心臓
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29 巻, 6 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 松森 昭
    1997 年 29 巻 6 号 p. 477-488
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 亀山 智樹, 高嶋 修太郎, 小幡 賢子, 井川 晃彦, 平岡 勇二, 平井 忠和, 井上 博
    1997 年 29 巻 6 号 p. 489-498
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    経食道心エコー図による心原性塞栓症の危険予測因子を調べるため,連続136例の経食道心エコー図所見と塞栓症の合併の有無を後向きに検討した.136例中左心耳の描出が良好であったのは113例で,基礎疾患により以下の3群に分けた.すなわち,リウマチ性僧帽弁膜症29例(MV群),非リウマチ性心房細動37例(Af群),洞調律であった非リウマチ性心疾患47例(SR群)の3群である.またワーファリンによる抗凝固療法の影響を検討するため,ワーファリン投与の有無により2群に分けた.SR群の塞栓症非合併例(n=40)におけるパルスドップラー法により求めた左心耳血流速度の正常下限は,27cm/秒であった.心原性塞栓症の合併は,113例中19例(17%)にみられ,その発症率は,3群間で差はなかった.MV群における左心耳血流速度は平均17.0±12.7cm/秒と低下しており,左房内モヤモヤエコーの程度と逆相関(r=-0.69,p<0.001)していた.左房内血栓は,MV群の35%,Af群の22%にみられたが,SR群においては6%と低かった.ロジスティック回帰分析にて心原性塞栓症の危険因子を予測したところ,左房内血栓,左房内モヤモヤエコーおよび抗凝固療法の有無が重要であった.以上より,経食道心エコー図所見は,心原性塞栓症の危険因子の評価に有用であると考えられた.
  • 正常心機能例における検討
    山内 孝義, 鯵坂 隆一, 渡辺 重行, 増岡 健志, 斎藤 巧, 外山 昌弘, 杉下 靖郎
    1997 年 29 巻 6 号 p. 499-506
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    運動に関与する筋肉量の増加が正常心機能患者の運動能力を改善するか否かにつき検討した. 対象は心不全症状,心筋虚血徴候を有さない心疾患患者20例(全例男性)であった.運動負荷は自転車エルゴメータを用いて,各々一肢(一肢負荷)および両下肢(二肢負荷)で,10W/分のramp負荷を施行し,呼気分析により,最高酸素摂取量(peak VO2)および換気閾値(VT) を測定した.
    結果:対象は二肢負荷におけるpeak VO2の良否により運動能力正常群10例と運動能力低下群10例に分類された. 運動能力正常群では, 二肢負荷のpeak VO2,VTが一肢負荷のそれらより有意に大きかったが, 運動能力低下群では, いずれの指標も両負荷での有意の差異を認めなかった.Physical conditiollingの指標である最高酸素脈(peak O2-pulse)は運動能力低下群が運動能力正常群より有意に小さかった.PeakO2-pulseと二肢負荷のpeak VO2の一肢負荷のそれに対する増加率(%peak VO2)とには正の直線的相関を認めた.
    以上より, 正常心機能患者において, 運動に関与する筋肉量の増加に伴う運動能力の増加の程度からphysical deconditioningの有無を推測しうることが示唆された.
  • 佐藤 周, 川口 竹男, 勝沼 英太, 町田 陽二, 清水 完悦, 和泉 徹
    1997 年 29 巻 6 号 p. 507-512
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は56歳女性.数年前より飲酒後や安静時に前胸部違和感を自覚するようになり来院.心電図所見で完全右脚ブロック,運動負荷時ST低下を示し,心エコー所見で心筋肥大を認めた.心臓カテーテル検査では心内圧は正常で,左室造影上も壁運動異常はみられなかった(EF74%).冠動脈造影では左前下行枝と回旋枝の著明な拡張と蛇行が示され,それらから多数の網状血管を通じて左室腔内への造影剤流入がみられたことから,左冠動脈左室瘻と診断した。右冠動脈は低形成で右室枝以降は描出されず,左室下壁に左冠動脈から側副血行路を通じ血管状構造物が描出された.右冠動脈はその形態から動脈硬化性血管閉塞は考えにくく,先天性右冠動脈形成異常が示唆された.運動負荷タリウム心筋シンチグラフィーでは,右冠動脈形成異常を伴った左室下壁部分には運動負荷により虚血が,左冠動脈左室瘻を伴った左室前壁部分には安静時にcoronary steal現象がみられた.左冠動脈左室瘻に右冠動脈形成異常を合併した報告は我々の知る限りではなく,その成因として胎生期の発生異常が考えられた.
  • 酒巻 一平, 李 鍾大, 清水 寛正, 宇隨 弘泰, 酒井 克哉, 白神 悟志, 上田 孝典
    1997 年 29 巻 6 号 p. 513-518
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は74歳男性,陳旧性心筋梗塞(前壁)に急性下壁梗塞を併発し,難治性の心室頻拍を繰り返す重症心不全に陥った.持続性心室頻拍はアミオダロン投与により消失したが,その後も軽労作により増加,頻発する心室性期外収縮を認めたためβ 遮断薬であるメトプロロールを極少量より併用投与したところ,抗不整脈効果とともに著明な心機能の改善,daily activityの改善が得られた.同時に,左室前壁,後壁の一部の壁運動の改善,201T1の取り込みの改善,123I-BMIPPの取り込みの改善が得られたことから,同領域の心筋はいわゆるhibernating myocardiumの状態であったと考えられた.本例は,ischemic cardiomyopathyによる重症心不全症例に対してもβ 遮断薬療法が有用であることを示す典型例と考えられた.
  • 櫻田 卓, 菊池 洋一, 鉢呂 芳一, 加賀 谷闊, 佐藤 直利, 坂本 賢一
    1997 年 29 巻 6 号 p. 519-523
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性.1995年12月20日,突然の胸痛が出現し,近医を受診.急性心筋梗塞の疑いにて市内総合病院循環器内科へ紹介となった.緊急冠状動脈造影にて,LAD#6の完全閉塞およびRCA#1の90%狭窄を認めた.LADに対して冠状動脈内血栓溶解療法(ICT)を施行し,TIMI IIIまで改善を認め,CCU帰室となった.約2時間30分後に胸痛,徐脈および血圧低下を認め,再び冠状動脈造影を施行したところ,RCA#1の急性閉塞所見を認めた.直ちにPTCAを施行したが,冠状動脈解離によると思われる急性閉塞を繰り返し,IABP挿入の後,緊急CABGを目的に,当院へ転院となった.RCAに対してSVGを用い,LADに対してLITAを用いて,CABG 2枝を施行した.経過良好にて,第21病日に退院となった.
  • 副島 洋行, 家坂 義人, 高橋 淳, 合屋 雅彦, 徳永 毅, 雨宮 浩, 藤原 秀臣, 新田 順一, 野上 昭彦, 青沼 和隆, 廣江 ...
    1997 年 29 巻 6 号 p. 524-530
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は20年来の動悸発作を有する50歳男性.安静時心電図はPRの短縮のみで,デルタ波を認めず,pseudo VT発作が記録されたことがある.ATP負荷にてA型WPW症候群を呈した.電気生理学検査では左側壁に顕性副伝導路を認め,右室期外刺激ではHis東電位記録部位に逆行性A波の最早期出現を認め,刺激周期の短縮により最早期出現部位は左側壁に変化し,左側顕性副伝導路以外に右側に潜在性副伝導路の存在が示唆された.房室回帰性頻拍時では左側壁副伝導路のみと両副伝導路同時の2種の逆伝導様式を認め,後者の場合には容易に心房細動に移行した.左側壁副伝導路のカテーテルアブレーション成功後は,右側副伝導路を逆伝導路とする房室回帰性頻拍となり心房細動はみられなくなった.右前壁の三尖弁輪上で逆行性A波の最早期出現を認め,同部位でアブレーションに成功した.房室回帰性頻拍時複数副伝導路が同時に逆伝導路として関与することはまれで,本例はWPW症候群における心房細動発症のメカニズムを考える上で示唆に富む症例と考えられた.
  • 佐藤 靖史, 岩坂 知佳, 田中 克宏, 安部 まゆみ
    1997 年 29 巻 6 号 p. 531-541
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    血管新生とは既存の血管から新しい血管ネットワークが形成される現象である.血管新生は促進因子と抑制因子の2種類の調節系によって制御されており,促進系が優位となるとき開始すると考えられる.血管新生促進因子としてはVEGFファミリー,FGFファミリー,EGFファミリーの増殖因子が特に重要であり,内皮細胞はこれらの増殖因子に反応して,血管基底膜や間質のマトリックスを消化し,遊走・増殖して管腔を形成する.血管新生の過程で内皮細胞にはさまざまな遺伝子の発現が誘導されるが,その分子機構の詳細は不明である.我々は,転写因子ETS-1に注目して解析を進めている.ETS-1はETSファミリーの転写因子の一つであり,ETS結合モチーフに結合して遺伝子発現を調節する.これまでの我々の検討では,血管新生促進因子に対する共通の反応として血管内皮細胞にETS-1の発現が誘導されること,ETS-1はu-PAやMMP-1の遺伝子発現と細胞遊走に関与し,ETS-1の発現を阻害すると血管新生が抑制されることが明らかとなった.ETS-1は,血管新生に際して血管内皮細胞の遺伝子発現を制御する重要な転写因子と考えられる.
  • 佐渡島 純一
    1997 年 29 巻 6 号 p. 542-552
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    機械的刺激により心筋細胞で産生分泌される種々の液性因子が,心肥大の形成に重要な役割を果たすことが明らかになってきた.しかしながら,これらの液性因子がどのような細胞内情報伝達系を介して心肥大現象をもたらすのかは明らかでない.我々はさきに新生児ラットの培養心筋細胞で伸展刺激がアンギオテンシンIIの分泌を誘発し,アンギオテンシンIIが心肥大の形成に重要な役割を果たすことを報告した.本稿では,アンギオテンシンIIによる心肥大現象における細胞内情報伝達系の役割について我々の実験結果を要約する.
    アンギオテンシンIIによるc-fosの発現にはプロテインキナーゼCが重要な役割を果たす.c-fosやEgr-1などの細胞癌遺伝子の多くはそれ自身が転写因子として他の遺伝子の発現を調節すると思われる.アンギオテンシンIIは70KS6キナーゼを持続的に活性化する.70KS6キナーゼの活性化を抑制すると,アンギオテンシンIIによる蛋白合成の促進が選択的に抑制される.Ras細胞癌遺伝子は心肥大の形成に中心的な役割を果たす.アンギオテンシンII受容体はチロシンキナーゼ活性を持たないG蛋白結合型受容体であるが,Srcファミリーチロシンキナーゼを活性化し,Rasを活性化する.個々の心肥大現象はそれぞれ異なった情報伝達分子によってもたらされるものと思われる.それぞれの情報伝達分子がどのようにして活性化されるのかは,まだ不明な点が多い.
  • 田賀 哲也
    1997 年 29 巻 6 号 p. 553-562
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    造血細胞の増殖分化を特に制御する因子として同定されてきた種々のサイトカインに対する受容体の多くは,構造上類似したファミリーに属している.それらは,通例サイトカイン結合後に信号伝達性の膜蛋白と会合することで,機能的な高親和性受容体複合体を形成する.Interleukin-6(IL-6),IL-11,leukemia inhibitory factor(LIF),oncostatin M(OM),ciliary neurotrophic factor(CNTF),cardiotrophin-1(CT-1)の受容体複合体は全て,信号伝達蛋白gp130を共有している.これらのサイトカインは造血系のみならず心筋細胞や神経細胞にも作用を発揮していることが,in vitro in vivoの両面からの研究により近年明らかとなった。これらgp130刺激性サイトカインは,gp130のホモ二量体あるいは他の類似分子とのヘテロ二量体の形成を促すことで,gp130の膜直下にあらかじめ会合しているチロシンキナーゼの活性化に始まる細胞内信号カスケードを動かし,核内での転写因子の活性化に至る.
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