心臓
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32 巻, Supplement6 号
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
  • 浅川 哲也, 望月 淳, 松村 国佳, 望月 弘人, 山内 康照, 青沼 和隆
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 3-9
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は27歳女性.中学生の頃から不整脈を指摘されていた.平成10年4月,感冒様症状にて当科受診,左脚ブロック,下方軸型非持続性心室頻拍の頻発を認めた. 胸部X 線, 心エコー図検査では異常なく,ホルター心電図では1日総VPC数約7,400個で,うち4,200個が3連発以上であった.薬物負荷ではリドカイン,ジソピラミド,ATPの静注およびβblockerの内服は無効でベラパミルの静注が有効であったが内服投与は無効であった.心臓電気生理検査では左冠動脈入口部の約5mm下方の左冠動脈洞内にてperfect pacemapの所見を認めたが冠動脈損傷の危険性を考慮しカテーテルアブレーションは断念した.患者は妊娠を強く希望していたため無投薬にて経過観察していたところ平成11年1月妊娠した.平成11年6月,脈の乱れのないことに気付き当科受診,ホルター心電図にてVPC,NSVTは全く消失しており,出産時もVPCの出現なく無事に健康な女児を出産した.本症例は妊娠と不整脈との関係を考える上で非常に興味ある症例と思われ報告した.
  • 脇本 博文, 原田 智雄, 富田 泰, 横山 泰廣, 宮國 友治, 宮城 憲一, 中川 武正, 中沢 潔, 三宅 良彦, 鈴木 文男
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 10-15
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性.生来健康であったが,平成11年1月中旬感冒症状出現.感冒症状が軽快した後,意識消失発作を繰り返すようになった.2月8日,近医受診.心電図にて右室流出路起源と推定される心室性期外収縮の連発を認め,2月9日当院入院となった.入院中心拍数180/分程度の左脚ブロック型の心室頻拍(最高38連発)を繰り返し,眼前暗黒感を訴えた.心臓電気生理検査時,右室プログラム刺激法にて心室頻拍は誘発されずリエントリー機序は否定的であった.心室頻拍と同様の波形を呈する心室性期外収縮(VPC)を指標にペースマッピングを行い,その起源部位を右室流出路に同定した(心内電位はQRS波より30msec先行).同部位でのアブレーションによりVPCは消失した.その後,無投薬下にて心室頻拍の再発を認めていない.アブレーション当日に行った右室流出路の心筋生検にて心筋炎を示唆する所見が得られ,心室頻拍との関連が示唆された.抗体価ではインフルエンザAウイルスが高値であった.感冒罹患後に出現した右室流出路起源の心室頻拍に対しアブレーション治療を行い著効をえたが,このようなアブレーション治療例はいまだ報告されていない.
  • 松川 星四郎, 大平 洋司, 加藤 正弘, 慶田 毅彦, 佐竹 修太郎
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 16-23
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    左室起源特発性心室頻拍の多くは心電図上,右脚ブロック+左軸型を示し,その多くはVerapamil感受性であることが多い.頻拍の起源は心尖部よりの左室後中隔に位置し,左脚後枝由来のPurkinje線維が関与していると考えられている.頻拍発生時の電気生理学的機序としては,reentryが主体であると考えられている.
    今回我々は右脚ブロック,右軸偏位を呈し,Verapamil非感受性で左室前中隔起源の特発性心室頻拍にカテーテルアブレーションが有効であった症例を経験したので報告する.
    症例:31歳,男性.主訴:動悸.26歳時より1~2時間持続する動悸発作を年数回自覚していたが放置.平成11年9月20日動悸発作認め当院入院.頻拍発作時の12誘導心電図は,心拍数198bpm,右軸偏位,右脚ブロック型(QRS幅0.12msec:四肢誘導)のVTであり,心臓電気生理学的検査では,ATPおよびVerapamil無効であった.
    高周波カテーテルアブレーション施行した.頻拍起源の同定はactivation mappingおよびpacemappingにて行った.経大動脈アプローチにて左心室前中隔部において頻拍中にQRS波に24msec先行する最早期興奮を認め,同部pace mappingは12分の10で一致した.この部位にて頻拍中に高周波通電したところ,通電開始後約7秒にて頻拍は停止し,約2分間通電後VTは誘発されなくなった.一般的に特発性心室頻拍は左心後中隔部に起源を有することが多いが,前中隔部に起源を有し,P電位を認めない部位でアブレーションに成功した特発性心室頻拍を経験したので報告する.
  • 木村 卓郎, 桜田 春水, 岡崎 英隆, 江里 正弘, 仲里 信彦, 西脇 泰信, 上山 剛, 高橋 玉奈, 岡野 喜史, 武居 一康, 手 ...
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 24-28
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    74歳男性,心電図上,右脚ブロック型心室内伝導障害,左軸偏位を認めた.運動負荷時認められたwide QRS頻拍精査のため心臓電気生理学的検査(EPS)を行った.洞調律時の心腔内心電図で,HV時間70msと延長を認めた.心室プログラム刺激にて周期360ms,右脚ブロック,左軸偏位型のwideQRS頻拍が再現性をもって誘発された.頻拍中房室解離を認め,心室頻拍(VT)と診断,VT中先行する左脚電位(LB)を認めV-V間隔は,先行するLBLB間隔に依存しておりVTの機序として脚枝の関与が考えられた.本頻拍は,右脚ブロック,左軸偏位型であり左脚後枝が順行性の経路と考えられた.左室内のマッピングにより逆行性の経路は左脚前枝と考えられ束枝間リエントリー性心室頻拍と診断した.頻拍中に左脚前枝に対し通電を行い頻拍は停止し,以後誘発不可能となった.
  • 河原井 浩孝, 板井 勉, 菅原 重忠, 安藤 園子, 並木 重隆, 大西 哲
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 29-36
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,めまいを伴う右脚ブロック・左軸偏位型の持続性心室頻拍(s-VT)を有する75歳男性.左心室造影上,心尖心室瘤を伴う著明な心室中部閉塞型肥大型心筋症を認めた.心室瘤心尖部は菲薄化し,その部位の電位は低く,頻拍中にfractionatedelectrogramを示し,concelad entrainmentを認めた.緩徐伝導部位の高周波アブレーションによりs-VTは停止し誘発不能となった.非持続性心室頻拍(ns-VT)に対してamiodaroneとmetoprololを投与したが, 慢性期にs - VT が頻発したため, concealed entrainmentを認める部位に対して再度アブレーションを行い急性期成功を得た.緩徐伝導部位におけるペーシングではmultidirectional conductionを示し,複数の血圧低下を伴うns-VTが誘発されたことより緩徐伝導部位は複雑な電気生理学的・解剖学的基盤を有していると考えられた.その後,慢性期にs-VTの再発がみられ植え込み型除細動器(ICD)の植え込みを行った.心尖部心室瘤を伴う心室中部閉塞性肥大型心筋症にs-VTを合併する症例は少なく,ここに報告する.
  • 中川 万樹生, 住友 直方, 谷口 和夫, 唐澤 賢祐, 鮎沢 衛, 能登 信孝, 岡田 知雄, 原田 研介, 宇佐美 等
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 37-43
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    左室流出路起源の持続性心室頻拍(SVT)の1例を経験した.症例は12歳の男児.心臓検診で不整脈を指摘され,Holter心電図で運動中に心拍数225のSVTを認めたため,精査加療目的で入院した.心電図では右脚ブロック型の心室期外収縮が頻発していた.身体所見,胸部X線所見,心エコー図では異常は認めなかった.Treadmill運動負荷試験では最大9連発の心室頻拍が誘発された.電気生理学的検査では,2発までの右室期外刺激,右室連続刺激では頻拍は誘発されず,イソプロテレノール投与後に右軸偏位,右脚ブロック型のSVTが誘発された.頻拍中の右室連続刺激では,QRS波型はprogressivefusionを示さず,post pacing intervalも一定の傾向を認めなかった.頻拍の機序としてカテコラミン感受性の自動能もしくは撃発活動が考えられた.頻拍中の心内膜mappingおよびpace mappingでは左室流出路前側壁が頻拍の起源と考えられ,高周波カテーテルアブレーションにより,頻拍の根治に成功した.
  • 呉 正次, 新田 順一, 櫻井 馨, 永田 恭敏, 古村 雅利, 奥田 日実子, 宮本 貫庸, 丹羽 明博, 川口 悟, 白井 俊純, 藤原 ...
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 44
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例1は82歳,男性.94年,前壁心筋梗塞.98年11月,前壁心筋梗塞の再発,左室瘤形成を認めた.12月,心室頻拍(VT)が出現,amiodaroneを投与されたがVTと心不全症状が続いた.99年4月,冠動脈バイパス術,左室形成術(Dor手術),凍結凝固術を施行した. 左室駆出率(EF) は3 1 % から6 5 % へ改善し,利尿剤は中止でき,VTを認めず,Late potential(LP)は陰性化した.症例2は60歳,女性.89年7月,心筋梗塞を発症し左室瘤を認めた.98年3月,VTが出現.amiodaroneを投与しVTは認めなかったが心不全症状が続き,10月,Dor手術,凍結凝固術を施行した.
    EFは31%から74%となり,LPは陰性化し,電気生理学的検査でVTは再誘発されなかった.これら2症例より,Dor手術,冷凍凝固併用療法は左室瘤に伴う心不全とVTに対し有効な治療法の一つであると考えられた.
  • 小林 建三郎, 五十嵐 正樹, 正林 浩高, 岡野 喜史, 内藤 勝敏, 武藤 浩, 山崎 純一, 加藤 博人, 伊藤 良明, 上嶋 権兵衛 ...
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 45-49
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は24歳,男性.路上で意識消失し,救急隊到着時には心室細動を認め,電気的除細動で洞調律に復帰し他院入院.全身状態改善後,当院へ精査目的で転院.12誘導心電図,心エコー,心臓カテーテル検査では異常を認めず,心臓電気生理学的検査を施行した. 心房早期刺激ではlong RP'tachycardiaを呈する380msのnarrow QRS tachycardia(NT)から右脚ブロック,左軸偏位を呈する340msのwide QRS tachycardia(WT)へ移行がみられた.NTは非通常型房室結節回帰性頻拍,WTはverapamil感受性特発性心室頻拍であった.心内心電図でNTからWTへの移行がみられたときに,WT中に房室結節回帰性頻拍と特発性心室頻拍が同時に存在するdouble tachycardiaがみられた.Double tachycardiaにおける房室結節回帰性頻拍とverapamil感受性特発性心室頻拍の報告はなく,稀な1例を経験した.
  • 吉賀 康裕, 清水 昭彦, 山縣 俊彦, 早野 智子, 上山 剛, 大村 昌人, 板垣 和男, 木村 征靖, 山田 倫生, 小川 宏, 松崎 ...
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 50-54
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】ベプリジル(BE)およびアミオダロン(AM)のQT時間に対する影響の共通点と相違点を明らかにする.【方法】対象はAM(n=18)あるいはBE(n=17)の投与をうけた計35例.AMは400mg/日を14日間,その後50~200mgを投与し,BEは100~200mg/日投与した.投与前と投与1カ月後の心電図でRR間隔,心電図第II誘導でのQTc,QRSの始まりからT波peakまでの時間(QaTc),T波peakから終末までの時間(QeTcQaTc),12誘導から求めたQTc dispersionを測定し両者を比較した.【結果】1)両薬剤ともtorsadesde pointesを認めなかった.2)RR間隔は,両薬剤とも有意な変化はなかった.3)QTcはAM,BEともに延長した(p<0.01).4)QTc dispersionはAMでは縮小(p<0.001)したのに対して,BEでは増大(p<0.001)した.5)QaTcはAMでは延長(p<0.01)したが,BEでは有意な変化を認めなかった.Transmural dispersion of repolarization(TDR)と考えられるQeTc-QaTcは,AMでは縮小した(p<0.05)がBEでは増大した(p<0.01).【総括】AMとBEはQTcを延長させるが,QTc dispersionとTDRはAMでは縮小するがBEでは増大する.
  • 伊藤 篤, 山崎 恭平, 上小澤 護, 鈴木 順, 野原 秀公, 恒元 秀夫, 長谷川 朗
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 55-59
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    塩酸ニフェカラントは,ClassIII群薬で本邦で静脈内投与できる唯一の薬剤である.我々は,冠状動脈バイパス術中に起きた難治性心室性不整脈に塩酸ニフェカラントが著効した症例を経験した.
    症例は43歳,男性で,'99年2月に前壁心筋梗塞にて入院.#6に対してdirect PTCAを施行したが6カ月後99%に再狭窄し,#11,#12にも75%狭窄病変があるため,10月,冠動脈バイパス術を施行した.左右内胸動脈をそれぞれ左前下行枝,並びに#12に吻合した.自己心拍を再開し人工心肺を離脱しようとしたところ,心室細動,多形性心室頻拍,単型性心室頻拍が出現し,離脱が困難となった.リドカイン,硫酸マグネシウムが無効で,カウンターショックを試みたがすぐ再発した.塩酸ニフェカラントを静脈内投与したところ,心室頻拍は停止し再度出現しなくなった.本例は陳旧性心筋梗塞もあり,リエントリーの機序の不整脈の可能性が考えられ,ClassIII群薬が有効であったと思われる.
  • 栗田 康生, 三田村 秀雄, 高月 誠司, 前川 裕一郎, 家田 真樹, 杵渕 修, 竹下 晃子, 原 幹, 小川 聡, 三丸 敦洋, 申 ...
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 60-64
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ICD症例の増加に伴い,誤作動の報告も多い.我々は,ICDリード断線によるノイズ過剰感知とそれによるショック誤作動を起こした稀な症例を経験した.症例はVF蘇生歴のあるBrugada症候群の47歳男性.1998年6月に第4世代ICD(Medtronic Micro Jewel II 7223 Cx+SPRINTTM RV 6943-65リード)を左前胸部へ植え込み後,定期チェックで異常なく,作動も認めていなかった.1999年10月動作中に胸部にショックを2回自覚した.履歴解析で計4回のVF zoneの頻拍を感知,うち2回に30Jショックの作動を認めた.ICD本体とショックリードには問題がなかったが,ペーシングおよびセンシングを行うP/Sリードの心内電位,抵抗が体位変換や呼吸で変動した.さらに左上肢の運動やICD本体周囲への外的振動で心内電位にノイズが入り,頻拍と誤認した.胸部拡大X線でアンカリングスリーブ端にリードの亀裂が認められ,リードの入れ替え時に術野でP/Sリードのうち遠位リードのみの断線が確認された.ICDの遠位リード断線によりリード断端よりノイズが過剰感知され, V F と誤認され, さらに断線していないショックリードにより洞調律時にショック誤作動を起こしたと推察された.本患者は肉体労働者で,機械的な負荷が断線を招いたと考えられた.
  • 小内 靖之, 足利 貴志, 西崎 光弘, 山分 規義, 有田 匡孝, 桜田 春水, Yukio Kishi, 沼野 藤夫, 平岡 昌和
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 65-69
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は29歳女性.17歳より計7回の意識消失発作を認め精査目的で入院となった.心エコー,HeadMRI,脳波上異常所見を認めず,また左右頸動脈マッサージにても正常の反応を示した.体表面12誘導心電図ではV 1 からV 6 で陽性δ 波を認めた. 電気生理学的検査ではSACT=52msec,MaxSRT=1,326msecと洞結節機能に異常を認めず,房室伝導機能も正常範囲であった.Accessory pathwayはfasciculoventricular tractでありSVTは誘発されなかった.
    Baselineの80゜のhead-up tilt test(HUT)は8分30秒後に約20秒の洞停止を伴うsyncopeを起こした.Disopyramide 300mg/dayの内服では症状を抑制できなかったが,この際併用したHRVにてpresyncopeの直前にLF/HFの増大を認めた.そこで,Propranolol 30mg/dayの内服下でHUTを施行したところ,負荷中一切の症状を認めず,併用したHRVではLF/HF,HFいずれも大きな変化を認めなかった.悪性神経調節性失神の治療として,内服薬およびペースメーカー治療があるがメカニズムを解明することが適切な治療法の選択のために重要と考えられた.
  • 渡辺 裕文, 加茂 力, 中沢 潔, 白石 眞, 高橋 洋一, 松本 直樹, 山内 正博, 三廼 信行, 村山 正博, 池下 正敏, 武井 ...
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 70-73
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の男性.56歳時からジョギング後の整理体操中に顔面外傷を伴う失神を認めた.平成10年7月ドックにて心室頻拍(VT) を指摘され精査目的で入院となった.入院後心電図,心臓超音波検査より肥大型心筋症と診断された.心臓電気生理学的検査では心室頻拍が容易に誘発された.同時に行われた心筋生検では心筋細胞の異常配列が認められた.Head-up tilt(HUT)ではIsoproterenol負荷後に前失神徴候を誘発され心拍数と血圧の急激な低下を認めた.Phenylephrine法による頸動脈洞の圧受容器反射も正常であり,神経調節性失神(NMS)の混合型と診断した.この症例の場合失神の原因としてNMSが考えられ,生命予後に大きく関与するVTに対しては植え込み型除細動器を用い,NMSに対してはMetoprolol 60mg/dayを投与を開始した.治療後のHUTは陰性であった.また現在にいたる1年半の経過中に除細動器の作動と失神は認めていない.
  • 春日井 正, 八木 洋, 杉野 敬一, 渡辺 高祥, 姜 龍溢, 高橋 直之, 上西 壮, 今井 忍, 高世 秀仁, 青山 浩, 田中 秀之 ...
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 74-77
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:体表面P波加算平均心電図(SAE)を用い,洞不全症候群における心房遅延電位の有無について検討した.
    対象:発作性心房細動を合併しない対照例(C群)25例.洞不全症候群(S群)は発作性心房細動を合併しない洞房ブロック症例14例に対して検討した.
    方法:SAEは,P波同期で200心拍加算し,以下の項目に対して検討を行った.filtered P波持続時間(FP), filtered P波初期成分10msのrootmeansquare(RMS)電位(PRMS10),filtered P波終末部20msのRMS電位(LRMS20).心エコーで左房径(LAD),左室拡張期径(LVDD)および左室駆出率(EF).胸部X線で心胸郭比(CTR)を測定した.
    結果:1.LAD,LVDD,EF,CTRは2群間に有意差なし.2.FPはC群に比し,S群で有意に大.(C群126±8.7ms vs S群143±16.9ms)3.PRMS10はC群に比し,S群で有意に小.(C群1.36±0.93μV vs S群1.12±0.53μV)4.LRMS20はC群に比し,S群で有意に小.(C群2.23±0.14μV vs S群1.71±0.14μV)
    総括: 洞房ブロック例では, f i l t e r e d P 波の初期成分および終末部に遅延電位が認められた.
  • 野崎 勝宏, 庄田 守男, 志賀 剛, 石塚 尚子, 布田 有司, 杉浦 亮, 若海 美智, 島谷 和弘, 松田 直樹, 萩原 誠久, 笠貫 ...
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 78-82
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    完全心房停止に対し,植え込み型ペースメーカーによる房室結節ペーシングを行い,重症心不全の改善が見られた症例を経験したので報告する.症例は70歳男性.1998年7月に心アミロイドーシスによる洞不全症候群に対しDDDペースメーカーが植え込まれた.1999年1月頃より心不全症状が出現し,利尿剤,ジギタリス等で治療したが,徐々に心房閾値の上昇を認め,1999年9月より心房ペーシング不能,心房停止の状態になり心不全増悪傾向を認めた.心室ペーシングによる心室内伝導異常が心不全の増悪因子と考え,心房ペーシングを試みたが,10V刺激でも捕捉する部位が検出されなかった.しかし,房室結節領域を右房側より電気刺激すると約90msecの間隙を伴うnarrow QRSの心室捕捉が可能であり,この領域にスクリューイン電極を固定し,永久ペーシング治療を行ったところ,心不全の改善が見られた.心不全に対するペーシング治療の新しい方法と考えられた.
  • 手塚 尚紀, 杉 薫, 円城寺 由久, 川瀬 綾香, 熊谷 健太, 高見 光央, 中江 武志, 坂部 宏一, 坂田 隆夫, 野呂 眞人, 池 ...
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 83-87
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【背景】ATP感受性心房頻拍は少量のATPで房室ブロックを伴わず停止することから,頻拍回路に房室結節は含まれないとされている.【目的】ATP感受性心房頻拍(ART)例で少量のATPによる頻拍停止様式および,同量のATPが房室結節伝導に及ぼす影響を検討すること.【対象】ATP感受性ARTと診断され,アブレーションにより根治し得た4例.【方法】1)ARTに対し頻拍停止に必要なATP最小量を測定(10mgから1mgずつ漸減).2)ATPによる頻拍の停止形態を観察.3)頻拍の同一周期および100/分の心房ペーシング中に頻拍停止に要する最小量のATPを投与し,ATPの房室結節伝導能に対する効果を評価.【結果】症例1,2はそれぞれ1mgのATP量で房室ブロックを伴い頻拍は停止したが,症列3,4はそれぞれ,8mg,5mgのATP量で房室ブロックを伴わずに頻拍は停止した.頻拍根治後に全例で頻拍と同一周期での心房刺激により房室ブロックを認めたが,100/分の心房刺激では房室ブロックは認めなかった.【結語】ATP感受性心房頻拍には,ATPにより房室ブロックを生じて停止する例と,生じずに停止する例があった.全例で頻拍停止最小量のATPが頻拍周期での心房ペーシングで房室ブロックを生じた.このことから頻拍のリエントリー回路は房室結節の一部もしくはその移行帯を含む可能性が示唆され,また房室結節はATPに対し高い感受性を有していることが示唆された.
  • 本田 陽一, 伊達 太郎, 阿部 邦彦, 林 淳一郎, 茂木 純一, 杉本 健一, 望月 正武
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 88-92
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    副伝導路はしばしば斜走しており,その方向性の推定には心室刺激部位の変更により局所の室房伝導時間が変化する方法を用いている.しかし,潜在性WPW症候群では予想される心室端から十分に低い出力で刺激した場合の刺激-心房波時間(St-A)が,他の心室部位から刺激した場合より短いことを証明する必要がある.症例は16歳女性,間欠性WPW症候群の精査加療目的に当院に入院となった.12誘導心電図ではII,III,aVFで± のデルタ波,移行帯はV2であり左側後壁~ 後側壁の副伝導路の存在が疑われた.心室刺激時の冠状静脈洞(CS)内最早期興奮部位は左側側壁であった.右室心尖部刺激時の同部位のVAは20msec,右室流出路刺激時のVAは50msecであり心房端が心室端よりCS遠位に存在することが推定された.左側後側壁刺激時のSt-Aは55msecで他のどの部位よりも短く同部位の高周波通電で副伝導路の焼灼に成功した.
  • 浅野 拓, 小林 洋一, 松山 高明, 箕浦 慶乃, 渡辺 則和, 勝又 亮, 劉 俊昌, 安達 太郎, 河村 光晴, 小原 千明, 丹野 ...
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 93-99
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:44歳女性,15歳から動悸を自覚,平成11年8月より動悸が頻回となり来院,発作時の心電図で140/分のlong R-P'の発作性上室性頻拍(PSVT)を認めEPSを施行した.高位右房(HRA)からの単発刺激で,冠静脈洞(CS)内に最早期心房興奮部位を有する,頻拍周期420msecのlong R-PのPSVTが誘発された(PSVT-1).HRAからのさらに短い単発刺激で,頻拍周期260msecの速いPSVTが誘発され,この頻拍の心房内興奮順序はPSVT-1と同一であった.PSVT-1,2ともにATP0.2mg/kgの静注により心房興奮周期は変わらずにAHのJump upとAH Blockを認め,その後PSVTは停止した.これより,PSVT-1,2はATP感受性心房頻拍と考えられた.また,PSVT-1中にHRAからのプログラム刺激で,通常型AVNRTが誘発された(PSVT-3).HRAからの期外刺激法で,房室伝導に2回のjump up現象を認め,3重順行伝導路が証明された.Ablationは三尖弁輪-CS間の線条焼灼で,PSVT-1,2は誘発されなくなったが,PSVT-3は誘発された.次に解剖学的slow pathwayの焼灼を施行し,通常型のAVNRTも誘発されなくなった.まとめ:2種類の頻拍周期を有するATP感受性心房頻拍と,通常型AVNRTが誘発され,各々のablation部位が異なった興味ある一例を経験した.
  • 小林 孝男, 小松 隆, 中村 紳, 斎藤 栄太, 奥村 謙
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 100-107
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,女性.多剤抗不整脈薬治療抵抗性の発作性上室性頻拍(PSVT)のため入院.右室早期刺激法ではdouble atrial responseを認め,いずれの逆行伝導もHis束A波が最早期興奮部位でdecrementalconductionを呈したが,冠静脈(CS)内心房興奮順序が異なっていた.高位右房早期刺激法では,2回のjumping up現象とともにatrial echoの出現を認めたがsustained PSVTは誘発されず,ISP負荷による電気的プログラム刺激でもsustainedPSVTは誘発されなかった.2種類のPSVTはカテーテル操作による機械的刺激と自然に発生した上室性期外収縮の出現時にのみ観察されたが,各々のPSVTにおける逆行性CS内心房興奮順序は異なり,PSVT中にHis東電位出現時早期心室単発刺激を施行するも刺激をはさむ心房周期の短縮を認めなかった.傍His束ペーシングでは,逆行伝導が房室結節を介した経路であることが示唆された.また,上室性期外収縮の出現時に誘発された頻拍中にAHならびにHA間隔のjumping up現象が観察された.以上の所見から,本症例の頻拍機序にslow-fastならびにfast-slow typeの房室結節リエントリー性頻拍が示唆され,intermediatepathwayはPSVT誘発時の一過性関与のみであった.高周波アブレーション成功部位は,CS入口部上縁の後中隔側に存在したslow pathway potential記録部で頻拍回路の恒久的離断が可能であった.
  • 西田 邦洋, 藤木 明, 水牧 功一, 長沢 秀彦, 井上 博
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 108-114
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1:1心室応答の際に右室流出路起源心室頻拍と類似した心電図波形を示した大動脈弁置換術後の慢性心房粗動の1例を経験した.
    Wide QRS出現時のRR間隔の検討から,心室頻拍ではなく変更伝導と診断した.
    12誘導心電図からは術後心房切開線を旋回する心房リエントリーも疑われたが,バスケットカテーテルによる右房内マッピングの結果,三尖弁輸を時計回転する心房粗動と考えられた.
    右房自由壁にfragmented electrogramと伝導遅延を認め,心房切開部の伝導障害を認めたが頻拍回路には含まれていなかった.
    下大静脈-三尖弁輪間峡部の線状焼灼により心房粗動は消失した.
  • 岡本 美弘, 野上 昭彦, 土井 宏, 川村 正樹, 嶋田 一成, 柚本 和彦, 玉木 利幸, 加藤 健一, 西村 重敬
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 115-121
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:84歳,男性.主訴:動悸.前壁陳旧性心筋梗塞の既往.心電図上2種の持続型心房粗動(AFL)を認めたが,それらの粗動波は下方誘導で二相性(AFL-1)および陰性(AFL-2)であった.心臓電気生理学的検査施行時は周期220msのAFL-1であった.三尖弁輪(TVA)に留置した20極カテーテルでは興奮波は自由壁側を時計方向に回旋し一見逆方向1型AFL様であったが,中中隔部ではcollisionしていた.三尖弁一下大静脈間峡部(I)の中隔側および側壁側からのペーシングではconcealed entrainmentが得られ,かつ復元周期(PPI)は頻拍周期と一致した.高位側壁からのペーシングではmanifest entrainmentとなり,PPIは260rnsと延長したため,同部位は頻拍回路外と考えられた.I-dependent AFLと診断しIへの高周波通電を施行したところ,AFL-1は高周波通電中に停止し,Iの両方向性ブロック完成後はいかなる頻拍も誘発不能となった.Iブロック完成後に冠静脈洞ペーシングを行うと,心房興奮波のsequenceはTVA高位側壁部で“>”型,低位側壁部で“<”型を呈し,この際のP波はAFL-2の粗動波に似ていた.分界稜の平滑側,櫛状筋側でそれぞれ周期600msの心房刺激を行うと分界稜下部では両方向性に横断する伝導を認めた.以上より,AFL-1は頭側より見て時計方向回転のlower loop reentryでAFL-2は反時計方向回転のlower loop reentryと考えられた.両方向性lower loop reentryを機序とする持続型心房粗動の報告はなく示唆に富むと考え報告する.
  • 大久保 公恵, 渡辺 一郎, 小島 利明, 神田 章弘, 國本 聡, 押川 直廣, 杉村 秀三, 正木 理子, 斎藤 穎, 小沢 友紀雄, ...
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 122-126
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.失神発作を伴う動悸を主訴に近医を受診した.ホルター心電図上,1:1房室伝導を伴う心拍数230/分の心房粗動を認め,精査加療目的にて入院となった.電気生理学的検査では通常型心房粗動が誘発されたため,三尖弁輪-Eustachian valve/ridge間の解剖学的狭部(Ith)アブレーションを施行し,Ithの両方向性離断に成功した。その後の基本周期160mescでの高位右房連続刺激にて心房頻拍が誘発された.頻拍周期は160msecで,冠静脈洞(CS)電位にdouble potential(DP)を認めた.最早期興奮はCS遠位部(CSd)で, DPはCS入口部(Csos)よりCSdへ向かうに従いその間隔は広くなる逆V字型を呈した.同頻拍の機序として冠静脈洞と左房の間を旋回するリエントリー性頻拍が考えられた.本頻拍は非持続性のためアブレーションを施行しなかったが,その後外来経過観察にて,頻拍は再発していない.
  • 北野 義和, 庭野 慎一, 猪又 孝元, 松永 菜, 湯本 佳宏, 犬尾 公厚, 吉澤 直人, 斉藤 淳子, 原 英幸, 森口 昌彦, 和泉 ...
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 127-132
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は20歳男性.4歳時に心室中隔欠損(VSD)に対して直接閉鎖術施行.術後16年目に動悸が出現し,通常型心房粗動と診断され,カテーテル焼灼術目的にて心臓電気生理検査を施行された.心房粗動中の心房電位は,三尖弁輪マッピング用カテーテルを右房自由壁大静脈間部側に留置した際には,心房中隔を上行し,右房自由壁を下行する通常型心房粗動のリエントリー回路の興奮順位を示していた.カテーテルを三尖弁輪側に移動した際には二重電位が観察され,三尖弁輪側の右房を上行し,大静脈間部側の右房を下行する経路,すなわちVSD手術時の右房自由壁の脱血管挿入創瘢痕周囲を旋回するもう1つのリエントリー回路が確認された.頻拍は心房中隔,右房自由壁三尖弁輪側,右房自由壁大静脈間部側のいずれの部位からもentrainment可能であり,かつ復元周期長は頻拍周期長に一致していた.解剖学的狭路に対しての高周波焼灼術のみでは頻拍は停止せず,頻拍周期長も不変であった.さらに三尖弁輪と右房自由壁瘢痕下縁を結ぶ焼灼線を加えることによって頻拍は停止し,誘発も不能となった.焼灼時の所見からは瘢痕周囲の回路が頻拍維持に必須と推定されるが,復元周期の所見からは心房中隔を含む旋回路もactiveと考えられ,二重のactiveな旋回路を有した特異な心房粗動症例であると考えられた.
  • 廣野 喜之, 鈴木 文男, 堀川 朋恵, 芦川 英信, 本川 克彦, 寺井 知子, 平尾 見三, 川良 徳弘, 比江嶋 一昌
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 133-138
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心房粗動に対する治療法として下位右房峡部(subeustachian isthmus)を標的とするアブレーションが行われるが,峡部内のどの部位(septal or lateral isthmus?)に焼灼線を作成するのがより効果的であるかを検討した報告はない.今回我々は20極カテーテルにて峡部全体をマッピングしながら左房頻回刺激を行い,峡部内の伝導ブロック部位を決定した後,ブロック部位を標的として通電する方法(ブロック部位通電法)を試みた.ブロック部位は冠静脈洞入口部近傍のseptal isthmusであった.この部位を標的として焼灼線の作成を試みたところ,4回という比較的少ない通電回数により峡部ブロックを作成し得た. この結果は" ブロック部位通電法" が有用である可能性を示唆するものと考えられる.本法が真に有用なアブレーション法であり得るか否かについては更なる検討が必要であろう.
  • 丸山 英和, 柴田 仁太郎, 杉本 千佳子, 真中 真美
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 139-142
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    平均3.1剤のNaチャネル遮断薬が無効の心房細動16例(平均持続期間9.5カ月)に電気的除細動(DC)治療を行い,その臨床的意義を検討した.DCの成功率は79%で,150J以上のエネルギーを用いると成功することが多い印象であった.しかしDC成功後の再発率は75%と高率で,再発までの期間も,その90%が2週間以内であった.
    抗凝固療法としてワーファリンを投与し,3/4の例ではトロンボテスト値が11~30%でコントロールをしたが,DC後の塞栓や出血の合併症は認められなかった.女性や基礎心疾患のある例は再発しやすい傾向があった.ピルジカイニドやプロパフェノン使用例は除細動閾値が低く,再発率がやや低い傾向にあった.
  • 出雲 和秀, 関 裕, 小島 太郎, 斎藤 幹, 熊谷 賢太, 安東 治郎, 高橋 通, 田中 由利子, 板岡 慶憲, 岡崎 修, 樫田 光 ...
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 143-147
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 梅谷 健, 小森 貞嘉, 飯田 隆史, 河埜 功, 長田 満, 石原 司, 沢登 貴雄, 井尻 裕, 田村 康二, 角野 敏恵, 杉山 央, ...
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 148-152
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は12歳の女児.主訴は悪心,呼吸困難.1999年8月上旬より食欲不振,全身倦怠感が出現し,8月30日,心不全の診断にて当院小児科に入院となった.胸部X線での心胸郭比は65%で,心電図にて202拍/分のnarrow QRS tachycardiaと,QRS波に先行する,II,III,aVF誘導で陽性のP波を認め,異所性心房性頻拍と診断した.心エコー図検査では全周性の左室壁運動低下(左室駆出率14%)と左室拡大を認め,またAST=2,790IU/l,ALT=1,794IU/lと高値を示した.心拍コントロール不十分で,全身状態も不良であったために速やかな根治療法の必要性を考え入院4日目にcatheter ablationを施行した.Double catheter法にて右房内最早期興奮部位をmappingして通電したが,頻拍は停止しなかった.次に20極の電極カテーテルを右房内に挿入し,最早期興奮部位をmappingし,右房側心房中隔後壁寄りの部位にて,局所電位が2相性スパイク様で体表面P波より27ms先行する部位にて通電し,洞調律に復帰した.洞調律復帰後に心不全は速やかに改善し,1カ月後の心胸郭比は40%,左室駆出率は47%であった.小児の異所性心房性頻拍によるtachycardia induced cardiomyopathyにcatheter ablationが非常に有用であったので報告する.
  • 深澤 浩, 内藤 滋人, 夛田 浩, 関口 誠, 河口 廉, 高間 典明, 小板橋 紀通, 廣井 知歳, 櫻井 繁樹, 安達 仁, 外山 卓 ...
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 153-161
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    近年,発作性心房細動発症のtriggerとして,肺静脈起源の期外収縮(APC)が注目されている.今回,薬剤抵抗性の発作性心房細動症例において,肺静脈起源のAPCに対して高周波カテーテルアブレーションを施行し,良好な結果が得られた症例を経験したので報告する.
    症例は,56歳,男性.検査時もAPCが多数,認められ,このAPCをtriggerとして心房細動が発生する状態であった.
    各肺静脈をmappingしたところ,右上肺静脈内にAPCの最早期興奮があり,更にAPCに先行するspike potentialを認めた.このspike potentialは心房に伝導するものと,伝導しないものを認めた.同部位で通電を行ったところ,通電前はAPCbigeminyであったが,通電開始からAPCは消失し,spike potentialも認められなくなった.以後,薬剤無しで経過観察しているが,APCも発作性心房細動も認められていない.
  • 村山 正博
    2000 年 32 巻 Supplement6 号 p. 162-171
    発行日: 2000/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    スポーツ心臓の概念は,(1)耐久的トレーニングに伴う心拡大が主体で,肥大型心筋症の発症はスポーツ心臓の機序ではない,(2)市民スポーツレベルや小児期に起こることは少ない,(3)トレーニング中止後,正常の大きさに回復する.(4)不整脈としては,(1)洞徐脈およびそれに伴う房室接合部収縮または調律,(2) 第1度および2度(Wenckebach型)房室ブロック,(3)不完全右脚ブロック,(4)左側胸部誘導高電位差を特徴とするが,トレーニング中止後は(1)と(2)は100%消失し,(3)は12年後まで約半数,(4)は約30%が残存する.徐脈性不整脈の機序には迷走神経緊張亢進が関与し,また圧受容体感受性低下から起立性低血圧を起こし易くなる.頻脈性不整脈はスポーツ心臓とは無関係に偶発的に起こるものとして捉えるが,それを有する選手のスポーツ参加・禁止条件については,日本臨床スポーツ医学会がガイドラインを提案した.また,胸部打撲による心室細動誘発(commotio cordis)に関する実態および機序について文献的考察を行った.
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