心臓
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28 巻, 1 号
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  • 血小板リン脂質画分脂肪酸組成の変化との関連
    曽根 孝仁, 坪井 英之, 近藤 潤一郎, 佐々 寛巳
    1996 年 28 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 1996/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    至適量のEPA摂取はPTCA 後再狭窄を予防しうるか否かにつき,その投与開始時期も含め検討した.初回待機的PTCA患者204例を無作為に以下の3群に割り付けた.A群;術前2週間よりEPA1.8g/日を再造影時まで投与した.この群では組織への取り込みを増す目的で通常の抗動脈硬化食に加えリノール酸摂取制限を指導した.B群;術直後よりEPA投与.C群;EPA無投与.B,C群にては通常の抗動脈硬化食のみ指導した.
    患者再狭窄率はA,B,C群にて各々37%,50%,50%,病変再狭窄率は各々32%,42%,47%でありA群にて低率であったが,統計学的有意差は得られなかった.A群における血清脂質の検討では総コレステロールおよびLDLが経時的に有意に減少した.しかしながらこれらの減少度と再狭窄進展度との間には有意な相関が得られなかった.一方,血小板膜脂肪酸組成においてはω3,ω6系列にて経時的に有意な変化がみられたが,飽和脂肪酸,一価不飽和脂肪酸,ω9系列は不変であった.このうち再造影時におけるEPA/アラキドン酸比(X)と再狭窄進展度(Y)の間にはY=-101.5X+43.9,R=-0.49(p<0.025)の有意な相関が得られた.以上より細胞膜レベルにおけるEPA/アラキドン酸比は再狭窄現象を修飾することが示唆された.またその比の臨床的至適値ならびにそれを達成するためのEPA投与法の検討は今後の課題である.
  • 冠攣縮と不整脈による失神例との対比
    村田 実, 滝本 浩俊
    1996 年 28 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 1996/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    原因の特定が困難な中高齢者失神発作例における冠攣縮の関与を検討し,また臨床的特徴をAdams-Stokes症候群と対比した.対象は神経学的検査,ホルター心電図,運動負荷心電図,冠動脈造影検査,心臓超音波検査で異常を指摘できない40~75歳の24例(男/女;20例/4例,平均60.8±9.6歳)である.アセチルコリンを用い選択的に冠攣縮誘発を行い冠攣縮陽性群と陰性群に分類し特発性の不整脈によるAdams-Stokes症候群20例(男/女=10例/10例,平均64.0±9.7歳)と失神発作回数,失神発作持続時間,随伴症状,発作時以外の症状などにつき対比した.
    対象例の75%に冠攣縮は誘発されたが,そのうち多発攣縮が45%と最も多かった. 冠攣縮時著しい血行動態の悪化が2例に認められた.冠攣縮陽性群では失神発作回数は平均2.6回と少なかったが失神持続時間は数分間と長く2例で心肺蘇生術を受けた.72%に狭心症状を伴い73%で失神発作時以外に狭心症状が認められた. また失神発作は冠攣縮狭心症に特徴的な早朝や安静時のみでなく昼間の活動時にも認められた.これに対してAdams-Stokes症候群では失神発作回数は平均6.2回と多く,失神持続時間は30秒以内の症例が多かった.また81%で随伴症状はなく94%で失神発作時以外眩量発作があった.冠攣縮陽性群の1例が経過中冠拡張薬の中止により突然死した.Adams-Stokes症候群ではペースメーカー治療などによる不整脈のコントロールで失神発作の再発はない.
    狭心症状を伴い数分間持続する失神発作には冠攣縮の関与が疑われ十分な冠拡張薬投与下に経過をみるべきと考えられた
  • 小林 洋一
    1996 年 28 巻 1 号 p. 21-22
    発行日: 1996/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 藤原 正義, 朝隈 進, 桝谷 充男, 中村 多一, 中村 清子, 岩崎 忠昭
    1996 年 28 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 1996/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ゴルフプレー中に発症した急性心筋梗塞(以下AMI)症例について検討した.対象は1978年1月1日から, 1 9 9 4 年1 月3 1 日まで当科に入院したA M I患者1,153名のうちゴルフプレー中に発症した13例(すべて男性,平均60.7±11.9歳).AMI全体に占める割合は,1.1%.ゴルフを含めたスポーツ中の発症例32例中では41%を占め,原因として最も多いスポーツであった.13例中何らかの冠危険因子を有していた者は11例.前駆症状は4例にあり,そのうち運動負荷テストを含めたメディカルチェックを受けていた者は1例のみであった.前駆症状のない者でメディカルチェックを受けていた者はいなかった.冠動脈造影は11例に施行され,1枝病変6例,2枝および3枝病変がそれぞれ2例,左冠動脈主幹部病変1例.発症時期は,春から夏,秋から冬にかけてに多かった.
    ゴルフは運動強度も低く比較的安全で気軽に楽しめるスポーツと思われやすい.しかし,プレー中にAMIが発症する可能性もあり,冠危険因子を多く持つ中高年男性プレーヤーが多いことより,メディカルチェックが必要と考えられた.
  • 川久保 清
    1996 年 28 巻 1 号 p. 27-28
    発行日: 1996/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 川本 篤彦, 勝山 慶之, 上村 史朗, 西田 育功, 橋本 俊雄, 土肥 和紘
    1996 年 28 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 1996/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例64歳,男性.61歳時にうっ血性心不全,心房細動,高血圧を指摘された.1990年3月3日,労作後に胸痛を自覚し,近医で急性下壁梗塞と診断されて当科に紹介された.心エコー図では右室・右房の拡大,高度の右室壁運動低下,心房中隔欠損(ASD)および両方向性の短絡血流が認められ,血行動態では右房圧が肺動脈撰入圧よりも高値を示しており,本例はASDと急性下壁・右室梗塞の合併と診断された.また,高度の低酸素血症が認められたが,右→左短絡による中心性チアノーゼと考えられた.緊急冠動脈造影では,右冠動脈近位部に亜完全閉塞が認められ,ウロキナーゼ72万単位の冠動脈内投与により再疎通に成功した.さらに滅負荷療法により,右→ 左短絡血流は減少し, 低酸素血症は改善した.ASDと右室梗塞の合併による中心性チアノーゼが改善した報告がなく,本例はまれな症例と考えられる
  • 五十嵐 慶一, 堀本 和志
    1996 年 28 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 1996/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性.平成3年4月から出現した労作時呼吸困難が,5月になり増強したため当科を受診した.胸部X線像にてCTRは59%で肺うっ血像と両側胸水を認めた.心電図では胸部誘導のpoor Rwave progressionと,下壁と前側壁の誘導にST低下および陰性T波を認めたが,異常Q波はなかった.心臓超音波検査にて左室は拡大し,び漫性に壁運動が低下していた.運動負荷201Tl心筋シンチグラムでは心室中隔と下壁の一部に再分布をみた.冠動脈造影では,左前下行枝seg.6の完全閉塞と右冠動脈seg.3に造影遅延を伴う99%狭窄を認め,右冠動脈右室枝から左前下行枝中隔枝,左回旋枝から右冠動脈房室結節枝への側副血行をみた.左室造影ではび漫性に壁運動が低下し駆出率は37%であった.以上の検査所見と明らかな心筋梗塞の既往がないことから,心筋hibernationと考え,seg.6とseg.3に対してstaged PTCAを施行した.PTCA後seg.6とseg.3はそれぞれ50%と25%狭窄に改善し,運動負荷201Tl心筋シンチグラムにて虚血所見の改善をみた.5カ月後の冠動脈造影でseg.6は75%,seg.3は50%狭窄と軽度に狭窄が進行したが,左室造影では駆出率が62%で,左室壁運動と心不全症状の著明な改善をみた.以上より,うっ血性心不全を伴った心筋hibernationにPTCAが奏功したものと判断した
  • 古嶋 博司, 小玉 誠, 藤田 俊夫, 佐藤 匡, 和泉 徹, 柴田 昭
    1996 年 28 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 1996/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    進行性の左室壁運動低下を認めた肥大型心筋症例を経験した. 症例1 は2 1 歳女性. 1 2 歳時に肥大型心筋症と診断され,16歳ころより左室壁運動低下,左室径の拡大,左室壁の菲薄化を認めた.平成5年3月(22歳時),心不全にて入院となった.9年の経過で著しい左室壁運動低下を生じた.症例2は,44歳の男性.37歳時,閉塞性肥大型心筋症と診断された.徐々に左室壁運動低下,左室径の拡大,左室壁の菲薄化が現れ,平成5年3月(44歳時),心不全で入院となった.7年の経過で左室壁運動の著しい低下が進行した.まれに肥大型心筋症から拡張型心筋症へ移行する病型が知られており,その移行過程にあると考えられた
  • 岩澤 祐二, 義井 譲, 三谷 勇雄, 成瀬 雅彦, 持田 泰行, 菅野 晃靖, 中村 宣子, 秋山 英明, 石川 利之, 久慈 直光, 住 ...
    1996 年 28 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 1996/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は25歳男性で心室頻拍(VT)による失神発作のために入院した.洞調律での心電図上III,aVF,V 3 ~ V 5 の陰性T 波とイプシロン波を認め, l a t epotentialが陽性であった.心エコー図,心プールシンチグラフィ,核磁気共鳴法,心室造影検査上,右室の著しい拡大と壁運動低下,および左室の心尖部を中心とした壁運動異常を認めた.冠動脈は正常であり,心筋逸脱酵素やウイルス抗体価の上昇は認めなかった.電気生理学的検査上,右室下壁心基部付近でfragmentationを伴う心内膜電位を記録した.同部位ではペーシングによる心室補捉が得られず,そのごく近傍でのペーシング波形が最もVT波形と近似した.薬効評価を行う目的でVT誘発試験を試みたが,VTは誘発されなかった.心筋生検では左室右室ともに心筋細胞の肥大と間質の置換性線維化を認めた.右室ではこれらの所見がより顕著であり,間質の脂肪浸潤も認められた.催不整脈性右室異形成(arrhythmogenic right ventricular dysplasia:ARVD)の病変は通常右心室に限局するのが特徴であるが,左室病変や左室機能異常を伴うことも少なくないことが知られており,本症例もそれに相当するものと考えた.本症例は厳密にはARVDと確定診断しえない問題点を残すが,ARVDの病態をとらえるための一助となる貴重な症例であると考え報告する
  • 真鍋 和代, 大木 崇, 井内 新, 田畑 智継, 影治 好美, 佐々木 美和, 濱 美紀, 福田 信夫, 伊東 進
    1996 年 28 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 1996/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の男性で,心不全の原因精査を目的として当科に入院した.骨髄生検所見に異常なく,直腸および心筋生検でCongo-red染色陽性のアミロイド沈着を認め,原発性心アミロイドーシスと診断した.入院時の心エコー図では,左室壁の対称性肥厚と中隔および後壁のgranular sparklingを認めた.経胸壁アプローチによる左室流入血流速波形は,拡張早期波の著明な増高と心房収縮期波の減高,いわゆるrestricrive patternを示した.経食道アプローチによる肺静脈血流速波形は,収縮期陽性波の減高および拡張期波の増高を認め,明瞭な心房収縮期陰性波と拡張中期においても左房から肺静脈への逆流血流を描出しえた.心臓カテーテル検査での左室圧曲線は拡張期dip and plateau波形を示した.平均肺動脈楔入圧および左室拡張末期圧は著明な上昇を認め,拡張中期から末期にかけて左室圧が肺動脈楔入圧を凌駕する所見が得られた.本症例のように,左室圧が拡張末期のみならず拡張中期においても著明に上昇している場合は,左房から肺静脈への逆流が心房収縮期のみでなく拡張中期にも生じ,このような病態での肺うっ血および肺水腫の発生機序を考える上で貴重な症例と思われた.
  • 鈴木 健, 池田 浩志郎, 伊藤 公人, 鳥山 隆之, 原田 和彦, 岩瀬 幹生, 澤田 美穂, 小嶋 正義, 土肥 靖明, 佐藤 孝一, ...
    1996 年 28 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 1996/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    123I-MIBG心筋シンチグラムは,最近拡張型心筋症において特徴的な所見を示すことが知られ,拡張型心筋症の重症度評価や予後の判定に用いられている.今回我々は,完全断酒による心機能の回復とともに,123I-MIBG集積の改善およびwashout rateの低下を認めたアルコール性心筋症の1例を経験したので報告する.症例は46歳の男性で,長期にわたり大量のアルコールを摂取していた.胸部圧迫感と呼吸困難が出現し,重篤な心不全をきたしたため入院となった.心エコー検査では左室内腔の著明な拡大と左心機能の低下を認め,拡張型心筋症と同様の病態を示した.左心室の心筋生検組織像では心筋細胞横径の大小不同,一部空胞化と軽度の心筋障害を示唆する所見を得た.123I-MIBG心筋SPECTでは下壁を中心に集積が低下し,washoutが亢進(%washout rate39.8%)していた.以上より,アルコール性心筋症も疑われたため,心不全の治療後4カ月間の完全断酒を行ったところ,心エコー検査で左心機能の著明な改善を示し,123I-MIBG心筋S P E C T でも集積低下は改善しw a s h o u t の亢進も認めなくなった(% washout rate-2.1%).よって,123I-MIBG心筋SPECTを経時的に行うことはアルコール性心筋症の重症度評価,および予後判定に有用であることが示唆された.
  • 榎真 佐史, 野口 輝夫, 吉田 和代, 松永 萬成, 尾形 徹, 徳島 卓, 辻 信介, 宇都宮 俊徳, 早野 元信, 松尾 修三
    1996 年 28 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 1996/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Neurofibromatosis(神経線維腫症)は,皮膚病変や多発性の神経線維腫を主微とする疾患であるが,外胚葉組織から発生する心臓刺激伝導系の合併症を呈した例の報告は少ない.我々は,本症に洞不全症候群を合併した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
    症例は66歳女性.幼少時よりcafe au lait spotと神経線維腫があり,その他の所見も含めて,neurofibromatosisと診断された.また,右大動脈瘤,起始異常を示す左鎖骨下動脈起始部動脈瘤を伴っていた. 9 2 年7 月, 徐脈を指摘され, 精査入院した. 3分間心電図では洞房ブロックが頻発しており,ホルター24時間心電図でも,多数の洞房ブロックを認め,最長R-R時間は2.0秒であった.電気生理学的検査では,洞結節回復時間は2.0秒であった.症状も軽度であるため,ペースメーカー植え込みを行わず薬剤投与にて外来観察中である.
    我々の調べた範囲では,neurofibromatosisに洞不全症候群を合併した例の報告は1例のみであった.一方,剖検で房室結節上にneurofibromaが存在していた急死症例の報告もあった.Neurofibromatosisは外胚葉組織の異型性を呈する疾患であり,本例では発生学的に外胚葉組織に属する心臓刺激伝導系にも異型性を生じて,洞不全症候群を呈したと考えられた
  • 伊藤 敦彦, 清水 達也, 田宮 栄治, 羽田 勝征, 家城 恵子
    1996 年 28 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 1996/01/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性で,1カ月前より息切れが出現し,徐々に悪化したため入院となる.入院時は意識清明,安静時息切れあり,起坐呼吸なし.PaO249mmHgと低下,心電図(SI,TIII),心エコー図(右室拡大など)所見より肺血栓・塞栓症を疑い,肺血流シンチグラムにて診断し,ウロキナーゼ・ヘパリン療法により治療を開始した.翌日には症状は改善し,右室収縮期圧も80mmHgから30mmHgとなった.心電図経過は,右室圧低下と心エコー上の右室拡大の改善とともにSI,TIIIは消失し,移行帯も改善した. 胸部誘導V 1 ~ 3 の陰性T 波は, 治療後, 圧の低下した翌日から認められ,その後徐々に改善した.後日,再発作時にもSI,TIIIが出現し,同様の変化の経過をみた.冠動脈造影は正常であった.これらの所見からSIは右室の拡張・圧負荷に伴う影響が示唆された. また, V 1 ~ 3 の陰性T 波は少し遅れて治療後にみられており,右室心筋虚血の回復過程や急激な伝導状態の変化による影響をはじめ何らかの再分極への変化を反映する所見と考えた.
    本症は肺血栓・塞栓症の心電図所見を考える上で参考となる経過をとったので報告する.
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