心臓
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32 巻, Supplement5 号
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
  • 正木 理子, 渡辺 一郎, 小島 利明, 近藤 一彦, 神田 章弘, 國本 聡, 中井 俊子, 押川 直廣, 杉村 秀三, 大久保 公恵, ...
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 3-9
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例1)46歳,男性.主訴は動悸.心拍数(HR)280/分の心室頻拍(VT)を認め,心エコーでは全周性に壁運動低下,両室拡大が認められた.12歳時に冠動脈心室瘻の手術を施行.心臓電気生理学的検査(EPS)では,脚枝間リエントリー性頻拍(BBRT)が誘発されたため,右脚のカテーテル焼灼術(RFCA)を施行したが,さらに種類の異なるVTが誘発されたため,ICD植え込み術を施行した.症例2)54歳,男性.前壁中隔梗塞を発症し,多源性心室性期外収縮が多発し,心室遅延電位が陽性であったため,心室瘤切除術を施行.9年後,HR214/分のVTを認め,EPSでは2種類のVTとHR238/分のBBRTが誘発された.VTにはRFCAを,BBRTには右脚のRFCAを施行し,両者とも誘発不能となった。その後,RestudyにてVTが再発されたので,抗不整脈薬を投与下に経過観察中である.
  • 石川 康朗, 松本 万夫, 並木 隆雄, 脇坂 啓介, 佐久間 儀広, 冨山 博史, 中山 豪, 吉田 秀夫, 道場 信孝
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 10-16
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    進行性全身性硬化症(以下PSS)には,多彩な不整脈の報告がある.徐脈性不整脈や上室性不整脈はよく認められるが,時に心室性不整脈を合併する.しかし,持続性心室頻拍(VT)の合併はきわめてまれである.
    VTを合併し植え込み型除細動器(以下ICD)の適応と考えられるPSSの一症例を経験したので報告する.
  • 森田 宏, 草野(福島) 研吾, 中村 一文, 藤本 良久, 山本 美香, 小林 誠, 永瀬 聡, 垣下 幹夫, 江森 哲朗, 山成 洋, ...
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 17-21
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は65歳女性.十数年にわたり年1~2回失神発作を繰り返していた.発作時の心電図で多形性心室頻拍から心室細動への移行がみられた.安静時心電図は明らかな異常を認めず,各種画像検査で器質的心疾患は認められなかった.植え込み型除細動器(ICD)とDisopyramideの投与を開始したが,退院3カ月目に頻回のICD作動が生じ,ICDの保存記録で反復する多形性心室頻拍のshort runを認め,電気生理学的検査を施行した.PVTは常に右室流出路起源の心室期外収縮(PVC)から発生し,心室性期外収縮の起源近くからの頻回刺激(220/分)にて多形性心室頻拍と同様のQRS波形の変化を認めた.以上から,この多形性心室頻拍の起源は一つで,心室性期外収縮の延長上に多形性心室頻拍があると考えられたため,先行する多形性心室頻拍をtargetとしてカテーテルアブレーションを行った.以後約2年の経過でICDの作動なく経過している.
  • 鈴木 順, 山崎 恭平, 上小澤 護, 伊藤 篤
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 22-25
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は45歳男性.既往歴は特記すべきことなし.失神の既往なし.家族歴では,父親が51歳で心臓突然死.弟2人が16歳,23歳で心臓突然死している.20歳ころより脈の不整を自覚.'99年6月より朝方の胸部不快感を自覚したため当院受診.心電図はV1,V2にてST上昇あり,Holter心電図は,心室性期外収縮単発を認めるのみ.7月26日精査目的にて入院となった.心臓カテーテル検査では異常所見を認めず.電気生理学的検査では,AH 87 msec,HV 4040msec,BCL 950 msecでQT 355 msec:QTc 364msecと正常.2カ所,2種類の基本周期で頻拍誘発を試みたが,致死的不整脈は誘発されなかった.イソプロテレノール負荷実施し,BCL 592msecでQT 367 msec:PTc 476 msecと延長を認めた.フレカイニド,ジソピラミド投与にてSTの上昇の増悪は認められなかった.
  • 阿部 芳久, 門脇 謙, 庄司 亮, 熊谷 肇, 佐藤 匡也, 熊谷 正之
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 26-31
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の女性.主訴は呼吸困難.高血圧,発作性心室細動と糖尿病で近医に通院中であったが,頻拍性心房細動を呈するうっ血性心不全のために紹介入院となった.入院時の心エコー法では,中隔厚は12mm,後壁厚は10mmで,びまん性の左室収縮障害を認めた(駆出率:0.46).ジギタリス剤と利尿剤で治療を開始した15時間後に突然意識消失をきたし,モニター心電図でTorsades de pointes(TdP)を認めた.12誘導心電図ではI,II,aVF,V3~6誘導の陰性T波,QT間隔の著しい延長(QTc:0.67)とT波のalternansを認めた.なお,6カ月前の心電図では左室肥大はみられたものの,QT間隔は基準範囲内であった.TdP発生時のK値は3.6mEq/l,Mg値:は1.1mEq/lで,Mgの静注とKの補正により異常所見は徐々に改善した.3週間後に行った心室中隔の心内膜心筋生検で,心筋線維の錯綜配列が認められたが,特定心疾患を示唆する所見は得られなかった.なお,冠動脈造影では正常冠動脈像で,左室造影上の駆出率は58.7%であった.
    現在のところ,少なくともTdPの第1拍目の機序は早期後脱分極による撃発活動とされているが,2拍目以降のTdP維持の機序は撃発活動の持続とリエントリーのいずれであるかは結論がでていない.TdP維持にリエントリーの関与を想定すると,本症例に認められた心筋の錯綜配列がその基質となった可能性も考えられる.
  • Genotype-phenotype解析
    山下 文男, 堀江 稔, 久保田 友之, 吉田 秀忠, 辻 啓子, 鷲塚 隆, 大谷 秀夫, 篠山 重威, 相澤 義房
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 32-37
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【背景】QT延長症候群(LQTS)において,電位依存性カリウムチャネルであるKCNQ1の遺伝子変異が数多く報告されている.これまで,KCNQ1のC末端のヘテロ接合の遺伝子変異は,膜貫通部位やpore領域の変異に比べ弱い表現型を呈するとされてきた.我々はKCNQ1のC末端領域に同一の変異を有する3人のLQTS患者について,臨床像およびチャネルタンパクの機能を検討した.【方法】運動で失神が誘発されるLQTS患者のKCNQ1全エクソンに対し直接塩基配列決定法を施行した.検出された遺伝子変異を哺乳動物培養細胞(COS7)に発現させ,全細胞型パッチ・クランプ法を用いてチャネル機能を検討した.【結果】3人の患者のKCNQ1のC末端にヘテロの1:塩基置換によるミスセンス変異(T587M)が認められた.3人とも初発発作は9歳という若年時で,β遮断薬内服により失神発作は消失した.血縁者にQTc時間の延長,幼少時の運動中突然死が認められた.培養細胞における発現実験では,T587M変異型単独は全く電流が出現せず,WT(wild type)とT587M変異型の等量発現では,WTと同様の外向き電流が観察された.【考察】KCNQ1C末端の遺伝子変異が重度のLQTSを引き起こし得ることが示された.チャネル電流の解析では,変異型が野生型と共に4量体を形成しない可能性があり,KCNQ1遺伝子変異によるLQTS発症の新しい機序が示唆された.
  • 畔柳 三省, 熊谷 哲雄, 松尾 義裕, 黒須 明, 早乙女 敦子, 長井 敏明, 徳留 省悟
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 38-47
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1995年から1998年の4年間の東京都23区内の入浴中死亡例の疫学調査を実施し,次の結果を得た.(1)年平均750件発生し,対10万比は9.53である.(2)高齢者に多く60歳以上が約9割である。(3)男女比は1:1であり,40~60歳代では男性が多い.(4)健康群と疾患群の比は1:5である.(5)約5割を冬季(12~2月)が占め,夏季(6~8月)は約1割と少ない.(6)自宅での発生が圧倒的に多く92.6%を占める.(7)発生場所は,浴槽内90%,洗い場6%,脱衣所1%である.入浴中断・入浴後・サウナ・シャワーは各1%である.(8)発見経緯は約半数が入浴時間過長で,様子見・入浴音なし・返事なしが各1割である.5%の例で突然溺没・昏倒するのを目撃されている.(9)異変発生時の判明している入浴時間は約8割が30分以内である.(10)内因死は85.5%,外因死は13.1%を占める.(11)心血管系疾患が6割,脳疾患が2割,溺死が1割を占める.(12)死因と湯深との間に関連はない.(13)虚血性心疾患は浴槽内と比較して,入浴中で有意に高く,シャワーで有意に低い.脳動脈破綻は浴槽内と比較して,洗い場,シャワーで有意に高い.入浴中の突然死を予防するためには複数で入浴することが有効であると思われる.
  • 竹内 雅治, 荒木 隆夫, 後藤 敏和, 矢作 友保, 川島 祐彦, 中田 茂和, 東條 大輝, 高橋 克明, 横山 紘一, 赤井 健次郎
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 48-52
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞患者の急死の原因はその多くが心室細動等の致死的不整脈であると推測されている.我々はHolter心電計装着中に心筋梗塞を発症し,急性期のST-T変化および不整脈の出現過程の全記録を得たので報告する.症例は72歳の女性.1999年6月8日,近医にてHolter心電図を装着した.はじめは正常洞調律でST-Tの異常を認めないが,胸痛の出現に伴いST低下が出現し,その約3時間後に心室性期外収縮の頻発が認められた.心室性期外収縮は断続的に出現していた.心室頻拍は認めなかった.ST低下が出現してから約7時間後にSTは上昇し,翌日のHolter心電図記録終了までST上昇は持続した.本症例は後に施行した心臓カテーテル検査で左冠動脈前下行枝近位の閉塞により生じた心筋梗塞であることが確認された.
  • 石田 明彦, 小田倉 弘典, 八木 哲夫, 滑川 明男, 大友 淳, 大友 潔, 伊藤 明一, 長沼 廣
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 53-57
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【症例】42歳男性.【既往歴,家族歴】喫煙40本/日,22年,他特記すべきことなし.【現病歴】平成11年2月初旬より労作時胸痛を自覚,同15日近医を受診,待合室で胸痛を訴えた後意識消失し,救急車で当院へ搬送された.来院時心室細動,瞳孔散大,対光反射なし.直流除細動により洞調律に復し,その後の心電図でSTの上昇と心筋逸脱酵素の上昇を認め,急性冠閉塞による心室細動と考えられた.入院後一時自発呼吸は再開したが,脳波は90%以上平坦で意識レベルの改善はなく肺炎,呼吸不全を併発し3月26日死亡した.【剖検所見】冠動脈は3枝共に狭窄像を示し組織的には内膜の線維性肥厚が著しく,中膜の変性,線維化は極く軽度であった.房室結節支配動脈の狭窄,硬化像と心筋内動脈の線維性内膜肥厚も散見されたが,大動脈,腎等その他の臓器の動脈は変化に乏しかった.線維性内膜肥厚から線維筋異形成を疑うが,冠動脈に限局した症例の報告は稀であり,考察を加え報告する.
  • 臼田 和生, 小林 大祐, 竹森 一司, 石川 忠夫, 星野 修一, 斉藤 典彦, 津久井 宏行, 西谷 泰, 久保 実
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 58-63
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は12歳,男児.学校心臓検診では異常なし.1999年2月15日小学校の昼休み中に突然意識消失し,4分後救急隊到着時には心肺停止状態で心電図モニターは心室細動であった.近医に搬送され心肺蘇生と軽度低体温療法を施行し第8病日に開眼,その後,徐々に意識回復した.非持続性心室頻拍が多発し心停止の原因と考えられたため,精査加療目的に当科入院.心エコー・左室造影で僧帽弁後尖下部左室後壁にφ3cmの先天性左心室瘤を認めた.心室頻拍波形は右脚ブロック+上方軸で心室瘤付近が起源と考えられた.心室瘤に対し外科的治療を施行.高密度マット電極で術中マッピングを行い,心室瘤辺縁にVT最早期興奮および心室瘤状部分に伝導遅延を認めたため,心室瘤周囲にcryoablationを行い,心室瘤に対し心膜パッチ縫着を行った.術後,心室性不整脈は消失した.以上,先天性左心室瘤に致死的心室性不整脈を合併した稀な1例を経験し,蘇生・根治に成功した.学校心臓検診での本病態の検出は極めて困難と思われた.
  • 宮澤 泉, 宮下 豊久, 高見澤 格, 臼井 達也, 片桐 有一, 武井 学
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 64-68
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の男性で,肥大型心節症で心室中部の閉塞,および心尖部心室瘤を有しており,一般的な抗不整脈剤が無効の持続性単形性心室頻拍を頻回に繰り返していた.抗不整脈剤非投与下に施行した電気生理学的検査では,心室頻拍は右室心尖部からのペーシングで誘発され,ペーシングで停止した.また,心室頻拍中のペーシングでエントレインメント現症を認めた.LV mappingでは心尖部心室瘤内部にFragmented Electrogramを検出した.以上から,左室心尖部心室瘤を器質とする,リエントリー機序による心室頻拍を合併したものと考えた.アミオダロンの内服を開始したところ心室頻拍の再発を認めず,再度,電気生理学的検査を行ったが,心室頻拍は誘発されなかった.その後,心室中部で認めた60-80mmHgの圧較差も消失し,心室頻拍の再発も認めておらず,アミオダロン療法が有効であった.
  • 熊谷 浩司, 渡辺 淳, 加藤 浩, 馬場 恵夫, 金野 裕司, 福田 浩二, 三浦 昌人, 福地 満正, 白土 邦男
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 69-74
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心室頻拍を伴う心サルコイドーシス3症例へのアミオダロンの投与について検討した.心サルコイドーシスはUCGにて中隔基部の菲薄化や左室駆出率低下,ガリウムシンチでの取り込み所見および,前斜角筋リンパ節生検で診断した.心室頻拍は多剤耐性で,停止にはカーディオバージョンを要したためアミオダロンを400mg/日で開始し,2週間後に200mg/日へ減量した.全例で心室性不整脈の減少を認め,有効と思われた.心サルコイドーシスに対してプレドニゾロン(PSL)40-60mg/日を開始した.PSLの減量中にDLCO低下(2例),X線写真上間質性陰影(1例)を認めアミオダロンを中止した.心サルコイドーシス3症例にアミオダロンを投与し早期に全例で肺毒性を認めた.
    アミオダロンによる肺毒性機序にサルコイドーシスの免疫学的病態が関与する可能性がある.心室頻拍を呈する活動期心サルコイドーシスのアミオダロン投与時期は慎重に検討する必要がある.
  • 野田 崇, 清水 渉, 相庭 武司, 高木 雅彦, 田邊 康子, 田口 敦史, 栗田 隆志, 須山 和弘, 相原 直彦, 鎌倉 史郎
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 75-80
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【背景】Brugada症候群では,V1-V3誘導心電図(ECG)のST上昇と心室細動(VF)を認め,これには,一過性外向き電流(Ito),ATP感受性K+電流(IKATP)などの外向き電流の増大,Ca2+電流(Ica),Na+電流(INa)などの内向き電流の減少による右室心外膜細胞活動電位第1相notchの増大とdomeの消失の関与が示唆されている.一方,エルゴメトリン(EM)またはアセチルコリン(ACH)の冠動脈注入は,虚血あるいは副交感神経の直接刺激により,IKATPを増大し,Icaを減少させて,Brugada症候群のST上昇を増強させることが予想される.【方法】Brugada症候群(B群)21例(全例男性,平均43±14歳)と対照群(C群)30例(全例男性,平均60±11歳)を対象とし,右冠動脈へのEM(10-40μg)またはACH(20-50μg)注入時のECG変化とVF誘発頻度を観察した.【結果】B群では,EMにより15例中3例(20%),ACHにより6例中3例(50%)でST上昇が増強し,それぞれ1例(7%),2例(33%)でVFが誘発されたのに対して,C群では,ST増高,VFとも1例も認めなかった.【考察】Brugada症候群では,V1-V3誘導ECGに反映される右室流出路領域の電流系が,虚血(IKATP増強)または副交感神経刺激(Ica減少)に対して鋭敏である可能性が示唆された.
  • 小幡 篤, 宮沼 弘明, 木曽 啓祐, 小鷹 日出夫, 村口 至, 岩間 憲行, 高橋 さつき, 千場 良司
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 81-89
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Brugada症候群と基礎心疾患のない不整脈突然死例を病理学的に検討した.対象は当院におけるBrugada症候群8例のうち突然死し剖検施行した2例と右室心内膜心筋生検を施行した5例(39~47歳,全例男性).心室細動または心拍停止状態で搬入され蘇生できず,剖検にて基礎心疾患を持たない不整脈突然死と考えられた50歳未満の男性症例5例.50歳未満の男性非心臓死剖検12例を対照症例として,光顕にて心筋組織所見を比較検討した.Brugada症候群8例のうち右室側心室中隔心筋生検を施行した5例中3例には有意な所見なく,2例に脂肪組織浸潤が認められた.剖検施行の2例には右室前壁に心外膜側から心筋層に縞状の脂肪組織浸潤が著明に認められた.不整脈突然死の剖検例5例にもいずれも右室前壁に同様の脂肪組織浸潤を中等度から高度認めた.50歳未満男性非心臓死剖検例12例を対照症例としたが,右室前壁にはわずかな脂肪組織浸潤を12例中5例に認めたのみで同様の所見は1例もなかった.右室前壁心外膜側の脂肪組織浸潤は今回検討した全例に共通して認められ,他の剖検例の報告でも同様の所見がありこれはBrugada症候群の病理所見として有力である.この所見はBrugada症候群の右側胸部誘導での特徴的心電図所見との関連が考えられ,何らかの形で心室細動発生に関与しているものと予測される.
  • 大村 昌人, 清水 昭彦, 山縣 俊彦, 上山 剛, 木村 征靖, 板垣 和夫, 吉賀 康祐, 金本 将司, 徳久 隆弘, 松崎 益徳
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 90-95
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:29歳,男性.主訴:心肺停止.家族歴:特記事項なし.現病歴:生来健康であり,検診等にても,異常を指摘されたことはない.1999年4月12日21時10分頃,テレビ鑑賞をしながら,カップゼリーを開けかけたところで,意識消失.救急隊にて心肺蘇生を受けながら,21時43分当院総合診療部へ搬送.来院時,心室細動であり,直流通電にて心拍は再開した.低体温療法により意識回復後,4月26日,当科に転科となった.入院時心電図は正常洞調律,V1でRSr pattern,V4-V6でs波を認めた.心筋シンチ,心カテ等に異常所見はなかった.EPSで,心室頻拍,心室細動は誘発されなかった.また,ジソピラミド静注で心電図変化を認めなかった.以上より,特発性心室細動と診断した.しかし,EPS翌日に肺塞栓症を発症.前胸部誘導で著明なST上昇を認めBrugada症候群に特徴的とも言える右側胸部誘導にcoved型の著明なST上昇を認めBrugada症候群との関連が問題となった.この心電図変化は,半日後には消失した.ICD植え込み術を施行し退院した.現時点では,確定的な診断は不可能であるが,近年Brugada症候群ではNaチャネルであるSCN 5 Aの異常が示されており,今後遺伝子診断等も可能かとも思われる.
  • 関田 学, 中里 祐二, 中里 馨, 安田 正之, 住吉 正孝, 河合 祥雄, 中田 八洲郎, 山口 洋
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 96-101
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    41歳女性.家族歴に特記事項なし.過度の精神的,肉体的疲労時に失神発作が出現した.某医で施行したホルター心電図上,発作に一致して心室細動を認めたため,当科入院.非発作時の心電図では,QT間隔は正常で,脚ブロックやST上昇も認められなかった.入院直後にも心室細動が出現したが,自然停止.メキシレチンの持続点滴を開始後,心室細動の再発はなかったが,消化器症状が出現,ジソピラミド300mg/日に変更した.また,精神的緊張も誘因と考えられたため,アテノロール50mg/日を併用した.心臓超音波検査,心筋シンチグラフィー(MIBG),心臓カテーテル検査およびMRIで明らかな異常はなかった.右室心内膜生検では,軽度の局所的線維化所見が認められたが非特異的な変化であった.除細動器の植え込みは,本人の同意が得られなかったため,薬剤投与下での電気生理学的検査で心室細動が誘発されないことを確認後,内科的治療を選択した.退院後,約16カ月再発作は認められていない.
  • 鵜野 起久也, 菊地 由佳, 西野 康宏, 国分 宣明, 永原 大五, 鳥井 孝明, 下重 晋也, 宮本 憲次郎, 土橋 和文, 島本 和明
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 102-108
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.平成10年12月朝,安静時に意識消失発作出現.救急車内の心電図モニターにて心室細動(VF)確認され直流除細動施行された.入院後に施行された心エコー検査,左室造影・冠動脈造影・アセチルコリン負荷にては明らかな異常を認めなかった.心臓電気生理検査では右室心尖部・流出路間の有効不応期(ERP)の差が70msecであり右室心尖部からのプログラム刺激にてVFが誘発された.アミオダロン経口投与下に施行した心臓電気生理検査では右室各部位のERPは延長しVFは誘発されず.平成11年3月朝,再び安静時に意識消失発作出現,家人のCRP下に救急車にて当科搬入となった.VFが確認され直流除細動にて心拍再開するも心室性期外収縮(PVC)多発し再びVF出現.その後のメキシレチンの投与によりPVC消失し以後VFの出現は認めなかった.植え込み型除細動器およびメキシレチンの経口投与にて現在経過観察中である.本症例におけるVF発作は冬季の朝安静時に出現し,MXT投与によりVFのtriggerを抑制した可能性のある興味深い一例と考えられた.
  • 渡辺 則和, 小林 洋一, 三上 慶乃, 勝又 亮, 安達 太郎, 劉 俊昌, 河村 光晴, 浅野 拓, 小原 千明, 品川 丈太郎, 宮田 ...
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 109-113
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    臨床で持続性心室頻拍(SVT)・心室細動(VF)の既往のある患者,またはホルター心電図でSVT・非持続性心室頻拍(NSVT)が認められ,電気生理学的検査(EPS)で,SVTまたはVFが誘発された患者を対象にKチャネル遮断薬であるソタロールの心室頻拍・心室細動に対する有用性とQT dispersion(QTd)との関連を検討した.
    【対象】患者10名(男9名,女1名).平均年齢61.3歳.基礎疾患陳旧性心筋梗塞3名,特発性VT1名,特発性VF1名,肥大型心筋症2名,拡張型心筋症1名,肺動脈狭窄症術後1名,右室異形成症1名.
    【方法】ソタロール有効の判定は80~160mg/日を1-2週投与後,EPSを施行しイソプロテレノール負荷まで行いVT・VFが誘発されないものとした.有効群4例,無効群6例のソタロール投与前後における心電図のQT dispersionについて検討した.QTdispersionの測定は記録速度25m/sの心電図を用手法により行った.
    【結果】有効群ではすべてQT dispersionが短縮したが,無効群ではすべてQT dispersionが延長した.ソタロールの有効性とQT dispersionの関係が示唆された.
  • 永田 義毅, 池田 孝之, 紺谷 真, 中村 三郎
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 114-118
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心房細動(Af)を合併した拡張型心筋症(DCM)に対して,カルベジロールとアミオダロンによる治療を行い心筋再分極に及ぼす影響を検討した.【症例1】42歳男性.左室駆出率41%.Afと非持続性心室頻拍(NSVT)を認めカルベジロールを投与した.【症例2】62歳男性.左室騒出率40%.フレカイニド投与を受けていたが,持続性心室頻拍により失神したためアミオダロンを投与した.【結果】症例1ではQTc dispersionは88msecから43msecと短縮し,NSVTの再発により64msecと増大した.症例2ではQTc dispersionは118msecから52msecと短縮し,NSVTの再発により112msecと増大した.Isochrone mapはカルベジロールまたはアミオダロンの投与により均一化し,NSVT再発によって不均一となった. 先行R R 間隔とQ T cdispersionとの相関関係は,個々の症例で異なり,NSVTの抑制により相関関係も改善した.【総括】カルベジロールとアミオダロンはいずれもAfを合併したDCMにおける心筋再分極の不均一性を改善することが示唆された. Af 症例でのQTc dispersionは先行RR間隔によって異なり,その相関関係を評価することは,個々の症例における心筋再分極の不均一性を評価する上で有用であると思われた.
  • 織田 裕之, 高田 重男, 阪上 学, 臼田 和生, 中村 由紀夫, 小林 健一, 滝 淳一, 中嶋 憲一
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 119-123
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】陳旧性心筋梗塞患者の安静時および運動負荷時心電図所見と心機能に及ぼす塩酸ニフェカラント( 以下N i f ) の影響を検討した. 【対象と方法】LownII度以上の心室性不整脈を有する陳旧性心筋梗塞患者10例(全例男性,平均55.4歳)を対象とした.血行動態の評価には負荷心プール法を用い,LVEF,1/3FR,ERなどの諸指標を求めた.心電図所見は12誘導心電図よりPQ,RR,QRS,QT,QTc,QT dispersion(QTd),QTc dispersion(QTcd)を求めた.Nifは0.4mg/kgを5分間急速静注,その後0.8mg/kgを60分間点滴静注した.Nif投与前,Nif点滴静注7分後にそれぞれエルゴメータ負荷心プールを行った.【結果】運動耐容能,血圧,心拍数は安静時最大運動時ともNif投与前後で差はなかった.PQ,RR,QRSも安静時最大運動時ともNif投与前後で差はなかった.QT(sec)はNifにより安静時0.40±0.03から0.49±0.05へ最大運動時0.33±0.02から0.39±0.03へ有意に延長し,QTcも同様に有意に延長したが催不整脈作用はなかった.またQTd(msec)は69.8±22.4から57.2±20.1へQTcdは73.0±25.3から60.1±22.8へ安静時いずれも有意に短縮した.血行動態ではER(l/sec)が最大運動時Nif投与により有意に短縮した以外に差はなく,EF<50%の心機能低下群においてもNif投与による影響はなかった.【結語】Nifは心筋梗塞患者の心機能に影響することなくQTを延長させ,逆にQTdを縮小させる抗不整脈薬と考えられた.
  • 掃部 弘行, 品田 卓郎, 小原 俊彦, 今泉 孝敬, 畑 典武, 田中 啓治, 加藤 貴雄, 高野 照夫
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 124-130
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    塩酸ニフェカラントの急性心筋梗塞(AMI)に伴う心室性不整脈に対する効果と循環動態に及ぼす影響を調べた.心室性不整脈を有する発症から10日以内のAMI7例を対象とした.塩酸ニフェカラント0.3mg/kgを5分間で静注後,0.4mg/kg/hrの速度で2から4時間持続点滴静注し,前後で心電図変化,循環動態,血中薬物濃度などを比較した.本剤は,心室性期外収縮に対し7例中4例(57.1%)で有効であった. QT 時間は投与前0.40±0.06secより単回静注直後20.3%, 持続投与開始1 時問後11.0%延長した.しかしRR間隔,PR時間,QRS幅には変化がなかった.血中未変化体濃度は投与直後1,595±715ng/ml,2時間後549±91ng//mlであった.血行動態(Swan-Ganz法)には有意な変化は認めず,むしろPCWPとCIは改善傾向にあった.心原性ショックにリドカイン抵抗性の心室頻拍を伴う一例では,単回静注直後より心室頻拍は消失,持続点滴静注で抑制された.投与後血圧は上昇,RAPは低下し血行動態は改善した.塩酸ニフェカラントは心機能の低下した急性心筋梗塞症例に伴う心室性不整脈にも安全に使用できる新たな緊急治療薬として期待される.
  • 五十嵐 正樹, 大石 知実, 宇野 成明, 石盛 博, 笹本 修一, 上嶋 権兵衛
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 131-134
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性.呼吸困難,チアノーゼを主訴に当院救急外来受診し入院.来院時心不全を呈したが,入院時断層心エコー図では前壁中隔領域の壁運動低下と左室瘤を認めた.第5病日より心室細動(VF)が出現し救命救急センター入室.入室後からVFが頻回に出現したため電気的除細動を行い予防的にmexiletine, lidocaine, procainamideを併用したが効果なかった.冠動脈造影では左前下行枝近位部に造影遅延を伴う不完全閉塞の所見を認め,PTCAおよびステント留置を行った.Amiodarolle 800mg/日を開始したが,さらにVFが持続するため,1,200mg/日まで増量し,抗頻拍ペーシングを併用した.その後VFの出現なく,心不全も軽快し一般病棟に転棟した.今回,VFの原因としては左室瘤が考えられ,心筋梗塞の関与が考えられた.最終的にamiodarone大量投与と抗頻拍ペーシングの併用が有効であった難治性VFの1例を経験した.
  • Session IV-III群抗不整脈薬・臨床薬理
    外山 淳治
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 135-138
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 山田 さつき, 久賀 圭祐, 三原 和平, 寺田 康, 三井 利夫, 山口 巖
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 139-143
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    欧米では致死的不整脈急性期にはamiodarone(AMD)静脈投与により有効血中濃度を得てから,AMD経口投与に移行することが推奨されている.わが国ではAMD静注薬は認可されておらず,当科では当大学倫理委員会の承認を得て,致死性不整脈に対して静注を行っている.本研究では当科におけるAMD静注実施計画を呈示し,心肺蘇生にAMD静注薬を用いた陳旧性心筋梗塞例を報告する.【症例】冠動脈バイパス術,経皮経管冠動脈形成術,大動脈弁置換術の既往歴がある,陳旧性心筋梗塞,労作性狭心症,大動脈弁狭窄症の72歳,女性である.1998年8月,全身倦怠感を主訴に当院を受診した.心拍数30/分の洞性徐脈に対して体外式ペーシング挿入中に,torsade de pointes(TdP),心室細動(Vf)が出現した.I群抗不整脈薬,硫酸マグネシウム,直流通電ではTdP,Vfは停止に到らず,AMD静注が選択された.AMD150mg静注によりTdP,Vfは停止し,ペーシング調律となった.AMD静注(600mg/日)と経口投与(400mg/日)を2日間併用し,それ以降は経口投与に移行できた.洞性徐脈,TdP,Vfの原因としてdigitalis中毒の関与が推測された.【まとめ】治療抵抗性のTdP,VfにAMD静注を行い,心肺蘇生に成功した.
  • 相原 直彦, 栗田 隆志, 田口 敦史, 清水 渉, 須山 和宏, 鎌倉 史郎
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 144-147
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    29歳女性.左冠動脈主幹部閉塞病変に対する緊急冠動脈バイパス術施行(IABP・PCPS下)後より,心室頻拍(VT),心室細動(Vf)が頻発した.Class I ac群抗不整脈剤は無効で,amiodarone静注は有効であった.しかし,第8病日頃より,電解質バランスの乱れ,全身状態の悪化などからVTの頻発を認め,amiodaroneは無効となった.また,VTは持続しているものの補助循環装置(第3病日装着)により血行動態は保たれていたため,抗不整脈剤のwashoutを目的として抗不整脈剤を中止した.第9病日,抗不整脈剤中止後11時間に,直流通電を試みるも,Vfは持続した.つぎに,MS-551 8mgの静注を行い再度DCを行ったところ,心電図上Vfは心室粗動様に変化した.そこでさらにDCを行ったところ洞調律に復帰したため,MS-551の持続投与を行った.その後VT,Vfの再発は認められたが,DCによる停止とMS-551持続投与量の増量により,VTの頻度は減少し,VTのコントロールが可能となった.以降,全身状態は徐々に改善し,第30病日には右心系補助循環装置からの離脱が可能となり,第55病日にはMS-551を中止し,Sotalol経口投与への変更が可能となった.
  • 池主 雅臣, 目崎 亨, 青木 芳則, 鷲塚 隆, 阿部 晃, 田川 実, 笠井 英裕, 畑田 勝治, 中川 巌, 相澤 義房
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 148-152
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は49歳男性.1998年11月より動悸と眩量を訴えるようになり,1999年4月近医で心拍数250/分の単形性持続型心室頻拍(VT)が記録された.心臓超音波検査で左室壁運動のびまん性の低下と,心室中隔基部の壁の菲薄化が認められた.テクネシウムシンチで心筋,ガリウムシンチで肺門部リンパ節に集積が認められ,経気管支的肺生検で非乾酪性壊死が証明された.以上の所見からVTは心サルコイドーシスに伴うものと診断した.自然発作のVTがdl-ソタロールで抑制されたため,電気生理学的検査は同薬内服下に施行したが,VTは誘発されずdl-ソタロールは有効と判定した.しかしプレドニゾロンの開始に伴って同一波形のVTが頻発するようになり,頻拍の停止と抑制のために一時ペーシングを挿入した.この時のプログラム電気刺激で自然発作と同一波形のVTを含む2種類の単形性VTが容易に誘発され,それぞれのVT中の頻回刺激でエントレイメント現象が確認された.本例は抗不整脈薬単独での治療は困難と考え,除細動器の植え込みを行った.
    【結論】心サルコイドーシスに伴うVTの一部は興奮間隙を有するリエントリーによる.心サルコイドーシスでは,ある時点での電気生理学的検査の薬効判定の結果は,ステロイド治療や基礎心疾患の活動性によって修飾される可能性があり,長期的な有用性を予測する指標とならない.
  • 西田 邦洋, 藤木 明, 水牧 功一, 長沢 秀彦, 井上 博
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 153-157
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心室頻拍や心室細動など致死性不整脈において植込み型除細動器(ICD)が生命予後を改善する事が報告されているが,ICD植込み後でも抗不整脈薬併用が必要な症例も多い.ICD植込み例でのIII群抗不整脈薬の有用性を検討する目的で,当院でICDを植込んだ患者を対象に抗不整脈の使用状況とIII群薬の効果を検討した.対象:当院でICDを植込んだ患者16例(男性14例,女性2例),平均年齢58歳.不整脈は心室頻拍(VT)11例(拡張型心筋症6例,陳旧性心筋梗塞4例,不整脈源性右室異形成症1例),心室細動(VF)5例(うちBrugada症候群2例).結果:1.VT症例ではICD植込み後でもIb群薬,III群薬の投与が必要な症例が多かった.VT例6例でIII群薬が投与され,その効果は(1)VT発作頻度の減少6例,(2)VTの徐拍化と抗頻拍ペーシングの効果増強3例,(3)上室性頻脈性不整脈の予防1例,(4)I群薬でincessant化したVTの予防1例,であった.2.III群薬の副作用としてamiodaroneで間質性肺炎,肝機能障害,dl-sotalolで心不全増悪を認めた.3.VF症例ではICD植込み後,抗不整脈薬の併用が必要な症例は少なかった.Brugada症候群でnifekalant静注を試みたところ心電図変化を軽減する可能性が示唆された. 結語: I I I 群薬はI C D 植込み後の患者に生じる様々な問題に対して効果的で,生命予後と生活の質の改善が期待できる.
  • 小池 明広, 中須賀 一太, 吉松 卓也, 久間 文明, 岡本 和彦, 下池 英明, 大西 康, 植田 典浩, 丸山 徹, 加治 良一, 金 ...
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 158-164
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】当科で第4世代ICD植込み術を施行した患者における心機能およびICD作動状況について評価し,その問題点を検討した.
    【方法】患者は8例(男性6例,女性2例).基礎心疾患は陳旧性心筋梗塞,心筋症であり,薬剤抵抗性もしくは副作用のために薬剤使用が困難であった持続性心室頻拍および心室細動のためにICDが植込まれた.ICD植込み時を追跡開始点とし,平成11年12月までの心機能およびICD作動状況について評価した.
    【結果】アミオダロン(1例),dl-ソタロール(3例),β遮断薬(4例)が併用薬として用いられた.1例は左胸部のペースメーカのため右胸部にICDを植込んだが,経静脈リードのみでは除細動できず皮下パッチ植込み術を必要とした.本症例以後は左胸部植込み例においても電極を2カ所に有する経静脈リードを使用した.フォローアップ期間中に5例で誤作動を認めた.その内訳は,発作性心房細動が2例,洞性頻脈が2例,抗頻拍ペーシング直後の期外収縮による不適切なICD治療が1例であった.1例で抗頻拍ペーシングによる心室頻拍のaccelerationを認めたが,死亡例はなく心機能にも有意な変化は認められなかった。
    【総括】不整脈突然死予防のため,ICDは確実に頻拍を停止させる必要があるが右胸部植込み時には除細動閾値上昇のために停止が困難である可能性がある.確実な頻拍の停止のみでなく不適切なICD治療を避けるために新しいアルゴリズムやdual chamberICDの必要性が考えられた.
  • ミニシンポジウム"致死的不整脈への対応"-ICD/III群抗不整脈薬-
    井上 博, 新 博次
    2000 年 32 巻 Supplement5 号 p. 165-169
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
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