心臓
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27 巻, Supplement6 号
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  • 矢津 卓宏, 藤岡 博文, 田中 淳子, 山田 典一, 中村 真潮, 平岡 直人, 田中 英樹, 井阪 直樹, 中野 赳
    1995 年 27 巻 Supplement6 号 p. 3-7
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肺塞栓症のうち発症状況のはっきりしている手術・血管造影・外傷後に発症した54例のうち,発症24時間以内に急死した18例について臨床像を検討した.1時間以内の急死は手術後では12例中9例,血管造影後は4例全例,外傷処置後は2例ともであった.1時間以上生存し,24時間以内に死亡した3例は,適切な診断がされていないか再発に対する認識不足が問題であった.これらよりPEによる急死の定義は24時間以内とするより1時間とする方が妥当と考えられた.前駆症状は他の背景のPEに比して少なく,致死的PEを症状から予知することは困難と考えられたが,ほとんどが離床第1,2病日の発症であることや,排尿・排便や最初の歩行が発症の契機となっている状況は早期診断の手助けとなる.しかし,瞬間死が多いこともあり,DVTの予防が重要で,高齢,肥満,女性などのハイリスク群にはDVTのスクリーニングや子防的抗凝固療法が必要と考えられた.
  • 阿部 芳久, 門脇 謙, 佐藤 匡也, 熊谷 正之, 増田 弘毅
    1995 年 27 巻 Supplement6 号 p. 8-12
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠攣縮による突然死例の冠動脈病理組織像を,5例の冠攣縮性狭心症の剖検例と併せて報告する.
    症例:55歳,男性.労作兼安静時狭心症.自然発作時に,心電図でのV2からV6のST上昇とT波の尖鋭化を伴う鈍縁枝の完全閉塞と前下行枝近位部の75%狭窄が認められ,ISDNにより寛解した.この約13カ月後に,胸痛を訴えた後,突然死した.冠攣縮部位は正円形の中膜平滑筋層にもかかわらず,内腔はwaving状の著しい変形をきたしていた.また,内膜には主に線維性の肥厚が認められ,wavingを呈する内弾性板が特徴的であった.これらの所見は,程度は軽いものの前下行枝の近位部と対角枝にも認められた.なお,冠動脈内血栓や心筋梗塞の所見は認められなかった.
    5例の冠攣縮性狭心症の剖検では,冠攣縮部位には,軽度なものから高度なものまでバラツキはあるものの,全例で動脈硬化性変化を認めた.また,ほぼ正常冠動脈像を呈するにもかかわらず,高度な動脈硬化像を認める例もあり,冠動脈造影は組織学的な狭窄度を過小評価する傾向がみられた.
    冠攣縮発生部位は,種々の程度の動脈硬化像とともに,線維性変化を主とする内膜の肥厚とよく保たれた中膜平滑筋層が特徴的である.また,内腔の著しい変形やwaving状の内弾性板は冠攣縮発生時の組織像をとらえていると考えられ,突然死の冠動脈検索時には,これらの変化の有無にも留意すべきである.
  • 沖 浩佳, 井上 紳, 牧嶋 信行, 並木 淳郎, 酒井 哲郎, 菊嶋 修示, 蔵野 康造, 斎藤 司, 今野 述, 嶽山 陽一, 片桐 敬 ...
    1995 年 27 巻 Supplement6 号 p. 13-19
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例1:58歳,男性.40歳から胸部圧迫感出現.56歳時,心臓カテーテル検査で有意冠狭窄を認めずエルゴノビンで冠攣縮が誘発された.58歳時,再び発作が頻発し夜間自宅で急死.剖検所見は,右冠動脈と回旋枝に血栓形成,3枝に有意狭窄を認め,再発性側壁心筋梗塞であった.
    症例2:45歳,男性.44歳より早朝に前胸部痛出現.ホルター心電図で異型狭心症と診断し,心臓カテーテル検査の目的で入院.早朝6時に激しい胸痛とともに心電図でV1~6でST上昇を認め心室細動出現,除細動後心原性ショックで死亡.剖検所見では左前下行枝に有意狭窄を認め,側壁を中心に広範な筋収縮帯を認めた.
    症例3:57歳,男性.55歳より前胸部痛出現.心臓カテーテル検査目的で入院.安静時に胸痛出現するが心電図変化を認めず,抗狭心症薬中止後II,III,aVFでST上昇,心室細動発生し蘇生術に反応せず死亡.剖検上冠動脈3枝に有意狭窄を認めた.以上3例の臨床経過と病理所見を若干の考察を含め報告する.
  • 後藤 敏和, 荒木 隆夫, 三浦 民夫, 矢作 友保, 川島 祐彦, 横山 紘一
    1995 年 27 巻 Supplement6 号 p. 20-24
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    突然死は一般に早朝に多いとされるが,本邦例においては,夕方から夜にかけてもピークが認められる.今回は山形市において1984-91年の8年間に心呼吸停止をきたして救急搬送された575例の発症時間帯を調査し,うち1988-91年の症例については発症状況も調査し,夕方にピークが生じる要因につき検討した.
    発症時刻は早朝が最多(6-9時:15.9%)で夕方から夜にかけても多く(15-18時:15.2,18-21時:14.1,21-24時:15.0%),深夜は少なかった(0-3時:7.5,3-6時:8.3%).70歳以上の高齢者では入浴時に発症し易い傾向(70歳代14.3,80歳代25.5%)が認められ,15-24時の発症については全体でも22.6%が入浴に際し発症していた.また50歳以上では用便に関わって発症する傾向も認められた.以上より,本邦例の突然死の夕方のピークの成因として日本式入浴法が一因となっている可能性が示唆された.
  • 松田 環, 上嶋 権兵衛, 斎藤 徹, 飯田 美保子, 井上 健彦
    1995 年 27 巻 Supplement6 号 p. 25-29
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】救急救命士による救急現場除細動施行例について検討した.【対象と方法】平成4年7月からの2年3カ月間に当センターに搬送された院外心肺停止618例中,救急救命士が対応した内因性疾患356例(男性225例,女性131例)平均年齢64.4±18.4歳を対象とした.このうち,救急現場で58例(16.3%)に除細動が施行された.現場モニター所見,原因疾患,予後,除細動にかかわる時間因子,心室細動(Vf)波形などについて検討した.【結果】現場モニター所見は,Vfは63例(17.7%)で,10例(15.9%)が除細動の指示待ちの間に低電位やasystoleになり適応がなくなった.Asystoleは210例(59.0%),電導収縮解離(EMD)は68例(19.1%)で,このうちasystoleの2例,EMDの3例が経過中Vfに移行し除細動が行われた.結局,58例に延べ88回除細動が施行された.除細動施行例の原因疾患は,8割以上が心疾患と推測された.予後は,病院到着前に11例(19.0%)が心拍再開し,病院到着後の二次救命処置で,さらに9例(15.5%)が心拍再開した.しかし,生存5例(8.6%),社会復帰3例(5.2%)はいずれも来院前心拍再開例であった.来院前心拍再開例の心停止からCPR開始までの時間は5.2±3.9分と心拍非再開例の10.0±5.6分と比べ有意に短時間であった.また,除細動直前のVfの電位は来院前心拍再開例は1.30±0.63mV,心拍非再開例の0.68±0.34mVと比べ有意に高かった.【結論】Vfの電位が高い早期に除細動を行うため,処置の手順や法的規制の見直しが必要である.
  • 内因性DOA 830例の検討
    荒川 直志, 佐藤 紀夫, 柴田 雅士, 鈴木 知己, 青木 英彦, 鈴木 智之, 平盛 勝彦
    1995 年 27 巻 Supplement6 号 p. 30-35
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    背景:急性心筋梗塞症(AMI)の致命率は35%以上で,その60%程度は発症から1時間以内の院外での心停止例である.多くはDOA(death on arrival)として搬送され,近年,増加傾向にある.目的:心臓性急死例の原因疾患について検討した.対象・方法:1980~1994年に岩手医大救急センターに搬送された内因性DOA830例を対象として,原因疾患の解明を試みた.死亡診断書上「急性心不全」とされた例の病歴.発症時の状況・検査所見および剖検所見等を診療録により検討した.また,これらの症例と当センターCCUに入院したAMI例とを比較検討した.結果:DOAの原因が心疾患とされたものが521例(62.8%)であった.このうち発症時の胸痛と蘇生後の心電図所見および心筋逸脱酵素の上昇によりAMIと確診し得たものは87例(16.7%)であった.「急性心不全」と診断された残り434例のうち,発症時に胸痛が確認されたものが95例(18.2%),虚血性心疾患の既往があるものが78例(15.0%),その両者を認めたものが16例(3.1%)であった.AMIと診断された87例とこれら急性心筋梗塞症が強く疑われた189例を合わせると276例となり,心臓性急死521例中の53%を占めた.心臓性急死例とAMI例とで,性差,年齢分布,発症時刻の日内分布に類似点が認められた.総括:心臓性急死例の少なくとも半数はAMIが原因であると考えられた.心臓性急死の第1の原因となる疾患そのもの,すなわち心筋梗塞症の発症予防と救急救命対策を追求すべきである.
  • 東海林 哲郎, 森 和久, 奈良 理, 坂野 晶司, 伊藤 靖, 今泉 均, 小林 謙二, 浅井 康文, 金子 正光
    1995 年 27 巻 Supplement6 号 p. 36-41
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    救急搬送体制の確立と共に突然心停止し,心肺停止状態で救急医療施設に搬入される例が増加している.急性心筋梗塞発症早期に突然死が多いとされるが,入院前心停止例では正確な臨床診断は難しく,病理解剖でも発症ごく早期の超急性期では特徴ある所見に乏しい.〔目的〕成人内因性突然死における急性心筋梗塞の頻度と超急性期突然死例の病態を追及する.〔対象・方法〕最近の6年間に当部へ搬入された30歳以上の内因性DOA328例のうち臨床診断では死因が不明で「急性心不全」とせざるをえなかった例が202例と大多数を占めた.そこで,その44例に剖検を行い,剖検時冠状動脈造影を含め病変を検討した.〔結果〕44例中急性心筋梗塞は23例(52.3%)で,14例に新鮮血栓が認められた.初発例10例,再発例13例で,前者の4例,後者の10例が重症多枝病変例であった.冠状動脈閉塞・狭窄病変は主要冠状動脈の中枢側に多かったが,特に一枝病変例9例では各枝いずれも中枢側に責任病変があった.他は不整脈死4,心筋症4,大動脈瘤破裂4,肺塞栓症2,肺癌・肺結核・脳出血・窒息および急性アルコール中毒各1例で,剖検でも不明例が2例あった.〔考按・結語〕急性心不全とされた30歳以上の成人DOA症例で剖検時冠状動脈造影を含め冠状動脈ならびに心筋組織病変を検討した結果,急性心筋梗塞が半数を占め,本症発症早期,ことに重症多枝病変例の再発例で突然死が多く,また一枝病変突然死例では各枝中枢側に病変を有することが示された.
  • 猪岡 英二, 高橋 孝, 佐藤 昇一, 石出 信正, 白土 邦男, 佐川 貢一, 猪岡 光, 興野 春樹, 貴田岡 成憲
    1995 年 27 巻 Supplement6 号 p. 42-46
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心臓性突然死例で,心事故3カ月以内に記録されたホルター心電図で,そこに記録された心室性期外収縮につきAnalytic Ambulatory ECG Study(AES)によりその発生機序を検討した.その結果15例中,60-70%ではTriggered Activity Type(DelayedAfterdepolarization 40%,Early Afterdepolarization33.3%),Reentry Type26.7%であった.最近I群抗不整脈薬の致死性不整脈の有効性に対する疑問が持たれているが,心室性不整脈発生機序でTriggered Activity Typeの頻度が高かったことがその一因と考えられ,発生機序に応じた抗不整脈薬の選択が重要と思われた.
  • 溪 浩司, 杉澤 一彦, 佐々木 亮太郎, 岩崎 忠昭
    1995 年 27 巻 Supplement6 号 p. 47-53
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:突然死した虚血性心疾患患者の生前ホルター心電図(AM)上の特徴を明らかにすること.
    対象:SD群:加療中に症状発現後1時間以内の予期せぬ突然死をきたした虚血性心疾患症例7例,対照群はIHD群:虚血性心疾患患者のうち罹患後3年以上生存している例7例.
    方法:SD群は突然死の6カ月以内に施行したAMより,1.不整脈の有無,2.VPC例にはLorentz-Plot解析(L法),Winkle解析(W法)を施行.3.VPCの出現頻度の心拍依存性.4.心拍変動スペクトル解析(HRV)について検討.LPはRMS40の値が15μV以下をLP陽性と判定.
    結果および考察:NYHA分類ではSD群に2および3度のものが各1名存在.L法ではSD群でscattered typeが多く,W法では促進型がSD群で多かった.HRVはHFはIHD群では夜間に上昇が認められるが,SD群では特に夜間の低下が著明.LF/HFは,IHD群は日内変動が認められるが,SD群は全日を通じて変動が小さかった.VPCの連結期の変動性の増加例やLPの陽性性と心拍数の増加と共にVPCが増加する例が突然死群に多い傾向が認められた.HRVの変動は交感,副交感両自律神経の緊張が減少し,日内変動はほぼ消失していた.突然死の原因はsubstrateとしてre-entry回路の存在,不応期の不均一性などとtriggerとして自律神経活動の関与が考えられた.
    結語:虚血性心疾患患者の突然死例は生前よりホルター心電図に特徴が認められた.
  • 因田 恭也, 坪井 直哉, 伊藤 昭男, 辻 幸臣, 山田 功, 七里 守, 吉田 幸彦, 山田 健二, 三輪 田悟, 平山 治雄, 前田 ...
    1995 年 27 巻 Supplement6 号 p. 54-60
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性.約2週間の便秘があり,その後1~2分の意識消失発作を頻回に繰り返すため当院に入院した.入院後,咳嗽や嘔吐の後に,意識消失発作を繰り返した.ホルター心電図で発作の時間に一致して洞停止を認めた.洞停止は,時に補充調律を伴わず,最高40秒の心休止を呈した.VVIペースメーカーを植え込んだ.この洞停止の発作は一過性であり,1週間の間に頻回に発作がみられたが,その後は全くみられなくなり,ペースメーカーが作動することもなかった.冠動脈造影では有意狭窄を認めず,スパズムも誘発されなかった.心臓電気生理学的検査では洞機能に異常を認めなかった.頸動脈洞マッサージ,チルトテストにても心拍,血圧に異常な変化を示さなかった.洞停止が頻回にみられた時期の心拍変動は日内リズムが消失しており,高周波成分,低周波成分ともパワーの不規則な乱れを示した.長い洞停止の発作直前の心拍変動は高周波成分,低周波成分ともに徐々にパワーの増大を示した.洞停止の原因として自律神経の異常が関与していたことが推察された.本症例では数週間の経過で一過性に自律神経の異常をきたし,それが補充収縮を伴わない長い洞停止を引き起こしたと考えられた.いわゆる洞機能不全症候群とは異なり,補充調律の抑制されるこのような症例では突然死に至る危険性が高いと考えられた.
  • 抗不整脈薬によるペーシング閾値の上昇
    馬場 隆男, 小林 洋一, 小原 千明, 木村 睦, 神保 芳宏, 千代田 和美, 宮田 彰, 中川 陽之, 丹野 郁, 菊嶋 修示, 蔵野 ...
    1995 年 27 巻 Supplement6 号 p. 61-65
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    糖尿病を伴った洞不全症候群のペースメーカー植え込み患者においてclass Icの抗不整脈薬を投与中に突然死した症例を経験した.症例は38歳の男性,糖尿病性網膜症,腎症の入院治療中に発作性心房細動を併発し,抗不整脈薬を静注投与したところ約10秒の洞停止,著明な洞徐脈,意識レベルの低下をきたし入院.Holter心電図記録では繰り返す心房細動と心房細動停止後に約4秒の洞停止を認め,臨床電気生理学的検査ではSRT4,340msecと延長し,洞不全症候群SSS(RubensteinIII型)と診断された.ペースメーカーが植え込まれ(DDI),また経過中に心房細動,心室性期外収縮,非持続性心室頻拍を認めflecainide 200mg/dayが投与されて退院した.退院後,外来受診蒔に動悸症状を強く訴えたことから,flecainideにmetildigoxin 0.1mgを併用したところ,約10日後入浴中に突然死した.ペースメーカーの経過は退院直前から退院後にかけてわずかに心室閾値が上昇していた.本例のような糖尿病などの基礎疾患を伴う症例ではclass Icの抗不整脈薬による催不整脈作用のほかにペーシング闘値の上昇をきたし,ペースメーカー不全を生じた可能性も否定できない.基礎疾患を伴う徐脈頻脈症候群の症例におけるペースメーカー治療や抗不整脈薬投与には細心の注意を払い,経過を観察する必要がある.
  • 吉田 明弘, 井上 智夫, 清水 宏紀, 板垣 毅, 関谷 純一, 横山 光宏
    1995 年 27 巻 Supplement6 号 p. 66-84
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    重症心室性不整脈患者における突然死にQT dispersionと自律神経機能がいかに関与しているのかについて検討を行った.対象は器質的心疾患を有するLown 4b以上の重症心室性不整脈患者17例(57±11歳)で,これらを突然死群(SD群),持続性心室頻拍群(SVT群),非持続性心室頻拍群(NSVT群)の3群に分類し検討を行った.方法は,体表面12誘導心電図の各誘導におけるQT時間,QTc時間の最大値と最小値との差をQT dispersion,QTc dispersion(QT-D,QTc-D)とし3群間で比較検討を行った.また安静臥位10分間の心電図記録からRR間隔のFFT解析を行い求めたLF成分,HF成分,Total Power,LF/HF比を各群間で比較検討し,HF成分,LF/HF比とQT-Dとの相関関係について検討を行った.結果は,QT-D,QTc-DともにSD群がSVT群,NSVT群に比し有意に大であった.心拍変動との関係ではHF成分においてSD群がNSVT群に比し有意に低下を認め,LF成分においてSVT群がNSVT群に比し有意に低下を認めた.Total PowerではSD群,SVT群ともにNSVT群に比し有意に低下を認めた.QT-DとLF/HFの間には弱い正の相関傾向を認め,QT-DとHFの間には弱い負の相関傾向を認めた.これらの結果より重症心室性不整脈患者における突然死には,心室筋の再分極過程の不均一性と自律神経機能低下が相互に関与していることが示唆された.
  • 久賀 圭祐, 山口 巖, 仁保 文平, 遠藤 優枝, 前田 裕史, 栗原 達, 杉下 靖郎, 庄田 守男, 笠貫 宏, 梅村 純, 大西 哲 ...
    1995 年 27 巻 Supplement6 号 p. 85-91
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    〔症例1〕27歳,男性.検診でWPW症候群を指摘されていたが,無症状にて治療は不要とされた.初めての動悸発作の出現のため近医を受診中さらに動悸が高度となり,心電図にWPW症候群に伴う心房細動が記録された.Diltiazem静注後に心室細動に移行したが,直流通電で洞調律に回復した.当院に紹介入院.高周波カテーテル焼灼術後,動悸発作は消失した.〔症例2〕33歳,女性.検診でWPW症候群を指摘されていたが動悸発作の既往歴はなかった.自宅にて初めて突然強い動悸が生じ救急車にて搬送途中で意識消失・呼吸停止した.救急病院到着時は心室細動であり,4回の直流通電にて洞調律に回復したが,高次神経機能障害を残した.副伝導路は3本あり,いずれも高周波カテーテル焼灼術で切断された.動悸発作のないWPW症候群においても,初回発作で心室細動に至る例もあり,危険群の同定の必要性,治療の適応の決定の重要性が示唆された症例である.
  • 斉藤 博則, 青木 和弘, 鈴木 清文, 福元 耕, 茂木 純一, 川井 三恵, 横打 邦男, 阿部 邦彦, 吉沢 直, 野本 淳, 田野 ...
    1995 年 27 巻 Supplement6 号 p. 92-96
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,男性.平成5年1O月28日事務仕事中,突然意識消失,呼吸微弱となり,心肺蘇生術を受けながら,近医に転送された.来院時意識レベル200~300,瞳孔散大,血圧測定不能,モニターでは心室細動であった.挿管し呼吸管理とするとともに,200~300JのDC計4回施行し洞調律に復した.この間リドカイン,メキシレチン,ベラバミル,ボスミン,メイロン等の静注を受けた.その後順調に回復し,精査加療目的で当院紹介入院となった.入院後心カテ施行.冠動脈造影正常,左室造影上全体的な収縮力低下を認め駆出率は25%であった.また,心筋生検も施行し,さらに電気生理学的検査を施行した.右室2カ所,左室1カ所計3カ所からの3連発刺激,それに加えて,イソプロテレノール負荷後の2連発刺激でも心室頻拍・心室細動は誘発されなかった.治療はアミオダロン200mg/日,カプトプリル,利尿剤,ワーファリンを投与した.現在経過観察中であり,今後ICD植え込みも検討中である.
  • 過換気負荷試験による検討
    伊藤 誠, 吉田 慎太郎, 増田 卓也, 古川 孝美, 吉川 眞由美, 三ツ 浪健一, 木之下 正彦
    1995 年 27 巻 Supplement6 号 p. 97-102
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は27歳,男性.主訴は動悸,失神.家族歴に突然死や失神なし.1989年4月(22歳時)にはじめて失神発作を認め,その後動悸もあったため同年6月10日入院した.12誘導心電図ではWenckebach型2度房室block,V1~V2でpoor r wave progressionとlate r'を認めV1~3でST上昇を伴っており,V4~V6のQRS終末部にはnotchを認めた.Late r'の形,ST上昇の程度,T波の極性は変動しその変化は徐脈時に増強した.心エコー,201T1心筋シンチ,左室造影では異常を認めなかった.過換気負荷中止後の徐脈時に再現性を持って心室細動や心室性期外収縮が出現した.過換気負荷後の心室性不整脈に対し抗不整脈薬は無効であったが,心室ペーシング,atropine,β-stimulantの投与により徐脈を予防すると心室性不整脈は抑制された.Orciprenalinの経口投与などにて経過をみているがその後5年間失神発作は認めなかった.本例の心室細動の発生機序は明らかではないが,少なくとも徐脈が誘因となっていたと考えられた.
  • 小川 聡, 新博 次, 春見 建一, 早川 弘一, 杉本 恒明, 岡田 了三, 村山 正博, 外山 淳治, 相澤 義房, 井上 博, 笠貫 ...
    1995 年 27 巻 Supplement6 号 p. 103-112
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1992年Brugadaらにより前駆症状なく心室細動をきたし,非発作時の心電図で右脚ブロック・右側胸部誘導(V1~V3)でST上昇を示し,反復する心室細動発作を呈した症例が報告された.本邦でも同様な心電図学的特微を示す特発性心室細動例の報告がある.そこで,この心電図学的特微を有する症例を集積し,本心電図学的症候群の臨床像を明らかにすることを目的とし全国調査を施行した.その結果,80症例が登録され,Brugadaらの報告に類似の心電図所見を示す63症例につき臨床的特徴を検討した.63症例中17例で心室細動があり,14例は意識消失発作の既往を有していた.
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