心臓
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31 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 川口 章, 氏家 敏巳, 志村 信一郎, 小出 司郎策
    1999 年 31 巻 5 号 p. 329-336
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 河田 正仁, 岡田 敏男, 清水 雅俊, 高田 幸浩, 下川 泰史, 五十嵐 宣明, 岡嶋 克則, 宮武 博明, 水谷 哲郎, 中村 哲也
    1999 年 31 巻 5 号 p. 337-343
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    くも膜下出血や手術後などのストレス状態におかれると急性心筋梗塞類似の病態となり,冠動脈に器質的狭窄がなくても広範な左室壁運動障害を引き起こすことが知られている.
    症例は81歳の女性で,当初は右下肺野の陰影で入院した.次第に陰影が広がり,呼吸困難を呈した.第10病日に突然呼吸困難が増悪し,心電図上胸部誘導で高度のST上昇をきたし,ショック状態となった.挿管の上,緊急冠動脈造影を施行した.冠動脈の器質的狭窄はなかったが,左室造影上前壁,心尖部,下壁にわたり広範な無収縮を認め,心基部のみ正常収縮をしていた.患者はその2日後に肺炎陰影が両肺に広がり呼吸不全で死亡したが,血清の最大CKは296U/lであった.病理解剖における心筋組織には壊死,炎症細胞浸潤などを認めなかった.本症例は重症肺炎を契機にstunned myocardiumが疑われる病態が引き起こされ,原因として冠攣縮やカテコールアミン心筋障害などが推定された.まれではあるが,ストレスを伴った低酸素血症がstunned myocardium様の心機能低下の誘因となった重要な病態であると考えられ報告する.
  • 宮本 哲也, 駒村 和雄, 今北 正美, 植田 初江, 由谷 親夫, 山岸 正和, 宮武 邦夫
    1999 年 31 巻 5 号 p. 344-350
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は29歳の男性で,これまで心疾患を指摘されたことはなかった.平成5年頃より全身倦怠感,呼吸困難感を自覚するようになり近医を受診し,心不全にて他院に入院となった.入院後拡張型心筋症(DCM)と診断された.その後内服加療を受けるも,平成8年10月頃より再度心不全症状が出現し,同年12月2日当センター入院となった.入院後ミルリノン0.5μg/kg/minとhANP0.05μg/kg/minを48時間持続投与し,その後1週間に2回の間欠的投与を行った.ミルリノン・hANPの間欠投与を持続しつつ,平成9年3月より3カ月間成長ホルモン(GH)4国際単位の隔日投与を追加した.平成9年3月より3カ月間の予定で成長ホルモン(GH)を4国際単位の隔日投与を開始した.自覚症状は次第に改善し,胸部X線上CTR64%から53%に改善.また,心エコー所見では中隔および後壁の壁厚がそれぞれ中隔が6mm,後壁が7mmから11mmに増加し,左室拡張末期径は90mmから83mmに縮小し,更に心エコーでの心拍出量も著明に増加した.血行動態,運動耐容能も著明に改善し,軽快退院に至った.ミルリノン,hANP間欠投与中に成長ホルモンを追加投与したことによる心不全の改善の可能性が推察された.今回我々は貴重な症例を経験したので報告する.
  • 大西 浩文, 佐藤 慎一郎, 野沢 幸永, 大友 透, 西宮 孝敏
    1999 年 31 巻 5 号 p. 351-356
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例46歳男性.健診にて心雑音を指摘され,経胸壁心エコー法(TTE)にて高度の大動脈弁閉鎖不全(AR)を認めたため,精査目的に入院TTE,大動脈造影にて大動脈四尖弁が疑われたが,弁の形態的変化までは評価できなかった.一方,経食道心エコー法(TEE)にて大動脈弁は収縮期,拡張期ともに四尖を認め,過剰弁尖を左冠尖と右冠尖との間に認めただけでなく,冠動脈起始部の観察も可能であった.冠動脈起始異常の合併率の高い大動脈四尖弁症例において,弁置換術を行うため術前にTEEにて起始部を確認しておくことは重要であり,また過剰弁尖が大きいほどARを合併しやすいとの報告もあるため,TEEにて弁の詳細な観察を行うことも重要であると考えられた.
    以上,TTE,大動脈造影法によって確診を得なかったARを呈した大動脈四尖弁症例をTEEによって診断し,文献的考察を加えて報告した.
  • 許 俊鋭
    1999 年 31 巻 5 号 p. 357-358
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 竹中 克, 渡辺 文督, 園田 誠
    1999 年 31 巻 5 号 p. 363-374
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    TDI(tissue Doppler imaging)は,従来,血流速度測定に利用されてきたドップラー法を組織(主に心筋)の運動速度を測定するのに応用したもので,その利点は,1)左室の局所心筋の機能評価が可能であること,2)移動距離が短くてもその運動速度が測定可能であることの2点である.一方,TDIの欠点は,1)ドップラー法であるが故に真の速度を求めるには角度補正が必要であるが,その角度補正が困難であることと,2)心臓全体の運動の影響が計測された局所運動速度に及ぶことの2点である.
    TDIの利点の活用法と,欠点の克服法について述べる.
  • ●ドプラ心エコー法を用いた糖尿病性ラットでの検討
    水重 克文, 野間 貴久, 姚 利, 于 洋, 松尾 裕英
    1999 年 31 巻 5 号 p. 375-383
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    糖尿病での微小循環障害に基づく臓器障害についてはよく知られているが,代謝異常によってもたらされる臓器障害については不明な点も多い.そこで,心機能および大動脈壁弾性の変化について,非インスリン依存性糖尿病の自然発症モデルとしてのOtsuka Long-Evans Tokushima Fatty(OLETF)ラットを対象として,糖尿病発症前からの経過を追跡することから,これらの障害過程を観察してそのメカニズムについて検討した.
    パルスドプラ法によって記録した経僧帽弁流入血流パターンでの拡張早期流入血流の減速時間は,糖尿病性ラットでは病期の進行に伴って週齢と有意な正相関(r=0.56,p<0.0001)を示し,これに対して正常対照(LETO)ラットでは経過中変化を認めなかった.また,脱血しつつ血圧を低下させながら胸部大動脈の血管内エコー像を動脈圧と同時記録し,これらから求めたdistensibility index(1/mmHg)は,13~20週齢において,OLETFラットですでに低値を示した(OLETFO.71±0.11,LETO0.97±0.25,p<0.05).
    心筋細胞でのTGF-β 受容体の発現や,血管平滑筋細胞の増殖がみられたことから,糖尿病発症前における高血糖,高インスリン血症によってもたらされる代謝障害が,左室拡張障害や大動脈壁伸展性の障害を引き起こすものと考えられた.
  • 岩瀬 正嗣, 長坂 綾子, 木村 美由紀, 松山 裕宇, 石井 潤一, 黒川 洋, 野村 雅則, 菱田 仁
    1999 年 31 巻 5 号 p. 384-394
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞1カ月での左室remodelingを断層心エコー図を用いて評価するとともに,ドプラ血行動態指標および神経体液性因子であるANPとBNPとの関係について検討した.対象は合併症を認めない急性心筋梗塞40例,平均年齢59±11歳であった.梗塞後1週間目と1カ月目に断層心エコー図の心尖部四腔像と二腔像からmodified biplane Simpson法を用いて収縮および拡張末期容積と駆出率を計測し,左室流入血流と肺静脈流入血流からドプラ血行動態指標を計測した.1週間目のBNP採血結果から100pg/ml以下(L群)と100pg/ml以上(H群)の2群に分けて検討した.
    【結果】L群15例,H群25例であり,拡張および収縮末期容積係数(EDVI,ESVI)は,全てH群がL群より有意に大であり,H群では1週間目から1カ月目の間にEDVI,ESVIとも拡大傾向がみられ,駆出率もH群がL群に比べて有意に低値であった.H群はL群に比べ1週間目,1カ月目ともE波の減速時間(DT)が有意に短く,左房収縮期での肺静脈への逆流血流と左室流入の持続時間の差も有意に大であった.
    【考察】最近,BNPが心筋梗塞後remodelingの予測と予後の推定に有用だと報告され,本研究でも梗塞後1週間目のBNP濃度100pg/ml以上であった場合にremodelingが進行する可能性が高いことが示唆され,これらの患者群では左室容積が大きく,駆出率も低値であった.さらに,これらの患者群では左室流入血流と肺静脈流入血流からrestrictivepattemが観察され,拡張障害あるいは拡張期のwall stress増大がこうしたremodeling進行を助長していることも推察された.
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