心臓
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28 巻, 12 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 林秀 樹, 藤木 明, 谷昌 尚, 水牧 功一, 下野 真由美, 井上 博
    1996 年 28 巻 12 号 p. 947-955
    発行日: 1996/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    右室流出路起源心室頻拍は運動などの交感神経活動が亢進した時に発生しやすい.しかし,非虚血性心疾患に伴う心室頻拍の発生に自律神経活動がどのように関与するかはいまだ明らかでない.そこで,ホルター心電図で心室頻拍発作の記録された非虚血性心疾患例を対象に,心室頻拍発生直前の自律神経活動の変化を心拍変動解析で評価した.器質的心疾患がなく右室流出路起源の心室頻拍を持つ7例(37±14歳),拡張型心筋症の7例(62±12歳),肥大型心筋症の5例(47±15歳)を対象とした.心室頻拍(5連発以上の心室期外収縮で,心拍数が100/分以上)40回の直前1280秒間を5等分し,この区間の心拍変動を最大エントロピー法を用いて周波数解析を行った. 時間領域の指標としてp N N 5 0 , S D N N も測定した.いずれの疾患群においても,平均RR間隔は心室頻拍の発生に向かって次第に短縮した.右室流出路群では高周波成分( H F , 0 . 1 5 - 0 . 4 0 H z ) ,pNN 50は減少し,その一方低周波成分(LF,0.04-0.15Hz),LF/HF,SDNNが増加した.拡張型心筋症群ではSDNNが増加し,一方HF,pNN 50は減少した.これら2グループとは対照的に,肥大型心筋症群ではSDNNの増加を認めたが,周波数領域の指標には明らかな変化を認めなかった.以上の所見から,心室頻拍の発生に関与する交感神経と副交感神経の役割は,基礎心疾患により異なる可能性のあることが示唆された.
  • 亀山 敬幸, 福田 貢, 池田 大介, 鎌田 浩和, 松本 明子, 宮本 裕治, 佐藤 尚司, 小山 雅弘
    1996 年 28 巻 12 号 p. 956-959
    発行日: 1996/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    84歳男性の急性下壁心筋梗塞の症例に対してdirect PTCA時にPalmaz-Schatz stentを留置した.ステント留置後oozing typeの心破裂をきたし修復術を施行,術後血栓排液が続くため抗血栓療法が全くできず,むしろ止血剤を大量に投与したにもかかわらず慢性期にステント留置部の良好な開存を確認した.ステント療法における適応と後療法について考える時,興味ある症例であり報告した.
  • 佐藤 和義, 上松瀬 勝男
    1996 年 28 巻 12 号 p. 960-961
    発行日: 1996/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 山田 聡志, 岡田 義信, 堀川 紘三, 大関 一, 江口 昭治, 本間 慶一, 根本 啓一
    1996 年 28 巻 12 号 p. 962-966
    発行日: 1996/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    我々は,狭心症を主訴として来院し,手術にて大動脈炎症候群による左冠状動脈入口部狭窄と診断された症例を経験したので報告する.
    症例は19歳,女性.既往歴に特記すべきことなし.労作時胸痛を訴えて来院しホルター心電図にて症状に一致したST低下が認められた.検血などの一般検査や胸部CT,大動脈造影に異常は認められなかったが,冠状動脈造影上,左冠状動脈入口部に99%の狭窄が認められた.その後左冠状動脈入口部に内膜摘除術を施行し,症状は消失した.手術所見は上行大動脈,肺動脈主幹部,右大腿動脈壁は肥厚しており,上行大動脈の病理所見から大動脈炎症候群と診断された.本例の大動脈炎は,上行大動脈,肺動脈主幹部,右大腿動脈を侵していたが,狭窄をきたした分枝は左冠状動脈だけと考えられていた.大動脈炎症候群では,炎症反応が陰性で大動脈造影上で主要分枝に異常が認められない場合でも,冠状動脈入口部だけに狭窄をきたす例が存在し,注意を要すると考えられた.
  • 遠藤 真弘
    1996 年 28 巻 12 号 p. 967-972
    発行日: 1996/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 谷保 直仁, 高英 成, 平松 健司
    1996 年 28 巻 12 号 p. 973-976
    発行日: 1996/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は21歳,男性.オートバイによる交通外傷で,左側血気胸,右側血胸の診断,加療を受けた.血気胸は改善したが,10日後,ショック状態となり右心不全症状が増悪したため,当院救命救急センターへ転院した.高度三尖弁閉鎖不全症と診断し,受傷後2週目に準緊急的に手術となった.中等度低体温人工心肺下にて,右房を開けてみると乳頭筋が右室起始部より完全に断裂していた.三尖弁形成術不可能と診断し,三尖弁置換術を施行した.術後経過は順調で,退院し元気に社会復帰している.このような病態での三尖弁閉鎖不全症は比較的まれであると思われたので報告する.
  • 心筋生検所見との関連
    三浦 裕次, 井内 和幸, 清川 裕明, 中林 智之, 飯田 博行, 石川 忠夫, 山下 弘子, 三輸 淳夫, 青木 周一
    1996 年 28 巻 12 号 p. 977-982
    発行日: 1996/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    食事療法による減量とともに右心不全の改善が見られたが,左心機能障害が遷延化し心筋生検において線維化を認めたOSASの1例を経験したので報告する.
    症例は33歳,男性.傾眠傾向と胸部不快感のため来院,胸部X線上著名な心拡大と低酸素血症を認めた.Apnea index 25.0回/時と高値でOSASと診断した.また両心機能障害の合併を認めた.減量とともにOSASは軽快し右心不全の改善は見られたが,左心機能障害は遷延化した.心内膜心筋生検を施行したところ,すでに心筋に線維化を認め,非可逆性の左室機能障害をきたしていると思われた.
    拡張型心筋症において心筋の線維化と予後との関連性が示唆されているが,OSASにおいても,心筋生検での線維化の有無が予後規定因子として重要であると考えられた.
  • 東川 昌仁, 金盛 俊之, 山下 滋夫, 吉田 道明, 中村 保幸, 木之下 正彦, 新田 哲久, 高橋 雅士, 相模 龍太郎
    1996 年 28 巻 12 号 p. 983-987
    発行日: 1996/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性で,労作時呼吸困難を主訴に来院.低酸素血症,心電図上のV1~3の陰性T波の出現,心臓超音波所見での右心系の拡大を認め急性肺塞栓を疑った.肺血流シンチで左右両肺の広範囲多発性陰影欠損を認めた.胸部の高速螺旋CT検査では左右肺動脈内に塞栓子が描出され肺塞栓と確定診断し,直ちにヘパリンとウロキナーゼを投与した.経過は良好で,肺血流シンチの追跡でも陰影欠損領域は著明に減少した.同時に行ったCTにて血栓はほぼ溶解し消失しているのを確認し得た.
    最近,CTの肺塞栓に対する診断面での有用性が論じられている.特に短時間で安全に行うことができる高速螺旋CTは1スライスの投影時間が1秒以内であるため,塞栓子の大きさや性状までを詳細に描出できる.したがって,肺動脈造影や肺血流シンチグラムの代用法となる可能性は大きい.更に,経済性にも優れているので血栓の定期的な経過観察にも有用と思われる.
    今回,高速螺旋CTが早期診断と経過観察に非常に有用であった肺塞栓の1例を経験したので報告する.
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