Neurofibromatosis(神経線維腫症)は,皮膚病変や多発性の神経線維腫を主微とする疾患であるが,外胚葉組織から発生する心臓刺激伝導系の合併症を呈した例の報告は少ない.我々は,本症に洞不全症候群を合併した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
症例は66歳女性.幼少時よりcafe au lait spotと神経線維腫があり,その他の所見も含めて,neurofibromatosisと診断された.また,右大動脈瘤,起始異常を示す左鎖骨下動脈起始部動脈瘤を伴っていた. 9 2 年7 月, 徐脈を指摘され, 精査入院した. 3分間心電図では洞房ブロックが頻発しており,ホルター24時間心電図でも,多数の洞房ブロックを認め,最長R-R時間は2.0秒であった.電気生理学的検査では,洞結節回復時間は2.0秒であった.症状も軽度であるため,ペースメーカー植え込みを行わず薬剤投与にて外来観察中である.
我々の調べた範囲では,neurofibromatosisに洞不全症候群を合併した例の報告は1例のみであった.一方,剖検で房室結節上にneurofibromaが存在していた急死症例の報告もあった.Neurofibromatosisは外胚葉組織の異型性を呈する疾患であり,本例では発生学的に外胚葉組織に属する心臓刺激伝導系にも異型性を生じて,洞不全症候群を呈したと考えられた
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