近年,我が国においても肺血栓塞栓症が増加する傾向にある.その急性期の治療として,血栓溶解薬の経静脈投与,カテーテルによる血栓破砕療法,吸引療法など様々な方法が試みられているが,血栓の溶解過程を経時的に観察し治療効果を評価した報告はみられていない.今回我々は,急性肺血栓塞栓症(APTE)2例において血栓溶解過程を肺動脈血管内エコー(IVUS)および血管内視鏡(AS)を用いて観察した.
【症例1】81歳男性,左前胸部痛,呼吸困難にて来院.APTEと診断後,末梢静脈よりt-PA 1200万単位を投与し,血栓の溶解をIVUSで観察した.血栓は血流を確保したエコーカテーテル周囲から溶解し始め次第に縮小したが,50分後も残存した.
【症例2】33歳女性,長時間臥床後の起立時突然呼吸困難,意識消失を生じ当院受診した.APTEと診断後,ASにて観察するとt-PAの肺動脈内投与により血栓はカテーテル周囲より速やかに溶解していき,40分後にはほとんど消失した.
【結語】IVUSとASによりAPTEにおける血栓の溶解過程を観察した.血栓溶解はカテーテル周囲の血流存在部位から始まり,また,t-PAを肺動脈内投与する方が,従来の末梢静脈投与より有効なことが確認できた.
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