心臓
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30 巻, 12 号
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  • 高橋 敬子, 池岡 清光, 大柳 光正, 立石 順, 安富 栄生, 岩崎 忠昭
    1998 年 30 巻 12 号 p. 729-734
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞の発症がまれとされる閉経前女性と30歳代男性において発症した急性心筋梗塞の臨床像を,その性差に注目して比較検討した.今回の対象は344例中,男性10例,女性13例で,冠危険因子は男女を問わず喫煙歴,家族歴,高脂血症が重要であり,特に男性対象者の喫煙歴は100%であった.経口避妊薬や向精神薬などの常川者は認めなかった.冠動脈所見では,特に女性において多枝病変が多く,正常冠動脈は男性1例のみであった.また,男性では冠動脈拡張症が多く,その成因として動脈硬化が示唆された。経皮的冠動脈形成術(PTCA)の再狭窄率は性差なく,平均3.6年の追跡調査では死亡例はなかった.今回の検討では,男女を問わず発症要因として動脈硬化が推測され,冠危険囚子の除去が急性心筋梗塞発症の予防上重要と考えられる.
  • 馬場 雅人, 山下 昭雄, 杉本 智, 泉山 修, 長谷川 正, 横井 久卓, 松井 裕, 中里 京, 佐藤 正敏, 松村 尚哉
    1998 年 30 巻 12 号 p. 735-740
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は82歳男性.呼吸困難を主訴に緊急入院となった.心臓超音波検査,心臓カテーテル検査により,左冠動脈回旋枝領域の心筋梗塞とそれに伴う僧帽弁乳頭筋断裂による僧帽弁閉鎖不全症と診断し,緊急僧帽弁置換術を施行した.術中所見で乳頭筋断裂は僧帽弁前尖を支持している前後の乳頭筋の完全断裂であることが判明した.患者は術後28日目に多臓器不全により死亡したが,前尖の前後の乳頭筋が両方とも完全に断裂した症例はこれまで報告がないため,文献的考察を加え報告した.
  • 田川 博之, 伏見 悦子, 高橋 俊明, 関口 展代, 渡辺 一, 林 雅人
    1998 年 30 巻 12 号 p. 741-747
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,55歳男性.突然発症の頭痛,意識消失,四肢脱力を主訴に当院を受診した.心電図は洞調律で,V3からV6にかけて巨大陰性T波を認めた.頭部CTスキャンにて右後頭葉と小脳上外側に低吸収域が出現し,脳血管造影にて脳底動脈の一部に血栓と思われる透亮像を認めた.心臓超音波検査にて,心尖部左心室瘤を合併した心室中部閉塞性肥大型心筋症(MVO)と診断した.頸動脈超音波検査では内頸動脈に異常なく,経食道心臓超音波検査で左房内血栓,大動脈硬化性病変を認めなかった.左室造影では,心尖部左心室瘤内に造影剤のうっ滞がみられたため,瘤内に血栓が生じ脳塞栓をきたしたと推測した.
    心房細動や左房内血栓を伴わないMVOの脳塞栓合併例は今まで報告がない.本症例は10年前に心尖部肥大型心筋症(APH)と診断されており,APHからMVOをへて,さらに心尖部左心室瘤を形成したと考えられた.
  • 田口 敦史, 鎌倉 史郎, 相原 直彦, 栗田 隆志, 須山 和弘, 松尾 清隆, 植田 初江
    1998 年 30 巻 12 号 p. 748-752
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,女性.Fabry病の家系で,41歳頃から心肥大を指摘され,心エコー図検査では肥大型心筋症の所見が認められていた.数年おきに心エコー図検査を施行していたところ,46歳の心エコー図では認められなかった左室流出路の圧較差が,5年後の51歳時の心エコーで検出された.その後,労作・安静と関係のない胸痛が出現するため,精査の目目的で入院した.検査所見上は白血球α-galactosidase Aの活性低下を認め,カテーテル検査時に施行した心筋生検では心筋細胞の核周囲を中心に平行ないし同心円状を示すlamella構造の沈着を多数認め,Fabry病と診断された.左室流出路の圧較差は平均約80mmHgであったが,ジソピラミド50mgの静注で18mmHgに低下した.また,心エコーの記録時にもジソピラミド300mgの内服で圧較差の改善が認められ,同時に胸部症状も改善した.
    ヘテロ接合体の患者で多く認められる心Fabry病は,ほとんどの症例で肥大型心筋症類似の心筋肥大を認めるといわれる.しかし,左室流出路の圧較差を生じ,閉塞性肥大型心筋症の病像を示す症例の報告はまれである.貴重な症例と考え考察を加えて報告した.
  • 中尾 正一郎
    1998 年 30 巻 12 号 p. 753-756
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 江田 清一郎, 山崎 恭平, 西澤 守人, 上小澤 護, 鈴木 順
    1998 年 30 巻 12 号 p. 757-759
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    患者は17歳,女性.間歇性跛行を主訴に受診した.左足背動脈,左後脛骨動脈の拍動が微弱であったため,下肢動脈造影を施行したところ,膝窩動脈に解離を認めた.外傷の既往もなく,血液検査等でも大動脈炎症候群や全身性エリテマトーデスを示唆する所見はなく,原発性と思われた.大動脈解離を伴わない末梢動脈の解離はまれで,特に大腿動脈から膝窩動脈での女性例の報告は1例もなく,貴重な症例と考えられた.
  • 栗原 裕基
    1998 年 30 巻 12 号 p. 763-768
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    神経堤細胞は,神経管の形成過程で神経外胚葉から発生する幹細胞の一群で,神経細胞のみならずグリア細胞やメラノサイト・頭頸部の骨格などを形成する間葉系細胞などに分化する.心血管発生においては,耳胞から第3体節のレベルに相当する神経堤から派生する心臓神経堤細胞が腹側の鰓弓部へ向けて遊走し,平滑筋細胞を含む間葉系細胞に分化して鰓弓動脈の中膜や大動脈-肺動脈中隔の形成に関与する.ヒトにおけるその異常は大血管起始異常やCATCH 22症候群などの原因となると考えられている.神経堤細胞の分化誘導機構は未だ明らかではないが,発生工学的研究などから関与する遺伝子が次第に明らかになってきた.なかでも,エンドセリン-1(ET-1)遺伝子ノックアウトマウスはCATCH 22様の表現型を呈し,神経堤細胞が平滑筋や外胚葉性間葉細胞に分化し大血管や鰓弓を形成する過程で重要な因子であることが明らかになった.その下流遺伝子としてHAND遺伝子が想定されており,ET-1によるG蛋白結合型受容体が受容体型チロシンキナーゼ・TGFβスーパーファミリー等の他のシグナル伝達系とどのような相互作用をもつか,核転写因子をどのような機序で活性化していくかなどが,今後神経堤細胞から血管平滑筋細胞への分化を研究する上で一つの焦点になっていくと考えられる.
  • 塩田 浩平, 周 明仁
    1998 年 30 巻 12 号 p. 769-774
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心血管系の原基は個体発生において最も早い時期に出現し,複雑な形態形成の過程を経て心臓と大血管が形成される.最近の遺伝子ノックアウト動物を用いた研究によって,多数の重要な遺伝子が心大血管の発生に関与していることが明らかになってきている.また,ヒトの先天性心血管系奇形のいくつかについては関連する遺伝子異常が見つかっており,従来の病因論も新たな視点から見直す必要が出てきている.動物モデルとヒト異常症例についての解析から心大血管発生の分子メカニズムが急速に解明されつつあり,その成果は将来の分子診断と遺伝子治療への道を開くものとして大きな意義をもつと考えられる.
  • 長田 重一
    1998 年 30 巻 12 号 p. 777-784
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    個体の発生過程において,数多くの有害な細胞,無用の細胞が産生される.これらは生体から速やかに取り除かれ,生体の恒常性を維持している.この除去過程は,アポトーシスと呼ばれる過程を経て進行する.Fasリガンドは,アポトーシスを誘導するサイトカインであり,その受容体Fasに結合することにより,数時間内に細胞を死滅させる.この際,カスペースと呼ばれるプロテアーゼが活性化され,細胞の形態変化,染色体DNAの切断などアポトーシス特有の反応へと導く.Fasリガンドは活性化されたT-細胞やNK細胞によって発現され,ウイルス感染細胞や癌細胞を除去する役割を荷なっている.この機構があまりにも異常に活性化されると,劇症肝炎に見られるような臓器破壊をもたらす.一方,FasやFasリガンドが機能しなくなった個体では,脾臓やリンパ節が腫大化し,自己免疫疾患の症状を示して早期に死亡する.ここでは,アポトーシスの分子機構と,その生理作用,病理作用に関して紹介する.
  • 刀祢 重信
    1998 年 30 巻 12 号 p. 785-791
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    多細胞生物の発生過程,とりわけ形態形成において特定の時期に特定の細胞集団が死ぬプログラム細胞死という現象が知られている.この現象の成立機構の解明は形態形成を理解する上できわめて重要であるばかりか,生理的な細胞死の典型として一般的な細胞死の機構の解明にも示唆を与えるものと考えられる.主として肢芽の細胞死の系を用いて明らかになった知見について紹介したあと,分子機構についてもふれる.
  • 西本 毅治
    1998 年 30 巻 12 号 p. 792-802
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    細胞複製の機構を分子レベルで調べるためには変異株の分離は必須である.筆者等はハムスター由来のBHK21細胞の複製に関する温度感受性変異株を分離しその変異遺伝子,表現型を調べた.多くの変異株でアポトーシスが非許容温度で起こっていることがわかった.変異遺伝子とアポトーシスの相関を調べることで細胞がアポトーシスを起こす機構が解明されると期待される.本講演ではtRNA合成酵素に欠損を持つtsBN269変異株とDAD1遺伝子の変異株tsBN7をとりあげた.共に非許容温度でアポトーシスをおこすが,前者は蛋白質合成阻害薬を加えるとアポトーシスは促進される傾向があるが後者は阻止される.DAD1蛋白質は酵母からヒトまで良く保存されておりN-1inked glycosylationに関与している.酵母以外のDAD1相同遺伝子はtsBN7変異を相補する. これは, 酵母以外のDAD1蛋白質はN-1inked glycosylation以外に積極的にアポトーシスに関与する機能を持っている為かもしれない.tRNA合成酵素の欠損が何故にアポトーシスを起こしたのか詳細は不明であるが,細胞内のtRNA,アミノ酸プールがアポトーシスに関与している可能性も考えられる.
  • 梗塞心筋細胞とアポトーシス
    藤原 久義
    1998 年 30 巻 12 号 p. 803-808
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    「冠動脈疾患とアポトーシス」の領域には,梗塞心筋細胞のアポトーシス,間質細胞(心筋梗塞後の細胞浸潤とその消失)のアポトーシス1),梗塞後の心不全時の心筋細胞のアポトーシス2),それから冠動脈硬化における血管系細胞のアポトーシス3)という4つの問題がある.スペースの関係でここでは梗塞心筋細胞のアポトーシスということだけにfocusを絞って述べる.
  • Fas/Fas ligand系の関与について
    廣江 道昭, 下條 隆, 豊崎 哲也, 石山 茂, 西川 俊郎
    1998 年 30 巻 12 号 p. 809-820
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    最近,心疾患にみられる心筋細胞死には壊死以外にアポトーシスが存在することが報告されている.免疫応答によって発症する急性心筋炎にみられる心筋障害についてアポトーシスが重要な役割を果たしており,特に分子機構としてFas/Fas ligand系がいかに心筋組織の炎症や免疫と関連していることが判明した.今後,アポトーシスに関わる種々の分子機構の機能が解明されることによって,炎症性心疾患の新しい治療法の開発に発展することが期待される.
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