心臓
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29 巻, Supplement5 号
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  • 五十嵐 正樹, 小野 邦春, 伊藤 良明, 大石 知実, 斉藤 徹, 上嶋 権兵衛, 森下 健
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 3-6
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1992年4月より,救命救急士到着時心室細動を確認し当院救急外来で処置した内因性の心肺停止例121例を対象とした.心拍再開したものをA群,心拍非再開をB群の二つに分類した.心室細動時の波形による10拍を平均した振幅と細動周期,電気的除細動回数と総エネルギー数,当院来院時の動脈血液ガス(pH,pCO2,pO2,BE),血清K値,乳酸値,そして発症からCPR(cardiopulmonary resuscitation)までの時間を検討した.A群は121例中27例(22 .3%)で心拍再開し入院となったが,B群は94例(77.7%)であった.心室細動時の波形による細動周期では有意差はなかったが,A群の振幅(0.9±0.3mV)はB群(0.5±0.3mV)に比し有意(p<0.005)に大きかった.電気的除細動回数(A群L8±0.8回,B群1.1.3±0.5回)と総エネルギー数(A群425±226J,B群300±148J)は2群間で有意差はなかった.動脈血ガス,血清K値,乳酸値でも有意差はみられなかった.発症からCPRまでの時間はA群で7.4±6.9分,B群で10.4±6.8分であった(p<0.05).心停止からCPR開始までの時間と心室細動の振幅,周期の相関関係でも軽度の逆相関(p<0.05)を認めた.以上より心室細動時の振幅が大であり,心肺停止時間が短いほど除細動の成功率が高かった.したがって,救急現場での早急かつ適切な心肺蘇生が肝要である.
  • 佐藤 匡, 田辺 直仁, 林 千治, 斉藤 玲子, 鈴木 宏, 和泉 徹, 相澤 義房, 豊嶋 英明, 新潟市突然死救急研究会
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 7-10
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】突然死例の蘇生および社会復帰に寄与する要因を生命徴候消失のタイミングとの関係から明らかにする.【対象と方法】対象は1990年12月から1994年4月までの間,新潟市消防局の救急隊が出動した事例のうちの突然死(蘇生例を含む)61例である.これらの例における予後と関連する要因について検討した.【結果と考察】突然死61例の平均年齢は69±14歳,男性が61%であった.救急隊現場到着時に生命徴候が消失していた例は42例(68.8%),生命徴候の認められた例は19例(31.2%)であった.生命徴候(-)群では,蘇生例は4例であったが,社会復帰例はなかった.この4例はいずれも目撃者による心肺蘇生術は受けておらず,早期の蘇生術が受けられれば社会復帰した可能性も推定された.生命徴候(+)群では,社会復帰例が2例認められ,いずれも目撃者によって,発症後3分以内に発見された例であった.すなわち,この2例では,生命徴候消失後ただちに救急隊員または医師によって蘇生術が施行されたことが社会復帰に寄与したと考えられた.【結語】突然死例の蘇生と社会復帰には,生命徴候消失後早期に蘇生術を開始する体制作りが重要と考えられた.
  • 堀 進悟, 副島 京子, 篠澤 洋太郎, 藤島 清太郎, 武田 英孝, 木村 裕之, 小林 正人, 鈴木 昌, 村井 達哉, 柳田 純一, ...
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 11-14
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    近隣救急隊の1994年12月から1996年4月まで16ヵ月間の出場記録を調査し,浴室内で発生した急病の調査を行った.浴室の急病は43例で当該期間の全救急件数の0.19%を占めていた.年齢は77±10歳と高齢者に多く,男女比は24例対19例と男性に多かった.診断は心肺停止26例(60%),失神(前駆症)14例,脳血管障害3例であった.各群とも高齢者が多く,明らかな年齢差を認めなかった.浴室急病の発生時期は,心肺停止のみならず,いずれの群も12-3月の厳寒期に集中していた。心肺停止は自宅浴室の発生が26例(100%)で,公衆浴場における発生は認めなかった. 一方, 非心肺停止例では自宅浴室が12例,公衆浴場が5例であった(p<0.01).さらに浴室内の発生場所を検討すると,心肺停止は浴槽内が22例(85%),洗い場が4例,非心肺停止では浴槽内が7例,洗い場が7例,不明が3例であった(p<0.01).溺水の有無を検討すると,心肺停止では21例に,非心肺停止では2例に溺水を認めた(p<0.01).すなわち,心肺停止は非心肺停止例と比較して自宅浴室の浴槽内で発生しやすく,溺水をともない易いことが示された.
    本研究により,公衆浴場よりも自宅浴室が心肺停止の危険をもたらしうることが示された.すなわち,身近に救助者がいれば入浴急死は防止できる可能性が示唆された.
  • 畔柳 三省, 熊谷 哲雄, 松尾 義裕, 小島原 将直, 徳留 省悟
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 15-22
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1984年から1992年の9年間の,学生のランニング中の突然死の全国疫学調査を実施し,次の結果を得た.学生の全スポーツ中の突然死のうちランニング中の突然死は約42.0%を占め,最多である.進学するに伴い,ランニング中の突然死は増加し高校生でピークに達する.男性の比率は上昇し高校生と,大学生・短期大学生および他学生との間で顕著である.疾患群は減少する傾向にある.また,剖検死因では約85%を心臓疾患が占め,死因(剖検率25.8%)において占める心臓系疾患の割合である94.5%よりも,約10%少ない.検死のみによる死因の決定では心臓疾患とされやすいことが危惧され,正確な死因を確定し今後の予防に貢献するためにも剖検による死因の決定が不可欠である.
  • 河合 祥雄, 遠藤 仁, Pumisak Intanon, Pyatat Tatsanavivat
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 23-26
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Singaporeにおけるタイ国労働者の夜間急死は国際的に注目された.8割はタイ東北部出身で,同地では,加えて腎遠位尿細管性酸血症,腎結石,周期性四肢麻痺などが多発している.96年1-6月にかけて現場(Yasothon県Muang郡Duthung村)で聞き取り調査を施行した.聞き取り可能症例は急死5,蘇生例1で,81年から96年に亘る.急死例は全例農業に従事し,いずれも壮健で,3名に感冒様症状,頭痛の先行を認めた.死亡後に発見された64歳女性を除き,深呼吸またはうめき発声後に急死,1例では全身の筋硬直を見た.ニアミス例は27歳男性で軽労作後眩暈が先行,夜間うめき発声後に筋硬直を呈したが,村民総出の蘇生で救命された.全例剖検はなく,死因不明であるが,Singaporeでの剖検では肺出血,肺臓炎,心筋炎が確認された.電解質代謝異常との関連が推定され,示唆に富む病態と考え報告した.
  • 杉下 総吉, 福西 晶徳, 渡辺 英機, 石徹白 晶, 各務 雅夫, 安藤 文夫
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 27-33
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    拡張型心筋症(DCM)に併発する持続性心室頻拍(SVT)は突然死の危険因子として重要なものであり,その治療としてIII群抗不整脈薬であるamiodarone(AMD)や,植え込み型除細動器(ICD)が試みられることが多い.
    今回我々はAMD使用下でSVTの抑制効果を認めていたにもかかわらず突然死した2症例を経験した.いずれも原因は不明であったが,症例1は多剤併用による催不整脈作用が疑われ,症例2はAMDによるTorsades de pointesが疑われた.
    SVTに対する予防効果が認められていても,催不整脈に対する充分な配慮が必要であると思われた.
  • 柳 統仁, 野村 真一, 丸山 徹, 加治 良一, 仁保 喜之
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 34-39
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性.1992年12月,検診時の心電図異常から肥大型心筋症の診断を受け,以後β遮断薬を処方されていた.毎年の検診の心電図では1994年をピークにT波陰性化,左室電位(Sv1+Rv5)の増高を認めた.1995年8月,勤務中(座業)に突然意識消失が出現,救急車内の心電図で心室細動を認めた.近医にて蘇生に成功し,精査目的にて,当院に転科した.左室造影,心筋生検の結果,心尖部肥大型心筋症と診断した.電気生理学的検査にて心室頻拍,心室細動は誘発されず,24時間心電図でも心室性不整脈は認めなかった.冠動脈内のACh注入にて無症状の冠攣縮と心室頻拍(4連発)を認めた.硝酸剤とCa拮抗薬投与にて,現在まで意識消失発作は再発していない.肥大型心筋症の自然経過において,突然死は予後を左右する大きな問題である.予後不良因子としては,心房細動や,心室性不整脈,脚ブロックの出現,左室電位の(Sv1+Rv5)減少などがあげられる.本例は肥大塑心筋症に合併した冠攣縮により,心室細動をきたした突然死のニアミス例と考えた.また左室起電力の減少した1995年に突然心室細動を起こしたことも,諸家の報告と一致した.
  • 吉田 明弘, 板垣 毅, 銕 寛之, 梶谷 定志, 宝田 明, 林 孝俊, 矢坂 義則, 森 益規, 中河 啓悟, 太田 総一郎, 村田 武 ...
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 40-46
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心エコー上明らかな異常を認めず右室流出路起源心室性期外収縮を伴い,心室細動または突然死を来した右室流出路型特発性心室細動の4例について,加算平均心電図,電気生理学的検査,心臓カテーテル検査,右室中隔よりの心筋生検を施行し,その臨床像について検討した.加算平均心電図では3例中1例で陽性であったが2例は陰性であった.電気生理学的検査では,1例に右室からの2連発刺激により心室細動が誘発され,2例はisoproterenol投与にて非持続性心室頻拍の自然出現を認めたが,残り1 例は誘発されなかった.左室造影では4例中3例に軽度壁運動低下を認めた.心筋生検では全例に心筋間質の線維化像を認めたが細胞浸潤を認めた例はなかった.【結語】心室性期外収縮から心室細動へ移行することに,心筋の組織学的変化が関与している可能性が示唆された.
  • 野呂 眞人, 杉 薫, 池田 隆徳, 円城寺 由久, 笠尾 昌史, 出口 善昭, 坂田 隆夫, 高見 光央, 安部 良治, 山口 徹, 高橋 ...
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 47-53
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心室頻拍(VT)を初発症状とし,冠動脈造影(CAG)で異常を認めず,病理学的には心筋梗塞と診断された2剖検例について検討した.症例1:58歳女性,VTによる動悸発作を繰り返し,種々の抗不整脈薬を投与されたが効果なく,高周波カテーテルアブレーションでもVTが多源性のため根治には至らなかった.時間経過とともにQRS幅が広くなり,多源性のVTが頻発し,VTによる失神発作も生じるようになったため,植え込み型除細動器を植え込み,amiodarone(200-400mg)を併用投与した.しかし,最終的には心筋がペーシングに反応しなくなり死亡した.臨床的には病態が徐々に悪化していることから進行性の疾患が考えられたが,病理学的には陳旧性心筋梗塞と診断された.症例2:59歳女性,VTによる動悸発作が主症状であり,心エコー図では左室心尖部に心室瘤と1血栓像が認められた.ホルター心電図では頻発する多形性心室期外収縮が記録されていた.精査予定としていたが,心室細動を生じ死亡した.この2症例は,臨床的にはVTを初発症状とし,病態が徐々に増悪し,冠動脈は正常であるにも関わらず病理学的には左前下行枝を責任病変とする陳旧性心筋梗塞像を呈し,心臓性急死した特徴のある症候群と考えられた.
  • 岡崎 悦夫, 箱崎 半道, 山内 春夫, 岡田 了三
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 54-56
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    睡眠時無呼吸症候群閉塞型の術後に突然死した44歳の男性で,窒息死か心臓性突然死かが問題になった例を剖検した.低酸素血症,慢性の高炭酸ガス血症,アシドーシスを認めApnea Index 58.8であった.剖検では右冠動脈の硬化狭窄と心室中隔上部の心筋内細動脈に硬化狭窄,屈曲,血管壁の浮腫,心筋群を囲む線維症があった.気管・気管支・細気管支の慢性炎症,肺動脈の粥状硬化症の他に,蘇生術の影響と思われる咽喉部の出血,肺内の鬱血・水腫を認めた.突然死との関連で注目される睡眠時無呼吸症候群は,最近では呼吸異常というより心血管系の合併症による突然死が多いと報告されている.死亡時の状況と不整脈源となりうる心臓の組織所見から,本例は不整脈性の突然死と考える.
  • 三須 一彦, 中沢 潔, 高木 明彦, 荒井 敏, 中山 大, 横山 泰廣, 三宅 良彦, 村山 正博
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 57-62
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    VAP発作(胸痛,ST上昇)に引き続きVT,Vfに移行した2例とVAP発作がなくVfを起こしたVAPの3例を検討した.いずれにも器質的冠動脈狭窄はなく,左室駆出分画は正常であった.VAP発作に引き続いたVfとVAP発作のないVfの両者を認め,植え込み型除細動器を用いた1例では4年後の植え換え時のVf闘値は著明に上昇していた.また,他の例でもVAPが頻発した時期にVfを起こしており,誘因として心筋虚血の重要性が示唆された.しかし,VT・Vfに近い時期と抗狭心症薬によりVAP発作が消失した時期のQTc dispersion(QTcd)の比較では,VAP発作消失時期にQTcd減少3例,増大2例で心室不応期の不均一性と心筋虚血とは一致しなかった.多数例の検討が必要と思われるが,VT・Vfの発現には心筋虚血以外の一過性の要因があり,VT・Vfを起こし得る例ではその要因により心室不応期の不均一性が増大すると考えられた.以上より,致死性不整脈を起こし得る例では,狭心症治療のみならず不整脈の原因検索および治療が重要と考えられた.
  • 阿部 芳久, 門脇 謙, 杉田 暁大, 盛 裕之, 泉 学, 佐藤 匡也, 熊谷 正之
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 63-67
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠攣縮性狭心症における突然死がいかなる状況のもとに発生するのかを明らかにする目的で,以下の検討を行った.
    冠攣縮性狭心症発作に引き続き発生したと考えられる心肺停止例で,蘇生に成功した6例(男性5例,女性1例,平均年齢64歳)を対象として,発作に至る状況と治療経過および冠動脈造影所見について検討した.
    症例は,発作の発生状況にもとづいて薬剤内服を中断した4例と未治療であった2例の2群に分けられた.薬剤中断例の内,2例は有効薬剤を持参せずに温泉旅行に出かけ,内服中止の翌朝に発作が出現した.他の2例は,冠動脈造影検査にそなえて薬剤をwashoutする目的で中断した症例であった.未治療例の内,1例は失神を伴う胸痛発作の精査のために入院中の例で,他の1例は心内膜ド梗塞の疑いで行った冠動脈造影の結果が軽度狭窄像のみであったため,無治療で経過観察とした症例であった.
    冠動脈造影所見は,多枝攣縮が3例,左冠動脈主幹部攣縮が1例,右冠動脈の攣縮が2例で,有意狭窄を認めた例は主幹部狭窄の1例だけであった.また6例中3例は,造影検査時に胸痛を伴う冠攣縮の自然発生を認めた症例であった.
    以上より,冠攣縮性狭心症において突然死を避けるためには,薬剤を中断しないように指導することやできるだけ早期に治療を開始することが重要と考えられた.
  • 小菅 雅美, 木村 一雄, 石川 利之, 根本 豊治, 清水 智明, 持田 泰行, 岩沢 祐二, 杉山 貢, 久慈 直光, 宮崎 直道, 栃 ...
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 68-69
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    薬剤難治性の多枝冠攣縮に合併し心室細動(VF)が頻発した症例に対して経皮的人工心肺(PCPS)を使用した.症例は58歳の男性で,狭心症の診断で薬物治療を受けていたが,胸痛が出現し救急車内でVFとなり,当センターに搬送されPCPSを施行した.自己心拍再開時の心電図では,下壁誘導および胸部誘導V4-6でST上昇を認めた.緊急心臓カテーテル検査(CAG)では,ST非上昇時は左右冠動脈に有意狭窄は認めず,ST上昇時には右冠動脈#4PD99%狭窄, 左前下行枝#799%狭窄,左回旋枝#13完全閉塞を認めた.ST上昇が続いた後VFとなり,CAGでは左冠動脈の冠攣縮が繰り返し出現し,硝酸イソソルビド,ベラバミルの冠動脈内投与も必ずしも有効ではなかった.その後,強力な薬物治療にもかかわらず,ST上昇発作,VFが頻発した.しかし,約8時間経過した時点で洞調律となり,STも基線に戻り,致死的不整脈も消失したため,PCPSは開始36時間後に離脱できた.退院時のCAGでは,左右冠動脈ともほぼ正常冠動脈像であった.その後の経過は順調で,薬物治療で発作は生じていない.
    本症例では,来院時よりST上昇発作と,これに合併したVFが頻回に出現し,薬物治療は効果がなかった.この極期を乗り切るために補助循環としてPCPSは有用であったと考えられた.
  • 白井 徹郎, 笠尾 昌史, 向山 美雄, 落合 秀宣, 井上 清
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 70-74
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    無症候性心筋虚血出現時に心室細動が誘発され,急死した狭心症の1例を経験したので報告する.
    症例は67歳,女性.労作時の胸痛を主訴に当院を紹介受診.初診時の心電図,胸部写真,血液生化学では異常を認めなかったため,硝酸薬投与下でHolter心電図を施行した.Holter記録中に3回のST下降発作を認め,うち最初の1回は有症候性でニトログリセリンの舌下が有効であった.残りの2回はいずれも無症候性であった.最後の無症候性心筋虚血出現時のST下降回復期に長い連結期の単発心室期外収縮を認め,その直後に心室細動が誘発され急死した.
    本例の心室細動発生の成因としては,1)出現した時間がST下降の回復期であったことからreperfusion arrhythmiaであった可能性,2)発生前10分間の周波数解析では直前2分間で心拍変動が急激に低下していたことから,心筋虚血に急激な自律神経機能活性の変化が加わり細動が誘発された可能性などが考えられた.本例は無症候性心筋虚血と心臓性急死との関連性を考察する上で示唆に富む症例と考えられた.
  • 清岡 崇彦, 江森 哲郎, 大郷 剛, 福島 研吾, 大江 透, 紀 幸一, 佐野 俊二
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 75-79
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    46歳男性,先天性右冠動脈左室瘻に難治性心室頻拍を合併した.冠動脈造影では,拡張した右冠動脈が左室下壁に開口し,シャント流が吹き上げる左室後側壁に心室瘤を認めた.電気生理学的検査では,心室瘤周辺に遅延電位が認められ,3種類の心室頻拍が誘発された.アミオダロンを含めた薬物治療では,心室頻拍の十分な予防効果が得られなかったため,最終的に第3世代の植え込み型除細動器の植え込みを行った.
  • 井上 省三, 鼠尾 祥三, 斉藤 靖浩, 田中 淳二, 神山 憲王, 末綱 竜士, 河原 洋介, 寒川 昌信, 沢山 俊民
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 80-84
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    複数回のホルター心電図施行後に突然死した心不全2例の心拍変動解析結果をもとに,LFとHFの概日リズムの指標を求め,それらの経時的変化を検討した.【症例1】患者:65歳男性,診断:大動脈狭窄症兼閉鎖不全.現病歴:労作時息切れのため1995年11月2日近医に入院,11月21日精査目的で川崎医大に転院した.転院時肺うっ血は消失しNYHA II度であった.12月7日突然死した.【症例2】患者:63歳男性,診断:陳旧性心筋梗塞・心室頻拍.現病歴:1994年7月2日動悸の精査目的で入院,9月10日退院した.1995年2月8日突然死した.【概日リズム指標の変化】症例1:突然死前,HFの概日リズムは存在したが,LFの概日リズムは消失した.症例2:HFの概日リズムは,入院中見られなかったが,突然死前には見られ,LFの周期が延長:した.【まとめ】突然死とLFの概日リズムの関連は重要視すべきと思われた.
  • 森 秀雄, 安井 直, 渡辺 靖之, 木下 優, 山口 珠緒, 野場 万司, 加藤 千雄, 近松 均, 渡邉 佳彦, 菱田 仁
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 85-90
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心臓突然死の原因のほとんどが心室頻拍,心室細動などの致死性心室性不整脈であり,これらの致死性心室性不整脈出現直前の自律神経活動の検討は有用であると考える.我々は偶然にもホルター心電図施行中に心室頻拍,心室細動をきたした虚血性心疾患患者4例を経験した.同症例のホルター心電図記録の心拍変動スペクトル解析を行うことにより致死性不整脈出現直前の自律神経活動の影響につき検討した.3例は直前に徐拍化とST-T変化が観察され,同時に副交感神経活動の指標であるHF成分の上昇が認められたことから,心筋虚血により副交感神経活動が増強し不整脈出現に関与した可能性が示唆された.一方,他の1例では直前にHF成分の減少を認め,この時明らかなST-T変化やQT時間の延長などがみられなかったことから,迷走神経活動の低下と交感神経活動の亢進という自律神経のアンバランスが致死性不整脈出現の直接の誘因として考えられた.しかしながら,解析数が4例と少なくさらに症例を重ねる必要があると思われた.
  • 樗木 晶子, 樗木 浩朗, 竹下 彰
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 91-96
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】突然死の基礎疾患として虚血性心臓病は主要な位置を占めており,その予測と予防は大きな課題である.本研究では自律神経活動の指標である心拍のゆらぎを評価する一つの方法として心拍インパルス応答を用いて虚血の重症度,心機能との関連および予後の予測の可能性を検討した.【方法】軽微で不規則な運動を負荷した時の心拍変動と運動強度の変化を高速フーリエ変換し心拍と運動の比を求めた後,時問軸に変換すると心拍インパルス応答が求まる.対象は労作性狭心症93例,陳旧性心筋梗塞56例であった.【結果】心拍インパルス応答は心拍変動が30秒以内に基線に復する短期型,上昇が30秒以上持続する遷延型,ほとんど変化しない不変型が見られた.NYHA心機能分類III群の症例22例中14例は遷延型, 8 例は不変型であった. また, 5 年間の予後調査では突然死7例中5例が遷延型,2例が不変型であった.遷延型,不変型は心不全や重症不整脈も発症し易かった.【考察】心拍インパルス応答により虚血性心臓病において自律神経活動の評価が可能であり,その予後を予測する指標となりうる.
  • 林 秀樹, 藤木 明, 谷 昌尚, 碓井 雅博, 水牧 功一, 下野 真由美, 井上 博
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 97-102
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は44歳男性.夜間就寝中に失神発作をきたし精査加療目的で入院した.安静時心電図ではII,III,aVF誘導で軽度のST上昇を認めた.器質的心疾患は除外され,冠動脈のスパスムは誘発されなかった.左室側壁付近由来の心室性期外収縮を契機に心室細動が発生した.アミオダロンの投与中に心室細動が出現し植え込み型除細動器(ICD)を装着した.ビソプロロールの投与中に心室細動の頻度が増加し,その中止後にも同様の頻度で心室細動が出現した.ICDを用いて測定した心室有効不応期が著明に短縮しており心室細動が常に夜間就寝中に出現したことから,不応期延長作用と抗コリン作用を合わせ持つジソピラミドを投与してからは7カ月間心室細動の発生を認めていない.
  • 井上 義明, 井川 修, 友国 晃, 澤口 正彦, 菅 敏光, 足立 正光, 矢野 暁生, 三明 淳一朗, 藤田 真也, 山内 優美, 久留 ...
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 103-108
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は14歳,男性.主訴,意識消失発作.基礎疾患は催不整脈性右室異形成症(ARVD)であり,これに伴う心室頻拍(VT)による意識消失を認めた.意識消失を伴う心室頻拍(VT)はアミオダロン単剤投与下にても出現した.本頻拍を管理するにあたリホルター心電図検査ガイド下に有効薬剤を検討したところ,アミオダロン,メトプロロール,メキシレチン3剤併用療法が最も有効と判断した.これら3剤投与下に施行した心臓電気生理学検:査(EPS)では8種類の持続性non-clinical VTが誘発されたが,clinical VTに比して全て心拍数は低く血行動態的安定は得られていた.ARVDを背景とし,意識が,clinical VT に比して全て心拍数は低く血行動治目的のカテーテルアブレーション(RFCA) , 手術療法が,(2)対症療法としての薬物療法,植え込み型除細動器が挙げられる.ARVDは進行性疾患であり,今後のVT出現様式の変化の可能性や,8種類のVTの出現を認めたことなどより根治療法の適用は困難であった.また,本例に対し薬物療法も効果不十分であり,ICDの適応と考えられたところであった.しかしながら,一方で3剤併川下には頻拍時,血行動態的安定が確実に得られ,結果として意識は清明状態でICDが作動するものと考えられた.その他,年齢的な要因および精神的管理の困難さ,近い将来に待ち受けている頻回のジェネレーター交換,経済的問題などを考慮し,ARVD病態進行時にはICD治療を検討することを前提に,現段階ではICD治療は行わず薬物療法を選択した.
  • 勝木 達夫, 高田 重男, 居軒 功, 長井 英夫, 阪上 学, 小林 健一, 前田 俊彦, 津川 博一, 松井 忍, 竹越 襄, 村上 暎 ...
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 109-112
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:15歳女性.2回の失神発作歴を有し,入院時の心電図上,間欠的なA型デルタ波と,デルタ波の有無に無関係のQT延長(QTc間隔はデルタ波あり0.63秒1/2,デルタ波なしO.64秒1/2)がみられ,動悸に一致したtorsade de pointesが確認され解質,聴力には異常なく,母親にもQT延長(QTc0.53秒1/2)があり,先天性QT延長症候群と診断した.暗算負荷によりさらにQT間隔が延長し,QT延長に交感神経系の関与が示唆された.電気生理学的検査ではプロプラノロール(0.2mg/kg)静注前後で心房細動が誘発されたがデルタ波を伴わず,投与後の心室応答頻度の増加もなかった.β 遮断薬は安全と判断し,洞性徐脈を合併していたため,内因性交感神経刺激作用を有するピンドロール(15mg/日)投与を行った.投与数日後から,前胸部誘導のST-T変化と心室性期外収縮の増加がみられ,ピンドロールを中止し,メキシレチン(300mg/日)に変更した.変更後約2年間は無症状であり,24時間心電図では心室性期外収縮もなかった.自宅にて突然死したが,この2年間の心電図の最大QT間隔,最大QTc間隔,QT dispersionは徐々に延長していた.本例は先天性QT延長症候群にWPW症候群を合併した稀な症例であり,治療におけるβ 遮断薬や抗不整脈薬の選択の上で示唆に富む,貴重な症例と思われた.
  • 早野 智子, 清水 昭彦, 立野 博也, 山縣 俊彦, 江里 正弘, 上山 剛, 久保 誠, 全 栄和, 松崎 益徳
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 113-118
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,58歳,女性.主訴は意識消失,全身痙攣発作.家族歴では息子,娘,姪に心電図異常はなかった.平成8年2月より過労と不規則な食生活が続き,多量の漢方薬(甘草),健康食品を常用していた.5月に,突然誘因なく失神発作が出現した.当院入院時心電図上胸部誘導のST上昇,著明なQT延長(QTc=0.63)と低K血症(2.9mEq/l)が認められた.入院翌朝,モニターにてTorsades de pointes(Tdp)が認められ,K補正後のQTcは0.58と延長を示した.なお入院時のアルドステロン値,レニン活性は正常であった.運動負荷とイソプロテレノール静注負荷にてQTc時間は短縮した.Kチャンネル開口薬であるニコランジル(15mg/日)経口投与にて,QTcは0.54へ短縮し,同剤投与を中止後0.59と延長したが,増量再投与(30mg/日)にて0.54と再び短縮した.本症例はQT延長を伴う基礎心疾患を有さず,家族歴も認められないことから特発性QT延長症候群と考えられた.低K血症の原因は,不規則な食生活に甘草を主とした漢方薬が加わり生じたものと考えられた.低K血症補正後もQT延長が継続し,Kチャンネル開口薬であるニコランジルによりQT短縮が得られたこと,心電図の異常T波の波形から,本例のQT延長の原因として異常Kチャンネルの存在が示唆された.
  • 岡田 清治, 田辺 一明, 浅沼 俊彦, 井上 慎一, 北村 順, 中村 広, 清水 優美, 吉冨 裕之, 石橋 豊, 島田 俊夫, 栗田 ...
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 119-123
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    36歳女性.心筋炎の既往あり.薬剤抵抗性の心室頻拍(VT)のため,1989年クライオアブレーション術を施行した.術後に術前とは異なるVTが出現したため,アミオダロンの投与を開始した.1992年12月,甲状腺,肝機能障害等にて同薬剤を中止したが,VTの頻度が増し,1994年8月から,アミオダロン200mg/日で投与を再開した.1996年2月, VT(HR150/分)にて入院となったが,カルディオバージョンにて洞調律に復帰した.アミオダロンは継続投与としたが, 翌日QTの著明な延長(QTc630msec)が認められ,心室細動(Vf)となり,心肺蘇生にて洞調律に復帰した.電解質異常はなく,他の抗不整脈薬は投与していなかった.アミオダロンの中止,硫酸マグネシウムの投与にて,QTは正常化した.同年4月,植え込み型除細動器を植え込み,また発作性心房細動の合併も認めたため,βブロッカー,アプリンジン,メチルジゴキシンを追加投与し経過観察中であるが,心拍数の速いVTは発生していない.アミオダロンによるQT延長が原因と考えられたVfの1例を経験したので報告した.
  • 電気生理学的検討
    志賀 剛, 庄田 守男, 大西 哲, 松田 直樹, 梶本 克也, 笠貫 宏, 細田 瑳一
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 124-128
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1994年Leenhardtらが報告したShort-coupled型Torsade de Pointes(Tdp)は器質的心疾患を有さずTdp 1拍目の連結期が300msec以下と短い特徴を持ち,心室細動(VF)に移行しうる.しかし,その電気生理学的機序は不明である.症例は41歳男性,頻回の失神のため入院.心電図ではQT延長を伴わずTdpが出現し,Tdp1拍目の連結期は200msecであった.電気生理学的検査ではペースマッピングにて右室流入路自由壁でTdp1拍目とほぼ等しい波形を得ることができた.心室の有効不応期(ERP)は基本周期600msecで右室流入路自由壁170msec,右室心尖部220msec,右室流出路200msecとdispersionを認め,右室流入路自由壁が最短であった.3連続早期刺激で多形性心室頻拍(PolyVT)が誘発された.VerapamilとmexiletineはERPを変化させず,PolyVTの予防効果も認めなかった.Kチャンネル遮断薬であるMS-551は心室のERPを延長し,PolyVTの予防効果を認めた.本疾患の機序に心室局所の短いERPと心室内のERPのdispersionの関与が示唆され,Kチャンネル遮断薬が心室のERPを延長しTdpを予防する可能性が考えられた.
  • 遠藤 優枝, 久賀 圭祐, 増見 智子, 鈴木 祥司, 山田 さつき, 仁保 文平, 栗原 達, 前田 裕史, 山口 巌, 杉下 靖郎
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 129-134
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    同一家系内2世代に5人の患者の集積を認めた,若年発症の洞不全症候群の1例である.症例は30歳,男性,職業は競輪選手であり,12誘導心電図は,心拍数40/分の洞性徐脈,房室解離を示した.Holter心電図では平均心拍数52/分,最低心拍数24/分の著明な徐脈と,早朝に5~13秒の心停止を認めた.電気生理学的検査における薬理学的自律神経遮断後の固有心拍数は77/分にとどまり,右房連続刺激後は房室接合部調律で回復し,修正房室接合部回復時間は11.5秒と著明に延長した.発作性心房細動および洞調律回復時の洞停止により失神を生じたため,ペースメーカー植え込みを行った弟5人中2人(本例30歳,兄47歳),母の兄弟姉妹8人中3人(母70歳,姉75歳,妹65歳)の計5名が洞不全症候群と診断され,ペースメーカーの植え込みを受けていた.本邦における家族性洞不全症候群の報告は稀であり,3家系に突然死の報告がある.本例でも洞結節に加え房室結節およびその遠位の刺激伝導系の障害が示唆され,洞不全症候群において家族内集積が疑われた場合は突然死の可能性があり,慎重な家系調査と経過観察が必要と考えられた.
  • 高世 秀仁, 八木 洋, 杉野 敬一, 渡辺 高祥, 高橋 直之, 上西 壮, 松平 かがり, 青山 浩, 春日井 正, 田中 秀之, 外川 ...
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 135-139
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性,心電図異常を指摘され精査目当院受診した.5年前に数分間の意識消失が認めれた.来院時の心電図所見は右脚ブロック,V1,2でcove 型,V3でsaddle back型のST上昇を認めた.ST上昇には日内, 日差変動は認められなかった.心コー,両心室造影では異常所見は認められなかったが,心臓シネMRIで右室流出路の非薄化がみられ,同部位の壁運動異常が認められた.冠動脈造影ではアセチルコリン負荷にても冠攣縮は認められなかった.平均加算心電図はLate potelltial陽性であった.自律神経テストでは副交感神経緊張の軽度低下とα交感神経緊張亢進が認められた.心拍変動解析でも交感神経系の亢進が認められた.電気生理学的検査では房室伝導障害は認められず,右室に異常電位は検出されなかった.無投薬下では心室細動は誘発されなかったが,硫酸アトロピンまたはプロプラノロール負荷後の右室心尖部よりの3連早期刺激により再現性をもって心室細動が誘発された.
    自律神経テストによりα 交感神経活性の亢進が示唆されたことより,α1遮断薬ドキサゾシン・メシル酸塩1mgの投与をおこなった.投与3カ月後にはSTの明らかな低下が認められた.2mgに増量した投与9カ月後にはSTはさらに低下していた.2mg内服後2年経過するが意識喪失発作は出現していない.すなわちST上昇の機序としてα1交感神経が関与することを示唆する症例と考えられた.
  • 松尾 清隆, 栗田 隆志, 稲垣 正司, 清水 渉, 須山 和弘, 相原 直彦, 鎌倉 史郎, 下村 克朗
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 140-147
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は51歳男性,紙管製造業.主訴は失神.家族歴,既往歴に特記すべき事項なし.81年(36歳時),動悸を訴え来院した(初診).心電図は洞調律で不完全右脚ブロックと1,aVL, V1~V3,にST上昇を認めたが他の検査では特に異常は認められなかった.93年(48歳時),睡眠中大きな鼾を発した後,呼吸停止をきたしたところを妻が発見した.数秒後,覚醒したが歩行しようとして失神した.意識回復後,近医を受診したが原因は不明であった.96年(51歳時),同様の発作が出現したため近医を受診した.調律は心房細動で右室流出路起源の心室性期外収縮が多発していたが失神の原因は不明であった.同年6月,精査目的で当センターに入院した.初診時に比しST上昇の程度はVl~V3で増強していた.体表而マッピング上,ST上昇は右室流出路付近の電位を反映する場所で最も著明であった.冠動脈には器質的狭窄は認められなかった.円錐動脈が大動脈から直接起枝しており,これを選択的に造影した際に1,aVL, Vl~V3のST上昇が著明に増強した.右室および左室造影は正常であった.右室流出路から2連発早期刺激で心室細動が誘発された.左室および右室心内電位に軽度異常を,加算平均心電図には遅延電位を認めた.右室心筋生検では軽度の聞質線維化が認められた.本症候群の成因およびVFの発生機序は不明であるが,器質的異常の存在も疑われ,右室流出路を中心とした再分極および脱分極過程の異常が示唆された.
  • 山城 荒平, 大西 祥男, 島 尚司, 武居 明日美, 足立 和正, 横山 光宏
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 148-152
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性,平成8年5月25日入浴後,テレビを見ている時,意識消失発作出現,失神しているところを家族に発見された.この時,脈は触知せず,約30秒後に意識を回復し,直ちに救急車にて近医に搬送され,同院および当院脳神経外科にて精査されるも異常なく,当科紹介入院となった.入院時心電図では,V1,V2誘導でST上昇を伴うRSR´パターンを認め,電気生理学的検査では,右室流出路からの3連発期外刺激により,多形性心室頻拍(PMVT)が誘発され,6秒後に自然停止した.ジソピラミド75mgi.v.後,V1,V2誘導でのST上昇はsaddle back typeからcoved typeに変化し,右室流出路からの2連発期外刺激により,PMVTが誘発され,心室細動となり,電気的除細動を要した.これより,Brugada型心電図を呈する特発性心室細動と診断し,植え込み型除細動器による治療を行った.ジソピラミドによる増悪が疑われたBrugada型特発性心室細動の1例を経験したので,報告する.
  • 岩手県の小・中・高校生の集団検診所見の検討
    籏 義仁, 千葉 直樹, 堀田 一彦, 照井 克俊, 白戸 隆洋, 中居 賢司, 伊藤 明一, 今野 拓夫, 平盛 勝彦
    1997 年 29 巻 Supplement5 号 p. 153-156
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【背景】1992年,Brugadaらは特発性心室細動例の中に,通常時の心電図上右脚ブロックとST上昇(RB-ST型)を伴う一群のあることを報告した.心臓性急死研究会の特発性心室細動調査委員会は,全国34施設のRB-ST型63症例(平均年齢は50歳最年少例は27歳)を登録して,心室細動や意識消失発作の既往例にはRB-ST型のうちcoved型(RB-ST/coved型)波形が有意に多いと報告している.しかし,特定の地域の学童を対象とするRB-ST型波形の出現頻度を調査した報告は少ない.【方法】平成4年から6年の学校検診(小学1年,4年,中学1年高校1年)時に,本県予防医学協会で記録された163,110人(男84,156人,女78,954人)の心電図を対象として,rSR'型右脚ブロックとRB-ST/coved型波形の頻度を検討した.【結果】324例(0.2%)にrSR'型右脚ブロックを認めたが,RB-ST/coved型波形を示したのは1例(0.0006%)であった.この1例は7歳の男子で,心疾患や意識消失発作の既往や突然死の家族歴はなかった.アンケート調査で「気を失ったことがある」とした357例(0.2%)と,対象期間中に突然死した5例にRB-ST/coved型波形を示す例はなかった.【総括】小・中・高校生でのRB-ST/coved型波形の頻度は成人例に比べて低値であり,RB-ST/coved型波形の成因を考える上で興味ある所見であった.
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