筋としての走行,横紋が瘤壁に認められ陳旧性心筋梗塞に伴う真性心室瘤(偽性仮性心室瘤)であった.心筋梗塞に合併する左室瘤では,形態的特徴や存在部位から真性および仮性の鑑別は比較的容易とされるが,実際には種々の画像診断でも鑑別の困難な症例もあり,その確定診断は病理学的診断に委ねられる.左心室瘤の鑑別診断においては,偽性仮性心室瘤も念頭におくべきと考えられた.
  • 田中 公啓, 室田 欣宏, 安藤 武士, 浅野 献一
    1995 年 27 巻 12 号 p. 1084-1087
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    41歳女性の胸部嚢状大動脈瘤の1例を経験した.手術前の検査より大動脈縮窄症に合併した大動脈瘤であると思われた.F-Fバイパスを用いて瘤切除人工血管置換術を行った.大動脈縮窄症は管前型で大動脈瘤は3肋間動脈入口部にできたものと考えられた.管前型大動脈縮窄症に合併した大動脈瘤はまれなので報告し,若干の考察を加えた.
  • 井上 正
    1995 年 27 巻 12 号 p. 1089-1092
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 山中 淳, 竹内 靖夫, 五味 昭彦, 小豆畑 潔, 八島 正文
    1995 年 27 巻 12 号 p. 1093-1096
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    大動脈弁置換術は現在,心臓血管外科の手術の中では日常的に行われているものであるが,今回,我々は大動脈弁置換術後に大動脈右房短絡を発症し再手術を施行したMarfan症候群の1例を経験したので大動脈弁置換術後のまれな合併症の1つとして報告する.大動脈弁置換術の合併症としては,刺激伝導系の損傷による完全房室ブロック,冠動脈の損傷による急性心筋梗塞,人工弁周囲逆流,および心内短絡の発生などがある.しかし,大動脈弁置換術後の医原性心内短絡の報告は極めて少なく,左室右房短絡と大動脈右室短絡の報告があるものの,今回の症例のような大動脈右房短絡の報告は検索しえたかぎりでは前例がなかった.短絡発生の機序は単一ではないが,弁切除や人工弁縫着時の操作による弁輪組織損傷が考えられ,特に当症例のようなMarfan症候群においては可能なかぎり慎重な操作をすることが望ましい.
  • 小澤 敬也
    1995 年 27 巻 12 号 p. 1099-1108
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ヒトの体への外来性遺伝子の投与が遺伝子マーキングという形で1989年に初めて試みられ,次いで1990年に最初の本格的な遺伝子治療がADA欠損症を対象疾患としてスタートした.〈遺伝子の治療〉から〈遺伝子を用いた治療〉へと概念が広がり,重篤な遺伝性疾患だけでなく,様々なアプローチにより癌やエイズなどの生命を脅かす疾患も対象とされるようになった.個々のプロトコールは,既存の他の治療法と比較してリスク/ベネフィット比が相対的に低いことが要求される.遺伝子導入法としては,ウイルス性ベクター[レトロウイルスベクター,アデノウイルスベクター,アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなど]と非ウイルス性ベクター[リボソームなど]があり,目的に応じて使い分けられる.現在では100を超える臨床プロトコールが米国のRAC(組換えDNA諮問委員会)で認可され,実際に遺伝子の投与を受けた患者は既に約600人に達する.残念ながら,現時点では有効性が確認されたものはまだ殆どない.その最大の原因は技術面にある(遺伝子導入効率と遺伝子発現レベルが低い)と思われる.しかしながら,全く新しい角度からの治療法を開拓することが可能になったという意味では画期的なことであり,遺伝子操作技術を取り入れた治療法は将来的には必ず重要な位置を占めるようになると予想される.
  • 小室 一成
    1995 年 27 巻 12 号 p. 1109-1118
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋細胞は出生後分裂を停止し,2度と分裂能を獲得することがないため,心筋梗塞などでいったん細胞が死ぬと心機能不全を招来する.そこでもし線維芽細胞を心筋細胞へ分化させたり,心筋細胞に分裂能を付与することができれぼ心不全死を少なくすることが可能となろう.現在のところはいまだ不可能であるが,心筋の分化や増殖の機序を理解することによって将来的には可能となると思われる.
  • 金田 安史
    1995 年 27 巻 12 号 p. 1119-1125
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    生体組織への遺伝子導入によって培養細胞レベルでは観察されなかった遺伝子の生体内での機能が解明されるはずである.私達はそのために生体組織への効率のよい遺伝子導入法の開発に携わってきた.これは外来遺伝子を成育動物の各臓器に直接導入し,強力に発現させたり逆に発現を抑制するもので,外来遺伝子を受精卵に導入する形質転換動物の作成とは本質的に異なる.私達は私達の研究室で開発された細胞工学的手法を駆使して最終的に細胞融合を起こすウイルス(HVJ)とリボソームとDNA結合核蛋白質を併用するベクター,HVJ-リボソームを開発した.これにより外来遺伝子が一過性ではあるが成育臓器に強力に発現させられると共にアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて特異的に遺伝子の機能をin vivoで抑制することが可能になった.ここでは,ベクターの開発と循環器疾患への遺伝子レベルでの治療への応用について述べる.
  • その分子生物学的意義と治療への応用
    横出 正之
    1995 年 27 巻 12 号 p. 1126-1132
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    近年多くの分子疾患の原因遺伝子が同定されようとしている.このことは単に病因の究明だけではなくその遺伝子に対して治療的介入を行うことによりこれらの疾患の根治的治療が可能になることを示すものである.虚血性心疾患の基本病変である粥状動脈硬化症の研究においても,その主流は従来の疫学や病理学的研究から分子細胞生物学に基づく解析に移ってきており,従来より虚血性心疾患の危険因子として挙げられてきた高コレステロール血症においてもその成り立ちや粥状動脈硬化をきたす仕組みが分子レベルでより深く理解されようとしている.これらの新しい作業仮説はトランスジェニックマウスなどの遺伝子改変動物で検証されると共に,それに基づいた遺伝子治療のプロトコールが行われようとしている.そこで本稿では血清コレステロール値の調節蛋白である低比重リボ蛋白(LDL)受容体の個体レベルでの遺伝子導入に焦点を当て,その生物学的ならびに治療学的意義につき論じる.
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