症例は11カ月男児.食思不振,浮腫を主訴に近医を受診し,下腿の浮腫が一部蕁麻疹様であったため,ステロイド投与で経過観察となった.再診時著明な心拡大を認め当科紹介入院となる.心電図上V5,V6の陰性T波,低電位差を認めた.心エコー上著明な左室の心筋肥厚,左室拡張末期径の減少を認め,左室壁運動は良好であった.入院後収縮期駆出性心雑音と左室流出路狭窄を認めた.酸素投与,利尿剤で加療し軽快した.
乳児の心筋炎の特徴として急激に発症するショック,呼吸困難が挙げられているが,本症例はそれと経過を異にし,初期の状態は悪くはなく,ステロイド投与後に状態が重篤化していた.
心筋炎で一過性の心筋肥厚を呈した報告は若干みられるが,左室拡張末期径の減少を伴い心エコー上肥大型心筋症様の像を呈したものは2例の報告しかみられず,そのうちの1例はステロイド治療後に心筋肥厚をきたした新生児例であった.
本症例はLiaoらの報告と併せて考えると,小児の心筋炎の経過や治療を考えるうえで興味深い症例と思われた.
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