心臓
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30 巻, Supplement4 号
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  • 畔柳 三省, 熊谷 哲雄, 松尾 義裕, 山口 吉嗣, 徳留 省悟
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 3-10
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1948年から1996年の49年間の,東京都23区内のランニング中の突然死の疫学調査を実施し,次の結果を得た.近年では毎年約3件発生している.秋と春に多く,学生と社会人での増減の挙動は一致する。男女比は全体では10:1で,学生では3:1である.心臓死が96.8%を占め,急性心機能不全は20歳未満に多く,虚血性心疾患は40歳以上に多い.500m 距離が延長する毎に件数は半減し,2,500m以降ではほぼ一定である.症状死は45.3%を占め,訴えのあったものは16.0%である.走行中は72.9%を占め,距離判明例については距離に関係なくほぼ6割で一定である.ランニング中の突然死を防止するためには,特に距離の短いうちとゴール地点で,心発作を前提とした救急処置を行うことのできる者を配置することが有効であると考える.
  • 身体歴による検討
    辻本 哲也, 栗田 明, 高瀬 凡平, 上畑 照美, 西岡 利彦, 大冨 真吾, 五十島 一成, 松井 岳巳
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 11-14
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】健康成人における心臓性突然死の心電図所見を比較検討しSCDの予測における有用性を検討した.【対象と方法】自衛隊関連施設において過去16年以内にSCDで死亡したと考えられる39症例(SCD群,36±15歳,男性)と臨床的背景のほぼ等しい34症例(NL群,36±12歳)の心電図所見を比較した.また,心電図から木村・蟹江らの式を用いて推定心重量を算出し,剖検の際に得られた実測心重量と比較検討した.【結果】剖検心の心重量と推定心重量との間にはr=O.89(p<O.O1,n=30)の高い相関が認められた.以後この式を用いて推定心重量を比較すると,SCD群420±62gに対しNL群399±29g(p<O.1)であった.420g以上の心重量を有する症例の各群に占める割合を比較すると,NL群の17.6%に対しSCD群46%と有意に高頻度であった(p<0.01).【結語】木村・蟹江らの式に基づき心電図から推定心重量を算出することはSCDの予測に有用であると考えられた.特に420g以上の症例に関しては他の検査法を用いてより詳細に検査する必要があると考えられた.
  • 五十嵐 正樹, 小野 邦春, 伊藤 良明, 弘中 学, 大石 知実, 斉藤 徹, 上嶋 権兵衛, 正林 浩高, 岡野 善史, 宇野 成明, ...
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 15-18
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1992年4月より5年間で現着時心室細動を確認した内因性の心肺停止例は121例で,うち33例(27.3%)が除細動に成功し,入院または転院となった.洞調律復帰後転院した7例を除き,当院救命救急センターに入室した26例(19-83歳)を対象とした.原因疾患としては急性心筋梗塞11例,冠攣縮性狭心症2例,虚血関連の不整脈2例であり,虚血による心室細動は計15例(58%)であった.心電図上Brugada型特発性心室細動と考えられたのは2例であった.生存退院したのは12例であったが,うち脳機能障害もなく社会復帰となったのは5例(4.4%)であった.現場除細動と脳機能障害の関係では現場除細動の成功が脳機能障害を残さずに社会復帰できた.以上より現場除細動が成功し入院する例は脳機能障害もなく社会復帰する.したがって,救命率の向上には救急現場での早急かつ適切な電気的除細動を含む心肺蘇生が肝要である.
  • 阿部 芳久, 門脇 謙, 松尾 直樹, 荒川 博, 佐藤 匡也, 熊谷 正之
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 19-24
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】徐脈性不整脈として他院から救急搬送された高カリウム(K)血症例の臨床像を検討する.【対象と方法】高K血症による徐脈性不整脈のために救急搬送された6例(男性3例,女性3例,平均67歳)を対象に,搬送時の臨床所見,治療内容と臨床経過について検討した.【結果と考察】搬送連絡は2例が救急隊員から,4例が通院中の内科医から受け,徐脈のみとされたものが2例,完全房室ブロック,Adams-Stokes発作,急性心筋梗塞疑いと低血糖発作がそれぞれ1例であった.心電図では,20から30/分台の徐脈,P波の消失とT波の増高かつ先鋭化を全例に,QRS幅の拡大を5例に認めた.全例に一時的ペーシングを行ったが,開始までに特別な処置を施さなかった例は1例のみで,他は心肺蘇生術,前胸部叩打,直流通電やアトロピン・カテコラミン投与などの救急処置が必要であった.入院時の血清K値は7.0~9.8mEq/Lで,K値の正常化に伴い症状と所見改善した.入院時の血清クレアチニン値は2.1から5.3mg/dlと全例で高値だった.退院時には,1例を除き2.Omg/dl未満と基準値内か軽度増加の範囲に低下したことから,脱水などをきっかけにして悪化した腎機能障害が高K血症の原因と考えられた.【結語】高K血症はその病態把握と治療が遅れた場合には,急死におわる危険性があることから,徐脈牲不整脈患者の搬送時には常にこれを念頭におくべきである.
  • 須賀 幾, 松本 万夫, 内田 龍制, 加藤 律史, 内田 昌嗣, 斎藤 淳一, 山本 俊夫, 浅野 由紀雄, 芹澤 剛, 松尾 博司
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 25-31
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は19歳男性.1994年,1995年の2回,電車内で起立中に眼前暗黒感を伴う失神が出現した.いずれも約1分で自然覚醒したが,精査のため当科を受診した.既往歴,家族歴,身体所見は異常を認めなかった.心電図上心拍数43/分の洞性徐脈を認め,ホルター心電図,心臓電気生理学的検査から副交感神経緊張亢進状態が考えられた.HUTでは70度のhead-up開始後徐々に心拍数が増加し,開始後20分より急に徐脈,血圧低下傾向となり,心停止を伴う失神が出現した.直ちに検査を中止したが,心拍再開には38秒を要した.徐脈に先行して心拍増加がみられたことからプロプラノールの投与を開始した.1カ月後に再度HUTを施行したが,徐脈,血圧低下共に誘発されず,β遮断薬は有効と考えられた.本例のような長時間の心停止を伴うNeurally Mediated Syncopeは突然死のニア・ミス例であり,管理上注意を要すると思われたので報告する.
  • 大村 昌人, 清水 昭彦, 山縣 俊彦, 上山 剛, 大楽 友加, 早野 智子, 田村 健司, 松崎 益徳
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 32-37
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は26歳,男性.主訴:眼前暗黒感.家族歴:父親が32歳,父方の祖母32歳,父方いとこ15歳男性に突然死が認められた.現病歴:15歳時運動中に数秒間の失神発作が出現し,18歳頃より数秒間の動悸発作を自覚するようになった.近医を受診し,心室性期外収縮と著明な徐脈を指摘された.入院時心電図では40拍/分の著明な洞性徐脈を認めたがQT時間は0.4秒であった.胸部X線,心エコーに異常はなかった.ホルター心電図にて,昼間にbidirectionalな最高33連発の多型性心室頻拍を,夜間に3.6秒のlong pauseを伴う著明な徐脈を認めた.臨床電気生理学的検査では,最大洞結節機能回復時間は1.7秒,内因性心拍数は65拍と異常低値を示した.心室単相性活動電位,AH,HV時間は,正常であった.AAIペースメーカーの植込みとメトプロロール120mg,アプリンジン20mgの併用で連発は認めず効果ありと考え退院となった.本例は,QT延長を認めず心室頻拍の形態もbidirectional tachycardiaでtorsades de pointesとは明らかに異なり,Leenhartらが報告した家族性カテコラミン誘発性多型性非持続型心室頻拍と考えられた.
  • 河原 洋介, 沢山 俊民, 寒川 昌信, 鼠尾 祥三, 田中 淳二, 末綱 竜士, 神山 憲王
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 38-43
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】先天性QT延長症候群(LQTs)の家系別臨床的特長を,左右交感神経バランスとECG所見を中心に検討した.【対象】家系A(突然死を有するハイリスク家系)3名,家系B2名,家系C3名のLQTs3家系で平均年齢19.4歳.【方法】左右交感神経バランスの指標としてT1とMIBG up takeの解離( D ) の有無, M I B G スペクト短軸像における前壁と後側壁の放射活性の比(A/L比)を求めた.またECGのT波形と失神時の状況を検討.【結果】(1)家系A(ハイリスク群)ではA/L比は0.79と低下.3例ともD(+)でECGのT波は類似.症状は全例運動時に出現し,運動時QTcは延長.(2)家系BではA/L比は正常で2例ともQT onsetの長い後方T波を有し,運動時QTcは短縮.2例とも安静時失神.(3)家系CではA/L比はO.92とやや低下.3例ともT波は類似し,運動時QTcは延長.【総括】LQTsにおいて,交感神経バランス,ECG波形,症状は家系別に特長を有することが示された.
  • KvLQT 1遺伝子の異常のみられた姉妹例
    吉田 秀忠, 大谷 秀夫, 堀江 稔, 辻 啓子, 河野 裕, 春名 徹也, 藍 智彦, 西本 紀久, 大林 和彦, 篠山 重威, 福並 正 ...
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 44-48
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    分子生物学的手法の医学への応用によりQT延長症候群(LQT)の多くにおいて心筋の活動電位に関与するイオンチャネルの遺伝子異常が報告されている.今回,我々は典型的な先天性LQTのみならず,2次性LQTにもイオンチャネル遺伝子異常が関与しているのではないかと考えPCR/SSCP(polymerase chain reaction/single strand comformation polymorphism)法を用いて遺伝子異常のスクリーニング検査を行った.【症例】16歳と9歳の姉妹.心電図異常の精査を希望し来院.KvLQT 1のPCR/SSCPで異常バンドパターンがみられ,塩基配列を決定したところCがTへの一塩基置換がみられた.この変異はアラニンからバリンへのミスセンス変異であった(A 212 V).姉妹とも同一の遺伝子異常がみられ,ともにKvLQT1の点突然変異をもつヘテロ接合体であった.ミスセンス変異によりイオンチャネルの機能異常をきたし心筋の活動電位時間の延長を生じ心電図上QT延長を起こしていると考えられた.【まとめ】典型的な先天性LQTではないと考えられた症例において先天性LQTにみられるKvLQT 1の異常と同一遺伝子異常が判明した.遺伝子異常スクリーニング検査がLQTの診断,治療方針の決定に有用であった.
  • 峰 隆直, 清水 宏紀, 稲角 貴則, 岩崎 忠昭, 大谷 秀夫, 堀江 稔
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 49-55
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Mexiletineにて単相活動電位の早期後脱分極(EAD)が消失したQT延長症候群の1例を経験したので報告する.症例は42歳女性,意識消失発作を主訴に受診し12誘導心電図でQT時問O.48秒,QTc時間0.47秒と延長を認めQT延長症候群と考えられた.QTc時間はIsoproterenol持続投与下でMexiletine投与にて短縮し,またIsoproterenol持続投与下での右室下壁の単相活動電位記録にてEADを記録した。これはMexiletine投与で消失しAPD90も短縮した.臨床的にはMexiletineが有効でNaチャンネルの異常が示唆されたが遺伝子解析では家族性にHERG遺伝子の変異を認め遺伝子異常と臨床所見と一致しない症例であった.
  • 松本 直樹, 中沢 潔, 高木 明彦, 戸兵 雄子, 塩田 邦朗, 村山 正博
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 56-62
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心臓性突然死の原因の一つである心サルコイドーシス症に対して,ステロイド治療が行われるようになったものの,その使用方法は未だ確立されたとは言いがたく,特に減量・中止は難しい.有効な投与法を検討するために,なお一層多くの症例の検討を継続する必要があると考え,本報告では最近我々が経験した,ステロイド治療を施行した4例の特徴について検討し,ステロイド治療の意義について考察した.症例は年齢の幅が広く,心不全,房室ブロック,心室頻拍各々の有無等,多彩な特徴を有した.ステロイドに対する反応について検討した結果,心不全のない若年女性症例のみ,プレドニゾロン投与によって房室ブロック,心室頻拍が抑制された.これらの不整脈は同薬剤を2.5mgまで減量すると再発し,再び抑制するために60mg連日投与を要した.心不全を有する一症例の心室頻拍はステロイド投与によって抑制されなかった.ステロイドによる不整脈抑制効果は一定しないが,有効な症例が存在することを示した.また4例ともに数年の経過で心不全傾向が進行していることから,心不全抑制効果は少ないと考えられたが,一方で心不全を有する症例でステロイド減量に伴って一過性に心室頻拍が発生したことから,心不全症例でも安易なステロイド減量は危険な可能性があることが示された.
  • 栗山 仁, 石上 友章, 住田 晋一, 石川 利之, 住田 洋一, 高橋 延和, 芦野 和博, 日比 潔, 海老名 俊明, 乳井 伸夫, 落 ...
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 63-68
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は43歳女性.30歳時に糖尿病と診断され,インスリン療法を受けていたが,1996年6月心不全のため入院となった.心臓超音波検査ではび慢性の左室壁運動の低下を認め,左室駆出率は33.6%であった.心臓カテーテル検査では冠状動脈に有意狭窄はなく,心筋生検では,異常ミトコンドリアの集積,無構造な沈着物の集積を認めた.ミトコンドリアDNAを検索したところ,3243の点変異が認められたため,ミトコンドリア心筋症と診断した.その後,利尿剤・ACE阻害剤投与により心不全症状軽快し,全身状態良好であったが,1997年4月27日,突然高度の洞性徐脈から心停止,呼吸停止に陥り,心肺蘇生術,緊急一時ペーシングを行った.電気生理学的検査ではprocainamide 800mg静注後に高度の洞停止を認め,洞不全症候群と診断し永久ペースメーカー植え込み術を行った.従来,ミトコンドリア異常症は高度の房室ブロックを合併することが知られているが,洞不全症候群,とりわけ心肺蘇生術を必要とするような高度な洞停止を合併する例は比較的稀であり,報告する.
  • 山口 朋禎, 雪吹 周生, 原 文男, 櫛方 美文, 上田 征夫, 川並 汪一, 黒木 伸一
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 69-73
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症の臨床像の増悪に心筋梗塞発症が関与することが指摘されている.今回我々は急性心筋梗塞様心電図を呈し,剖検により病理学的検討を行いえた肥大型心筋症を経験したので,文献的考察を加えて報告する.【症例】41歳男性.以前より高血圧,心肥大を指摘されるも放置.歩行中失神発作をきたし近医へ搬送さる.心電図肢誘導およびV5~6に異常Q波ないしST上昇あり,急性心筋梗塞と診断され経静脈的血栓溶解療法施行さる.しかしその後心電図変化なく心筋逸脱酵素上昇せず,心室性不整脈出現のため当院CCUへ転送.入室後,持続性心室頻拍が頻発し,直流通電による停止を必要とした.心室頻拍の予防にはIb群,IV群抗不整脈薬は無効で,β-遮断薬静注のみ著効を示した.心エコーでは著明な左室肥大およびび漫性の左室低収縮が見られた.冠動脈造影は正常,左室腔内に圧較差なく,心筋生検で肥大型心筋症が疑われた.メトプロロールの内服を開始.ホルター心電図,運動負荷試験にて心室頻拍認めないため一旦退院.7日後に歩行中突然意識消失し当院に搬送さる.到着時心電図は心室細動を示し,電気的除細動無効で死亡.剖検にて著明な心肥大(880g),び漫性の線維化を認めた.組織学的には心筋の錯綜配列,高度の細胞間線維化,リンパ球浸潤の散在あり.心外膜側,筋層内冠動脈に有意狭窄なし.過去の健診時心電図は,4年前より今回と同様の所見を呈していた.
  • 碓井 雅博, 藤木 明, 水牧 功一, 長澤 秀彦, 城宝 秀司, 富田 新, 井上 博
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 74-78
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    頻脈性心室性不整脈の既往がないのにもかかわらず,血液透析・濾過中にtorsade de pointes(TdP)を生じ心室細動となり,電気的除細動を要した2症例について検討した.症例1:77歳,男性.急性腎不全,大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症,僧帽弁閉鎖不全症.心房細動予防目的にキニジン300mg/日の投与を行った.内服開始3日目の血液透析中に,TdPを生じ心室細動となった.透析中のKは3.3mEq/lであった.症例2:61歳,女性.慢性腎不全,陳旧性心筋梗塞.著明な心機能低下と低血圧があり,血液濾過終了直前にTdPを生じ心室細動となった.透析前のKは4.5mEq/lで,透析後は3.6mEq/lであった.2症例のTdPの発生機序として,重症の心疾患と貧血による心筋虚血に加えて,症例1では薬剤や低K血症の,症例2では低血圧と体液量の急激な減少による交感神経系の興奮とK値の急激な低下の関与が示唆された.
  • 山田 さつき, 山口 巖, 久賀 圭祐, 榎本 真美, 石津 智子, 神代 秀爾, 小宅 康之, 野口 祐一, 杉下 靖郎
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 79-83
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    神経性食欲不振症(AN)の合併症の1つに,torsades de pointes(TdP)がある.電解質異常,栄養障害の関与が示唆されているが,その発生機序は明らかでない.【症例】24歳,女性.14歳より食行動異常,高度のるいそう(標準体重-33%)が認められるようになり,精神科の近医でANと診断された.1997年3月下旬より,嘔吐,下痢が出現し,4月13日,意識消失発作の反復のために緊急搬送された.入院時,著明な低カリウム血症(1.9mEq/L)と心電図上QT延長,TdPが認められた.TdPの反復から心室細動に移行し,心肺蘇生が行われた.カリウム製剤投与による血清カリウム値正常化に伴い,QT間隔は正常化し,TdPは抑制された.血清カリウム値正常化後に行った薬剤負荷試験では,isoprotereno1負荷により,QT間隔が延長した.QT延長に,カリウムチャネルと交感神経賦活化との関与が推測され,本例には後天性QT延長症候群と先天性QT延長症候群の両症候群の特徴が認められた.
  • 青山 浩, 八木 洋, 杉野 敬一, 渡辺 高祥, 高橋 直之, 上西 壮, 高世 秀仁, 春日井 正, 田中 秀之, 外川 潔, 山路 聡 ...
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 84-91
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は24歳男性.非閉塞型肥大型心筋症(HCM).歩行中,意識消失し,救急隊により心室細動(VF)が確認され,直流通電(DC)により除細動され,発作25分後に当院に搬送された.来院時Japan Coma Scale(JCS)200点の意識障害を認め,血液温34.0℃の脳低体温療法を開始した.
    34℃におけるQTcは0.52,12誘導心電図で評価したQT dispersionはO.13秒であったが,心室頻拍(VT),VFは誘発されなかった.
    第7病日,36.0℃に復温後,リドカイン持続点滴中であったが,VT,VFが再発した.再発したVTの誘発機序は不明であるが,DC抵抗性のVFとなり,経皮的人工心肺(PCPS),大動脈バルーンパンピング(IABP)を作動させた.メキシレチン,ジソピラマイド, β 遮断薬静注下でDCを施行しVFは抑制された.
    第8病日,0.5℃/時間の速度で脳低体温療法を再開した.開始直後,上記薬剤使用中であったが,単形性,多形性VTが出現し,DC抵抗性のVFへ移行した.硫酸マグネシウムの静注を行ったが無効であった.34.0℃の低体温下においてはVT,VFは出現せず,QTc 0.46,K 4.7mEq/lであった.第12病日JCS10点,血行動態も安定し,PCPS,IABP,脳低体温療法を中止した.第15病日,意識清明となった.アミオダロン,メトプロロール併用後は,心室性期外収縮が散発するのみであった.心室遅延電位陰性,左室収縮能低下は認められず,MIBG,タリウム心筋シンチグラフィーにて心筋虚血の合併は否定された.
    第66病日,ホルター心電図,トレッドミルテストにてもVTの誘発は認められなかったが,基本周期400ms,SlS2 270ms,S2S3 230msの右室流出路の2連刺激にて,再現性に乏しいが,非持続性多形性VTが誘発された.本症のHCM発症時期は不明であるが,22歳でST-T異常を指摘されている.
    遺伝子解析は行っていないが,14歳で叔父が突然死をしており,突然死の危険性の高い症例と考えられた.初回発作後,1年6カ月経過しており,アミオダロンとメトプロロールの併用療法の有効性が示唆された.しかし,2連刺激で,非持続性多形性VTが誘発されており,今後とも慎重な経過観察を要する,救命に難渋した非閉塞性HCM例について報告した.
  • 安達 太郎, 小林 洋一, 河村 光晴, 劉 俊昌, 浅野 拓, 志野原 睦, 小原 千明, 品川 丈太郎, 神保 芳宏, 宮田 彰, 丹野 ...
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 92-102
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性.肥大型心筋症(HCM),発作性心房細動の診断で心臓カテーテル検査と除細動目的にて入院.入院中に突然,多形性心室頻拍(polymorphic VT)から心室細動(VF)となり心停止,呼吸停止をきたしたが,救急処置により救命し得た.Bepridil 200 mgとmetoprolol 40 mgの内服を開始したがT wave alternans(TWA)は陽性だった.臨床心臓電気生理学的検査(EPS)では多形性心室頻拍が誘発され無効と判定した.その後amiodarone 200 mgとmetoprolol 40mgに変更したところTWAは陰性となり,EPSでは非持続性心室頻拍のみを認め有効と判定した.
    本症例はEPSでの薬効評価とTWAの評価が一致したことより致死性心室性不整脈発生の予測にTWAが有用である可能性が示唆された.
  • 宮沼 弘明, 小幡 篤, 小鷹 日出夫, 村口 至
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 103-108
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Brugada症候群におけるVF発作の誘因について臨床的に検討した.対象は,器質的心疾患がみられずBrugada症候群に特徴的な心電図所見を有し,かつ意識消失発作の見られた9例である.全例男性で,年齢は26~47歳平均41.6歳,のべ17回の
    VFもしくは意識消失発作がみられた.VF発作は,季節的には6~9月の夏期に多く発症し,一日の時間帯としては夜間とくに19~23時に集中する傾向がみられた.VF発作は主に安静時にみられたが,身体的な背景としては長時間労働などによる過労やストレスなどが誘因となったと考えられる例が多く,発作の予防には日常生活指導が重要と考えられた.VF発作時の血清Kは2.5~3.6mEq/l(平均3.1mEq/l)といずれも低値を示していた.一部の症例では,低K血症時に電気刺激で誘発されたVFが血清Kの正常化後には誘発されなくなり,VF発作の発現には低K血症の関与が示唆された.また,高血圧患者260人の検討では夏期は冬期に比べ低Kになりやすい傾向があり,Brugada症候群で夏期にVF発作が多かったのは夏期は低K血症を来たしやすいためである可能性が示唆された.
  • 田辺 靖貴, 山浦 正幸, 古嶋 博司, 種田 宏司, 大平 晃司, 庭野 慎一, 相澤 義房
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 109-112
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    最近,Brugada症候群にみられる心電図上のJ波,およびST上昇の機序として,一過性外向き電流(Ito)を介する活動電位第1相のノッチ形成および活動電位持続時間(APD)の心室壁内(Epicar-dium,Mcell,Endocardium)における不均一性があげられている.さらに最近ではこの症候群の成因として,ナトリウムチャネル遺伝子(SCN5A)のミスセンス変異によりチャネルの機能が変化したり,フレームシフト変異によりチャネルの機能が消失することによるという報告もある.今回我々は当科で経験したJ波を認めた特発性心室細動例のうち,VF発作時の心電図記録が得られた2例で,VF発作時と非発作時の12誘導心電図から,J波高,ST変化について検討した.
    2例共にVPC後のRR間隔の延長によりJ波の増高がみられ,その直後からVFが開始していた.1例ではVF発作時にJ波のみられるV3-6誘導でT波の陰転が認められた.1例ではVF発生時にV3-6誘導で新たにJ波の出現がみられた.特発性心室細動例で時に見られる徐脈時のJ波の増高は心室細動の出現と関連しており,Itoが関与する可能性もあると思われた.
  • 心室細動の予測が可能か
    近藤 一彦, 渡辺 一郎, 小島 利明, 押川 直廣, 中井 俊子, 高橋 義和, 斎藤 穎, 小沢 友紀雄, 上松瀬 勝男
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 113-118
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Brugada症候群の心室細動(Vf)発生の予知に対する加算平均心電図(SAE)の意義を検討した.【対象・方法】対象はBrugada症候群の男性7症例で平均年齢49歳.ST上昇の形はcoved型(C)4例, saddle back型(S)3例.SAEを全例で記録し電気生理学的検査(EPS)にてVfの誘発を試み,Vf誘発例では再度SAEを記録.4症例においては心筋生検を施行した.【結果】EPSにてCの4例,Sの1例でVfが誘発された.SAEはC4例中,遅延電位(LP)が2例で陽性,他の2例は当初陰性でVf誘発後に陽性となり再度陰性となった.Sの3症例はいずれも陰性であった.Cの4例中,LPが陽性で自然発作がない1例が突然死し,1例は2度のVf発作後ICDを植え込み,残りの2例はVfの既往はないがEPSでVfが誘発されamiodaroneあるいはcibenzorineを単独および併用にて投与した.【結論】Brugada症候群においてLP陽性例は将来Vf発生の危険性がより高い.LP陰性例でもLPが変動し得るために経時的にSAEを記録する必要がある.
  • 井上 義明, 井川 修, 菅 敏光, 足立 正光, 矢野 暁生, 三明 淳一朗, 藤田 真也, 山内 優美, 池田 薫, 小倉 一能, 加藤 ...
    1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 119-124
    発行日: 1998/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.主訴は意識消失.平成6年3月意識消失発作があり,以後てんかんとして経過観察されていた.平成9年4月9日朝食後,意識消失発作が出現し救急車にて近医へ搬送された.入院時より連結期が240msec,左脚ブロック型上方軸を呈する心室性期外収縮(VPC)の頻発が認められ,このVPCをtriggerとする多形性心室頻拍および心室細動への移行が頻回に認められた.洞調律時心電図はQTc延長やST変化を認めなかった.本例は器質的心疾患を認めず,短い連結期のVPCをtriggerとする多形性心室頻拍を生じており,1994年にLeenhardtらが報告したshort-coupled variant of torsade de pointesに類似する病態と考えられた.薬剤負荷試験ではプロプラノロール,イソプロテレノール,ノルエピネフリン,フェントラミンの静脈投与によりST変化,VPCの出現を認めなかったが,アトロピンの静脈投与により臨床で捉え得たと同一のQRS波形を呈し同等の連結期を有するVPCが誘発された.また,プロプラノロールおよびアトロピンの併用静脈投与にても同様のVPCが誘発された.TriggerとなるVPCの発生機序として,洞調律時のQTc間隔が延長していないことより,早期後脱分極(EAD)の関与は否定的と考えられた.本症例においてVPCが自然発生した時には,低K血症が背景に存在したことより,細胞内Ca過負荷が生じやすく,遅延後脱分極(DAD)が機序として考えられた.また誘発されたVPCは硫酸マグネシウム(Mg)およびニコランジルにより抑制された.Mgが緩徐内向きCa電流を抑制するとともに,細胞内Ca過負荷を減少させDADを抑制した可能性が推測され,一方ニコランジルがATP感受性Kチャンネルが開口することにより相対的に緩徐内向きCa電流を抑制し細胞内Ca過負荷を減少させDADを抑制したものと考えられた.以上より本例はLeenhardtらが報告したものと同一の機序を有するものと考えられたが,この機序を推測するにあたり,薬剤負荷でVPCは再現性をもって誘発され有用な所見であった.
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