愛知県総合保健センターの総合健診の受診者の中から,後に心筋梗塞を発症した男性54名と,年齢,性をマッチングした正常対照108名について,発症8年前に遡って総合健診データ中の冠危険因子について比較し,検討を加えた。
危険因子は,梗塞群において心筋梗塞発症前の8年間を通じて,正常群より高かった.その推移をみると,血糖,喫煙率以外では,両群間の差異はむしろ小さくなる傾向にあった.
発症8年前のデータによれば,オッズ比はBMI(3.4),喫煙(2.8)の2因子が高く,危険因子の3因子以上の合併例ではオッズ比は10.0に上り,危険因子の相乗的な影響が推定された.
一方,梗塞例54名中,10名(18.5%)は観察期間中危険因子数は1つ以下のまま経過していた.梗塞群で,発症直近でのマスター負荷心電図陽性を示した者は3名(5.6%)にすぎなかった.危険因子の変動や,負荷心電図検査によって梗塞の近い将来の発症を予測することは困難だが,心筋梗塞の高危険群は,かなり早い時期においてスクリーニングすることが可能であると考えられた.
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